第5話 無限力・イデ伝説

前回のあらすじ
第六文明人の宇宙船が閃光を発した。その輝きは大地を溶かし、海の潮を蒸発させていった。
宇宙船は、デス・ドライブ……即ち、亜空間飛行へと突入した。
シェリル
「亜空間ドライブ? この宇宙船が、亜空間ドライブを?」
ジョリバ
「メイン・エンジンが、いつの間にか正常運転をしている」
「機関室! 勝手に始動させたんじゃないだろうな?」
ソロ星の軍人
「そっちで動かしたんじゃないのか?」
ジョリバ
「この宇宙船が、ソロ星からいきなりデス・ドライブに入っちまったんだ!」
コスモ
「あれ? ハッチが丸っきり変わっちまってる」
ソロ星の軍人
「デス・ドライブに入ったんだとよ……」
 〃
「えぇ? イデオンは上甲板にセットされているんだろ?」
コスモ
「……下は、宇宙船のデッキか?」
コスモ
「デス・ドライブ?」
ベス
「ジョリバ、メイン・エンジンを掛けたのか?」
ジョリバ
「知らん。座標が滅茶滅茶のまま、デス・ドライブに入っちまったんだ!」
ナレーター
デス・ドライブ……亜空間飛行の事である。
光の速度で移動して250万光年掛かる距離も、デス・ドライブを使うと数ヶ月の時間で移動する事ができる。
しかし、亜空間は目で見る事はできない、全く別の空間である。
それは、現実の時間と空間に隣接する別の空間であって、その空間内にEとFとの座標が取れれば、
現実の空間と時間を飛び越えていく事ができる。
ただ、亜空間内でのコースを決める座標の取り方が難しいのだ。
ベス
「座標が取れずにデス・ドライブだと? どこに向かっているのか分からんのか?」
ソロ星の軍人
「うわっ! デス・ドライブが!」
カーシャ
「はっ……デス・ドライブ・ブレーキが!」
アバデデ
「ご苦労だ。予想以上の敵らしいな。早速だが、ギジェ、ダミド。亜空間ドライブの戦闘態勢を取れ」
ギジェ
「はっ!」
バッフ・クラン兵
「アバデデ様」
アバデデ
「何だ?」
バッフ・クラン兵
「亜空間レーダーから、あの異星人の船が消えました!」
アバデデ
「何だと? どこへ消えたのだ?」
バッフ・クラン兵
「突然の事なので、座標を追いきれません! 追跡します!」
ベス
「むっ! ち、地上が見える!」
「着陸体勢を!」
「ん? ソロ星じゃないか、ここは……!」
シェリル
「でも何故? 一度メイン・エンジンが掛かったのなら、システムは完全の筈でしょう?」
ベス
「そうは言えんな。それに今、我々は石油基地のど真ん中にいる。ここを敵に見付かったら火の海に囲まれるわけだ」
「しかし、この宇宙船は我々にコントロール出来る状態じゃない」
シェリル
「やるしかないでしょ? 今生き残っている人達を見殺しには出来ないのよ?」
ベス
「そうさ。それが軍人の役目だと言うんだろ?」
シェリル
「えぇ」
コスモ
「好きに言ってくれるね」
カーシャ
「私は……」
コスモ
「ん?」
カーシャ
「イデオンを使いこなしてみせるわ。女だからって、貴方には負けませんからね!」
コスモ
「……可愛くねぇの」
ロッタ
「えぇ? また、おっぱいが欲しいの? 飲んだばかりでしょ?」
「ルゥったら……」
ルゥ
「うぅっ……違う!」
アバデデ
「え? 異星人は亜空間飛行に失敗しただと?」
ギジェ
「はっ! しかも、異星人は元の星に不時着したようです」
アバデデ
「そうか。よし、すぐさま攻撃を掛けろ!」
ギジェ
「しかし、カララ様の存在が、まだ……」
アバデデ
