第2話 ニューロピア炎上

前回のあらすじ
地球人の移民が行われていたアンドロメダ星雲内A7のソロ星で、地球人は異星人バッフ・クランと接触をした。
しかも、ソロ星の遺跡から発見された謎のメカニズムが巨人に変形する様を見て、
地球人も、バッフ・クランの人々も、ただ息を呑むだけであった。
マヤヤ
「あの力、伝説の巨神かもしれない……あの力……」
カララ
「マヤヤ……」
「伝説の巨神は、もっと素晴らしく輝くものだ」
コスモ
「どうなってんだ? メカがみんな繋がったらしいけど……」
「デク、外覗いてみな」
デク
「うん」
「わっ! コスモ、地面が! 地面がなくなっちゃってるよ!」
コスモ
「何、騒いでんだよ? 飛び降りちゃえばいいじゃないか」
デク
「コスモ!」
コスモ
「この……うっ?」
デク
「ラパパ! そこ、くすぐったい!」
コスモ
「糞っ!」
デク
「あっ!」
コスモ
「な、何だ?」
シェリル
「あのマークが、消えていく……」
ベス
「どういう事なんだ? シェリルさんよ!」
シェリル
「分からないって言ってるでしょ。まだ調査中で……」
べス
「調査中、調査中……か!」
カーシャ
「また動き出した! このシステムは……」
研究員
「見ろ、あのロボット」
 〃
「分離しているぞ。我々の付けたサブ・コントロール・システムで動くのか」
コスモ
「このままじゃぶつかる! 逆噴射ロケットでもないと……」
ベス
「ま、まただ……」
シェリル
「このメカが変形していくんです」
ベス
「えぇ?」
「おい、軍とは連絡取れなかったのか?」
軍人
「あぁ、とても電波妨害が酷くてな……」
ベス
「シェリルさん、あんたの専門は?」
シェリル
「言語学です」
べス
「フンッ! 技術者を呼ぶんだ! このメカを調べさせろ!」
「資料は提供してくれるんだろうな?」
シェリル
「やむを得ないわね」
ベス
「ふん、こっちは訳の分からん敵とも戦わにゃならんのだぞ?」
ベス
「陸軍はどうした?」
軍人
「直ぐ来る。一体、何が起こったんだ?」
べス
「レーダーで見てなかったのか? 異星人かもしれん敵が襲ってきたんだ」
軍人
「冗談はよしてくれ」
ベス
「本当だ。撃墜したものがある。調べりゃ分かる。俺は他のメカを調べてくる」
軍人
「……異星人だとよ」
 〃
「そういや、酷い電波障害だったな」
ベス
「そこを離れるな」
軍人
「分かりました」
ベス
「煩い猿共め……!」
「うっ! お前は……見慣れない顔だな。今日の第三次移民船で着いた者か?」
「地球じゃ、そんなファッションが流行ってんのか?」
「今、厄介な事が起こってんだ。近付かない方がいい」
「俺はジョーダン・ベス。士官候補生だ。あんた何て名前? 教えてよ」
カララ
「名前……?」
ベス
「そう、いいだろ?」
カララ
「カララ・アジバ。いい男……」
ベス
「ハハッ……こりゃどうも。あんたみたいな美人からそう言われるのは嬉しいが、今はデートは出来ないんだ」
「ここを真っ直ぐ行けば、ニューロピアへの近道だ。危ないから帰った方がいいぞ」
「『ありがとう』って言ってさ、帰ってよ。デートは明日しよう」
カララ
「ありがとう、ベス」
ベス
「明日ね!」
「全く、こんな事がなけりゃ……!」
カララ
「……マヤヤめ、主人の私を置いて……」
ギジェ
「この辺りでは、あのロゴ・ダウが最後の星だ。イデが存在すると考えられる星……となれば、カララ様が焦る気持ちはよく分かる」
ダミド
「だからと言って、異星人と接触する事はなかった」
ギジェ
「あぁ」
ダミド
「お前は、カララの親父さんのドバ総司令の引きがあるから、カララ様にも甘い」
「もし、ロゴ・ダウに居る異星人の軍事力が、我々より上だったら?」
ギジェ
