第17話 激闘・猿人の星

前回のあらすじ
ソロ・シップに最後の猛攻を仕掛けたバッフ・クランのダミドは、イデオンのパワーの前に散った。
……が、ベスの指令を無視し、一旦はソロ・シップを危機に陥れたコスモとカーシャは、カララと入れ替わりに檻に閉じ込められた。
ソロ・シップは新たな惑星に降りた。猿達の住む惑星である。
ソロ星の軍人
「あぁっ……!」
 〃
「い、いきなり飛び出すな!」
 〃
「イデオ・ノバ、遅れてるぞ!」
 〃
「そんな事ないっすよ!」
 〃
「ドッキング・フォーメーションを急げ!」
 〃
「了解!」
 〃
「ほら、分かってるのか?」
コスモ
「……ベスめ、本当に俺達をお払い箱にするつもりだ」
カーシャ
「こんな事で、自分を守るのを人任せにするなんて……嫌だわ」
コスモ
「なら、ベスの言う事を聞くんだな」
カーシャ
「人の言いなりになるのはもっと嫌よ!」
バッフ・クラン兵
「ドロワ・ザン、接触5分前。各員、接触用意!」
ギジェ
「ハルル様は未だ巨人に手古摺っていらっしゃるようだが、この調査結果を見れば……!」
バッフ・クラン兵
「ま、参りました!」
ハルル
「ふん、次!」
ギジェ
「私が」
ハルル
「ようし、来い!」
ギジェ
「御免!」
ハルル
「……腕を上げたな、ギジェ」
ギジェ
「有難うございます」
ハルル
「ロゴ・ダウでのイデの捜索の結果を早速聞かせてもらおうか」
ギジェ
「はっ!」
ロッタ
「ベス」
ベス
「どうした、ロッタ?」
ロッタ
「熱がまた出てきたのよ、ルゥ。一時下がったんだけど……風邪とは違うのよ、様子が」
シェリル
「風邪じゃない……?」
ベス
「看護兵は居ないのか?」
ラポー
「40度……かなりね。急いで麻疹のワクチンが必要だわ」
リン
「麻疹? ルゥが麻疹なの?」
ラポー
「間違いないと思うわ」
シェリル
「そんな病気が残っていたなんて……」
ロッタ
「どうなるの? 麻疹って……」
ベス
「ん、放っておくと死ぬ筈だったな」
ロッタ
「死ぬ……?」
ラポー
「えぇ、高熱が四日以上続いたら危ないわね」
ロッタ
「死ぬ……」
シェリル
「ベス」
ベス
「ん?」
シェリル
「ワクチンのある所に行かなけりゃいけないって訳ね」
ベス
「他にも何かいい方法があるかもしれん。調べてもらう」
シェリル
「そうね。あるといいわね」
ギジェ
「ロゴ・ダウの異星人が埋まっていた地点……巨人メカの地点……」
「この二つの点から四方へ、エネルギーのようなものが飛んだ跡が発見されたのです」
ハルル
「エネルギー?」
ギジェ
「はい。これが地面の中から発見された、エネルギーの通った跡と思われるものです」
「しかもその跡は、ロゴ・ダウの反対方向にも突き抜けております」
ハルル
「イデのエネルギーが……」
ギジェ
「消していいぞ」
「恐らく」
ハルル
「イデそのものがどのようなものか、分からぬというのか?」
ギジェ
「はい。分かった事といえば……」
ハルル
「異星人の持ち出したメカニズムに、イデのエネルギーが存在するという事だな?」
ギジェ
「そして恐らくそれが、イデなる力をコントロールするメカニズム……」
ハルル
「我々の手に入れなければならぬな。全力を投入して」
ギジェ
「はい」
ハルル
「しかしな、ギジェ。宇宙そのものを破壊するかもしれぬエネルギー体が、あんな小さな船の中に封じ込められているものなのか?」
ベス
「どのくらい掛かる?」
ベント
「ドッキングが上手くいってないし、あっちのミサイル、こっちのグレン・キャノンと、壊れていて……」
シェリル
「ベス」
ベス
「急いでくれ」
「何だ?」
シェリル
「見て欲しいの」
ベス
「ん?」
シェリル
「イデオンのパワー・アップと乗っている人の脳波結果ね、一致するのよ。特に前の戦いの時、デクが乗っていたでしょ?」
