第1話 復活のイデオン

ガンツ
「間違いないんだろうな、ベス? 空軍のお前の言い草を信じて、許可を取らずに5台の戦車を出したんだぞ?」
ベス
「俺の目を信じろよ」
「ンッ……何て蛭が多いんだ!」
コスモ
「スピードが上がらないんだよ。べスの戦車に追い付けないぞ」
「重量オーバーって事?」
「あれ?」
デク
「ヘヘッ……」
コスモ
「デク! 俺には付いてくるなって、言ったろ?」
「わっ!」
カーシャ
「ベスにしてもコスモにしても、きっと何かあるんだわ。あの慌てぶり……!」
管制官
「お疲れ様。こちら、アンドロメダ星雲系A7、ソロ星ユーロピア空港」
 〃
「只今、着陸ポイントに入りました」
 〃
「お気を付けて。コンピュータ・ラウンディングOKです」
 〃
「やっと第三次移民船の三百所帯だ。女の子の方が多いっていうんだから、いいですよ」
 〃
「あぁ。これでユーロピアも町らしくなるってもんだ」
カーシャ
「移民船が半年振りにやってきた日だっていうのに、ベスったら何をやろうっていうのかしら……」
「あっ! もう嫌ッ!」
ガンツ
「本当に、科学丁の連中の尻尾を捕まえられるんだろうな?」
ベス
「やめてくれ、軍の調査だ! 発掘現場を調べさせてもらう!」
バッフ・クラン兵
「探査機収容急げ、第23ハッチ! 探査機収容急げ!」
 〃
「テープ回せ、チェックを急がせろ! 第二捜査員、コンピュータ・チェックだ!」
 〃
「了解!」
ダミド
「もう少し拡大しろ! どんな生物体か分かれば……」
ギジェ
「知的生物が居ると?」
ダミド
「おう、ギジェ。見るがいい」
ギジェ
「町か……」
ダミド
「そうだな」
ギジェ
「我がバッフ・クランの移民団の星という訳ではないのだな?」
ダミド
「あぁ、調べさせた」
ギジェ
「異星人だというのか?」
ダミド
「99%以上の確率で、そうだ」
ギジェ
「建物らしいな……」
「ん? 動いているものがある」
ダミド
「チェックしろ!」
ギジェ
「こちらはキャッチされていないだろうな?」
ダミド
「リアクションはない」
「対地監視をアルパまで上げろ!」
兵士
「はっ! 動いた物は、長さ4000……我々の普通の乗用車ほどの物です」
ギジェ
「さて、最悪だな……」
ダミド
「異星人を調べてからという事になるな」
ギジェ
「あぁ、異星人が我々と同じ文明レベルを持っているとしたら、接触を避けねばならんから、イデの捜索が出来なくなるかもしれないな」
ダミド
「まさか。あの建物の型は、我々の中世期時代の物だぜ?」
ギジェ
「……何か?」
兵士
「第3デッキです。カララ様が、コポラ11号機で発進なさいました」
ギジェ
「えっ? またか……」
「カララ様、どちらへ?」
カララ
「ロゴ・ダウに一つしかない町です。大した異星人達が居る訳でもないでしょ」
ギジェ
「調査しなければ、そのような事は言えません! この捜索隊の隊長は、私です!」
カララ
「私が調査すると言っているのです!」
ギジェ
「カララ様……!」
カララ
「お切り!」
シラク
「はい」
ギジェ
「……困ったジャジャ馬だ」
「ダミド」
ダミド
「コポラ7号と8号を発進させる」
ギジェ
「すまんな」
ダミド
「あの異星人な……レーダー位、開発している種族だったらどうする?」
ギジェ
「有り得んよ」
シラク
「お嬢様、グラム・ザンから追っ手が出たようです」
カララ
「ギジェめ、気を遣いすぎるな。シラク、振り切れるか?」
