第１６話 必殺のダミド戦法

前回のあらすじ
ソロ・シップを脱出したシェリル達はバッフ・クランに捕われた。
ハルルの部下ドクは、人質とイデオンの交換を要求したが、コスモはコックピット内で乱闘の末にイデオンの奪回に成功した。
しかし、ソロ・シップに戻ったシェリル達脱走の共犯者は、カララに大きな借りを作ってしまった。
カララ一人が脱走犯の罪を負うという事で……。
デク
「ちょっとだけでも会議を覗いたっていいじゃないか」
ロッタ
「貴方は子守りの仕事があるでしょ？」
デク
「あ〜ぁ、チビの相手なんてやなこった」
ロッタ
「あら！　駄目よルゥったら、壊しちゃ……」
デク
「これだもんな。チビの相手なんてやってられないよ、全く」
ハルル
「怪我は治ったのか？　ダミド」
ダミド
「はい。戦闘には何の支障も御座いません」
ハルル
「お前の休養中に二人の仕官が戦死した」
ダミド
「はっ……」
ハルル
「ギジェがロゴ・ダウから戻らぬ今となっては、頼みはお前だけだ」
ダミド
「有難きお言葉、身に余ります」
ハルル
「父ドバからの応援をいつまでも待ってはおれん」
「こうしてる間にも敵は着々と態勢を整えていると思うと、どうしても待てん……！」
ダミド
「仰せの通りです。今は光明の見える戦法に身を任せるのが打開の道と思われます」
ハルル
「よい報せを持ち帰れよ」
ダミド
「久々の出撃に血が沸き立つ思いであります」
ダミド
「ゼロ・ズロウにはハーケンを取り付けた」
「ギル・バウよりもパワーのあるゼロ・ズロウでなら、必ずやあの巨人を我が方に手に入れる事ができる」
バッフ・クラン兵
「ハーケンを付けたと？」
　〃
「（？）じゃないのか」
ビラス
「ダミド様……」
ダミド
「騒ぐな。お前達の勇敢な戦いが、お前達の家族の永遠の繁栄を築くのだ」
ビラス
「バッフ・クラン、万歳！」
バッフ・クラン兵
「バッフ・クラン、万歳！　バッフ・クラン、万歳！」
ソロ星の軍人
「ドームを付ける前にグレン・キャノンを取り付けるんじゃないのか？」
　〃
「取り付けの時間があるのかよ？」
ハタリ
「グレン・キャノンのスペアを上甲板に上げろ」
シェリル
「コスモとカーシャの脳波測定の結果ではね」
「二人が危険を感じた時にイデオンのゲージのエネルギーが上がるように見えるんだけど」
ベス
「うむ。それにシロ・シップとイデオンの関係も無視は出来ないな」
シェリル
「そうね」
カーシャ
「バッフ・クランが攻めてくる理由、お忘れになったのかしら？」
コスモ
「そうさ。イデの事さえ分かれば、難しい事なんか要らないんだ」
シェリル
「その為の討論をしているのよ」
カーシャ
「第六文明人の言葉が分かれば全て済む事よ」
シェリル
「じゃあ、私を地球へ連れていってくれて？　そうしたら私だって……」
カーシャ
「第六文明人の言葉を解く方が先よ」
コスモ
「とにかく、イデオンはイデオン、今までの俺達の流儀でやらせてもらうだけだな」
カーシャ
「そうね」
シェリル
「ソロ・シップがあってのイデオンでしょ？　まずソロ・シップを守ってから……」
デク
「コスモはソロ・シップを守ってきたじゃないか」
シェリル
「子供が出てくる時ですか？」
コスモ
「正しいと思うな、デクは」
ベス
「コスモ、戦場では命令系統は一本であるべきだ。今後は俺の命令で動け」
コスモ
「けど戦いの中では各自の判断で動くしかないだろう？　ベスの言う通りにはいかないな」
ベス
「コ、コスモ……！」
カーシャ
「コスモの言う通りね」
ジョリバ
「……何て奴等だ」
シェリル
「ベス……」
ベス
「どうするか……」
バッフ・クラン兵
「ジグ・マック、発進よし！　ハッチ開け！」
ダミド
「亜空間編隊を取れ。追撃に入る」
ビラス
「はっ！」
デク
「コスモ」
コスモ
「こんな所を彷徨いてると、またロッタに叱られるぞ？」