ベス
「そういえば、コスモは『大分エネルギー変化があった』と言っていた」
シェリル
「イデのパワーは、人数と関係があるのかしら……」
バッフ・クラン兵
「ギジェ様、出撃準備完了です!」
ギジェ
「ではハルル様、巨人メカの一機は必ずや手に入れてみせましょう」
ハルル
「……カララの事、吹っ切れたようだな。ギジェ」
ギジェ
「よいか、今日はこれだけの大編隊をお預けくださったハルル様のご信頼に応えねばならん」
バッフ・クラン兵
「はっ!」
ギジェ
「ゼロ・ズロウのハーケンとジグ・マックに整備した兵器で、あの巨人を必ずや仕留めてみせるぞ」
カーシャ
「両親からすぐ引き離されて子供だけで育てられたのも、私の星が夏と冬だけの酷い所だったからよ」
「何してんの? ね、聞いてるの?」
コスモ
「あぁ」
カーシャ
「いくら開拓の始まったソロ星だって、私の育ったA92に比べれば天国だったわ」
「ねぇ……ねぇ、何してるの?」
コスモ
「穴の一つも開けとこうと思ってね……」
「やっぱり無理かな?」
カララ
「食事です」
コスモ
「え、食べられんの?」
「え? これだけ?」
カララ
「罰ですから」
カーシャ
「何が罰よ! こんな所に居るだけでも屈辱なのよ?」
「ねぇリン、ベスに掛け合ってよ」
リン
「え、えぇ……」
カララ
「カーシャ、それは違います。みんな貴方達に期待しているからお仕置きするのじゃないかしら」
カーシャ
「何が分かるのよ、異星人に……!」
リン
「カーシャ、それは言い過ぎよ!」
カララ
「いいのよリン。この中に入ると誰でも卑屈になります。イジケもします」
カーシャ
「悔しいだけなのよ!」
カララ
「それが人の肥やしになるんじゃなくて? カーシャのその気持ちはみんなが認めています。強い子だって……」
コスモ
「そうだよ。カーシャは強い子だ」
カーシャ
「馬鹿にしないで!」
リン
「カーシャ、パンは一日に3回に分けて食べるのよ?」
カーシャ
「お節介焼かないで!」
リン
「……じゃぁ、先に行きます。ルゥが心配だから……」
カララ
「えぇ」
コスモ
「どうしたの?」
カララ
「病気なのです。麻疹っていう……」
コスモ
「麻疹? 何……?」
カララ
「ワクチンがないと死ぬんですって……」
ベント
「左側の電気系統の繋がりが悪いんだ!」
ソロ星の軍人
「すぐにでもこの星を出発するらしいからな、急げよ!」
ハタリ
「ベス! アジアン星だ!」
ベス
「連絡取れそうか?」
ハタリ
「あぁ」
ソロ星の軍人
「敵だ!」
ベス
「何?」
ソロ星の軍人
「北東の戦闘ライン上にキャッチ!」
 〃
「大部隊だぞ!」
ベス
「ドッキングさせてイデオンを発進させろ!」
ベント
「5分待ってくれ!」
ベス
「間に合わん! 各機発進させてから整備をしろ!」
「ソロ・シップ、対空放火用意!」
ソロ星の軍人
「イデオ・ノバ、イデオ・バスタ急げ! ソロ・シップ主砲開け!」
コスモ
「……慣れていないパイロットで戦えるのか?」
ソロ星の軍人
「ん、あんなに大部隊なのか……おい、出来るか?」
テクノ
「やるしかないだろ!」
ソロ星の軍人
「あぁっ! 撃ってくる!」
 〃
「撃ち帰せ! 撃ち帰すんだ!」
ベス
「ソロ・シップ、イデオン各機を援護する!」
ギジェ
「ジグ・マック1機とズロウ・ジック3機、敵の鼻を押さえろ!」
コスモ
「うっ、やられた!」
「イデオンの方はどうなってるんだ?」
カーシャ
「バッフ・クランにやられてるわ!」
ギジェ
「ようし、残りの各機、巨人のドッキング破りをする!」
「ロゴ・ダウの地中に埋もれていた、謎の粒子を試してみる!」
ソロ星の軍人
「あっ! やられた!」
 〃
「ビビるな、バリアが守ってくれる! 敵の下へ回り込めば、後は俺が撃ち落としてやる!」
 〃
「落ちろ、落ちろ!」