シラク
「はい。シートにお体を固定してくださいませ」
カララ
「やっておくれ」
シラク
「はい」
デク
「あれ? カーシャだよ?」
コスモ
「ん?」
「フッ……あんなバイクで来るからさ」
デク
「フフッ……!」
コスモ
「カーシャ! お尻の蛭を、取ってやろうか?」
カーシャ
「あぁんっ!」
コスモ
「良かったね、カーシャ!」
カーシャ
「イーッ、だ!」
シェリル
「とうとう、気が付いたという訳ね」
ロダン
「あぁ、あと一息という所なのにな……」
ベス
「これで、お前さん達を軍法会議にかけずに済んだという訳だな」
ロダン
「ここの鉱物資源発掘は、科学丁の管轄だ! 軍に口を挟む権利はない筈だ!」
ベス
「冗談はやめてもらう!」
シェリル
「まだ調査が終わっていません! 事情の分からぬ、あなた方に今来られては……!」
ベス
「移民法第十七条『兵器及びそれに準ずる装備・車両は、全て軍に届け出るべし。これに違反した者は、強制労働二年』」
シェリル
「そんな事、まだ分かっていないのよ? 漸く形が復元出来ただけの物を、届け出など出来はしません!」
ベス
「じゃあ、この巨大な車両を冗談で造ったというのか? これをさ……」
ガンツ
「これは……!」
ベス
「どうだ、ガンツ? 戦車5台じゃ足らん位だろう」
ガンツ
「あぁ、そうだな……」
ベス
「許可なく造ったんだ。軍で引き取らせてもらう」
シェリル
「造ったんじゃありません。復元したんです」
ベス
「え? 地球から持ってきて、ここで組み立てた……?」
シェリル
「まさか。信じないでしょうね、これはソロ星のこの場所から発掘された遺跡なんです」
ベス
「遺跡? 大昔の、ソロ星人が遺した物だとでもいうのか? これを? フフッ、ハハッ……!」
ユウキ博士
「しかしな、ベス君。シェリル君の言う通りなんだよ」
ベス
「しかし……!」
「貴様!」
シェリル
「笑い事でないから、この半年間、調査しているんです」
ベス
「このソロ星には知的生物が居ないからって、二年前に移民が始まった所なんだぞ? 遺跡があってたまるもんか!」
コスモ
「黙れ! ここは父さん達の仕事場なんだぞ!」
ユウキ博士
「コスモ! 大人の話に口を出すんじゃない」
コスモ
「べスの言う事が、大人の言う事かよ!」
ユウキ博士
「コスモ……!」
シェリル
「今は、コスモ君の言う事の方が正しいわね」
ベス
「貴様ぁ……!」
シェリル
「私は、フォルモッサ・シェリル! 貴様ではありません」
マヤヤ
「間違いありません。微かにだけど、電波がキャッチできる」
シラク
「異星人……しかも、電波を使える文明を持っている……」
カララ
「どの程度の科学力と思うか?」
シラク
「分かりません。文明が発達している星なら、この星はもっと開発されている筈ですし……」
カララ
「じゃあね、見てみましょうよ」
シラク
「お嬢様、くれぐれも用心してください」
カララ
「上手くいったら、お前をサビアの位に上げてあげます」
シラク
「お嬢様……」
カララ
「あっ……!」
「異星人だわ」
マヤヤ
「如何なさいます? お嬢様……」
カララ
「え? 折角、発見したのよね。行くわ」
マヤヤ
「お嬢様……」
コポラのパイロット
「シラクめ! 相変わらずいい腕をしてやがるぜ。とうとう我々を撒きやがった」
 〃
「レーダーだな、こりゃ?」
 〃
「何? 異星人のか?」
 〃
「恐らく……」
 〃
「あれか! た、退避するぞ!」
