第21話 敵戦艦を撃沈せよ

前回のあらすじ
バッフ・クランの侍、ギャムス・ラグは、その持てる戦力の全てを投入してソロ・シップとイデオンに襲い掛かってきた。
不安定なエネルギーの動きを示すソロ・シップは危機に見舞われた。
しかし、巨大なバリアを張り、いつしかギャムスの攻撃を撥ね除けていった。
ギャムスの攻撃を撥ね除けたものの、ソロ・シップの傷も浅くはなかった。
ソロ・シップは、水の星フラッグ・スターを後にした。
ソロ星の軍人
「デス・ドライブ突入15分前! 全員、艦内へ戻れ!」
 〃
「ようし、良好!」
 〃
「ようし!」
コスモ
「イデオンのゲージは変化がありましたか?」
ハタリ
「見た目には何の変化もないな。このゲージを作っているイデオナイトをぶち壊せば分かるんだがね」
コスモ
「全くね」
「うっ……靴下、洗濯してないでしょ」
ハタリ
「四日目かな」
コスモ
「ロッタに頼んだら?」
ベス
「デス・ドライブに入る! ハタリ、いいか?」
ハタリ
「やってくれ。ジョリバ、イデオンのゲージのチェックはOKだ」
バッフ・クラン兵
「座標確認。目標、バッフ・クラン星。本国だ」
 〃
「待て待て、座標が揺れてるぞ」
 〃
「修正すればいい。メイン・エンジン点火!」
ハルル
「イデの巨神……そうであってもらわねば困る。でなければ、失敗を重ねすぎた私が物笑いの種となるわ」
バッフ・クラン兵
「ハルル様!」
ハルル
「どうだ?」
バッフ・クラン兵
「デス・ドライブに入りました。座標の微調整に時間が掛かりますが……」
ハルル
「急げよ。一日も早く帰りたい」
ベス
「イデオンの方のゲージもパワー・アップしているようだ。ハタリと関連性を調べるんだ」
リン
「ルゥ、こんなとこまで……」
シェリル
「もうっ……リン、ロッタ! パイパー・ルゥを入れないでって言ったでしょ?」
リン
「はい!」
ハタリ
「……上がっているな、ゲージは」
ベス
「ん? まるで生き物のように活き活きとしている……」
シェリル
「何故かしら? ソロ・シップは傷付いているし、敵も近くにいるという訳じゃないのに……」
ハタリ
「ん、何だ……?」
「ベス、右側に何か見えないか?」
ベス
「何? 右舷監視モニタ、目を離すな! 総員……あっ!」
「右舷後方に敵艦接近!」
シェリル
「ベス! 敵なんか居ないわ!」
バッフ・クラン兵
「メイン・エンジンは正常なのか?」
 〃
「左前方に敵艦! 座標を固定しろ!」
ハルル
「ドロワ・ザンの座標が合わなかっただと? 何故だ?」
バッフ・クラン兵
「わ、分かりません!」
ハルル
「異星人の船を追えとは命令してはいない!」
ベス
「右舷、全砲塔開け! イデオン各機、発進急げ!」
バッフ・クラン兵
「ハルル様、原因が分かりました! 敵艦に引っ張られ、ドロワ・ザンがランデブー現象を起こしたようです!」
ハルル
「何だと?」
バッフ・クラン兵
「時空の共振であります!」
ハルル
「離れられんのか?」
バッフ・クラン兵
「は、はい! この距離をもたせるのが精一杯で……!」
ハルル
「時間も空間も歪める力が、あのロゴ・ダウの異星人の船にあるというのか……?」
コスモ
「何てこった。俺達は永遠にバッフ・クランから逃げられんのか……?」
「しかし、イデオンのゲージは輝きを増している……」
デク
「お待たせ!」
コスモ
「ご苦労さん。敵の戦力をチェックしてくれ」
デク
「了解!」
シェリル
「ベス……ひょっとすると、戦うのも逃げるのも思いのままじゃなくて?」
ベス
「あぁ……恐らく、バリアは十分過ぎるぐらい発生している筈だ。……ハタリ!」
ハタリ
「あぁ、亜空間用バリアだけじゃない。行けるぞ!」