デク
「見てもらいたいもんがあんだ」
コスモ
「何だい？」
デク
「イデオンのコックピット」
コスモ
「何だい、こんなもの……」
デク
「自分で研究したんだぜ。これが操縦桿でさ、こっちが八式ミサイルの発射ボタン」
「俺ね、戦いたいんだよ。ソロ・シップで子守りばっかりじゃ堪んないよ、俺！」
カーシャ
「面白いじゃないの」
コスモ
「えぇ？」
カーシャ
「コスモとデクのコンビで、一人前になれるかもよ？」
コスモ
「カーシャ……遊びでイデオンを動かしてるんじゃないんだぞ？　俺は死にたくないから必死で戦ってるんだ」
カーシャ
「デクもそうでしょ？」
デク
「そうだよ。遊びじゃないんだよ、コスモ！」
コスモ
「ん……」
デク
「なぁ、俺も乗せてよ！」
コスモ
「分かった。慣れる必要はあるな、イデオンに」
デク
「やったぁ！」
コスモ
「ちょっと大きいかなぁ」
デク
「もう一つ下のサイズないの？」
ロッタ
「ん？　何やってるのよ、二人で」
デク
「僕に合う戦闘服探してんだ」
ロッタ
「戦闘服？」
デク
「イデオンに乗るんだ、俺！」
ロッタ
「何言ってるの、デク！」
コスモ
「いいんだ、ロッタ。邪魔になる訳じゃない」
デク
「いいコンビになってみせるぜ」
ロッタ
「殺し合いに貴方まで加わる事ないのよ」
コスモ
「一緒に戦いたい気持ちは大事にするべきだと思うな」
ロッタ
「コスモ、デクを巻き添えにするのはやめてちょうだい！　戦う事が必ずしも正義なんかじゃないんだから……」
コスモ
「俺がみんなの為に戦う事は、悪い事なのか？」
ロッタ
「いい悪いじゃないのよ。身を守るという事を理由に全てが許されるのは間違いだと思うの」
デク
「それでもいいじゃないか」
ビラス
「ダミド様、異星人の船まで後１５秒です！」
ダミド
「よし！　砲撃態勢に入れ！」
ビラス
「はっ！」
ダミド
「無駄死にはさせん！　見事、ハーケン攻撃で巨人を落としてみせる！」
シェリル
「ベス！　ベス、いいアイデアがあったわ」
ベス
「今、ロッタがデクの事で相談に来てるんだ」
ロッタ
「デクがイデオンに乗るって言ってるんです。やめさせないと……」
シェリル
「じゃあ具合がいいわ。地球で開発された例のコンピュータ、グロリアに資料を送り込める所まででも行ってほしいのだけど」
「そして、子供達だけでも降ろしましょ。ロッタの心配も解消するでしょ？」
ハタリ
「ベス、敵だ！」
ベス
「重機動メカか！」
ハタリ
「ベス、第三戦闘ラインに入った！」
ベス
「後部ミサイル、撃て！」
ダミド
「第一波攻撃で巨人が出てきたら、攻撃は巨人にのみ集中する！」
ロッタ
「うっ……！」
シェリル
「キャーッ！」
コスモ
「敵か？　急げ！」
デク
「うん！」
「わっ……」
コスモ
「カーシャ、いいチャンスだぜ！」
カーシャ
「分かってるわ。ここで徹底的にバッフ・クランを叩きのめして、戦闘の命は私達が握ってるってベスに分からせるんでしょ？」
コスモ
「そうさ。ソロ・シップを守ってるのは誰か、分かってもらわなくちゃな」
カーシャ
「初めて意見が一致したわね」
コスモ
「これからもいいコンビになるかもな！」
カーシャ
「それはどうかしらね？」
コスモ
「チッ、可愛くねぇの！」
デク
「まあまあ、コスモ」
コスモ、デク
「うっ！」
コスモ
「イデオンのゲージが……！」
デク
「あぁ、これ……エネルギーが上がってるんじゃないの？」
「ようし、コスモ！　ゴーゴーだ！」
コスモ
「ゴーゴーか……」
「ベス、イデオン発進する。カーシャ、モエラ、いいか？」
カーシャ
「了解！」
モエラ
「了解！」
コスモ
「イデオン、ゴーッ！」
ビラス
「あっ！　巨人が立ち上がります！」
ダミド
「撃て！」
「フフッ、出て来い巨人め！」
デク
「わっ！　コ、コスモ！」
コスモ