「あり得ん、そんな事!」
兵士
「ロゴ・ダウの異星人の数は、極度に少ないようです。巨大な宇宙船の目撃もありますが、恐らく、移民の始められた星と思われます」
ギジェ
「移民星か。戦力は?」
兵士
「無人探査カメラのデータしかありませんが、無いに等しいかと」
ダミド
「何?」
ギジェ
「私は出動する。カララ様の安否だけでも確認しなければならん」
ダミド
「それがいい。ドバ様に対しての、貴様の面子もあろうからな」
ギジェ
「ダミド! 俺は、自分の野心の為にカララ様を救いたいのではない!」
ダミド
「あぁ。カララ様にもしもの事があれば、私も責任は免れんな」
ギジェ
「そういう事だ」
デク
「コスモ、今度は車になってるぜ!」
コスモ
「だろ?」
デク
「動かないの?」
コスモ
「今、配線直してるよ」
ベス
「お前が動かしてたのか?」
デク
「コスモが運転したんだぞ!」
シェリル
「そんな……」
ベス
「またお前か。本当に運転したのか?」
コスモ
「したつもりさ」
ベス
「これも、第六文明人の遺跡というのかね?」
シェリル
「えぇ。コスモ君、貴方が?」
コスモ
「あぁ、でもよく動いたと思うよ。あれが点いてさ」
ベス
「イデオンのゲージ……そう言っていたな?」
シェリル
「ギリシャ文字風のパターンで、そう読めないこともないって事」
コスモ
「じゃあさ、巨大ロボットになった時の名前じゃないの? イデオンってさ」
ベス
「そうかな?」
シェリル
「遺跡に遺された第六文明人の言葉の中に『イデオン』って出てくるけど、本当の意味はまだ……」
ベス
「言語学者の卵ともあろうお方が、この半年、何を調べてたんですかね?」
「ジョリバ! 後は任せる!」
ジョリバ
「おう。シェリルさんから設計図のコピーは貰った」
ベス
「3台共、かなりのスペースがある。武器を取り付けさせろ」
コスモ
「ヘッ! 軍人め!」
シェリル
「私達の基礎調査がなければ、何も出来ない癖に……!」
兵士
「コポラ1号、2号、3号、発進位置へ急げ! 第2ハッチ、スタンバイ急げ!」
ギジェ
「デッカ・バウには円形陣を取らせろ!」
「イデ捜索が厄介な事になったものだ……」
おばさん
「さっきの爆音、何かしらね?」
ロッタ
「ジャングルの開拓でしょう」
おばさん
「見慣れない飛行機も飛んでいたみたいだけど……」
ロッタ
「第三次移民船のですよ」
おばさん
「あぁ、ごめんなさい」
リン
「いいえ。ルゥ、熱いから触っちゃ駄目よ?」
ルゥ
「シチュー!」
おばさん
「ルゥのはあるでしょ? ほら」
ルゥ
「まんま!」
おばさん
「ルゥ!」
リン
「フフッ……お昼よ、集まれ!」
ロッタ
「お食事ですよ!」
「バイパー・ルゥ、どうしたの? ご機嫌が良くないのね」
おばさん
「こんな事ないのに……」
ルゥ
「まんま……」
リン
「はい。じゃあ、みんなと一緒ね?」
ルゥ
「まんま!」
おばさん
「どうしたの、ルゥ? 落ち着かないのね」
「お口の周り、カンカンよ」
ロッタ
「爪の間の土も取るのよ?」
アーシュラ
「はい」
ロッタ
「ん? 何のサイレンかしら?」
管制官
「妨害電波が発生している! カービアンは警戒態勢! 移民団を退避させろ!」
 〃
「移民団は税関へ向かっている。何なんだ? その妨害電波って……」
 〃
「分かってる、慌てはしない」
 〃
「また、軍の演習かな?」
 〃
「何しろ、ソロ星の人間たって5千人しか居ないんだからな。敵国がある訳ない」
ギジェ
「3隊に分かれて攻撃する! 目で確認出来る建造物と兵器は撃破しろ! その後で、カダッカ隊を降下させる!」
「二重施工?」
「追い掛ける事ができるか?」
「フッ、やれるか……!」
ソロ星の軍人
「ニューロピアがやられた?」