ベント
「後ろに付かれた! 振り切れ!」
ソロ星の軍人
「そんな事言ったって……!」
ベント
「死にたいのか!」
「うぅっ……!」
ソロ星の軍人
「わっ! 駄目だ!」
ベント
「たじろぐな!」
「うわっ!」
ギジェ
「潰れろ、巨人メカめ!」
ベント
「うわぁっ!」
ベス
「イデオンの各機へ伝えろ! 逃げ回ってるだけでは敵は倒せんとな!」
ハタリ
「無理だ! コスモ達より慣れてない連中だ!」
「うわっ……!」
シェリル
「キャッ!」
「カララ、手伝って!」
カララ
「はい!」
シェリル
「このコードを同じ色同士繋いで。そっちね」
カララ
「はい」
シェリル
「すまないわね」
カララ
「何です?」
シェリル
「イデオンのゲージの反応が低いのよ。変だと思わなくて?」
カララ
「え?」
ベス
「イデオン・メカに近付く! デス・ドライブを掛けて……アジアン星に脱出する!」
リン
「ベス!」
ベス
「何だ?」
リン
「バイパー・ルゥが、また熱が上がったわ! 何とかしてあげて!」
ベス
「ハタリ、取り舵だ!」
リン
「ルゥが死んじゃうわ!」
ベス
「このままならみんな死ぬ!」
リン
「キャッ!」
カララ
「ベス、とにかく重機動メカまで接近してください」
ベス
「カララ……」
カララ
「一瞬でも敵が怯めば、イデオンの3機を着艦する事が出来るでしょう」
ベス
「カララ、バッフ・クランを敵というのか……?」
カララ
「その隙にコスモ達をイデオンに乗せて戦わせるのよ。デス・ドライブを掛けるのもよいでしょう」
「レーザーで雲に私の姿を映せましょうか?」
ソロ星の軍人
「やった!」
コスモ
「外の様子はどうなんです?」
シェリル
「危ないわ」
リン
「カーシャ……」
カーシャ
「私は嫌よ!」
コスモ
「そんな事言ってる場合かよ!」
カーシャ
「単細胞ね、コスモは! 私達が出て行って勝ったら、またここに入れられるんでしょ!」
シェリル
「カーシャ、今はそんな事を……」
カーシャ
「私は、ベスやシェリルの奴隷じゃないのよ? 人形でもないわ! 同じ死ぬんなら、ここで死んでやる!」
コスモ
「カーシャ、バッフ・クランを叩きたくないの?」
「行くぜ!」
シェリル
「カーシャ……」
リン
「ルゥが麻疹なのよ? 何としてでもここを抜け出して、治療出来る所に行かなければ……」
カーシャ
「ソロ・シップがやられちゃえば、病気であろうとなかろうと関係ないでしょ!」
シェリル
「カーシャの気持ちは分かるけど、みんなで生き残る事を考えないと、すぐに死ぬわ」
カーシャ
「どういう事?」
シェリル
「貴方一人の力で勝ち抜いてきたのでもないのだし、コスモだって、貴方が居なければきっと危険な目に遭うんじゃないかしら」
カーシャ
「なのに、みんなで私をこんな所に入れたわ!」
シェリル
「分かって欲しいからよ、それを……」
ベス
「レーザー投影機、用意!」
ギジェ
「背中を向けた! クロー・アタックだ!」
ベント
「捕まった!」
ソロ星の軍人
「うわっ! 駄目だ!」
ギジェ
「エンジンを止めろ! 止めなければ荷粒子砲をぶち込んで……」
「ん? 何だ?」
カララ
「攻撃指揮官は誰か? こちらには死に掛けた赤ん坊がいる。侍の情けを掛けて休戦を願いたい!」
ギジェ
「そうか、レーザーで映した映像か!」
「異星人の脅しだ! 180度ターン!」
バッフ・クラン兵
「はっ!」
カララ
「バッフ・クランの礼儀に合ってないのは承知の上で……」
ベス
「カララ、もういい」
シェリル
「ベス、コスモとカーシャが出たわ」
ベス
「イデオ・デルタが降りている! コスモ、聞こえるか?」
コスモ
「今、甲板に出る!」
「いいぞ!」
ソロ星の軍人
「頼みます!」
コスモ
「おう!」
ベス
「イデオ・ノバが追い詰められている!」
コスモ
「了解!」
