第19話 ギャムス特攻司令

前回のあらすじ
コスモ達『ソロ・シップ』を付け狙う異星人バッフ・クランのハルルとギジェは、
地球の移民星アジアンに対して、準光速ミサイルの攻撃を仕掛けてきた。
アジアンを救うか、イデオンとソロ・シップを渡すか、ギジェの威しに対してアジアン軍とイデオンは抵抗をした。
そして、バッフ・クランの準光速ミサイルは、イデオンの新たな兵器によって破壊された。
そして、ソロ・シップはアジアン星を後にした。
カーシャ
「オーライ、そのまま、そのまま……各部接続完了」
コスモ
「足は動きそうかい?」
カーシャ
「大丈夫だと思うわ」
ベス
「スターダスト回避、オート・パイロット用意」
「左10時、何の光だ?」
ハタリ
「レーダーが殺されている。分からん!」
ベス
「対空砲火用意! 甲板員に対戦用意をさせろ!」
コスモ
「カーシャ、先に行く! 無理するな!」
カーシャ
「了解!」
コスモ
「早いな」
デク
「当たり前さ!」
ハタリ
「べス、正面の惑星に逃げ込むぞ!」
ベス
「任せた、ハタリ!」
ハタリ
「よし!」
コスモ
「イデオ・デルタにチェンジする! 前のミサイルで牽制しろ!」
デク
「了解!」
コスモ
「ミサイルは撃ち続ける!」
デク
「えっ、やってるよ!」
カーシャ
「速い?」
「キャーッ!」
モエラ
「後ろへ行った! ミサイル!」
「あ、当たったのか?」
コスモ
「あっ……!」
デク
「コスモ!」
ドッバ
「まさかな……。あんなものが巨人になるメカなのか?」
「我らのギャムス様が御出座しになる程の相手とは思えんがな」
ギャムス
「型は同じだが……ううむ、あれが巨人のメカニズムか。まるで素人だがな」
ロッタ
「あぁっ……!」
「奥へ逃げなさい!」
リン
「えぇ!」
ロッタ
「キャーッ!」
ファード
「あぁっ、痛い……!」
リン
「ファード!」
ロッタ
「ファード、大丈夫?」
ファード
「痛い、痛いよ……!」
ギャムス
「馬鹿めが。ゴンド・バウの高性能が証明されようとしているのに、石如きにぶつかるとは……!」
コスモ
「少しぐらい性能のいいミサイルを持っているからって……!」
「しぶとい!」
デク
「コスモ、右にも……!」
コスモ
「自分でやれ!」
デク
「了解!」
コスモ
「落ちろ!」
ギャムス
「ふんっ、ロゴ・ダウの異星人の実力はあんなものか……」
バッフ・クラン兵
「ギャムス様、ハルル様のドロワ・ザンからのポジション・シグナルをキャッチしました」
ギャムス
「ようし、まずはハルル様にお会いしてからロゴ・ダウの異星人を叩く。ゴンド・バウを引き上げさせろ!」
デク
「逃がすな、コスモ!」
ベス
「待て。正体不明の宇宙船が居る。迂闊に近付かない方がいい」
デク
「で、でも……!」
コスモ
「ベスの言う通りだ。デク、戦力が分からないのに迂闊に突っ掛っていいってもんじゃない」
デク
「でもさ……!」
バッフ・クラン兵
「サディス・ザン、接触用意! 係留作業急げ! 各員、対空監視は怠るな!」
ギャムス
「ギャムス・ラグ、只今到着しました。途中、噂の異星人らしき者と出会い、小手調べを致し……」
ゼキタン
「貴公が援軍に来るとはな」
ギャムス
「不服か?」
ハルル
「貴公が通った後には草一本生えぬという噂を知っているのか?」
ギャムス
「光栄ですな。ハルル様もご存知とは……」
ハルル
「ドバ総司令は、打倒巨人の為の準備をお進めであろうな? ギャムス」
ギャムス
「はい。ギジェ・ザラルが居ないようでありますが?」
ハルル
「ギジェはもう居ない。捨てたよ」
ギャムス
「ほう、それはそれは。ははっ、それこそ良いご処置でありますな。ふふっ、私めがその代わりになりますかどうか……」
デク
「さっきやっつけなかったから、これからもみんながこんな目に遭うぜ! 可哀想じゃないか!」
コスモ
「分かってるよ。けどな、戦いってのは闇雲にやるっていう訳にはいかないんだよ」
リン
「こんな事がいつまでも続くのは耐えられない。何とか解決する方法ってないの?」
ロッタ
「バッフ・クランがイデオンを欲しいんなら、あげちゃえばいいんじゃない?」
コスモ
「ベス達に言ってみるよ。いつまでも逃げ回ってる訳にはいかないからね」
リン
「そうね……」
カララ
「戦艦のサディス・ザンです。この戦闘機は知りません」
ベス
「ここで無人探査機は破壊された。さて……」
「あ、コスモご苦労。よく映っていた」
コスモ
「どうするんだい?」
ベス
