第14話 撃破・ドク戦法

前回のあらすじ
異星人バッフ・クランの軍人、グハバ・ゲバ。
彼の命令に従う新鋭戦闘機ズロウ・ジックと、重機動メカ『ジグ・マック』の攻撃は激しかった。
その攻撃から逃れるコスモ達のソロ・シップとイデオンは、大破しながらも戦い抜いた。
ベス
「コスモ。ベントに装甲板のスペアはないのか聞いてくれ」
コスモ
「了解」
カーシャ
「コスモ、ミサイル配置図できたわ」
コスモ
「あぁ」
「ん、まだミサイル・ランチャー置けるな……」
シェリル
「子供はブリッジに入ってはいけないって言ってるでしょ?」
リン
「ベスさんから食事を頼まれたんです。ベスさんなら食事抜きでやれるというんですか?」
シェリル
「その為に食堂があるんでしょ?」
コスモ
「リン、ハンバーガー待ってたよ!」
リン
「はぁい!」
ハルル
「勝つ自信はあるというのか? ジルバル・ドク」
ジルバル
「重機動メカの開発に関係しておりました私に、作戦の手立てがございます」
「1小隊の重機動メカをお預けくだされば、あの巨人を壊滅してご覧に入れましょう」
ハルル
「ふむ、技術畑上がりのドクの言葉、信じよう」
シェリル
「異星人に追われているソロ星第208方面軍、ソロ・シップです」
ハタリ
「駄目だ。また向こうから通信回路が切れた」
シェリル
「何故こうも遭難している者を無視するの?」
ベス
「信じてくれんからさ」
シェリル
「信じてくれない?」
ベス
「今までの異星人騒ぎといっても、異星人と直接出会った訳じゃないしな」
「異星人に襲われたなんて話、向こうにとっちゃ漫画だと思ってるよ」
シェリル
「でも……!」
ベス
「それより、逆探知されたら……」
ハタリ
「ブラジラー! こちら、第208方面軍、ソロ・シップです! 救援願います!」
ベス
「ブラジラーと連絡が取れたのか」
ハタリ
「あ、あぁ。アンドロメダ軍の最前線基地の一つだ」
「はい。民間人を含めて遭難中です。受け入れてください!」
シェリル
「ベス、捨てる神もあれば拾う神もあるわ。ブラジラーならきっと……」
ベス
「いやしかし……」
シェリル
「こちらは物資も足りないし、ブラジラーの防衛力があるなら……」
ジョリバ
「そうだ。今のバッフ・クランの戦力なら叩けるぞ、ベス!」
コスモ
「ブラジラーへ行くんだって?」
ベス
「ちょ、ちょっと待ってくれ。完全にバッフ・クランを撒いたと分かるまで、今は……」
ソロ星の軍人
「敵影発見! 方位5時! 30秒で戦闘圏内へ入る!」
コスモ
「ソル・アンバー、チェーンジ、イデオ・デルタ!」
バッフ・クラン兵
「1機が発進しました」
ジルバル
「ズロウ・ジック1機、戦闘態勢を!」
コスモ
「各ミサイル、グレン・キャノン、対空戦用意!」
ソロ星の軍人
「グレン・キャノン了解!」
 〃
「第三番ミサイル・ランチャー、了解!」
 〃
「四番ランチャー、了解!」
カーシャ
「モエラ! コスモのイデオ・アンバーが先行しすぎよ。急いで!」
モエラ
「敵の数は分かるか? こっちのレーザーじゃ石っころが邪魔で判別が……」
カーシャ
「近付く以外ないでしょ?」
コスモ
「あれか」
「各員、注意しろ! 数が増えたようだぞ!」
ソロ星の軍人
「援軍が来たのか!」
コスモ
「そんな事分かるか!」
「来るぞ!」
「もっと引き寄せなくっちゃ駄目か!」
「右上から!」
「あぁっ!」
バッフ・クラン兵
「ドク様、更に2機接近するものがあります。巨人の片割れと思われます」
ジルバル
「00をそちらへ回れ! 先頭の1機に近付けるな!」
バッフ・クラン兵
「はっ!」
ジルバル
「ジグ・マック1機で先頭の3機の集中砲火を掛けて、これを撃破する!」
「撃破したらどんな破片でもいい、手に入れろ。巨人の秘密を解く手掛かりになる」
コスモ
「バ、バリアが効いていないのか? 各員、被害状況報せてくれ!」
「グレン・キャノン! どこだ、大丈夫か?」
「どうしたんだ、みんなは? 応答してくれ!」
「わっ!」
「わぁぁっ!」
バッフ・クラン兵
「ドク様、直撃が効いているようです」
ジルバル
「慌てるな。あと10秒間、過粒子砲の攻撃を続けろ!」
「よし、巨人メカを探せ!」
コスモ
「こいつ、こいつ……動いてくれ!」
ジルバル
「生体反応は?」
バッフ・クラン兵
「微かに探知出来ます」
ジルバル
