第25話 逆襲のイデオン

前回のあらすじ
バッフ・クランのギジェはイデオンを奪った。しかし、コスモ達の反撃を前に再び手放す事となった。
ダラムとギジェの重機動メカは、戦線を脱出した。
そして、コスモ達ソロ・シップのクルーは、ダラムらの本隊に攻撃を加える決意をするのだった。
コスモ
「こんな大きな森だって残ってるんじゃないか。住めるな、うん……」
キッチン
「どういう訳、コスモ? こんな所に……」
コスモ
「キッチンは、このキャラルに残るって言ったよな? 心配だから偵察してみたのさ」
キッチン
「そりゃ私達の星だもの、住めるわ」
コスモ
「なぁ、今度の作戦が上手くいったら、ソロ・シップに乗らないか?」
キッチン
「何故?」
コスモ
「な、何故って……キャラル星もいいけど……ハハッ、守ってやるよ、この星を! 体を張って守ってやる!」
キッチン
「えぇ」
カーシャ
「コスモ……」
コスモ
「じゃぁ、また!」
キッチン
「気を付けて!」
コスモ
「大丈夫だって!」
カーシャ
「……こんな大事な時に、どこに行ってたの?」
コスモ
「ヘヘッ……」
カーシャ
「フンッ、キッチンなんて子とさ……!」
コスモ
「え? 焼き餅か?」
カーシャ
「おふざけでないの!」
カララ
「何でしょう?」
ベス
「見て欲しい。カララが見易いように易しく描いた、全天宇宙図だ。バッフ・クラン星を教えて欲しい」
コスモ
「今すぐ俺達が攻め込もうって事じゃないんだ、カララ……」
ベス
「カララの苦しみは分かる。我々だって、逆の立場に立たされれば悩むだろう」
カララ
「ベス……」
ベス
「よく考えてくれ」
コスモ
「この作戦が終わったら聞かせてよ、カララさん……」
デク
「あっ!」
キッチン
「あらトム、どうしたの?」
トム
「シィッ! ……ほら、見付かっちゃったじゃないか!」
デク
「トムちゃん、見っけ!」
キッチン
「ソロ・シップ発進よ」
ベス
「総員に告げる! 総員に告げる!」
「ソロ・シップ、発進用意! 各員、キャラル総軍の残存部隊と協力して、バッフ・クランの艦隊を攻撃する!」
「この作戦で一機残らず敵を叩く事が、我々の目的である!」
「一機でも一艦でも残す事は、人類全体にとって危険である! 諸君らの健闘を祈る!」
デク
「実戦だからってさ、連れてってくれりゃいいのにさ……!」
キッチン
「トム、まだ焼け跡に隠れてる子達、居るんでしょ?」
トム
「あ、あぁ……」
キッチン
「探しに行くわ」
トム
「うん」
ダラム
「ハルルめ、ジグ・マック2機を付けてくれたのか」
ギジェ
「はい」
ダラム
「うむ、これが言伝か」
「フフッ……ゼロ・ザンを借りたお礼にジグ・マックを寄越したと」
ギジェ
「しかし、今の出撃準備が少し遅れますが……」
ダラム
「戦力が増えるんだ、いいではないか」
ギジェ
「はぁ……」
ダラム
「更に、対巨神用に開発しつつある重機動メカを送るといっている」
ギジェ
「対巨神用の重機動メカ……!」
ダラム
「ハルルも可愛い所がある。……違うな。軍とオーメ財団の間に、何かあっての事だろう」
ギジェ
「手を組んだ……という事ですか?」
ダラム
「そんな所だな」
バッフ・クラン兵
「敵艦キャッチ!」
ダラム
「何だと?」
バッフ・クラン兵
「かなりの数だ。戦艦も居るぞ!」
ダラム
「私も甘いな……!」
バッフ・クラン兵
「はぁ……?」
ダラム
「次の作戦という発想は、常に攻撃者だという思い上がりのさせる事だ。敵も攻撃してくる事は出来るのを忘れていた」
ハタリ
「戦艦2……後は分からないが、かなり居るぞ!」
ベス
「よし! イデオン各機、発進! ただちにドッキングして臨戦態勢に入れ!」
コスモ
「了解! イデオ・デルタ、発進する!」
カーシャ
「了解!」
モエラ
「了解!」
オーメ財団兵
「全員、補給停止! 戦闘隊形に付け!」
ダラム
「……いいな? ガンガ・ルブとジグ・マック、それにガダル・ロウがある。一気に叩くぞ!」
ギジェ
「はっ!」
コスモ
「ミサイル、射程距離内へ60秒! いいか?」
ハタリ
「射程距離に入るぞ! イデオンの前を開けろ!」