「いや、攻撃は見せ掛けだ。その隙にギジェは異星人の船に潜り込んで、カララ様を救出しろ」
ギジェ
「はっ!」
ギジェ
「よし、行け!」
ソロ星の軍人
「よし、上げろ!」
 〃
「オーライ!」
アーシュラ
「ルゥ、待ってったら!」
ベス
「子供は降りちゃ駄目だと言った筈だぞ?」
アーシュラ
「だって、ルゥが……」
ソロ星の軍人
「うっ! 来たぞ!」
 〃
「あぁっ……!」
カーシャ
「あっ、修理を急いで! 敵が来たわよ!」
ベント
「装甲の研精は終わった。後はカーシャの方で壊さないように使ってくれればいい」
「おい、応戦に回れ!」
カーシャ
「エンジン・コントロールの……」
「あっ!」
ベス
「何をしてるか! 弾幕を張れ!」
カーシャ
「まだ、コントロールの調整が終わっていないのよ!」
ベス
「コスモと俺で、何とかする! カーシャはイデオンのミサイルを……!」
カーシャ
「はい!」
コスモ
「ようし、電気系統はOKだ!」
「うぅ……あっ!」
「立った?」
「ベスさんか? 勝手にイデオンを立たせたのは……!」
カーシャ
「テストよ! イデオンのバランサーの……」
コスモ
「敵の攻撃が始まってるっていうのに、何をやってる!」
カーシャ
「私に命令する権利がコスモにあって?」
「キャッ!」
コスモ
「あ、あそこか!」
「ミサイル! グレン・キャノン、何をやってる!」
ベス
「後ろだ!」
コスモ
「うっ……!」
「バランスの調整が……出来てないじゃないか!」
カーシャ
「メカニックマンに言ってよ!」
テクノ
「遅れてすいません!」
カーシャ
「8番、ミサイル!」
テクノ
「こいつら!」
シェリル
「イデオンはどうして発進しないんです?」
ジョリバ
「足のバランサーの修理が十分でないようで、立てないらしい!」
シェリル
「これでは、この船までやられてしまう……!」
コスモ、ベス
「うぅっ!」
カーシャ
「キャッ!」
コスモ
「うおっ!」
カーシャ
「キャーッ!」
べス
「うわっ……!」
コスモ
「こいつ!」
「敵は……!」
「んっ?」
「引き上げる……」
カーシャ
「何もしない内に……」
ベス
「お前達の内輪喧嘩に呆れたんじゃないのかな。敵さんはさ」
ギジェ
「上手くやったようだな、攻撃隊は」
ナロブ
「我々の着陸には気付かなかったようですな」
ギジェ
「急ぐぞ」
ナロブ
「はい」
シェリル
「言い訳は聞きたくないわ」
ソロ星の軍人
「自分は……」
シェリル
「あっ……す、すいません」
「コンピュータを繋げてくださればいいんです」
カララ
「ギ、ギジェ……!」
ギジェ
「お迎えに参りました。マヤヤは?」
カララ
「この船を調べさせています」
ギジェ
「ここは危険です。母船にお戻りください」
カララ
「まだ、イデの事を調べきっておりません」
ギジェ
「それは、我々の仕事です」
カララ
「この異星人は、あの巨人を『イデオン』と呼んでいるのですよ?」
ギジェ
「イデオン……?」
カララ
「それでも、この船と巨人の事を……」
ギジェ
「それは私が調べます。さぁ!」
「どうなさったのです、カララ様」
カララ
「この宇宙船はイデによって動くようです。それに私は、彼等を知りたい……」
ギジェ
「お戯れを……」
シェリル
「手を上げて!」
カララ
「はっ……!」
シェリル
「やはり、貴方は異星人のスパイだったのね」
「許しません!」
「あっ!」
ギジェ
「女性は殺したくないが、やむを得ん!」
ジョリバ
「この野郎!」
シェリル
「……貴方、どこの星のスパイなの?」
