第23話 戦慄・囮の星

前回のあらすじ
異星人バッフ・クランのハルル・アジバは、本国へ還ろうとした所をコスモ達ソロ・シップに捕まった。
しかし、攻撃するイデオンも異常なパワー・アップの為に自らのドッキングが破れ、苦戦を強いられた。
そして、二つの船は接近戦にもつれ込んだ。
その戦いによってハルルは敗北するかに見えたが、新たな援軍によってコスモ達はこれを取り逃がした。
ベス
「……いつから受信してる?」
ハタリ
「30分程前からだ。反恒星間通信帯域で突然入ってきた」
ベス
「そうか」
「聞いたろ、みんな。キャラルは近いがどうする?」
コスモ
「エイリアンか……」
シェリル
「私は反対よ。アジアンの例もある事だし」
デク
「でもさ、バッフ・クランじゃないかもしれないんだろ? ここはみんなで助けに行くべきだよ」
シェリル
「そんなに死にたいの、デク?」
デク
「そ、そんなんじゃないけどさ……」
コスモ
「ソロ星が襲われた時、シェリルさんは助けが欲しかっただろ?」
「生きるか死ぬかの問題じゃないよ。助けた方がいい。けど、イデオンのパワーはどうなんだ? コントロール出来るのかな?」
ジョリバ
「調べているがな」
コスモ
「キャラルまで何日掛かる?」
ベス
「三日は掛からん。その間にもう一度考えよう」
ルウ
「まんま、まんま……」
リン
「だぁめ! ルウには後であげるからね」
「あぁ、もう……めっ!」
デク
「悪戯しちゃ駄目!」
「イテテッ……!」
理容師
「贅沢言うな。最期だって時にタダでやってやってるんじゃないか」
デク
「最期じゃないから散発やってんだぞ!」
ベス
「シェリルの方の調べはどうなっている?」
シェリル
「イデオンのゲージの変化と脳波の因果関係は見付からなかったし……」
コスモ
「そんな事、分かってるよ。最初はどっちも勝手に動き出したんだからね」
シェリル
「でもね、恐怖心がパワー・アップに繋がるという事実は認められるのよ」
コスモ
「じゃあ、みんなで『怖い怖い』って思ってた方がイデオンは強くなるのか?」
シェリル
「そう単純でもないから困るのよね」
カーシャ
「技術スタッフの立場で、イデのコントロールの事、分からないの?」
ジョリバ
「メイン・エンジン付近には、俺達に突破出来ない磁場みたいなものがあるんだがな」
カーシャ
「本当に無限の力があるのなら、私達、攻勢に出る事だって出来るのよ?」
ベス
「それでバッフ・クランを全滅させるのか?」
カーシャ
「出来る事ならね」
コスモ
「そして、デクやルウから英雄と云われる……」
カーシャ
「それが、いけないとでも言うの?」
コスモ
「これがキャラル? 本当に人間が移民してる所なの?」
ベス
「あぁ……キャラルである事は間違いない」
シェリル
「地球の創世記そのものって感じね……」
ハタリ
「半球部分は完全に壊滅状態だ。エイリアンらしき者は探知出来ない」
コスモ
「バッフ・クランじゃないのかな。アジアンのやられ方に似ている」
べス
「準光速ミサイルという訳か。ザン・タイプ一隻の準光速ミサイルでも、このぐらいの事は出来る」
デク
「やっぱりバッフ・クランか! 畜生、奴らめ……!」
「コスモ、この近くに奴ら、居るんじゃないかい?」
コスモ
「ようしデク、行くぞ!」
デク
「待ってました!」
ベス
「イデオン各機は偵察に発進! ソロ・シップは、ここで臨戦態勢を取り、待機する!」
デク
「それ!」
コスモ
「カーシャ、モエラ! 散開して偵察だ!」
カーシャ
「了解!」
モエラ
「了解!」
モエラ
「高度100! 生存者を見落とすなよ!」
ベント
「センサーで追っているが、見付かるかな? 生き残りが……」
モエラ
「あぁ……」
「お、おいっ……!」
「あれが、一発の純光速ミサイルが作った穴だぜ……」
ベント
「こりゃ、生き残りは居ないんじゃないの?」
テクノ
「ここはまさに地獄の一丁目って所だな。閻魔さんでも捜した方が早そうだぜ」
カーシャ
「高度に気を付けて」
テクノ
「はいはい」
コスモ
「この辺りは他よりマシだな。デク、センサーから目を離すな」
デク
「うん、分かってるよ」
「コスモ、センサーがキャッチした」
コスモ
「よし、ビデオ・モニターに映せ」
デク
「了解!」
コスモ
「あれか……。よく分からないが、生存者らしい。正面に着陸して確認するぞ」
