第8話 対決・大砂塵

前回のあらすじ
バッフ・クランのギジェは、重機動メカ『ギラン・ドウ』でソロ・シップに仕掛けてきた。
亜空間での戦闘……つまりデス・ファイトは、不利とみたベスの命令によって
ソロ・シップはデス・ドライブを停止して、ギジェとアバデデの攻撃から脱出する事に成功した。
しかしそこには、見知らぬ惑星があった。
バッフ・クラン兵
「クラム・ザン、キャッチ。座標SSアーム。要候」
「減速良好。カウント・ダウン、30です」
ギジェ
「ハルル様と連絡が取れたのですか?」
アバデデ
「うむ。ハルル様は増援部隊を率いて、こちらへ向かう準備に入られたそうだ」
ダミド
「それは……」
ギジェ
「お願いがあります」
アバデデ
「何だ?」
ギジェ
「このガタマン・ザンの亜空間センサーとアバデデ様の指揮がなければ、我々はあの異星人の船をここまで追う事は出来ませんでした」
「せっかく作っていただいたチャンスを、取り逃がす訳には参りません」
アバデデ
「今焦る事はないと思うが?」
ギジェ
「ハルル様を迎えるという事は、私の敗北を認める事になります。このままでは侍としての面目が立ちません」
ダミド
「侍だと? 今のお前が口に出来る言葉とは思えなかったがな」
ギジェ
「ダミド……!」
アバデデ
「ギジェ、お前らしい所が気に入ったよ。しかし、ハルル隊の為のビーコン設定もある。単独行動となるがいいのか?」
ギジェ
「はっ!」
ダミド
「アバデデ様……!」
アバデデ
「重機動メカ『ドグ・マック』を貸そう。ダミドは援護をな」
アーシュラ
「ねぇ、やらせて?」
デク
「触ると火傷するぞ?」
アーシュラ
「面白いもん」
デク
「あ、コスモ」
アーシュラ
「兄ちゃん!」
デク
「落ちる!」
アーシュラ
「兄ちゃん、ずっと遊んでないよ。遊ぼう!」
コスモ
「子供は邪魔だよ。ドームの林にでも行ってな」
アーシュラ
「兄ちゃんは子供じゃないの?」
コスモ
「ンッ……アーシュラ!」
ベント
「イデオンの4台分もあるのか?」
テクノ
「あぁ、ソロ・シップの中にあった」
ベント
「当分戦えるって訳だな」
コスモ
「本当なの、テクノさん?」
テクノ
「あぁ、イデオンの部品だがな。しかし……」
ベント
「早いとこ、イデオンの金属をコピーできるようにチームを作らにゃな」
コスモ
「頼むよ。イデオンを扱うのは何とかなるけど、そういうのは全く駄目だからさ」
カーシャ
「ふん、パイロットの方もどうだか」
コスモ
「お前はどうなんだ?」
カーシャ
「ノルマはやっているわ」
シェリル
「貴方! この船の中を歩き回っていいと誰が許可しましたか?」
カララ
「別に閉じ込められもしなかったので、出ました」
シェリル
「警備兵!」
ソロ星の軍人
「はい!」
シェリル
「この女を、メイン・ブリッジの後ろの林から一歩も出さないように」
ソロ星の軍人
「はい! さぁ……」
アーシュラ
「……怖いんだ」
デク
「敵の女なんだぞ?」
シェリル
「その二人! 何故ここに居る?」
「子供がこんな所に居てはいけないでしょ?」
アーシュラ
「怖い……!」
アーシュラ
「ファードは?」
デク
「やっぱり来ないってさ。あんなキリキリしている所によく居られるよ、ファードの奴……」
アーシュラ
「行こ、行こ! 探検!」
デク
「うん!」
リン
「ルゥったら! キレイキレイするの!」
ロッタ
「リン。デクとアーシュラを知らない?」
リン
「さぁ……」
「あっ!」
ロッタ
「本当に……どこに行ったのかしら」
リン
「好奇心いっぱいなんですもの。ソロ・シップの中、ウロウロしているんでしょ?」
「さぁ、いい子ね。キレイキレイ」
ロッタ