「ソロ・シップのバリアがカバーしてくれている。ようく見ろ、いいか？　計器盤の動きをようく覚えるんだ、いいな？」
デク
「う、うん……」
コスモ
「発進する！」
ビラス
「巨人が向かってきます！」
ダミド
「慌てるな、ズロウ・ジックを盾にしろ」
「ズロウ・ジック、ハーケン作戦用意！」
バッフ・クラン兵
「やはり俺達にやらせるのか……！」
　〃
「出来るのかよ？」
　〃
「俺達はギル・バウ隊のパイロットじゃないんだ！」
ダミド
「ハーケンを打ち込むだけでよい！　お前らを死なせはせん！　行けぃっ！」
デク
「く、来るよ！」
コスモ
「あぁ！　敵はこっちをやっつけたいんだろうからな！」
デク
「そ、そうだね！」
バッフ・クラン兵
「行くぞ！」
コスモ
「ちっ！」
デク
「コスモ、右からもだ！」
コスモ
「うっ！」
「デク！　モニター十面の監視を忘れるなよ！」
デク
「了解！　見てるって！」
「来た！　右２時だ、コスモ！」
コスモ
「正面だろ！」
カーシャ
「いつもより数が多いわ、コスモ！」
デク
「あっ……」
コスモ
「カーシャ、弾幕が薄いぞ！」
デク
「右２時半！　２機が来る！」
コスモ
「よし！」
デク
「後方６時に２機だ！」
コスモ
「よし！」
デク
「急いで！」
「来た、正面！」
コスモ
「行けぇ！」
デク
「掠めただけだ！」
バッフ・クラン兵
「敵艦、キャッチ！」
ハルル
「よし、ダミド隊を援護する。主砲を開け！」
シェリル
「キャッ！」
ベス
「新しい敵か？」
ジョリバ
「敵の戦艦らしい。２．５亜空間距離に居る！」
ベス
「コスモ、聞こえるか！　敵戦艦が現れた！　ソロ・シップの護衛に回れ！」
「うっ……！」
「聞こえないのか！　答えろコスモ！」
モエラ
「コスモ、ベスからの指令だ！　コスモ、カーシャ！」
「ソロ・シップが攻撃されているんだ！」
コスモ
「俺達に命令出来るんなら、ベス達の方が偉いんだろ？　偉い人は自分一人くらい守れる筈だ。守ってみせてくれ」
カーシャ
「そうよ。お手本を見せてもらいましょうよ。素晴らしいように」
ダミド
「ええい、ゼロ・ズロウ隊はハーケン・アタックを忘れたのか？　怖じけるな！」
コスモ
「デク、怖いけど覚悟しろ！」
デク
「う、うん！」
コスモ
「カーシャ、行くぞ！」
カーシャ
「了解！」
コスモ
「速い……どちらに指揮官が乗っているんだ？」
ハルル
「もっと近付けんのか？」
バッフ・クラン兵
「ダミド様が交戦中です！　これ以上近付くと、味方の邪魔となります！」
ハルル
「よし、ドロワ・ザンはこのまま。巨人が倒れたら異星人の船へ接近する！」
ハタリ
「メイン・エンジンだ！」
ベス
「やられたのか？」
ロッタ
「大丈夫、大丈夫よ。コスモ達が守ってくれますからね」
ベス
「ジョリバ、どうした？　イオン・コンプレッサの圧力が下がってるぞ！」
ジョリバ
「ビームが貫通した所がある！　デス・ドライブ・ブレーキを掛けてくれ！」
ベス
「座標が揺れ始めている！　このままでは……！」
ダミド
「このままでは埒があかん！　ハーケン・アタックを掛けぬゼロ・ズロウは、ジグ・マックで撃ち落とすぞ！」
バッフ・クラン兵
「ダミド様……！」
　〃
「何てこった……」
　〃
「やればいいんだろうが……！」
コスモ
「うっ！　いつかのワイヤーだ、振り切れ！」
「んんっ……！」
カーシャ、デク
「あぁぁっ！」
ダミド
「よくやった！　巨人の動きが止まった！　行くぞ、ジグ・マック！」
ビラス
「味方機もやられています！」
ダミド
「やむを得ん！　巨人が仕留められるのだ、やむを得ん！」
ベス
「イデオン、聞こえるか！　ソロ・シップが失速し掛かっている！　ソロ・シップと合流しろ！」
ダミド
「これでお終いだ！　巨人め、落ちろ！」
モエラ
「ソロ・シップ、失速する！　失速……！」
コスモ