 〃
「しかし、カララ様は……?」
 〃
「そ、そうなんだ……!」
ガンツ
「へぇ、あれが今度の移民団が乗ってきた飛行機か」
コスモ
「円盤?」
ソロ星の軍人
「敵襲だ! 退避行動を取れ!」
コスモ
「敵? 敵って、あれが敵……?」
カララ
「迂闊な。異星人の力も分かっていないのに……」
「記録を忘れるな」
マヤヤ
「はい」
カララ
「戦車のようだな」
マヤヤ
「我々と同じレベルの科学力を持っています」
カララ
「え?」
コポラのパイロット
「何故撃った?」
 〃
「あの近くにカララ様は降りたんだ! カララ様にもしもの事があってみろ。我々は奴隷になるか、悪くすれば自爆させられるんだ!」
「分かっているだろ? やるしかなかったんだ!」
シラク
「追い掛けてきた2機か? 異星人に仕掛けられたのか……」
コポラのパイロット
「ビーム砲だ! れ、連中、どんな生物なんだ?」
「どうする?」
 〃
「もう叩くしかないだろ! 俺達の星を、奴等に侵略されてもいいのか?」
ソロ星の軍人
「後ろだ!」
「あっ!」
コスモ
「あの隊長が……!」
ユウキ博士
「こっから逃げるんだ!」
コスモ
「どこへ?」
ユウキ博士
「どこでもいい!」
「おおいっ!」
コスモ
「デク! 立てよ!」
ユウキ博士
「ジャングルに隠れろ!」
ベス
「何してる、早く!」
シェリル
「遺跡を捨てろっていうんですか?」
ベス
「勝手にしろ!」
ユウキ博士
「うおぉっ!」
シラク
「カララ様は……」
「あっ!」
ベス
「この!」
ソロ星の軍人
「うわっ!」
コスモ
「伏せろ!」
カーシャ
「キャッ!」
「あぁっ……!」
コスモ
「何、突っ立ってんだよ! 逃げるんだ!」
「やっぱり、女だな!」
カーシャ
「コスモ……!」
コスモ
「デク! 左の建物に逃げるんだ!」
デク
「うん!」
コスモ
「あっ!」
カーシャ
「これは……!」
フォルモッサ博士
「今の振動は?」
コスモ
「フォルモッサ博士! このメカも遺跡なんですか?」
フォルモッサ博士
「あぁ。何が起こっているんだ?」
コスモ
「知りません。あの円盤がいきなり……」
「うっ!」
「あぁ……っ!」
デク
「わぁっ!」
コスモ
「デク、行くな! お前も死ぬぞ! 待てっ!」
デク
「わっ!」
シラク
「カララ様と、マヤヤの駄々っ子はどこ?」
ベス
「正面に居るぞ!」
シラク
「うぅっ……!」
コポラのパイロット
「シ、シラクの11号機がやられた!」
 〃
「おい、敵の数は少ないんだ! ガダッカを出して戦おう!」
 〃
「行くぞ!」
 〃
「よし!」
ベス
「タァーッ!」
コポラのパイロット
「うおぉっ!」
 〃
「あっ!」
カララ
「マヤヤ、見ましたか? あの異星人の男を……」
マヤヤ
「あ、はい。ガダッカを1機倒した男ですね?」
カララ
「男……男でしょうね、あの姿形は……」
ベス
「戦車から離れろ! 危険だ!」
「この野郎!」
コポラのパイロット
「わぁっ!」
ベス
「たじろぐな! 手持ちの武器でやれるぞ!」
カララ
「あれが男なら……。マヤヤ、翻訳機を持っているかい?」
マヤヤ
「はい、グズラウ星の新生式の物を」
カララ
「翻訳出来るといいけど……」
ベス
「後ろ! 後ろ!」
カララ
「ウシロ……?」
コポラのパイロット
「沈めぇ!」
ソロ星の軍人
「うわぁっ!」
ベス
「馬鹿野郎!」
カララ
「バ・カ・ヤ・ロ……」
シェリル