ベス
「各艦隊、対空放火用意!」
「主砲、撃て! ミサイル、水平発射!」
コスモ
「これで終わりだ! 終わりにするんだ!」
ベス
「キャリオカが出過ぎている! 援護しろ!」
コスモ
「キャリオカが沈んだ! バッフ・クランめ!」
ギジェ
「必死だ! ロゴ・ダウの異星人め、こんなに大規模に攻め込むとは……!」
「この戦いで、我々バッフ・クランとの接触を一切断ち切ろうというのだな?」
「ンッ!」
コスモ
「ええい、やるな!」
ハタリ
「ベス、近付きすぎるぞ!」
ベス
「構わん、行くんだ!」
ダラム
「ん? あの戦い方は、特攻だ! カミカゼ……何かの資料で見た事がある!」
ギジェ
「なぁに、たかが奴隷の戦法、私が打ち破ってみせます、ダラム様!」
ダラム
「侮れんぞ、ギジェ! 遮二無二なったとき程、計算の立たぬものはないからな!」
ギジェ
「はっ!」
ベス
「重機動メカの攻撃は避ければいい! 船だけを狙え!」
コスモ
「段々、腕を上げている!」
カーシャ
「避けて、コスモ! こっちはミサイルの照準だけで手一杯なのよ!」
モエラ
「コスモ、左に重機動メカ1機、避けてくれ!」
コスモ
「クソッ!」
ベス
「ジョリバ、ノーマル・エンジン最大出力だ! こんな調子じゃみんなで地獄へお出掛けだぞ!」
ジョリバ
「エンジンが焼けてるんだ! 黙っていてくれ!」
「冷却装置、どうなってんの! 回路が焼けてるぞ!」
ハタリ
「被弾! 看護兵、第21ブロックへ回れ!」
コスモ
「ウッ! 撃たれた……!」
カーシャ
「アァーッ!」
コスモ
「……ワァーッ!」
ダラム
「ヌワァーッ!」
コスモ
「デヤァァッ!」
オーメ財団兵
「わぁぁっ!」
ダラム
「ギジェのガンガ・ルブと、ガブル・ザンが……!」
「チッ、生意気な……!」
「直撃か!」
ギジェ
「ダラム様!」
「ええい、このままでは、俺を拾ってくれたダラム・ズバに対して面目が立たん!」
コスモ
「重機動メカめ! 戦いはこれっきりにするんだ!」
「ミサイル、撃てぇ!」
ダラム
「何ぃ!」
ギジェ
「ええい、こんな所で爆発とは……! いや、このチャンスに……!」
「ガンガ・ルブを任せるぞ! 俺は巨神に核爆弾を仕掛ける!」
コスモ
「逃がさん! ここで逃がしたら……!」
「うぅっ、くそ……血が止まらないのか……!」
「モエラ、操縦を少し頼む」
カーシャ
「怪我をしたの、コスモ?」
コスモ
「いや……」
「ん? バッフ・クランだ!」
モエラ
「コスモ、どうした! コスモ、バッフ・クランがどうしたって……?」
「ぬっ、正面!」
「カーシャ、操縦は任せる! 外に出てコスモを助ける!」
カーシャ
「えぇっ?」
ベス
「イデオンの動きが止まっている。どうしたのか?」
ハタリ
「状態は分からないんだ!」
ベス
「敵の重機動メカも1機、戦線から離れているようだ。気を付けろ!」
コスモ
「あぁっ……!」
モエラ
「コスモ……! コスモ!」
コスモ
「来るな! それより、核爆弾を仕掛けられた! 探せ!」
モエラ
「核爆弾……! どこだ、コスモ!」
コスモ
「イデオンの右耳、右肩、それに腹だ!」
モエラ
「あった!」
「カーシャ、腹の方の爆弾は見付かったか?」
カーシャ
「見付けたわ!」
ギジェ
「失敗か……!」
モエラ
「コスモ! 宇宙服の中が血で一杯じゃないか。コスモ、コスモ、しっかりしろ! コスモ、コスモ……!」
コスモ
「うぅ、コックピットに俺を……移してくれ……。ギジェが来る……!」
ギジェ
「ん?」
コスモ
「す、すまない……」
モエラ
「いいか、俺達に任せるんだ!」
カーシャ
「コスモ、大丈夫なの?」
モエラ
「分からん。カーシャ、敵はどうだ?」
カーシャ
「左下、重機動メカが……!」
ギジェ
「刺し違えても仕留めてみせる!」
カーシャ
「モエラ、急いで!」
モエラ
「わぁっ、カーシャ、下がるぞ! ミサイルを撃ってくれ!」
コスモ
「下がるな! 下がったら、敵の火力にやられる!」
モエラ
「相手はデカイんだ! 無理だ!」
コスモ
「同じ死ぬなら、刺し違えようじゃないか……!」