「この星に降りる。ソロ・シップも、ソル・コンバーの修理もしなくちゃならんしな」
カーシャ
「助かるわ」
シェリル
「ベス、メイン・コンピュータの半分開けてくれて? 第六文明人の言葉の分析に使いたいから」
ベス
「今の戦いで、コンピュータは対空監視に切り替えてある」
シェリル
「そんな! じゃあ、私の仕事はどうするの?」
コスモ
「頭を使ってくれよ。嫌なら全員降参……イデオンもソロ・シップも、バッフ・クランに渡したらすっきりするんじゃないの?」
カララ
「いけません! 今のバッフ・クランは、ズオウ大帝の支配する階級制です。全宇宙がズオウの元に支配されてしまいます」
シェリル
「ズオウ大帝?」
コスモ
「たまにはチビ達の事も考えてくれないか? それにイデってのがあるんなら、俺達はこんなに苦労はしない筈だろ?」
カララ
「でも、もしイデがなければ、貴方がたはとっくにバッフ・クランにやられていました」
コスモ
「けど……!」
ハタリ
「高度10万メートル。ベス、どこに着水する?」
ベス
「着水?」
ハタリ
「陸地はなさそうだ」
ベス
「本当か」
デク
「わぁ、海だ!」
アーシュラ
「お水がいっぱい!」
デク
「泳ぎたいな……」
アーシュラ
「私も!」
リン
「子供達がこんなに燥ぐのは久しぶりね」
ロッタ
「私だって燥ぎたくなるわ。丁度、食料倉庫の塩も不足してきた所だし、降りてくれないかしらね」
デク
「よし、泳ごうっと!」
ロッタ
「あっ……」
リン
「デク!」
デク
「うわっ、美味しい空気!」
リン
「デク、待って!」
デク
「おいっち、にぃ、さん、し! にぃ、に、さん、し! さん、に……それっ!」
リン
「デク!」
「あの子、泳げないのよ!」
ロッタ
「えぇっ!」
デク
「うわっ!」
「わっ! た、助けて!」
リン
「ここの海水、塩分が多いのよ。もう沈まないわ」
デク
「ははっ、ははっ……!」
モエラ
「こんな事なら宇宙のが楽ってもんだ」
コスモ
「文句言いっ子なしね。嵐が隠れ蓑になってくれるんじゃない?」
ベス
「時間が掛かる一方か。危険だな……」
「コスモの言ってた条件で、和平の交渉をして時間稼ぎをするか?」
カララ
「どの道、ギャムスはソロ・シップを見付け出しているでしょうね」
ハタリ
「そんな手強い相手なのかい?」
カララ
「でも、イデオンを渡すと言えば……」
ハタリ
「うむ。少しは考える時間を取ってくれるな」
ベス
「修理中に襲われるより、やってみよう」
ギャムス
「ん、カララが会うと? ようし、ロゴ・ダウの異星人と接触する。サディス・ザン、発進しろ!」
ハルル
「さて、イデオンを渡してくれるというロゴ・ダウの異星人……ギャムスめ、どう扱うかな」
ゼキタン
「まずイデオンを手に入れる事を考えてくれればいいのですが」
ハルル
「そう、ギジェの資料の結果が本国で出る頃だ……手に入れて欲しいものだな」
バッフ・クラン兵
「接触5分前!」
ギャムス
「ロッグ・マック、ゴンド・バウの編隊は?」
バッフ・クラン兵
「はっ! 作戦通り、雲の上に待たせてあります!」
ギャムス
「ようし!」
カララ
「ジョリバ、見えた?」
ジョリバ
「もう見えてくる筈です」
カララ
「そう……」
「ギャムス・ラグ」
ギャムス
「お久しぶりですな、カララ様。バッフ・クランを裏切った者が異星人の取次をする……許せませんな!」
カララ
「お前に言われる筋合いはありません。話し合いの条件を申します」
「宇宙船ソロ・シップと巨人イデオンを、サディス・ザン若しくはガタマン・ザン・クラスの戦艦2隻と交換したい」
「ロゴ・ダウの異星人は、ただ生き延びられればよいと言っています」
ギャムス
「異星人は全滅させる。私の名誉の為に!」
ジョリバ
「カララ、やっぱり話し合いの余地はない。行くぞ!」
カララ
「貴方のような人が居るから、宇宙は平和にならないのです!」
ギャムス
「裏切り者の命は頂く! ロッグ・マック、ゴンド・バウ、攻撃を開始させろ!」
カララ
「あぁっ!」
ジョリバ
「カララ、大丈夫か?」
カララ
「自分で出来ます。大丈夫です」
コスモ
「各機左右に展開! 気を付けろ、新型だ!」
「ジョリバ、敵は気にするな! そのまま降りろ!」
ジョリバ
「い、行くぞ!」
カララ
「うぅっ……!」
ジョリバ
「飛び降りるんだ!」
カララ
「はっ……!」
ジョリバ
「カララ!」
「コスモ、いいぞ!」
コスモ
「ジョリバさんは、そこのグレン・キャノンを頼みます! カララさんはコックピットへ!」