ナロブ
「ギジェ様!」
ジョリバ
「仲間か!」
「わっ!」
ナロブ
「大丈夫でございますか?」
ギジェ
「案ずるな、爺」
「カララ様はいらっしゃったぞ」
「アバデデ様に連絡をしてくれ。私はカララ様を助け出す」
ソロ星の軍人
「……いい女じゃないか」
 〃
「本当に異星人なのかい?」
ベス
「まず、君の名前を名乗りたまえ」
カララ
「カララ・アジバ」
ベス
「君はどこから来たんだ?」
カララ
「地球。正確にはバッフ星」
ベス
「何故、この星を攻撃する?」
カララ
「貴方がたを、危険な異星人だと考えたからでしょう」
ソロ星の軍人
「俺達が危険だと?」
カララ
「私が異星人だと分かった時から、貴方は私を危険な女だと思ったのと同じ……」
ソロ星の軍人
「そ、そりゃ……」
カララ
「私達は『イデ』を捜していたのです」
ベス
「イデ?」
シェリル
「イデとは何ですか?」
シェリル
「イデは無限の力を持つ者……」
ロッタ
「異星人よ! ここにも!」
マヤヤ
「カララ様!」
「カララ様は……カララ様は、バッフ・クラン総司令のお嬢様です!」
「お嬢様にもしもの事があったら、皆さんは仕返しを受けますよ!」
ロッタ
「何を言ってるの? 初めに攻撃をしてきたのは、貴方達でしょ!」
ベス
「今は、この二人の異星人の処分をどうするか決めるのが先だ」
ソロ星の軍人
「襲撃だ!」
ベス
「民間人は宇宙船に避難しろ! 行くぞ!」
ソロ星の軍人
「わぁっ!」
シェリル
「あっ……!」
カララ
「ギジェ! 貴方は戻ったのでは……?」
ギジェ
「見せ掛けです!」
ソロ星の軍人
「居たぞ! こっちだ!」
ギジェ
「カララ様、ここはあの巨人を奪って逃げます!」
ベス
「あっ……!」
ソロ星の軍人
「うわっ!」
 〃
「急げ、敵襲だってよ!」
カララ
「ギジェ、こんな事で逃げられるのですか?」
ギジェ
「まさか、中に入って逃げようなどとは思わぬものです! そこに付け入る隙があります!」
コスモ
「この、敵が来るってのに……」
「よいしょ……うっ!」
「何だ?」
「お、おい!」
ギジェ
「我々のメカニズムと似たようなものだな」
コスモ
「あっ、何をするんだ!」
「くっ……!」
ギジェ
「マヤヤ、頼む!」
「な、何故だ! 何故動かん!」
カララ
「ギジェ……!」
コスモ
「ヘッ、イデオンがそう簡単に動かせると思ったら大間違いだぜ!」
ベス
「ようし、そこまでだ!」
ギジェ
「くっ……!」
ベス
「……で、バッフ星という地球はどこにあるんだ?」
ギジェ
「タブロ・ブロア・ラカ……と言っても分からんだろうし、話す訳にもいかんな」
「母星の位置を異星人に知らせて、侵略されたくない」
ベス
「我々地球人は、平和を願う人種だ」
ギジェ
「では何故、あのように力のある巨人を持っているのだ?」
ベス
「あれは第六文明人の遺跡だ。我々の物ではない」
シェリル
「私達は、今までに5回、異星人と思われる生物と接触しました」
ギジェ
「成程。巨人の遺跡は、第6番目に出会った文明という訳か。なら我々は、第七文明人という訳だな」
ベス
「で……さっき、カララさんの言った『イデ』……無限エネルギーの事を我々に教えてもらいたいもんだな」
カララ
「イデの伝説は教えましょう。それは、私達バッフ・クランの古い言い伝えです」
「昔、バッフ星を治めていた女王が凶悪な怪獣に攫われた時……」
「世の中の光が消え、緑は荒れ、バッフ族は全滅寸前まで追いやられたという事です」