「おおい、そこに誰か居るのか?」
「うっ……!」
デク
「コスモ!」
「な、何人居るんだよ?」
コスモ
「誰が撃てと言った!」
デク
「だ、だってさ……!」
コスモ
「相手は味方かもしれないんだ! 確認するまで手は出すな、いいか!」
デク
「分かったよ!」
コスモ
「撃つのはやめろ! 俺は地球人だ! 聞こえてるか!」
キッチン
「お黙り! そっちが攻撃をした!」
コスモ
「撃つのをやめろ! 俺は救助に来たんだ、バッフ・クランじゃない!」
キッチン
「ほら、自分で正体を見せたわね! 誰もバッフ・クランなんて言ってないわ!」
子供
「そうだ、出て行け!」
キッチン
「どこに行ったか、よく探して!」
コスモ
「こうなりゃ、強制的に……!」
キッチン
「どこ? どこに居るの? 返事ぐらいしなさい!」
子供
「お姉ちゃん、どうするの?」
キッチン
「心配しないで」
コスモ
「女と子供……! 地球人じゃないか!」
子供
「あっ、覗いてる!」
キッチン
「え、あっ……!」
コスモ
「待て、撃つな!」
キッチン
「出てけ!」
コスモ
「あっ……!」
「何て疑り深いんだ……」
デク
「コスモ!」
コスモ
「ん?」
デク
「何か来るよ!」
コスモ
「デク、引っ込んでろ!」
デク
「あっ……!」
キッチン
「はっ! あんな子が……」
デク
「高速で接近してくるものがある!」
コスモ
「カーシャ達じゃないか?」
デク
「違うよ! 識別信号に答えないもん!」
コスモ
「……おい、聞こえるか! 一時休戦だ、異星人が来る! そこに居ては危険だ、どっかに隠れてろ!」
子供
「あ、出た!」
キッチン
「撃っちゃ駄目」
子供
「えぇ……?」
キッチン
「何か違う……」
コスモ
「デク、相手の位置は?」
デク
「もう見える筈だよ」
コスモ
「エンジン、出力上げろ」
デク
「今、50%!」
コスモ
「ん、あれか!」
「デク、カーシャ達に連絡しろ!」
デク
「了解!」
ダラム
「フフッ、掛かったな! この星を叩けば貴様らが現れると踏んだが、フフッ……!」
コスモ
「デク、緊急離脱! 急上昇するぞ!」
デク
「了解!」
ダラム
「その力、見せてもらおうか!」
コスモ、デク
「わっ!」
コスモ
「デク、下のミサイルを撃て!」
デク
「やってる!」
キッチン
「みんな、急いで地下に行くのよ!」
子供
「うん!」
キッチン
「さぁ、早く!」
子供
「うん!」
コスモ、デク
「うわっ!」
ダラム
「速い! ギジェの言う通り、我々と同レベルの科学力なら必ず叩いてみせる!」
コスモ
「デク、ビーム撃て!」
デク
「了解! ロックした、ファイヤー!」
コスモ
「うっ……バリアか!」
「デク、ビームを一点に集中しろ! ミサイルも集中させる!」
ダラム
「ハハッ……! 軍の重機動メカと同じと思われては困る!」
デク
「わぁっ、コスモ……!」
ダラム
「フフッ、これで巨人にはなれまい! 仲間が来たら……!」
コスモ
「クソッ、イデオ・デルタを生け捕る気か!」
「やってみるか!」
ダラム
「ヌッ、このガンガ・ルブを振り切るのか!」
デク
「ぶつかる!」
コスモ
「行けぇ!」
ダラム
「うおぉっ……!」
「いい腕をしている!」
コスモ
「デク、大丈夫か?」
デク
「だ、大丈夫。て、敵は?」
カーシャ
「コスモ、接触したの?」
コスモ
「カーシャか!」
デク
「あっ、見えた! イデオ・ノバとイデオ・バスタだ!」
コスモ
「よし、ドッキングする! デク、敵を近付けさせるなよ!」
デク
「了解!」
ダラム
「ん、来たのか!」
「ギジェ、聞こえるか?」
ギジェ
「はっ!」
ダラム
「敵はドッキング体勢に入るぞ!」
ギジェ
「了解!」
カーシャ
「コスモよ!」
テクノ
「後ろに敵が付いているようだ!」
コスモ
「カーシャ! カーシャ!」
カーシャ
「コスモ?」
コスモ
「ドッキングする! 軸合わせを……」
「待て、下から何か来る!」
カーシャ
「えぇ?」
「左へ!」
テクノ
「間に合わん!」
カーシャ
「見た事のない重機動メカ!」
テクノ
「凄い火力だ!」
モエラ
「来たぞ、上昇しろ!」
「今だ、ドッキングするぞ!」
カーシャ、テクノ
「了解!」
ダラム
「やらせるか!」
コスモ
「バリアが揺れる!」
モエラ
「ドッキング軸が合わない!」
ダラム
「巨神にはなれまい! バリア崩しの素粒子、ドノ・バンの威力!」