シェリル
「戦いましょう」
ベス
「シェリル……」
カララ
「私もそう思います。私も戦った方がいいと思います」
「いつもならすぐ襲ってくるドロワ・ザンなのに、今日はこちらの出方を伺っているようです」
シェリル
「どういう事?」
カララ
「一挙に襲うだけの戦力がないのでしょう」
コスモ
「ソル・アンバー、ドッキング・スタンバイ!」
カーシャ
「ソル・コンバー、ドッキングOK!」
モエラ
「ソル・バニア、ドッキング・スタート!」
ハルル
「重機動メカ『ギラン・ドウ』、発進させよ!」
ベス
「バリアを切れ、イデオン発進! ソロ・シップ180度回頭!」
バッフ・クラン兵
「あぁっ、敵艦が向かってきます!」
ハルル
「敵艦正面に集中砲火を浴びせろ!」
バッフ・クラン兵
「はっ!」
ハルル
「どう思うか? 敵とこうも接近して、こちらの手持ちの武器はないに等しい」
ゼキタン
「離れられるものなら離れた方が宜しいかと思われます」
「んっ……!」
ハルル
「うっ……!」
「修理中のジグ・マックがある筈だ。発進用意を!」
ゼキタン
「はい!」
ハルル
「上手く敵艦を離せればよし。万一の時の為に……!」
ゼキタン
「はい。生体発信機を放出しつつ離脱する! しかし、さっき発進したギラン・ドウは如何致しましょう?」
ハルル
「スリムラとハウンの戦士候補は二階級特進で用意してやれ。今は資料を本国に届けるのが急務である」
コスモ
「わぁっ……!」
「ええいっ!」
デク
「敵さんは逃げていくみたいだよ、コスモ!」
コスモ
「了解!」
ハタリ
「バリアは益々強くなっているようだ」
ベス
「よし、イデオンにも伝えろ。デス・ファイトで必ずあの船を沈める!」
「カララ、いいな?」
カララ
「やむを得ません、やってください。気丈夫な姉……男勝りに生き続けるよりはいいでしょう」
ハルル
「ミサイル、弾丸を惜しむな! 全て撃ち尽くして構わぬ!」
モエラ
「敵はたじろいでるぞ! ハハッ……勝てる、俺達は勝てるぞ!」
コスモ
「モエラ、笑ってる場合か! パワーが上がっているんだ、グレン・キャノンを有効に使わせろ!」
カーシャ
「イデオンのパワーが上がっているのなら、ミサイルなんか要らないわ! グレン・キャノン、撃って!」
テクノ
「おう!」
「う、うわっ!」
コスモ
「テクノ、どうした?」
テクノ
「グレン・キャノンが焼き切れた!」
コスモ
「何?」
ハタリ
「破壊された所は構うな! 攻撃に集中しろ!」
ベス
「明日は戦いはない、今日限りだ! 手の空いている者は機銃を撃て!」
ロッタ
「あっ……い、いつもと違うわ!」
リン
「みんな、気が立ってる……」
カララ
「……分かりましたか?」
シェリル
「おかしいわ。みんなの戦闘意欲が高いからゲージがパワー・アップしているっていうんではなさそうよ」
カララ
「そういえば、ゲージの輝きは不安定ですね……」
デク
「コスモ! イデ……イデオンがおかしいよ!」
コスモ
「この機体の揺れは何だ? ……モエラ!」
ソロ星の軍人
「う、うわぁぁっ!」
モエラ
「分からない! ノーマル・エンジンもオーバー・ヒートし始めた!」
ベント
「駄目だ、メイン・エンジンのパワー・コントロールが出来ない!」
カーシャ
「何なの? この唸りは何なの?」
「キャーッ!」
モエラ
「うわぁーっ!」
コスモ
「どうしたんだ!」
ハタリ
「イデオンがドッキング・アウトした!」
シェリル
「何ですって?」
カララ
「こんな時に……!」
リン
「戦闘中に……」
ロッタ
「イデオンが?」
ベス
「何が起きたんだ?」
ジョリバ
「異常なパワー・アップで、各メカが拒否反応を起こしたんだ!」