「装甲の損害は見られんようだな」
バッフ・クラン兵
「はい」
コスモ
「え、ええい! あっちこっちがオーバー・ヒートして……!」
「う、ぅっ!」
ジルバル
「中の生体反応が消えるまで、攻撃を続けろ!」
コスモ
「あっ、あぁっ……!」
「誰か、ミサイルを撃ってくれ! 一発でいいんだ、撃ってくれ!」
「モニターが消えた!」
「モニターが全部死んだのか? どういう事だ? パワーも上がらない! 防戦も出来ない!」
「うわーっ!」
「わっ! お終いか? い、幾ら何でも……!」
「うっ、ぅぅっ……!」
バッフ・クラン兵
「別の2機が接近しています」
ジルバル
「ジグ・マック1機をそちらへ向けろ」
バッフ・クラン兵
「敵の船も接近しつつあります」
ジルバル
「ようし、攻撃中止! 敵機を捕獲する!」
バッフ・クラン兵
「はっ!」
ジルバル
「巨人メカを捕獲後、ただちにここを脱出する。急げ!」
コスモ
「あっ、ぁぁっ……!」
「何が……!」
ジルバル
「ようし、行け!」
バッフ・クラン兵
「うわっ!」
ジルバル
「00隊が突破されたのか?」
カーシャ
「はっ! イデオ・デルタが……!」
ジルバル
「巨人のメカを離せ! 敵を迎え撃つ!」
コスモ
「わっ、ぁぁっ……!」
ベス
「ブラジラーの座標は取れるのか?」
ハタリ
「取れる」
ベス
「コスモのイデオ・デルタを救助したら、デス・ドライブを掛ける」
ハタリ
「了解!」
シェリル
「ベス、じゃあ……」
ベス
「あぁ、コスモが先行し過ぎて危険なんだ。応答がない。救出後脱出したい」
「ジョリバ! 敵がソロ・シップの後ろに回ったら、反物質エンジンを掛けろ!」
モエラ
「コスモ、応答しろ! ドッキングするぞ!」
「コスモ、応答しろ!」
カーシャ
「コスモ、モエラ、聞こえて? ソロ・シップがデス・ドライブを掛けるわ。ソロ・シップに着艦して!」
モエラ
「着艦? 出来るのか?」
ベス
「イデオ・デルタ、キャッチしたぞ。ジョリバ、デス・ドライブだ!」
ジョリバ
「よし、反物質エンジン全開!」
ベス
「イデオン各機、着艦しろ!」
ジルバル
「逃がすな」
「はっ! 各機、離れろ! 反物質エンジンだ!」
「異星人め、亜空間飛行で逃げられると思ってるのか」
ベス
「ブラジラー基地だ。全員、着陸用意!」
ランバン
「同時に二種類の異星人に出会ったというのは、この広い宇宙では考えられにくい事です」
ベス
「それは、ソロ・シップを調べれば分かります」
ブラジラーの軍人
「確率的にどうもね」
ランバン
「ま、調査しましょう。ベス」
ベス
「カミューラ司令。私は、昔の幼年学校のベスではありません」
ランバン
「フフッ……すまない、ジョーダン・ベス」
「その少年は?」
ベス
「ユウキ・コスモです」
ランバン
「科学丁のユウキ博士の?」
ベス
「はい」
ランバン
「どうしたのか?」
ベス
「第六文明人の遺した戦闘機のパイロットをやらせてます」
ランバン
「この子にか?」
ベス
「はい。ですが……」
ランバン
「ん? 疲れか、怯えか。気の毒に……」
「大丈夫よ、コスモ君。もうここに居れば怖い事はないわ」
ベス
「カミューラ・ランバン司令」
ランバン
「は?」
ベス
「この基地の戦闘態勢ですが、不十分です」
ランバン
「冗談でしょ? このブラジラーは、最前線基地で決められた数の戦闘機はあります」
カーシャ
「決められたって、何を基準にしてでしょう?」
ランバン
「宇宙連合軍の規則に従っています」
「で、貴方の名前は?」
シェリル
「カミューラ司令。カーシャは、ここの戦力ではバッフ・クランにあっという間にやられてしま……」
ランバン
「私達は軍人です。戦闘のプロです」
シェリル
「今までに異星人と戦った事はあるんですか?」
ランバン
「私達は毎日厳しい訓練をしていますが、それもこれも、貴方がた民間人を守る為なのですよ」
コスモ
「おばさん、優しいんだね」
ランバン
「コスモ君……」
コスモ
「本当に優しい目をしてるな。おばさん……」
ランバン
「ベス、詳しくは事務官に報告してください」
ベス
「ソロ・シップに補給はお願いできるんでしょうか?」
ランバン
「私の出来る事ならね」
「さっ、コスモ君。いらっしゃい」
シェリル
「司令。この女性が、異星人バッフ・クランの女性とは信じませんか?」
ブラジラーの軍人