「はっ、好奇心……」
デク
「これじゃ、方向が分からなくなっちゃうぜ? 道に迷わない内に戻ろうか」
アーシュラ
「だらしないの! 私達、探検に来たんでしょ?」
デク
「うん……。でもね、そういう訳にはいかないんじゃない?」
デク、アーシュラ
「あっ!」
アーシュラ
「恐竜……恐竜!」
デク
「恐竜だ!」
アーシュラ
「行っちゃう!」
デク
「よ、よせよ! よせってば!」
「よせ、アーシュラ! おいっ!」
バッフ・クラン兵
「ドグ・マックを中心にダミド隊が援護に付く。発進スタンバイ、第3ハッチ開け!」
 〃
「ドグ・マック、発進! 3・2・1・0!」
ダミド
「俺も見縊られたものだな。これでは、ギジェ一人を引き立たせる為のものではないか」
ロッタ
「デク! アーシュラ!」
ベス
「どうした、ロッタ?」
ロッタ
「デクとアーシュラ、こっちへ来なかった?」
ベス
「知らんな」
ロッタ
「シェリルさん、二人を知りませんか?」
シェリル
「知らないわ。30分前には見たけどね」
ロッタ
「じゃあ、ファードの言う通りだわ……」
コスモ
「……もうこんな所に潜んのは嫌だぜ?」
ベス
「体が小さいんだから文句言うな」
コスモ
「ロッタ、どうしたんだ?」
ロッタ
「デクとアーシュラが探検に出掛けたらしいの」
コスモ
「探検? ソロ・シップの外に出たってのか?」
ロッタ
「そう。ファードはデクに口止めされてたらしいんだけど、『この星を見たい』って出てったらしいわ」
コスモ
「よし、捜してくる」
ベス
「カーシャ」
カーシャ
「呼んだ?」
ベス
「コスモの手助けをしてくれ」
カーシャ
「えぇ?」
シェリル
「ソル・アンバーで行く事はないわ」
コスモ
「何言ってんだ。あんたのヒステリーが嫌で、あの二人は出てったのかもしれないんだぞ」
シェリル
「コスモ……」
ロッタ
「私だって、やるべき事はやっているわ。炊事洗濯、掃除に育児、家畜の世話に野菜作り……これ以上、何をやれっていうの?」
カーシャ
「分かったわよ」
シェリル
「ベス、貴方も行くの?」
ベス
「いけないか? メカ整備もした。三人でテスト飛行もしなければならんしな」
「尤も、あのチビ共が好きだって事もあるがね」
シェリル
「こんな時に、子供の一人や二人とソロ・シップを天秤に掛けられる訳ないでしょ?」
カーシャ
「ンッ、操縦桿がまだ本調子じゃないじゃない。こいつ……!」
ベス
「よく来てくれたな、カーシャ」
カーシャ
「フフッ、シェリルやロッタと居るよりはマシだから」
「あっ! ……駄目だわ、ソロ・シップに戻ります」
ベス
「了解」
デク
「あの恐竜、きっと巣に帰るんだぜ。どうしても見たいの?」
アーシュラ
「卵があるかもしれないね!」
デク
「どうしたんだ?」
デク、アーシュラ
「わっ!」
アーシュラ
「あ、見て!」
デク
「わぁっ!」
「あぁっ……!」
アーシュラ
「あ、恐竜の赤ちゃんがいる!」
デク
「危ないぞ!」
アーシュラ
「いらっしゃい、ほらほら……」
デク
「アーシュラ……!」
「ほらアーシュラ、逃げるんだ!」
アーシュラ
「だって可愛いんだもん!」
デク
「でもね……!」
「来た!」
「アーシュラ!」
「わっ!」
アーシュラ
「来る!」
「兄ちゃん……わぁぁっ!」
コスモ
「もう少し下がれ。危ないぞ」
デク
「来なくたっていいのにさ」
コスモ
「ん、何だ?」
「デク、お前達は岩陰に隠れろ!」
デク
「あぁ! アーシュラ!」
アーシュラ
「うん!」
デク
「あぁっ……!」
コスモ
「ンッ……こういう風に空中停止させるのって、神業なのよね」
デク
「ふぅ」
アーシュラ
「行った……」
デク
