第11話 追撃・遺跡の星

前回のあらすじ
クリスタル星に逃げ込んだソロ・シップに、バッフ・クランのアバデデは一人奇襲を掛けた。
巨大な蜂『バジン』を利用したのだ。その攻撃の為にイデオンとソロ・シップは苦しむ。
しかし、怒りに燃えたコスモが投げ付けた一匹のバジンによって、アバデデは重機動メカ『ジグ・マック』と共に散っていった。
再び宇宙空間へ飛び立つソロ・シップ。その後を追うように、カララの姉ハルルがギジェ達と接触しようとしていた。
ダミド
「ハルル様と接触をするポイントだ。覚悟は出来ているのか?」
ギジェ
「生体発信機はもう暫くもつ。奴等は逃げ切れん」
「かといって、それだけでハルル様のお許しを得られよう筈もないがな」
ダミド
「躓きの始めは、全てお前にあるという事……」
ギジェ
「アバデデ様を殺したのも私だ」
ダミド
「それでは、この私はどうなるのだ。お前の出世を当てにして付いてきたのだぞ?」
ギジェ
「ハルル様に取り入って出世するのだな。私の出世はもうない」
ダミド
「そう悲観したものじゃないさ」
バッフ・クラン兵
「ドロワ・ザン、亜空間飛行解除。予定コースに入りました」
ダミド
「ようし、接触用意! ハルル様をお迎えする!」
コスモ
「遺跡らしいものばっかりで、生物なんかどこにも居ないじゃないか」
ベント
「居ない方がいい。迂闊にこの星の侵略者になるよりはな」
コスモ
「逃げ回ってる俺達が侵略者? お〜やだやだ!」
ロッタ
「……今日は朝から泣きっぱなしじゃないの」
「デク、ファード。貴方達も手伝いなさい」
デク
「畑仕事なんてやってられないよ。俺だって忙しいんだ!」
「ファード、お前手伝え!」
ファード
「寂しいの……」
デク
「はぁ?」
カーシャ
「あるのは、ポコポコ穴の空いた岩ばっかり」
テクノ
「後は、シェリルさんに写真を調べてもらうしかないな」
カーシャ
「ミサイルのコントロール・システムの調整はしてくれるんでしょうね?」
テクノ
「あぁ」
シェリル
「こんな遺跡全体の写真じゃなくて、文字らしいものの写真が欲しいのよ。第六文明人の言葉を調べる為にね」
コスモ
「イデオ・デルタで接近して撮るとなると、こんなもんさ。そんなに言うなら自分で行きなよ」
カーシャ
「学術調査の柄じゃないものね、私達」
ハルル
「拘っているのか?」
「ギジェ、拘っているのか?」
ギジェ
「はっ……? いいえ」
ハルル
「それでいい。お前には、私が良い娘を見付けてあげます」
ギジェ
「有難うございます」
ハルル
「ギド・ザンを貸し与える。お前はロゴ・ダウへ戻り、イデの捜索を続けろ」
ギジェ
「は? ……はい!」
ダミド
「お飲み物は?」
ハルル
「余計な気は遣うな」
ダミド
「はっ……」
ハルル
「とにかくも異星人を見たい。軍を出す程のものなのかどうか」
ダミド
「ハルル様が直にご覧下さって判断していただく以外、私にはどうも……」
ハルル
「アバデデの記録は悲観的すぎる。ギジェのは、イデの可能性を持ったものという予想を前提にしすぎる」
ダミド
「巨人の戦力が圧倒的であるという事は……」
ハルル
「その判断は私が付ける!」
ダミド
「はっ! 申し訳ございません」
ハルル
「案内しろ」
ダミド
「はっ!」
ギジェ
「ハルル様、よくよくお気を付けの程を……。見た目のような容易い敵ではありませんぞ」
「亜空間飛行スタンバイ! 目標ロゴ・ダウ!」
ベス
「反物質エンジンは完全にコントロールされているな」
ジョリバ
「あぁ」
カララ
「第六文明人は、私達より大きかったのですね」
ベス
「あぁ、イデの伝説と関係ありそうだ」
ジョリバ
「カララさん、イデの科学的証拠っていうの教えてくださいよ」
カララ
「私の知っている事といえば……」
シェリル
「どういう事? 敵の女をこんな所にまで連れ込んで……!」
ベス
「イデの事を聞いている」
シェリル
