第26話 死闘・ゲルの恐怖

前回のあらすじ
ソロ・シップとダラム隊の激しい戦いの中、コスモはギジェと対決をした。
しかし、出血多量の為に気を失ったコスモは、ガール・フレンド、キッチ・キッチンが倒された事も知らず、眠り続けた。
デク
「このまま目が覚めないなんて事、ないんだろうね?」
ロッタ
「コスモは強い人よ。大丈夫よ」
オーメ財団兵
「異星人の船を発見!」
ギジェ
「意外と早かったな」
ダラム
「流石に、この船はいいな。ハルルめ、中々性能のいい戦艦を用意してくれたものだ」
ギジェ
「搭載してありました重機動メカ『ガルボ・ジック』も、惚れ惚れするような新兵器。成算があります」
ダラム
「対巨神戦用に開発したか。存分にその成果を見せてもらうか。尤も、我々がテスト台という考え方も出来るが」
ギジェ
「構いません。打倒、巨神が成るならば」
ダラム
「ハルルも変わったな」
ギジェ
「はぁ?」
ダラム
「予想以上の戦力を私に回してくれた事で、自分の気持ちを表そうとしているんだ。女としては可愛いのかもしれん」
ギジェ
「はい」
ベス
「え? コスモが目を覚ましたって?」
コスモ
「キッチ・キッチンが死んだなんて、何も民間人まで殺す事ないじゃないか」
ベス
「キッチ・キッチン?」
カーシャ
「キャラルで知り合った子よ。コスモの……」
コスモ
「殺し合いは軍人同士でやるだけでいいんだ。そうだろ、ベス? そうだろ、シェリル?」
カーシャ
「コスモ……」
コスモ
「畜生!」
「あぁっ……!」
シェリル
「何するの、コスモ?」
ロッタ
「まだ、寝てなきゃ……」
コスモ
「寝てなんかいられるか! 寝てなんか!」
シェリル
「コスモ!」
ロッタ
「寝てなさい!」
ベス
「ロッタ、好きにさせておけ。その方がいい」
コスモ
「クソッ……」
カーシャ
「みっともないわ、男が人前で泣くなんて。みっともないわよ」
コスモ
「お前に、何が分かるんだ! お前に……!」
シェリル
「コスモ、八つ当たりはいけないわ」
コスモ
「朴念仁が! 偉そうな事、言うな!」
シェリル
「朴念仁……私が?」
ロッタ
「コスモ! 悪いわよ、そんな……」
シェリル
「いいのよ、ロッタ」
ロッタ
「シェリルさん……」
デク
「みっともないぜ、コスモ!」
コスモ
「チビは引っ込んでろ!」
「うぅっ……!」
デク
「コスモ!」
コスモ
「チビは黙ってろ!」
ロッタ
「コスモ、しっかりして」
デク
「着れる訳がないだろ!」
ロッタ
「コスモ、みんな貴方を頼りにしてるのよ。貴方の気持ちも分かるけど、我慢するしかないのよ? コスモ……」
コスモ
「分かってるよ。分かってるけど、俺は、キッチ・キッチンにサヨナラも言ってないんだぜ? クソッ、クソッ……!」
ハタリ
「コスモ」
ベス
「コスモ、大丈夫か?」
コスモ
「自分で何とかするよ。気にしなくていいよ。どこに向かっているんだ?」
ハタリ
「地球だ」
コスモ
「地球?」
ベス
「ソロ・シップの残存兵力では敵は倒せない。宇宙連合軍に掛け合って、戦力を補給する」
シェリル
「それに、地球へ戻って第六文明人の謎を分析するのよ」
コスモ
「バッフ・クランは、間違いなく振り切ったのかい?」
ベス
「そのつもりだ。それに、我々にはバッフ・クラン星の位置が分かっている。いざとなれば……」
コスモ
「え?」
ベス
「カララが教えてくれた」
コスモ
「しかし、地球に戻っちまったらさ……俺は、自分の手でキッチンの仇を討てない」
ベス
「そんな個人的な事で戦っていると……」
ハタリ
「はっ! ソロ・シップを追跡している船がある!」
ベス
「何? 機関室、メイン・エンジンを最大に上げろ! 追っ手を振り切る! 総員、配置に付け!」
ジョリバ
「バッフ・クラン!」
ソロ星の軍人
「まだ諦めないのか!」
 〃
「畜生、俺達を故郷に帰さないつもりかよ!」
 〃
「また、どこかの星に逃げ込むつもりか?」
ジョリバ
「持ち場を離れるな! 仕事に専念しろ!」
リン
「あっ! 気持ち悪い!」
シェリル
「……その体で出撃は無理よ」
ハタリ
「あっ、コラ! ルウ、やめろ!」
シェリル
「あっ……!」
ベス
「デス・ブレーキを掛けてみるか」