「このサブ・コントロール・システムで動いてくれる筈なんだけど、何故……?」
コスモ
「あ? これが親父の言ってた遺跡なのか」
デク
「遺跡って?」
コスモ
「知るかよ。見に来ちゃいけないって言われていたし、大体、化石を調べてるって……」
シェリル
「あっ! あのゲージが、点いた!」
「これが、イデオンのサイン……」
ベス
「二本足は後1機だ!」
「うわっ!」
「動くのか?」
シェリル
「あっ! 動いてしまって……!」
ベス
「ええい! 使えるんなら、これでユーロピアまで逃げる!」
シェリル
「このパネルも、コントロール・システムも、私達が付けたものなの。まだ……」
ベス
「動きゃいい!」
シェリル
「来るわ!」
「あっ!」
ベス
「このっ!」
デク
「コスモ!」
コスモ
「糞、行けっ!」
カーシャ
「う、動いたわ!」
ベス
「ハハッ、この図体なら一気に行けるぞ!」
シェリル
「そんな! この半年間、調べに調べても、この第六文明のメカニズムはどうしても動かなかったのよ?」
ベス
「現に動いてるじゃないか!」
コポラのパイロット
「巨大なメカが動き出した! どうする?」
 〃
「本隊に真っ直ぐ帰ってみろ。ギジェの若造に馬鹿にされるのがオチだぞ!」
 〃
「ええいっ!」
コスモ
「うっ!」
デク
「うわーっ!」
コスモ
「このメカ、もつぞ!」
カララ
「あれは……」
ベス
「来るぞ!」
シェリル
「えっ?」
「あぁっ!」
デク
「コスモ!」
コスモ
「煩い! 黙ってろ!」
カーシャ
「キャッ!」
コポラのパイロット
「あれだけのミサイルを食らっても、何ともないのか?」
カララ
「信じられるかい? あれだけの爆撃を受けても平気な乗り物なんて……」
コスモ
「こいつ、物凄いメカじゃないか!」
「な、何だこりゃ? 何が動いてるんだ?」
デク
「止まっちゃったよ」
コスモ
「どういう訳だ? この、動けよ!」
コスモ、デク
「わっ!」
ベス
「何が起こったんだ?」
シェリル
「さぁ……」
「左のモニターを」
ベス
「人型? このメカニズムの事か?」
シェリル
「そうだわ。巨人って、この事だったのね」
ベス
「え?」
コポラのパイロット
「奴等の兵器か?」
 〃
「伝説の巨人じゃないのか?」
 〃
「馬鹿言え!」
カララ
「あの乗り物が連結したようだけど……」
マヤヤ
「はい」
コポラのパイロット
「ミサイルはないか?」
 〃
「まだ、パワーはある」
 〃
「やるぞ! あんな巨人にバッフ・クランが侵略されてみろ、せっかくの平和が!」
デク
「コスモ!」
コスモ
「煩いよ! 繋がったら動かないみたいだぞ……」
「腕らしいのが動くぜ! 振り回せ!」
コポラのパイロット
「うわぁっ!」
 〃
「ガセバのコポラが……!」
コスモ
「やった! よし、ロボットなら立ち上がって戦えってんだ!」
カララ
「巨人?」
マヤヤ
「イデの巨人……」
カララ
「そんな……。ただの異星人のロボットです」
コスモ
「立ち上がったらしい! パンチだ、パンチでやっつけてやる!」
コポラのパイロット
「異星人めぇ!」
 〃
「うおぉっ!」
カララ
「あんなもの……あんなものが、イデの伝説の巨人である訳がない……!」
コスモ
「やっつけたけど……何だ? 一体このメカは……このロボットは……」
ベス
「た、立った……!」
シェリル
「イ、イデオンって……」
カーシャ
「わ、私達、何をしたの……?」
カララ
「けど、あれは……巨人……!」