コスモ
「何が起こったんだ? イデオン、ちゃんと動いてくれ!」
「デク、ミサイルの発射は続けろ! モエラ、パワー・コントロールはどうなっているんだ!」
カーシャ
「私は1機でも戦ってみせるわ!」
コスモ
「亜空間飛行中だ! ソル・コンバーのパワーだけでは危険だ!」
カーシャ
「パワーそのものは上がっているのよ! 大丈夫!」
ハルル
「巨人が分離したというのか!」
ゼキタン
「はい。どんな奇襲を掛けてくるのかもしれません! 宇宙服をお召しになってください!」
ハルル
「ジグ・マックを出せ!」
ゼキタン
「いえ、まだ逃げられる可能性はあります! どうか宇宙服を!」
ハルル
「よし……!」
バッフ・クラン兵
「うわぁぁっ!」
ハルル
「ミサイルを出し惜しむな! 撃って撃って、撃ち尽くせ!」
バッフ・クラン兵
「ハルル様、通信が入っています」
ハルル
「構うな、目の前に敵が居る!」
バッフ・クラン兵
「しかし、ハルル様を出せと……」
ハルル
「拡大しろ!」
バッフ・クラン兵
「はっ!」
通信の声
「ドロワ・ザン! ハルル・アジバ殿がいらっしゃる筈だ!」
「このままでは危険だ! 亜空間飛行解除して逃げろ!」
「聞こえているのか、ドロワ・ザン! ハルル・アジバ殿!」
ハルル
「この声は……この声の主は……」
通信の声
「応答せよ、ドロワ・ザン!」
バッフ・クラン兵
「ハルル様……!」
ハルル
「ポイントを聞け!」
バッフ・クラン兵
「はっ! こちらドロワ・ザン、脱出ポイントを示せ! こちらドロワ・ザン!」
通信の声
「……12……23……」
ジョリバ
「バッフ・クランの通信らしいのをキャッチした! カララ!」
カララ
「えっ? は、はい……!」
ジョリバ
「テープをリピートする。翻訳してくれ」
カララ
「亜空間飛行を解除するようです。距離は2.67レイター・セクト、座標合わせはRK12、23……あぁっ……!」
ハタリ
「総員に告ぐ! デス・ブレーキを掛ける、用意!」
シェリル
「カララ……!」
ベス
「カララ、感謝する! イデオン各機、後退しろ!」
バッフ・クラン兵
「全天宇宙図投写、位置確認! ララドニア6第24エリア!」
ハルル
「通信を送った者がこの近くに居る筈である。急いで捜索しろ」
「な、何か?」
バッフ・クラン兵
「わ、分かりません! 何か強力な磁場が発生しています!」
ハルル
「な、何? どういう事だ?」
ゼキタン
「全員、各員のパネルをよく見ろ!」
ハルル
「ドロワ・ザンの周りに異常が認められるようだ」
「あっ……!」
「な、何故こんな事に……!」
コスモ
「て、敵艦の真下に……!」
デク
「コ、コスモ!」
ハタリ
「ベス、脱出する! ノーマル・エンジン、フル・パワー!」
ベス
「待て! こっちから離れるんじゃない……狙い撃ちされる!」
ハタリ
「し、しかし……このままではミサイルは撃てない!」
ベス
「敵艦の離れるのを待つ! 全員、白兵戦の用意!」
シェリル
「ロッタ、リン! 分かったわね? 民間人はなるべく船の中央へ! 宇宙服と武器を持って!」
ロッタ
「は、はい!」
リン
「ロッタ、本当に私達戦うの?」
ロッタ
「こんなんじゃ逃げ出せないでしょうね……!」
ゼキタン
「敵艦への攻撃はやめろ! こちらも巻き添えを食ってやられる!」
ハルル
「どうするか、ゼキタン?」
ゼキタン
「白兵戦しかありません!」
ハルル
「うむ。全員総力を挙げて敵艦を乗っ取る! 前方のミサイルは、巨人の各機が発進せぬように狙いを付けろ!」
ソロ星の軍人
「うわっ!」
 〃
「わぁぁっ!」
デク
「コスモ! ど、どうするの? イデオンは?」
コスモ