「どういう事?」
コスモ
「何かあるぞ、あそこに」
「やっぱり……!」
「ンッ、何だ?」
「バ、バッフ・クランのメカか!」
「仕掛けてこないんなら、行くぜ!」
「うっ!」
デク、アーシュラ
「あっ……!」
「うわぁぁっ!」
「わぁっ……!」
アーシュラ
「捕まった!」
ギジェ
「ようし、捕えた!」
「そこの異星人に告げる! やむを得ず人質を取った!」
コスモ
「しまった。デクとアーシュラが捕まった」
ギジェ
「我がバッフ・クランは侍であれば、一対一の決闘を最も尊いものとする!」
コスモ
「侍?」
ギジェ
「貴校が侍ならば、一騎打ちに応じて全ての決着を付けたい!」
コスモ
「全ての決着を付ける……」
ダミド
「人質か……ギジェめ、よく見ている。異星人が決闘に応じたら、各機待機!」
ビラス
「はっ!」
ダミド
「ほう、異星人め。応じるようだ」
デク、アーシュラ
「うわぁぁっ!」
アーシュラ
「落ちるゥ……!」
デク、アーシュラ
「うわっ!」
デク
「うっ……!」
コスモ
「俺の方が決闘に勝ったら、ソロ・シップの攻撃をやめてくれるのか?」
ギジェ
「いや、断る。子供が相手では話にならん」
コスモ
「くそ、俺の星では俺は立派な大人だ!」
「くそ! ンッ……」
「この……!」
ギジェ
「やめないか、子供!」
コスモ
「くそ、やめるか!」
ギジェ
「ええい!」
コスモ
「貴様達は、ただ異星人だからって俺達を襲って、そのお陰で俺は両親を殺されたんだぞ! それを黙ってろっていうのか!」
ギジェ
「一方的な言い草だな。被害を受けているのは我々の方だ。何故抵抗する?」
コスモ
「何だと?」
「くっ……!」
「貴様達が来なけりゃ、戦いはしない!」
ギジェ
「分かった。あの巨人とカララ様を返してくれるのなら我々は引き上げよう。ベスとかいう男に伝えろ」
コスモ
「よく言うよ! そんな事、出来る訳ないだろ!」
ベス
「ん? コスモが敵と決闘か!」
シェリル
「決闘? 何?」
ベス
「バッフ・クランとコスモが決闘中だ!」
シェリル
「決闘? どういう事なの?」
ベス
「分からん! カーシャに発進させてくれ!」
「戦闘機も巨大メカも居るんだが、静かなんだ」
コスモ
「ンッ、くそ!」
ギジェ
「てぇい!」
コスモ
「あっ……」
ギジェ
「タァッ!」
コスモ
「うぐっ!」
アーシュラ
「兄ちゃん!」
デク
「コスモ!」
コスモ
「うっ……!」
ギジェ
「これが何か分かるか? レーザー剣だ!」
コスモ
「し、知ってる……! 人思いにやってくれるんなら、苦しまなくて済むから……!」
ギジェ
「可愛くないな。勝負は付いたのだ。助けてくれと言えば助けてやる」
コスモ
「うっ……」
ギジェ
「可愛くない少年だ。侍なら潔くするものだぞ!」
「ん? お前は下がっていろ」
コスモ
「何?」
ギジェ
「誰が乗っている?」
コスモ
「ベス……!」
ギジェ
「決闘用のレーザー剣だ、拾え!」
ベス
「バッフ・クランでは、決闘の名誉は何よりも重いらしいな」
ギジェ
「そうだ」
ベス
「条件は付くのか?」
ギジェ
「私が勝てば、諸君の宇宙船と巨人を頂く。諸君がこの星で暮らすだけの物は置いてゆこう」
ベス
「君が負ければ……?」
ギジェ
「私が負けるか。フフッ……諸君を追うのはやめよう」
「まぁ、カララ様は返して欲しい。ダミドという男に預けてくれ」
ダミド
「ギジェめ……異星人共に、我ら侍の礼儀が通じると思っているのか?」
ベス
「了解した」
「ンッ!」
ギジェ
「ンンッ……!」
コスモ
「あいつ、本当に約束通り……」
ギジェ
「トァァッ!」
ベス
「フンッ!」
ダミド
「3台目か……」
「ビラス、各機に移動命令を!」