「そんな時、その怪獣に立ち向かっていった凛々しい英雄がありました」
「怪獣の力の前では、その英雄の力では敵うべくもありませんでした」
「イデの力を持つ果物によって、英雄は女王を自分の物にしました」
「そして二人は、平和にバッフ星を治めたという事です」
コスモ
「ハハッ……馬鹿みたいな話! そんな事でロケットを飛ばしてさ!」
「その挙句の果てに、俺達に攻撃を仕掛けて人殺しだ! 冗談じゃないよ!」
ギジェ
「伝説を裏付ける事実が我々の地球には遺っていたのだ。新しいエネルギーとしてのイデの存在を証明するものがな」
ベス
「嘘だ! そんな馬鹿げた事を信じて、我々を滅ぼそうとする! 許せん!」
ギジェ
「うわっ!」
「貴様……侍の頬を打つという事が、どんな事か分かっているのか!」
ベス
「夢のような話に振り回される貴様らが、何を言うか!」
カララ
「イデの話は出鱈目ではないと信じます。第六文明人の遺していった遺跡の中に、イデオンがあったという事は……」
ギジェ
「イデオン……。その調査資料を見せてもらいたいものだな、シェリルさん」
シェリル
「見せて欲しければ、私達を皆殺しにしてからお調べなさい」
カーシャ
「そうよ! 貴方がたは、何千人の人を殺したと思っているの?」
ギジェ
「貴様らは……子供までが好戦的な種族なのだな!」
アバデデ
「迂闊者のギジェめ、一人で何が出来るというのだ? ん?」
ダミド
「私にお任せを!」
アバデデ
「何?」
ダミド
「はっ! 最も被害の出易い所に攻撃を加え、敵に恐怖心を起こさせます。その上で、カララ様を交換します」
アバデデ
「ふむ」
ダミド
「平和的解決と見せ掛ける訳ですな」
アバデデ
「よし、任せる」
ベス
「何? 宇宙船の周りに空襲?」
ソロ星の軍人
「こっちに直撃を掛けないんだぜ?」
ベス
「奴等を監禁しておけ!」
ソロ星の軍人
「はい!」
 〃
「さぁ、立て!」
ギジェ
「……んっ?」
ソロ星の軍人
「え? ……わっ!」
ギジェ
「フフッ……メンタリティは我々と似たようなものだな。同じ反応を示してくれる」
「さっ、カララ様!」
カララ
「ギ、ギジェ……!」
コスモ
「各ミサイル、グレン・キャノン、いいのか? 行くぞ!」
ダミド
「巨人には離れて攻撃を掛ける! 近付いて餌食になるなよ!」
コスモ
「どういうんだ? ゲージが上がらないぞ」
「あぁっ! こいつ!」
バッフ・クラン兵
「うわぁぁっ!」
ギジェ
「カララ様!」
ソロ星の軍人
「居たぞ!」
ギジェ
「んっ!」
カララ
「オレンジ信号弾はお持ちかい?」
マヤヤ
「は、はい。でも……」
カララ
「ここの異星人と戦う事はない。協力すべきだと思います」
マヤヤ
「カララ様……」
カーシャ
「コスモ、後ろ!」
マヤヤ
「お嬢様、ここで……」
カララ
「いけません。もっと前で……」
マヤヤ
「お下がりください!」
カララ
「はっ……!」
マヤヤ
「キャーッ!」
ベス
「あっ……!」
カララ
「マヤヤ、信号弾を!」
マヤヤ
「はい!」
コスモ
「何だ?」
ダミド
「何? 無条件停戦だと? 無条件停戦……」
コスモ
「んっ?」
カーシャ
「引き上げていく……」
ベス
「今の信号でか?」
カララ
「行ってくれた……」
「ギジェは?」
マヤヤ
「カララ様」
カララ
「何か?」
マヤヤ
「これで宜しいのですか? 本当に……」
カララ
「同じ知性を持った者同士です。必ず理解し合える筈です」
コスモ
「あの女、一体どういうつもりで戦いを……」