「発進させる。前みたいにイデオンを取られたりしちゃ堪んないからな」
「ゲージの下のレバーを手前に引いて」
デク
「それ!」
コスモ
「よし、パワーが安定してきたぞ!」
「ドッキング出来るか?」
カーシャ
「ドッキング出来るわ!」
モエラ
「ノーマル・エンジン、パワー良し!」
コスモ
「了解!」
バッフ・クラン兵
「動き出した……わっ!」
 〃
「わぁぁっ!」
おばさん
「あっち行け、この!」
バッフ・クラン兵
「わぁぁっ!」
ロッタ
「リン、急いで!」
リン
「うん!」
ロッタ
「ここからは一歩も入れちゃいけないのよ!」
リン
「私に、銃が撃てるかしら……?」
ロッタ
「撃つのよ!」
リン
「きゃっ!」
バッフ・クラン兵
「向こうだ!」
ロッタ
「きゃぁぁっ!」
リン
「ロッタ……どうしたの、ロッタ!」
ロッタ
「こ、殺してしまった……殺してしまった……!」
ハルル
「ええい、取り逃がすなと命令した筈だ!」
バッフ・クラン兵
「わぁぁっ!」
コスモ
「ソロ・シップが乗っ取られる前に、この船を沈めてやる!」
カーシャ
「コスモ! ブリッジを、ブリッジを狙って!」
コスモ
「了解!」
バッフ・クラン兵
「応答願います! こちらドロワ・ザン、応答願います!」
ハルル
「声の主がもしダラム・ズバならば、私が嬲り殺しになるのをどこかで見ているというのか……」
バッフ・クラン兵
「わぁぁっ!」
ソロ星の軍人
「わぁっ!」
ベス
「うっ!」
カララ
「ベス!」
バッフ・クラン兵
「うわぁぁっ!」
ハタリ
「こいつ!」
バッフ・クラン兵
「うわっ!」
 〃
「お、おい! ドロワ・ザンが……!」
 〃
「ドロワ・ザンへ戻れ! 船を守る事が先だ!」
ベス
「ハタリ、敵艦より脱出する! 爆発に巻き込まれるぞ!」
ハタリ
「了解!」
カララ
「お姉様、憎み合う事も今日でお終いですね……」
ハルル
「終わる時は造作もない……」
ゼキタン
「ハルル様、脱出のご用意を!」
ハルル
「うむ」
「貴方は最後まで私を弄び、異星人に身を委ねさせようとするのか……」
コスモ
「止めを刺す! 全ミサイル、撃ち尽くせ!」
「やった! 異星人に勝った……!」
デク
「コスモ、ブリッジが……!」
コスモ
「逃がすもんか!」
「うっ! な、何だ……?」
「撃ち漏らしたのか……」
カーシャ
「何て早いメカなの?」
ベス
「新型の重機動メカだ……」
「ソロ・シップの被害と負傷者を調べろ!」
ハルル
「礼を言わなくてはならないようですね。助かりました、感謝します」
ダラム
「我々も、敵の力を知りたい為に救援を出すのが遅れてしまった。すまないと思う」
ハルル
「口先の謝罪なぞ、聞きたくはない!」
「この宇宙船、重機動メカ……軍の物ではない。どういう事なのだ?」
ダラム
「相変わらずだな、ハルル・アジバ殿」
ハルル
「人間はそう変わるものではない! まして、貴方の為になぞ……」
ダラム
「本国に還られるのに、あの船をお貸ししよう」
ハルル
「助かる」
ダラム
「条件はあります」
「あの船を手に入れるのに、私は体を張っている。本国へ着いたら直ちに返していただきたい」
ハルル
「貴方に借りは作らぬよ」
「ギジェ・ザラル……」
コスモ
「俺達は、ソロ・シップにあるイデとかいう謎の力に振り回されているんじゃないのか……?」
「ね、シェリルさん?」
シェリル
「そうね。イデのコントロール・システムが分からない限りは、そう言えるわね……」
ベス
「パワー・アップしている事は、間違いないんだからな……」
ナレーション
異常なイデオンのゲージの輝き……それは一体、何による輝きなのか……。
そしてまた、何によって働く力なのだろうか。