「イデオンの研究は私の方でやります!」
カララ
「バッフ・クラン星に大昔から、隕石の落ちたような穴があるんです」
「それが飛んできた方向を探っていくと、ロゴ・ダウ……貴方がたの言う、ソロ星近くであったという訳です」
ジョリバ
「イデの果物って、食べ物として表現されてるんすか?」
カララ
「いえ、輝きの玉とか、二つ目の太陽と云われています」
「それに、悪人にイデを奪われると、守り切れなかった英雄は罰せられて焼き殺され『暗黒を生む』とも云われています」
ジョリバ
「そして、イデの輝きが星になった……」
「意外と救いのないおとぎ話だな」
シェリル
「神話の意味性というものは認めるけど……」
カララ
「もう少し詳しくはお教えできます。皆さんの為に」
シェリル
「ベスの為と言ってくれても我慢するわ」
ベス
「シェリル、口が過ぎるぞ」
コスモ
「あれ? 甲板員の人、あちこち落ちてるもん拾っといてよ。エンジンが吸い込んだりしたら事故の素だぜ」
ソロ星の軍人
「自分で拾っとけ! みんな手一杯なんだ!」
コスモ
「はいはい、よいしょっと」
「とにかく訳の分かんないもんが一杯あるんだよな」
ハタリ
「何やってんだ! 警報出せ!」
「正体不明の小型機が飛んでいる! 対空警戒!」
コスモ
「え? どこだ?」
カーシャ
「小型機?」
ベント
「く、来るぞ!」
コスモ
「とぅっ!」
「何だ?」
「よう、ベスさん。これ何だと思う?」
ベス
「馬鹿が。あんな近い距離でナイフを使う奴があるか」
コスモ
「な、何でさ?」
ベス
「爆発するようなもんなら、お前の命はなかったんだぞ」
カララ
「これなら知っています。リモコンの偵察機です」
コスモ
「バッフ・クランのものかい?」
カララ
「はい」
コスモ
「変じゃないか」
カララ
「そうですね。これはそんなに遠くからでは使えない筈です」
ベス
「追い掛けられていた……?」
カララ
「えぇ」
シェリル
「妙ね」
コスモ
「そうだぜ。この星に着陸する前にも追っ手はいなかった。なぁベスさん」
ベス
「だから何だというんだ?」
コスモ
「その異星人の女さ。何か俺達の知らない方法で、仲間に報せたんじゃないのか? 身体検査した訳じゃないんだろ?」
カララ
「捕虜になった時、一番初めに調べられました」
「シェリルさん」
シェリル
「確かにね」
コスモ
「そんなの! 中にスパイが居て『戦え戦え』たって、やれませんね!」
シェリル
「コスモの言う通りよ」
ベス
「戦闘中のカララさんのアドバイスは、役に立っている」
シェリル
「そんな事でカララを信じろというの?」
カララ
「私は、皆さんのお仲間に入れれば……」
ベス
「しかし、今までの敵とは違うな。偵察機を飛ばしてくるなんて」
シェリル
「この星に慣れていないからでしょ?」
ベス
「が、敵状視察にあんなに近くまで偵察機を飛ばすのは、妙だな。衛星軌道から撮影したもので十分の筈だ」
カララ
「ハルル姉さん……?」
ハルル
「うむ、大分参考になった。しかし、かなり好戦的な種族のようだ」
グハバ
「左様でございますな」
ハルル
「で、どうするか? グハバ」
グハバ
「はっ。ギジェの取り付けた生体発信機の存在に気付いておらん所を見ると、大した事のないかと存じますが」
「ダミドの先導に当たってみましょうか。重機動メカ『ジグ・マック』も試作品であります故」
ハルル
「グハバの指揮下で戦える事、光栄に思えよ。ダミド」
ダミド
「はっ! よしなに」
グハバ
「ワシとて初めての敵だ。上手く誘い出してくれよ」
「ハルル様も前進なさいますか?」
ハルル
「この目で見てみたいな」
ダミド
「グハバ様とハルル様……失敗は許されんぞ、ビラス」
ビラス
「はっ!」
ダミド
「このチャンスこそ、俺がギジェの上に立てる最後のチャンスと見てよい」
ビラス
「はぁしかし、グハバ様はご自分の点数を上げる事が上手な方と伺いますが」
ダミド