「カーシャ、パワー全開!」
カーシャ
「了解!」
ギジェ
「ロゴ・ダウの巨神め!」
「巨神め、逃がさん! 逃がさんぞ!」
コスモ
「ウワァァッ!」
カーシャ
「アァーッ!」
コスモ
「ドッキング・アウトォ!」
ギジェ
「巨神のメカめ、よくやる……!」
カーシャ
「コスモ、イデオ・バスタ脱出!」
モエラ
「コスモ!」
「ソロ・シップ! ソロ・シップ、聞こえるか! 重機動メカは全滅した! ドッキング急げ、コスモが重症だ!」
ロッタ
「おぉ、よしよし……」
「どうしたの、リン?」
リン
「うん。コスモと一緒に居た女の子……」
ロッタ
「あぁ、キッチ・キッチンって子?」
リン
「そう、あの子の姿が見えないのよ。ソロ・シップとイデオンが戻るっていうのに、どうしたのかしら?」
ロッタ
「そういえば、私もずっと会ってないわ」
デク
「俺、探してきてやる!」
ロッタ
「あ、デク、待ちなさい!」
リン
「デク、私も行くわ!」
ロッタ
「あぁ……ルウ、どうしたの? ソロ・シップが勝って帰ってくるのよ?」
キッチン
「真っ直ぐに行くのよ。そうすれば、食べ物のある所に行かれますからね」
「もうすぐよ。頑張って!」
「トム、どこに行くの?」
「トム、避難民の子達を案内するのよ!」
トム
「キッチン、あれ、異星人のメカじゃないの?」
キッチン
「えっ……!」
「トム、構わないで! トム、戻りなさい!」
トム
「異星人らしいのが居たんだ! やっつける!」
キッチン
「トム……!」
オーメ財団兵
「ん?」
トム
「ワッ!」
オーメ財団兵
「ウッ、ァァッ……!」
キッチン
「トム!」
ダラム
「し、しまった!」
「子供だったのか……!」
トム
「あぁ……わぁぁっ!」
ダラム
「……修理はどうか?」
オーメ財団兵
「飛べる!」
ダラム
「よし、ここを脱出する!」
カララ
「まだ、私の血液を調べてもらっておりませんが……」
ベス
「しかし、コスモはO型の血液だ」
ラポー
「でも、調べる必要はあります」
リン
「よく噛んで食べるのよ?」
ロッタ
「ほら、スープ零さないでね?」
「さっ、みんな元気出して! みんな、元気出さないと、キッチ・キッチンに笑われるぞ?」
ベス
「キャラル星に一人のバッフ・クランが潜入しているという事は、ここも安住の地ではなくなった」
ハタリ
「また、流離いの旅か……」
カーシャ
「いえ、カララを説得して、バッフ・クランの本星を討つべきよ!」
シェリル
「グロリアの事もあります。イデを解析し、軍を整えましょうよベス。それからバッフ・クラン侵攻の手立てを考えるのよ」
ベス
「カララ……!」
カララ
「これがソロ星、ロゴ・ダウですね。これを中心に、Y23軸とS58軸の方向250万光年に、バッフ・クランの地球があります」
ベス
「カララ……。カララ、いいのか?」
シェリル
「地球から500万光年離れた所だけど……」
ベス
「そこがバッフ・クラン星か」
カーシャ
「でも、何故? 何故、カララが急に教える気になったの?」
カララ
「貴方がたの苦しみを見るに耐えなくなったのです。けれど、それだけが理由じゃありません。何故か……」
シェリル
「これで、貴方がたの星が戦火に巻き込まれるのよ?」
カララ
「そうはならない解決策を見付けてください。頼みます」
ラポー
「カララ、お願い! 貴方もO型です。輸血を!」
カララ
「は、はい……!」
ベス
「カララがO型の血液……」
カララ
「酷く少ないのよ。O型って……」
ハタリ
「何故だ……?」
カーシャ
「そう。カララの突然の変身は何なの?」
シェリル
「ベスの愛に目覚めた……そんな事じゃないわ。何なのかしら、ベス……?」
ベス
「分かるものか。カララだって侍の娘だ。自分の恋愛感情だけで、自分の星を売る女性ではない」
「そんな女だと思いたくはない……」
シェリル
「私達の地球はここよ。バッフ・クランとソロ星と地球は、一直線に並ぶ……これは、偶然なのかしら?」
ナレーター
コスモはまだ、キッチ・キッチンの死は知らない……。
そして、新たな力が生まれつつある事については、誰一人知る者はなかった。