 〃
「わぁぁっ!」
リン
「おばさんは?」
おばさん
「ニューロピアの様子を見てくるからね」
「ロッタ、森の中へ逃げるのよ?」
ロッタ
「はい」
おばさん
「あんた達の両親の事を調べてくるから、心配しないでね」
ロッタ
「すいません」
ソロ星の軍人
「しかし、このメカは何でこう隙間が多いんだ?」
 〃
「武器を付けるの忘れてたんだろ。これを造った第六文明人とかがさ」
 〃
「コントロール・パネルの調整は済んだのか?」
 〃
「済んでるって。他のには、グレン・キャノンも積んだっていうぜ」
 〃
「ニューロピアが空襲を受けているんだぞ! 早くロボットにでもなって……」
シェリル
「空襲?」
ソロ星の軍人
「あぁ! ニューロピアの連中は、ジャングルに逃げ込んで右往左往している!」
シェリル
「そう。なら、第二発掘現場に逃げ込んだらいいと思うわ」
ソロ星の軍人
「案内してくれ!」
シェリル
「え? えぇ」
ベス
「ジョリバ、そっちの整備はどうだ?」
ジョリバ
「補助システムだけで変形出来る筈だ」
コスモ
「配線の方は全部終わった筈なんだけど、何でゲージが点かないんだ?」
ジョリバ
「イデオンのゲージとか言ってたな」
コスモ
「うん。でもこの配線、分かると思うか?」
デク
「ロッタ、こっちこっち!」
ロッタ
「デク! そんなのに乗っていいの?」
デク
「軍隊のじゃないもん」
「うわっ!」
「こっちのが頑丈そうだ! 乗れよ、ロッタ!」
ロッタ
「う、うん、そうする! みんな、乗り移って!」
リン
「落ち着いて、ルゥ」
ロッタ
「リン」
リン
「はい」
「あっ!」
ジョリバ
「ゲージが点いた?」
コスモ
「行けるぞ!」
ジョリバ
「大丈夫か?」
コスモ
「さっきは動かしたんだよ!」
「ロッタ、泣かすなよ!」
ロッタ
「ごめん。でも……」
コスモ
「こっちだって、操縦で神経使ってるんだ」
ジョリバ
「座ってなさい。危ないぞ」
「点いた?」
コスモ
「よし、行くぞ!」
「煩いんだよ!」
ロッタ
「大きい声出さないで! 益々怯えちゃうんだから……」
アーシュラ
「飴、あるよ」
リン
「ありがとう。ほら、ルゥ」
ソロ星の軍人
「うわぁっ!」
民間人
「うぅっ!」
おばさん
「あぁっ!」
バッフ・クラン兵
「コポラの残骸、発見! 発光弾、撃ち込みます!」
ギジェ
「発光信号を中心にガダッカを発進させろ! カララ様の捜索を急げ!」
ソロ星の軍人
「やったぜ、お母ちゃん!」
バッフ・クラン兵
「カララ様!」
シェリル
「この森を出た所に避難場所があります! もう少しの辛抱です!」
バッフ・クラン兵
「異星人の乗り物だ。軍隊じゃないのか?」
民間人
「私のママが……」
 〃
「直ぐに追い掛けてくるよ」
 〃
「おぉっ……」
バッフ・クラン兵
「これが異星人か? 俺達と同じじゃねぇか! 参ったな、カララ様があの中に紛れ込んでらっしゃったら……」
ギジェ
「ダミドの言う通り、我々と同じレベルの異星人か」
「うっ!」
ベス
「武器は積み込んだか? 動かすぞ!」
ソロ星の軍人
「あぁ、左右にミサイルは取り付けた! 変形しても大丈夫か?」
ベス
「その為のスペースだ! 大丈夫だと信じるんだな!」
ソロ星の軍人
「へいへい!」
ベス
「発進する!」
ベント
「おい、さっきは本当に動かしたんだろうな?」
カーシャ
「間違いないわ、見てらっしゃい」
コスモ
「動いた!」
「泣かすなよ! 苛ついて上手くいかなかったら、みんな死ぬんだぞ!」
ロッタ
「コスモ……。よしよし」
バッフ・クラン兵
「カララ様は……!」
カララ
「うっ……!」
ソロ星の軍人
「ここまで一人で逃げてきたのか? 乗れよ」
「早くやれよ」
ギジェ