「フッ、その裏をかけばよい」
グハバ
「しかし、変な星だと思わんか。人っ子一人居ない」
バッフ・クラン兵
「発見しました! 異星人の船です!」
グハバ
「よし、着地。ダミドに先行させろ」
「ズロウ・ジックは出すな。ハルル様の護衛に回せ」
ダミド
「ん? 巨人のメカがない!」
「巨人は上から来るぞ。ビラスは監視を続けろ!」
ビラス
「はっ!」
グハバ
「巨人が居ないようだが、レーダーの反応はどうなんだ?」
バッフ・クラン兵
「電波撹乱が酷くて……そっちはどうなんだ?」
グハバ
「仕掛けてこないとは、どういう事だ?」
バッフ・クラン兵
「ハルル様は如何致しましょう?」
グハバ
「待機していただけ」
ハルル
「戦艦らしくもない戦艦一隻か。ズロウ・ジックも出させい。一気に始末して、イデの捜索を手伝う方がよいわ」
側近の女
「はっ!」
グハバ
「何? 何故ズロウ・ジックが出るか!」
バッフ・クラン兵
「ハルル様の命令のようです!」
グハバ
「迂闊だぞ……」
コスモ
「知らないぞ。ソロ・シップがやられたって」
モエラ
「敵の数を見ろ。ソロ・シップは自分で守りきれる。本陣を叩けばソロ・シップを攻撃してる暇なんかない」
バッフ・クラン兵
「左、上空11時! 接近するものがある!」
 〃
「対空砲火を!」
ハルル
「何!」
「うっ! 対空監視、何をしておる!」
コスモ
「やったか?」
「駄目だ、もう一度だ!」
グハバ
「ええい、護衛機を置いておかないからこういう事になる!」
ダミド
「ハルル様が……ズロウ・ジックめ、ノコノコ出てくるからこのザマだ!」
モエラ
「奴等、ソロ・シップを諦めたぞ。コスモ、カーシャ!」
コスモ
「了解!」
モエラ
「チッ!」
カーシャ
「落ちちゃえ!」
コスモ
「貰った!」
グハバ
「ズロウ・ジックはハルル様をお守りしろ! 攻撃はワシの手でやる!」
「全く、一度お任せいただいたら口は出さんでもらいたいものだ、ハルル様には……!」
ジョリバ
「ソロ・シップ、損害チェック急げ! ノーマル・エンジン、パワー上げるぞ!」
ベス
「正面、敵艦一隻! 砲撃戦に入る!」
カララ
「ベス、仕掛けない方がいい」
ベス
「何故だ?」
カララ
「ガタマン・ザンが出てきているのに撃とうとしません」
ベス
「そうだな」
カララ
「あの最新鋭戦闘機、ズロウ・ジックの守り方にも気を付けて」
ベス
「ズロウ・ジック?」
「凄いのか?」
カララ
「新式ですから」
ジョリバ
「正面砲撃だ!」
ベス
「やめろ。敵の誘いだ」
ジョリバ
「やっぱりその女の言う事は信用出来ない! 攻撃だ!」
ベス
「後退しろ! ソロ・シップ急速後退だ!」
ジョリバ
「信じるのか?」
カララ
「ジョリバさん、私の姉がこの船を攻撃しているのです。こうなったら私は、皆さんと運命を共にするしかないでしょう」
ジョリバ
「あの船に、あんたの姉さんが?」
ハルル
「逃げるのか? 異星人め……」
「ガタマン・ザン下がれ! ズロウ・ジックに牽制攻撃を!」
カララ
「あぁっ!」
ベス
「急げ!」
ロッタ
「きゃぁっ、ルゥ!」
ダミド
「3機目がやられた。ビラス、追い付けんのか?」
ビラス
「ハルル様が敵艦と……!」
ダミド
「俺達は巨人をやれと命令されている!」
「目晦ましのミサイルか!」
コスモ
「ドッキング・サインが来たぞ!」
カーシャ
「ドッキング軸合わせ!」
モエラ
「よし!」
コスモ
「急速チェンジ! 続いてドッキング!」
グハバ
「ハルル様には、深追いなさるなと伝えろ!」
バッフ・クラン兵
「はっ!」
 〃
「あっ、あれは!」
グハバ
「何!」
「別の敵? い、いや、違うな……!」
「巨人! 巨人になるのか。話には聞いていたが、成程……このジグ・マックが必要な訳よ」
コスモ
「カーシャ、細かいのは任すぞ! イデオンは針路をデカブツに取る!」
カーシャ
「了解!」
コスモ
「奴め、どう来る?」
モエラ