「し、失速……！　別々の違う宇宙に飛び出してしまうのか。ソロ・シップとイデオンは……」
モエラ
「も、もうお終いだ！　これじゃ……！」
カーシャ
「結局、もう終わりなの？　嫌よ、こんな所で一人ぼっちで死ぬのは嫌よ。こんな所でなんて、嫌よ！」
デク
「コスモ、コスモッ――！」
コスモ
「デ、デク！　死ぬな！」
ダミド
「とどめだ！」
コスモ
「くっ！」
ダミド
「わぁぁっ！」
ダミド
「逃がすな、追え！　巨人は弱っている筈だ！」
コスモ
「モエラ、パワーを上げろ！　デス・ドライブ・チェック急げ！」
シェリル
「イデオン、どこなの？」
ベス
「見えた！」
カーシャ
「見えた！　ソロ・シップよ！」
「キャッ！」
デク
「コスモ、見えなくなっちゃった！」
コスモ
「ベス、しっかりしてくれ……！」
バッフ・クラン兵
「ダミドの隊が、敵艦に接近し過ぎました！」
ハルル
「よし、砲撃中止！　後はダミド隊に任せよう！」
ベス
「座標固定！　イデオンと接触するぞ！」
デク
「見えてきた！」
コスモ
「よし、この位置でならチーム・プレイが出来るぞ！」
「行くぞ！」
ダミド
「巨人め！　パワーが上がっているのか！」
ビラス
「ダミド様、巨人が後ろに回り込みます！」
ダミド
「２号、盾になれ！」
バッフ・クラン兵
「くそっ……！」
「わっ！」
コスモ
「重機動メカの盾になったのか！」
「うっ！」
デク
「わっ！」
カーシャ
「あぁっ！」
テクノ
「うっ……！」
コスモ
「な、何が起こったんだ！」
ダミド
「ドモダが巨人を捕まえてくれた！　攻撃を掛ける！」
ビラス
「しかし、ドモダのジグ・マックが近過ぎます！」
ダミド
「構わん！」
コスモ
「来るのか？」
ダミド
「撃て、撃ち落とせ！」
「死んでたまるか！」
「わぁぁっ！」
デク
「あぁっ……」
カーシャ
「はっ……！」
デク
「コスモ、逃げちゃうよ！　追い掛けなくていいのか？」
コスモ
「いいよ、重機動メカを２機も倒したんだからな。怖くなかったのか、デク？」
デク
「戦争は怖いよ」
コスモ
「そうじゃない。ソロ・シップを別々になっちまうって事さ」
デク
「そ、そりゃ……」
コスモ
「帰還するぞ、カーシャ」
カーシャ
「そうね、戻りましょう」
ソロ星の軍人
「デス・ドライブ、停止！」
コスモ
「俺達はソロ・シップの戦いぶりを信用したんだ。これは本当の気持ちさ」
ジョリバ
「だがイデオンが指令を無視しなければ、ソロ・シップの損害は最小限に食い止められたんだ」
コスモ
「しかし、あの重機動メカを倒す事の方が先だった」
カーシャ
「そうよ、ベスはイデオンを頼り過ぎだわ。ソロ・シップ自身の防戦も考えなければいけない筈でしょ？」
ベス
「作戦はチーム・プレイが第一だ。今日の場合、何を置いてもここに戻ってくるのが本当じゃなかったのか？」
デク
「戻ろうとしたよ！　コスモも、カーシャも、モエラも……」
コスモ
「黙ってろ、デク」
「で？　どうなんだ？」
ベス
「懲らしめに、当分イデオンの操縦を禁止する」
シェリル
「甘いわ、ベス！　みんなを危険に晒した罪は重いわ！　実刑にすべきね！」
カーシャ
「実刑……？」
コスモ
「実刑？　フッ……カララの代わりに独房入りって事かい、シェリルさん」
シェリル
「え、えぇ……他の乗組員への示しもあるわ。でも実刑はやめて」
ベス
「いや、軍人ではないコスモとカーシャだが、独房入り十日間やってもらおうか！」
コスモ
「しょうがないな。付き合えよ、カーシャ」
カーシャ
「そうね。でもその内、シェリルさんにも埋め合わせはしてもらうわよ」
シェリル
「そのつもりよ、カーシャ」
コスモ
「お疲れ様」
ベス
「ま、色々あってな……」
カーシャ
「食事はどうなるの？」
ベス
「一日一食、それだけだ」
カーシャ
「これじゃ重罪人扱いじゃないの、全く！」