「ヘルメットのスペアを取ってくれ!」
ソロ星の軍人
「ヘルメットです!」
コスモ
「おう!」
「イデオ・バスタ、付いてきてくれ!」
ソロ星の軍人
「今、カーシャが来た。すぐ行く!」
コスモ
「カーシャが?」
カーシャ
「追い付くわ。先に行って!」
コスモ
「了解!」
ソロ星の軍人
「来た! コスモ!」
コスモ
「後ろだ!」
「イデオ・ノバ、あそこか……!」
「落とさせるか!」
カーシャ
「コスモ、追い付いたわよ!」
コスモ
「カーシャ、すまない! 」
ギジェ
「動きが違ってきたぞ! 後退してドッキングさせろ! 巨人メカにドッキング破りを掛ける!」
ソロ星の軍人
「敵が後退してます!」
モエラ
「ドッキングしてもらおう! 何故、パワーが上がらないんだ?」
ギジェ
「フッ……!」
コスモ
「上がらない……!」
ギジェ
「ジグ・マック、行くぞ! ドッキングを破り、巨人メカを捕まえる!」
コスモ
「バリアが壊されてるのか?」
モエラ
「コ、コスモ! ドッキングのパワーも下がっていく!」
コスモ
「ドッキングが出来ない!」
「左右気を付けろ、来るぞ!」
ギジェ
「思った通りだ。ロゴ・ダウで手に入れた謎の粒子がバリアを殺してくれた!」
「落ちてゆく奴を捕まえろ! 捕まえ易いぞ!」
ソロ星の軍人
「モエラ、捕まっちまった!」
モエラ
「変形も出来ないしな……!」
ギジェ
「ようし、防御は私に任せて、そのメカをドロワ・ザンに運び込め!」
コスモ
「そうはさせないぞ!」
「カーシャ、急げ!」
カーシャ
「了解!」
ベス
「戦闘機は引き受けるぞ! コスモとカーシャにはイデオ・ノバを取り返させろ!」
ロッタ
「こうなると、私達には何にも出来ないのよね……」
「キャッ!」
リン
「情けないったらありゃしない!」
ラポー
「私達も戦えればね……」
シェリル
「妙だわ。相変わらずイデオンのゲージは輝かないし……」
カララ
「ベス、早くデス・ドライブを掛けてこの星から脱出しませんと……」
ベス
「そのつもりだ。コスモとカーシャが頑張ってくれている」
バッフ・クラン兵
「うわっ!」
ギジェ
「上昇しろ! 180度ターンだ!」
コスモ
「他は放っておけ! イデオ・ノバを取り返す!」
カーシャ
「了解!」
コスモ
「俺が攻撃を掛ける!」
カーシャ
「私が潜り込んで、ドッキングをするわ!」
「行くわよ!」
「うっ……!」
「第11ミサイル・ブロック、発射!」
コスモ
「カーシャ、ドッキングする!」
ギジェ
「駄目か……!」
バッフ・クラン兵
「はい! 今の攻撃で第二エンジンが……!」
ギジェ
「来るぞ! 荷粒子砲を!」
コスモ
「スピードを上げろ! 叩き潰してやる!」
カーシャ
「足のパワーが上がらない! オーバー・ヒートよ!」
コスモ
「イデオンのゲージも上がっていない!」
ギジェ
「最大出力だ!」
コスモ
「このぉ!」
ギジェ
「構わん! 脱出しろ!」
ベス
「進路、アジアン星! デス・ドライブに入る!」
バッフ・クラン兵
「ロゴ・ダウの異星人が亜空間飛行に入りました!」
ハルル
「追跡は出来るのか?」
バッフ・クラン兵
「はっ! 生体発信機が生きています!」
ハルル
「ギジェめ、また取り逃がしたのか」
「ギジェ隊が帰り次第、追跡する!」
バッフ・クラン兵
「はっ!」
ハルル
「ギジェが詰らぬ男なのか、巨人の力が偉大なのか……」
コスモ
「何故、檻から出る気になったんだ?」
カーシャ
「さぁ、分からないわ。早く済まそうと思ったのよね、きっと……」
「ただ逃げ回るだけだなんて悲しいじゃない。それじゃ、自分を守る事にはならないわ」
コスモ
「そうだな……」
ナレーション
地球の移民星アジアン星に、ルゥの麻疹のワクチンはあるのだろうか?
そして、バッフ・クランの追跡を振り切る事は出来るのか……。