「今までと大きさが違うぞ! 気を付けろ!」
コスモ
「分かってる!」
グハバ
「ふん、所詮は積み木細工みたいなものだろうさ。このジグ・マックのパワーに勝てるもんか!」
コスモ
「避けた!」
「カーシャ、モエラ! 右に攻撃を集中してくれ! 90度ターンする!」
バッフ・クラン兵
「ハルル様、巨人が出現しました!」
ハルル
「よし、巨人が見たい。120度回頭」
「巨人め、どこから現れたのか。三つの機体がドッキングをして、巨人になるという瞬間を見損なった」
ビラス
「無茶です! ハルル様が交戦中の所に割り込むなんて!」
ダミド
「ハルル様がご覧なのだぞ! 巨人に接近してハーケンをぶち込むだけだ!」
「目ならやれる筈だ!」
ビラス
「ダミド様!」
ダミド
「ハルル様に働きを認めてもらわねば、一族郎党、末代まで恥を重ねる!」
カーシャ
「第11ミサイル・ブロック、左後方、上へ!」
コスモ
「パンチを食らわせてやる! 突っ込むぞ!」
モエラ
「左上!」
コスモ
「何!」
ダミド
「ハーケン!」
コスモ
「うわぁぁっ!」
ダミド
「超電磁界を送れ!」
ビラス
「はっ!」
コスモ
「うわっ!」
カーシャ
「あぁっ!」
モエラ
「くそぉっ!」
ダミド
「後続の2機にもやらせろ! 効き目はある!」
コスモ
「コントロールが甘くなった!」
カーシャ
「左上、来るわ!」
コスモ
「またか!」
「やらせるか!」
バッフ・クラン兵
「うわぁっ!」
グハバ
「ええい、邪魔をするな!」
コスモ
「今だ!」
ダミド
「うわっ、巨人め!」
コスモ
「行けぇっ!」
グハバ
「うわぁっ!」
ハルル
「あぁっ、巨人が殴った……! まるで人間のように!」
グハバ
「きょ、巨人め! たかがロボットが……!」
ハルル
「ジグ・マック、ギル・バウ、後退せよ! 見苦しくて見てはおれん!」
コスモ
「レバーのワイヤーが切れたのか?」
モエラ
「コスモ、駄目だ! イデオンの外装もチェックしないと」
コスモ
「このまま見逃すのかよ?」
「くそっ! ただ守りに戻るだけじゃ、俺達は勝てはしないぞ!」
ベス
「そうだ。だからこそソロ・シップで誘き寄せて、一気に叩こうとしたんだ」
「とにかく、初めてのタイプの敵に対して、よく戦ってくれた」
カーシャ
「あと一息で叩けるわ。攻め込みましょうよ」
モエラ
「賛成だな」
カララ
「迂闊です。姉があんな少数の兵力で来る訳がありません」
コスモ
「信じるんですか? バッフ・クランの女性の言う事を」
「シェリルさん」
シェリル
「作戦の事は分からないけど……」
カーシャ
「信じられるものですか。敵の戦力はあんなものよ」
ベス
「戦闘してるメンバーみんなの皮膚感ではどうなんだ?」
ベント
「俺は信じる。新しい部隊がパトロールに来たと見るのが、今日の敵の出方だ」
モエラ
「うむ。俺もそう思う」
コスモ
「俺もだ。シェリルさんはどうなのさ?」
シェリル
「今のカララ・アジバの言葉は信じていいわ。貴方の全部を信じてはいないわよ」
カララ
「えぇ。でも、ありがとうと言わせてください」
ダミド
「んっ……」
ビラス
「あっ、ダミド様……」
ダミド
「どうなんだ? 俺の傷は……」
ビラス
「大丈夫であります。ほんの掠り傷です」
ダミド
「らしいな。ハルル様は?」
ビラス
「ズロウ・ジックを迂闊に動かした事をお認めです」
ダミド
「そうか。あの巨人のお陰で自分の人生を目茶目茶にされるなぞ、俺は我慢ならん!」
グハバ
「ジグ・マックの修理が終わり次第、仕掛けますか?」
ハルル
「しかし、あの巨人のパワーをどう見るか……」
グハバ
「はっ。見掛けだけの事かとも思われますが、あの素早い動き、侮れませんな」
ハルル
「うむ。では任せたぞ」
グハバ
「はっ!」
ハルル
「異星人はあのロボットをイデオンとか呼ぶそうな。イデと余りに言葉の音が似すぎるが」
「宇宙全体を支配するエネルギーか……」