ビラス
「はっ……?」
ダミド
「巨人のメカがこちらに集結したんだぞ。異星人の宇宙船を叩くチャンスだ」
ビラス
「いやしかし、ギジェ様の一騎打ちは……」
ダミド
「相手は異星人だ。約束を守るとは限らん」
ビラス
「あっ、そうでありました」
ダミド
「各機、異星人の宇宙船を攻撃する! エンジンを集中攻撃する事を忘れるな!」
コスモ
「何だ? 急に……!」
ギジェ
「ダミド!」
「うっ……うぉっ!」
ベス
「軍を引き上げさせる約束を果たしてもらおうか!」
ギジェ
「い、今のが勝負だと?」
ベス
「貴様は侍だろう! 侍に二言はない筈だ!」
ギジェ
「目付けがいなくては勝負は決められん!」
デク、アーシュラ
「うわぁぁっ!」
ナロブ
「ギジェ様をお放ししろ! しないと、この子供達を……!」
コスモ
「汚いぞ! 約束が違う!」
ベス
「これが侍のやる事か!」
ギジェ
「ナロブは私の部下だ。侍ではない!」
ナロブ
「ギジェ様を帰さぬのか!」
アーシュラ
「苦しいよぉ!」
ベス
「……行け!」
ギジェ
「やり方が違うのだ、異星人共め!」
コスモ
「何が侍だ!」
アーシュラ
「ベーッ、だ!」
ギジェ
「ダミドはどうしたのだ!」
ナロブ
「分かりません。突然で……」
ギジェ
「上手く行きかけていたものを……!」
ナロブ
「絶好のチャンスです。攻撃を掛けます!」
ギジェ
「これ以上恥を掻かせるな!」
ナロブ
「はっ……!」
ギジェ
「私は今、ダミドのお陰で恥を掻いてきたのだぞ! 異星人共が戦いの準備が出来るまでは待ってやれ!」
カーシャ
「敵は攻撃してこないけど、どういう事?」
コスモ
「知るか!」
ベス
「奴の意地だな。こっちが戦えるのを待ってる」
コスモ
「異星人がそんな事すんのか?」
ベス
「知らん!」
カーシャ
「わざわざ待ってくれるなんて、どういう敵なの?」
コスモ
「うわっ!」
デク
「わっ! ドッキングしないの、コスモ?」
コスモ
「カーシャ、ベス、上昇出来ないか?」
ベス
「よし、この間に上昇。ドッキングする!」
カーシャ
「了解!」
ダミド
「よく狙えよ!」
ソロ星の軍人
「わぁっ!」
 〃
「わぁぁっ!」
シェリル
「対空砲を!」
ジョリバ
「手が遅いぞ!」
シェリル
「たかが子供二人の為に、ソロ・シップは無防備になってしまって……」
「あっ!」
ロッタ
「キャーッ!」
ソロ星の軍人
「あぁぁっ!」
ベス
「何? ソロ・シップが……」
カーシャ
「早く戦いの決着を付けないと……!」
コスモ
「ソロ・シップが危ない!」
ギジェ
「逃げるのか?」
コスモ
「突っ込むぞ!」
コスモ、デク
「うぅ、ぁっ……!」
ギジェ
「ん? 剥がれた!」
「異星人の巨人め……!」
デク
「あ、あいつが!」
カーシャ
「ベス、コスモ、あの男を踏み潰すのよ!」
デク
「コスモ、やんないのかよ?」
カーシャ
「どうしたの? 二人共、ねぇ!」
「私がやるわ!」
コスモ
「やめろぉ!」
ベス
「奴は侍だ。踏み潰しちゃならん」
「ソロ・シップの援護に向かう!」
カーシャ
「そんな! せっかくのチャンスなのに!」
ダミド
「ギ、ギジェめ! あの巨人を叩けなかったのか?」
コスモ
「デク、もう自分勝手に外に出るなよ」
デク
「あぁ……」
ベス
「アーシュラ、偉かったよ」
アーシュラ
「うん……」
ベス
「さ、行こう」
「フッ……よしよし。さ、もう泣くんじゃないぞ」
カーシャ
「ベス、コスモ、答えてちょうだい! 何故あの時、あの男を逃がしたの?」
「やっつけられる時にやっつけておかないと、いつまたやられるか……」
ベス
「礼儀には礼儀をもって答える……それが侍だ」