「ん?」
ランバン
「『悪い冗談』と言いたいけれど」
ブラジラーの軍人
「異星人?」
ベス
「それが……彼女は事情があって、我々の味方となってくれています」
カララ
「カララ・アジバと申します」
ランバン
「彼女の精密検査を、今直ぐ医局の者にさせなさい」
ブラジラーの軍人
「はい」
ランバン
「貴方がたの真面目さには脱帽するわ」
ベス
「カミューラ・ランバン……!」
ハルル
「敵は近い。亜空間飛行を最大に上げろ」
バッフ・クラン兵
「はい」
ハルル
「お前の目から見て、異星人の船は叩けようか?」
ジルバル
「はい」
ハルル
「ん?」
ジルバル
「ズロウ・ジック隊が分散し過ぎた為に、トドメを刺せなかったのです」
「生体発信機のある宇宙はどのような所かは知りませんが」
モエラ
「何だ、こりゃ……?」
ベス
「迂闊に捨てないでくれ。第六文明人の物は全部分かっちゃいないんだ」
モエラ
「これも遺跡の一部なのかい」
ベント
「外装の金属を使う機械がありゃいいんだ」
テクノ
「原料はどうするんだ?」
ベント
「スターダストの中に幾らでもある」
リン
「ルゥ、どうしたの? マンマ食べましょ」
ルゥ
「お船……」
リン
「ソロ・シップの方がいいのかしらね?」
ランバン
「気に入ってくれて? ブラジラー最大のレクリエーション・センターよ」
「私にも、貴方ぐらいの男の子が居たの。もう10年も前に別れたっきりになってるけど……」
「私でよければ何でも仰言い。気持ちが晴れるわ」
「貴方をお医者様に診せる事は出来るんだけど、貴方の瞳は輝いてるわ」
「大丈夫よ、貴方は強い子だから。すぐ元気になるわね」
コスモ
「俺はもう子供じゃない! 一人前だ。相談に乗ってくれなくたっていいよ」
「何でもかんでも一人で出来るんだ。今更優しくするなんて嘘だよ!」
「母さんはいつも自分の都合のいい時だけ出てきて『ああしろ、こうしろ』だ。俺は母さんのお人形じゃないんだ」
「一人前なんだ。戦う事だって出来る。みんなを守る事だって出来るんだ」
「あの攻撃だって、あのバッフ・クランの攻撃だって、あの……!」
「う、うぅっ……バッフ・クランの攻撃だって……」
「わぁぁっ!」
ランバン
「コスモ君!」
「コスモ君、落ち着いて!」
「あぁっ!」
「コスモ君……」
コスモ
「うぅっ……」
ブラジラーの軍人
「上位180度全天より、所属不明機接近! 第一警戒警報発令!」
ランバン
「カルテットは出撃させたのか? ミサイル、グレン・キャノンの展開はどうなってるのか?」
ブラジラーの軍人
「手を集めている所です!」
ランバン
「急がせろ!」
「ううん。コスモ君、宇宙服着られるわね?」
コスモ
「着れるよ」
ランバン
「じゃあさ、着てみてよ。君が着ると格好良いと思うんだ」
コスモ
「フフッ……格好良いよ」
ソロ星の軍人
「イデオ・ノバ、発進した!」
ベス
「上陸した者はソロ・シップに戻せ! イデオ・デルタの代わりのパイロットの手配をしろ!」
ランバン
「格好良いわよ、コスモ君。今直ぐソロ・シップに連れてってあげますからね」
コスモ
「わぁぁっ!」
ランバン
「コスモ君、コスモ君!」
コスモ
「あっ……!」
ランバン
「コ、コスモ君、大丈夫? け、怪我はしてないの?」
コスモ
「あぁっ……!」
ランバン
「コ、コスモ君……うぅっ……」
「だ、大丈夫なのね? コスモ君! よ、良かった……うぅっ……」
「あ、歩けるのね。なら大丈夫ね……」
「もういいのよ。コスモ君……」
「うぅ、あぁっ……あぁっ……!」
コスモ
「んんっ……!」
ランバン
「あぁーっ!」
コスモ
「あぁっ……!」
ソロ星の軍人
「コスモ、大丈夫か?」
「イデオ・デルタ、発進するぞ!」
コスモ
「ゴォーッ!」
ジルバル
「巨人のメカが3機揃ったのか!」
「足元に気を取られるな! 巨人が立ったぞ!」
「アーム・アタック!」
「こんな狭い所には、ゼロ・ズロオは入り込めんか!」
バッフ・クラン兵
「来る!」
ジルバル
「くっ……!」
コスモ
「てやぁーっ!」
ジルバル
「アタック!」
コスモ
「カミューラ・ランバンの仇!」
ジルバル
「な、何だ? 一瞬にして3分の1の戦力がやられたのか? 3分の1の……!」
コスモ
「バッフ・クランめ……バッフ・クランめ、徹底的に叩いてやる!」
「うわぁぁっ!」