「一方的に断ったのかい? 敵の大将は……」
カララ
「イデオンを倒すか捕えるかしなければ、自分の手柄にはならないから……徹底的に戦うつもりなのです。ギャムスは……」
コスモ
「奴等め、こちらの時間稼ぎの申し出だと気が付いたのか?」
カララ
「そんな事はありません!」
「う、うぅっ……!」
モエラ
「こいつら!」
カーシャ
「やった!」
テクノ
「カーシャ、前だ!」
カーシャ
「うっ!」
「キャーッ!」
コスモ
「ミサイル二段撃ちだ!」
バッフ・クラン兵
「後退しろ! 第一戦闘中隊は下がって!」
ギャムス
「後退は許さん! 何の為に接触したと思っている! アンカー・アタックを掛けられる筈だ!」
バッフ・クラン兵
「了解! アンカー・アタックを掛ける!」
モエラ
「わぁぁっ!」
コスモ
「イデオ・ノバが捕まった! カーシャ、急げ!」
カーシャ
「了解!」
ソロ星の軍人
「正面に敵機発見! 重機動メカらしい!」
ベス
「ノーマル・エンジン、出力最大!」
ソロ星の軍人
「対空砲火を!」
デク
「……煩いんだよ!」
「もう……うっ!」
ベス
「今までに見た事のない重機動メカだ! 主砲開け!」
モエラ、ベント
「あぁっ……!」
コスモ
「やってみるか……!」
「モエラ、聞こえるか?」
モエラ
「き、聞こえるぞ! コスモ!」
コスモ
「ソロ・シップが狙い撃ちされている! イデオンにドッキングする!」
モエラ
「ようし!」
カーシャ
「いいわ!」
ベス
「ハタリ、何をやってる!」
ハタリ
「パワーが上がらないんだ! ジョリバを呼び戻してくれ!」
ソロ星の軍人
「うわっ!」
 〃
「機関室に水だ!」
リン
「ルゥ、下がるのよ! 奥に行きましょう!」
ギャムス
「何が『巨人の代わりに戦艦をくれ』だ。もう沈むのも時間の問題だな」
「な、何?」
「馬鹿な……!」
「とどめを刺せ!」
ベス
「うっ……!」
デク
「何やってんだ、コスモ達は……!」
ベス
「ハタリ! 上昇して敵艦の上に出られんのか?」
ハタリ
「パワーが不安定なんだ! イデオンのゲージを見てみろよ!」
「ノーマル・エンジン、どうなってんの!」
シェリル
「イデのエネルギーの流れが分かれば……。ゲージは点いているのに……!」
コスモ
「敵の戦艦を叩く! 指揮官を倒せば……!」
カーシャ
「戦闘機なんて、どうという事ないわ!」
コスモ
「モエラ、大丈夫か?」
モエラ
「だ、大丈夫だ!」
ギャムス
「巨人だと? ドグ・マック、間に入れ! 3機で同時攻撃を掛ければ、巨人如きは倒せる筈だ!」
コスモ
「うぅっ! イデオンのゲージが点いているというのに……!」
「どういう事だ?」
「うわぁぁっ!」
カララ
「あぁっ……! コ、コスモ、私に出来る事ありませんか?」
コスモ
「じっとしていてくれ!」
「うっ……!」
「うぅっ、またか……!」
「この間のボタン……ミニ・ブラック・ホールのボタンは……」
カララ
「コスモ、ノーマル・エンジンを切りましょう!」
コスモ
「何っ?」
カララ
「イデのパワーなら自衛力がある筈です。任せましょう!」
「あぁっ!」
コスモ
「カララ!」
「あっ……!」
「カララはああ言うけど、ノーマル・パワーだってやれる筈だ。見ていろ!」
「全ミサイルを照準!」
カーシャ
「やっているわ! グレン・キャノンも!」
テクノ
「ようし!」
コスモ
「撃てぇっ!」
ギャムス
「ロッグ・マックが……!」
コスモ
「行けるぞ! イデの力じゃない。やられたと見せかけて敵を油断させて叩く……作戦勝ちだ!」
「逃げるのか?」
ギャムス
「一撃で、巨人は重機動メカを撃ち落としたか……!」
「戦力の出し惜しみはなしだ。ブフ兄妹を出してでも叩く! 巨人め……!」
コスモ
「カララが、ここまでソロ・シップの一員になっていたとはね……」
ベス
「彼女も必死なのさ。我々の仲間になろうと……」
シェリル
「そうね。私達異星人の中に混じって、お姫様って訳にはいかないものね……」
コスモ
「今日の戦いで思ったんだけど、イデの力って本当にあるのかい?」
シェリル
「さぁ。バッフ・クランの伝説にあるわ。『善き力によってイデは輝く』って。それが本当なら……」
コスモ
「俺達はイデに見放されたのかい? 何しろ、自分勝手な人間の集まりだから……」
「ね、ベスさん?」
ベス
「言えるな」
コスモ
「じゃあ、無限力で動くイデオンを造った第六文明人は、何故滅びたんだろう……?」