「新手の敵が上昇してくる! 各機、前方の3機に攻撃を集中しろ!」
「しかし、戦闘機には見えないが……」
コスモ
「来るぞ! ミサイルを撃ってくれ! その間にイデオンになって……」
ジョリバ
「しかし、ドッキングする間に……」
コスモ
「このままの状態で、俺に空中戦をやれというんですか?」
ギジェ
「ちっ! 重爆撃機クラスのパワーだというのか!」
コスモ
「わっ!」
ギジェ
「デッカ・バウの機銃が効かない! どういう事だ!」
ベス
「撃て! ミサイル!」
ソロ星の軍人
「やってる!」
カーシャ
「一機撃墜! この調子だと勝てるわ!」
ギジェ
「直撃している筈だぞ! 何故、落ちてくれないんだ!」
コスモ
「わぁっ!」
ギジェ
「一機撃墜!」
「うおっ!」
「ガ、ガダ・タイプのミサイルを受け付けないのか!」
コスモ
「あっ……直撃じゃなかったか?」
「黙らせろ!」
ロッタ
「コスモ、無理言わないでよ。こんな時に怯えない方がどうかしてるわ」
コスモ
「まただ。この後でドッキングして、イデオンになるんだ」
ベス
「ドッキングするのか?」
カーシャ
「見て! 前の2機がドッキングするわ!」
ベント
「各砲座、援護しろ!」
ソロ星の軍人
「お、おい! 前が見えなくなっちまったぞ!」
カーシャ
「私達も行くわ!」
ベント
「ドッキングしたのか? 正面のモニターは変わらんぞ!」
カーシャ
「何か知らないけど、よく出来てるのよ、このメカ!」
ギジェ
「巨人になった! あんなメカが、空中で巨人になった!」
バッフ・クラン兵
「異星人共め、俺達を脅かそうってのか!」
コスモ
「来るぞ、撃て! ミサイル、何をやってる!」
「うっ!」
バッフ・クラン兵
「今度こそ直撃だ!」
「な、何だ? 平気なのか? 平気なのか、あの化け物は……!」
コスモ
「上昇するんだ! イデオン、上昇しろ!」
「ルゥを泣かせるな!」
ベス
「メイン・パワーは上がっているのか?」
「カーシャとか言ったな。足のパワーは上がるか?」
カーシャ
「上げているわ。コントロール宜しく!」
ベス
「よし!」
カーシャ
「コスモ、行くわよ!」
コスモ
「行けっ!」
バッフ・クラン兵
「うわっ、来る!」
ギジェ
「逃げろ! お前が狙われている!」
コスモ
「こいつ!」
ギジェ
「あっ……!」
「何という事だ。イデ捜索のロゴ・ダウで、異星人の巨人と出会うとは……」
「まさか、イデの巨神では……?」
「ち、違う! あんな機械的な物が、イデの伝説の巨神であってたまるものか!」
「各機、私に付いてこい!」
コスモ
「カーシャ、パワーは上がらないのか? 逃げるぞ!」
ジョリバ
「ミサイル、撃てないのか? ミサイルは?」
ベス
「駄目だ! ミサイルを変な所に取り付けたらしい! ドッキングしたら撃てないってよ!」
カーシャ
「イデオンのゲージを見て! パワーが落ちてるみたい!」
コスモ
「何?」
「逃がしちまった。せっかくやっつけられると思ったのに……」
「バイパー・ルゥを泣かせるから!」
ロッタ
「やめて、ルゥ。くすぐったいでしょ?」
コスモ
「何だい、もう機嫌直してるのか」
「ん?」
カーシャ
「お、降りてくわ!」
ベント
「な、何とかなります!」
コスモ
「みんなが避難した、第二発掘現場……」
シェリル
「敵をやっつけてくれたのかしら?」
ソロ星の軍人
「いや、逃げられたらしい」
シェリル
「そう……」
「あっ! また離れていく……」
「という事は、この第二発掘現場に埋まっていたメカと、このイデオンってロボット、関係あるんじゃないかしら」
「そうよ、きっと!」
ソロ星の軍人
「空襲は終わったかね?」
シェリル
「……この甲板みたいな物の大きさ、あのロボットを置ける大きさじゃないかしら」