「ギジェ、どうしたか! 貴様もバリア崩しを掛けろ!」
ギジェ
「ギジェ、上昇します!」
ダラム
「ん?」
「馬鹿な……!」
コスモ
「どうだ!」
「モエラ、急速ドッキング! いいか?」
モエラ
「了解!」
ギジェ
「バリア崩し、ドノ・バン!」
コスモ
「下がれ!」
ギジェ
「バリアを切ったのか?」
ダラム
「速い!」
コスモ
「賢しいんだよ、バリア崩しなんか!」
「遅い!」
ダラム
「ミサイル・ランチャーが……!」
「巨神め、舐めてもらっては困る!」
ギジェ
「ダラム様!」
ダラム
「ギジェ、奴に核爆弾を仕掛けた! 急いで離脱しろ!」
ギジェ
「核爆弾……!」
コスモ
「逃がすか!」
コスモ、デク
「うわぁぁっ!」
モエラ、ベント
「わぁぁっ!」
カーシャ
「キャーッ!」
テクノ
「うぉぉっ!」
ギジェ
「ダラム様、超小型とはいえ核の力です。あれでは巨神を破壊してしまいます」
ダラム
「試したのだ」
ギジェ
「試す?」
ダラム
「そうだ。核の直撃を受けて、尚、無傷でいられる巨神でなければ、手に入れる価値はない……」
コスモ、デク
「うぅっ……」
デク
「コスモ、一体何があったんだ?」
コスモ
「この爆発、ただの爆弾じゃなかったな……」
カーシャ
「コスモ、何なの今のは……?」
モエラ
「左の方で何か爆発したのか? 凄いショックだったが……」
コスモ
「後で調べよう。今は避難民を探しだす事の方が先じゃないかな」
モエラ
「そうだな」
コスモ
「デク、引き返せ」
デク
「後はオイラがやるよ。コスモは休んでて」
コスモ
「あぁ、頼む」
ダラム
「そうか。あの巨神、核をも跳ね返したか」
ギジェ
「はい」
ダラム
「こちらの注文通りの性能である事は有難いが、さて、どう捕まえるか……」
ギジェ
「扱う異星人は我々と似たようなものです。そこに付け入れば、必ず……!」
ダラム
「しかしなギジェ、気になるな。伝説ではイデは善き力で輝くと云われている。我々の戦いが善き力かどうか、ちと、な……」
ギジェ
「私はズオウの独裁を倒す為には、イデの力を……!」
ダラム
「そういう事だな。ドバも同じだ」
「我々は、オーメ財団から巨神を手に入れろという命令で、この船と金を受けている。信じて戦うしかないな」
子供
「このデッカイ奴をお前が操縦するのか?」
 〃
「嘘だろ?」
デク
「嘘じゃないよ、本当さ。覚えれば割と簡単なもんさ」
子供
「じゃあ、今度俺に操縦させろよ」
デク
「え? 駄目だよ、そんな事……」
子供
「何でだよ? お前に出来て、俺達には出来ないってのか?」
デク
「いや、そんなんじゃないけどさ……」
子供
「チェッ、けちんぼ! 本当は乗れないんだろ、お前!」
デク
「そんな事ないよ!」
子供
「ふん、怪しいもんだよな!」
コスモ
「……キッチ・キッチン」
「キッチン……」
キッチン
「さっきはご免よ。でもね、アンタ達のお陰でバッフ・クランって異星人、攻めてきたんじゃない?」
コスモ
「そんな……そんな事はないよ」
キッチン
「だったらいいけどさ。軍人の父も死んだわ。あの子達の両親も……。出てって欲しいな、すぐ……」
コスモ
「あぁ……武器・弾薬が手に入りゃ、出て行くさ」
キャラルの軍人
「そりゃ出来ん! 出来ん相談だ!」
ベス
「何故です? 我々は、武器も兵器も少ない為に苦戦しているんです」
「バッフ・クランを叩く為には、キャラル星の防衛軍の協力が必要なんです」
キャラルの軍人
「半分以上の戦力を叩かれている我々には全く余裕がない。諸君らは、手持ちの武器でやる事だな。失礼」
ベス
「しかし……!」
シェリル
「これじゃ、アジアン星と同じじゃないの」
ベス
「あぁ……」
コスモ
「あっ……」
キッチン
「仕方ないでしょ」
コスモ
「そ、そりゃそうだけど……。俺達だって、必死で戦ってるんだぞ」
キッチン
「だけどね……肉親を殺された人達は、みんな、アンタ達の事、敵だって思ってる。しょうがないでしょ」
コスモ
「ソロ・シップのみんなも、肉親を殺されているんだぞ? 苦しんでるのはアンタ達だけじゃない!」
キッチン
「コスモ……」
コスモ
「殺し合いが好きな奴が、居るもんか……!」
キッチン
「そうだね……」
ナレーター
新たな人々に会えて、更に孤独を味わう事にもなる。これが、ソロ・シップに与えられた運命なのだろうか。