ハタリ
「え?」
ベス
「バッフ・クランが追跡してるかどうか、確かめられる」
シェリル
「このまま逃げ切って、地球で援軍を頼んだ方がいいんじゃなくて?」
カーシャ
「地球まで行くの?」
コスモ
「自分の星を巻き添えにするのは良くないな。叩いてから地球に行った方がいい」
ベス
「コスモの言う通りだ。デス・ブレーキを掛ける」
オーメ財団兵
「消えたぞ、ロゴ・ダウの異星人の船が亜空間飛行を中止した」
ダラム
「脱出した空域をチェックしろ」
ギジェ
「出ますか?」
ダラム
「言うまでもない、出よう。異星人の動き、いつもより急いでいると思える」
ギジェ
「はい。では、ガルボ・ジックで」
ダラム
「よし」
「ハルルの感謝の気持ちに応えてやるか」
ハタリ
「敵が来る。方位4時、3分後にミサイルの射程距離に入る」
コスモ
「うぅっ……」
ベス
「コスモ、お前には無理だ」
コスモ
「敵に攻撃されるのを見ているだけなんて、真っ平だよ。キッチンの弔い合戦も出来ないなんて」
ベス
「そういう個人的な事で目が眩んでいると、勝てる戦いも勝てなくなるぞ」
コスモ
「勝ってみせる! 勝ってみせるって!」
コスモ
「デク、すまない」
デク
「当たり前でしょ」
コスモ
「さっきはすまなかったな」
デク
「俺だって、キッチ・キッチンは好きだったさ」
コスモ
「ありがとう。デクにそう言ってもらえると助かる」
デク
「どうしたの、コスモ?」
コスモ
「何でもない」
デク
「見えないのかい、コスモ?」
コスモ
「黙ってろ、デク」
デク
「だって……」
コスモ
「みんなに知られたら降ろされる。そうしたら仇は取れない。いいな、黙っていてくれ」
デク
「あぁ……」
コスモ
「男と男の約束だぞ」
デク
「分かった、僕がコスモの目になってやる。だけど、キッチ・キッチン一人の為に戦うのは嫌だ」
コスモ
「何だと?」
デク
「俺はみんなの為に戦う。人類全部の為に戦うんだ」
コスモ
「分かった。もうキッチンの事は言わない。約束する」
「行くぞ、デク!」
デク
「ああ! 男同士の約束だぞ!」
コスモ
「ソル・アンバー、イデオ・デルタ、チェンジ!」
デク
「了解!」
モエラ
「ソル・バニア、イデオ・ノバ、チェンジ!」
カーシャ
「ソル・コンバー、イデオ・バスタ、チェンジ!」
ギジェ
「巨神め! このカルボ・ジック、今までの重機動メカと同じだと思ってもらっては困る!」
コスモ
「どうなってるんだ、デク? 敵はどの辺に来てる?」
デク
「1時の方向! かなり速いよ!」
ベス
「コスモ、何をやってるんだ! ドッキングしろ!」
コスモ
「分かってる!」
デク
「もっと右だ、コスモ!」
「あっ!」
コスモ
「バッフ・クランめぇ!」
カーシャ
「コスモ、何をやっているの?」
テクノ
「グレン・キャノンの方へ回る」
カーシャ
「頼むわ、テクノ」
テクノ
「ああ。追っ掛けてくるぞ!」
モエラ
「コスモはどうしたんだ? 敵が来るぞ!」
コスモ
「デク、頼む。敵はどう来る?」
デク
「正面! やや下から縦になって来るよ!」
コスモ
「よし!」
「グレン・キャノン!」
デク
「真正面だ! 大きいぞ、コスモ!」
「反転!」
コスモ
「やったか?」
デク
「当たったと思うけど……」
コスモ、デク
「あっ!」
ギジェ
「よし、止められる!」
「うっ!」
モエラ
「むざむざやられるか!」
ギジェ
「いいチーム・プレイだ!」
モエラ
「後退するぞ! この隙にドッキングだ!」
コスモ
「デク、ドッキングだ!」
デク
「了解! ドッキング・マークは……来た!」
コスモ
「よし、ドッキング!」
カーシャ、モエラ
「了解!」
ギジェ
「巨神になるのか! ゲル結界を張るぞ!」
オーメ財団兵
「了解! カルボ2号機、3号機、急げ!」
デク
「うわわっ……!」
コスモ
「どうした、デク?」
デク
「敵が……!」
カーシャ
「対イデオン戦用の重機動メカだわ!」
モエラ
「間違いない! 格闘戦にでも持ち込むつもりじゃないのか?」
ハタリ
「3機の重機動メカが1機になったぞ!」
ベス
「何を考えているんだ、敵は?」
シェリル
「イデオンに対抗する為の重機動メカではなくて?」
ベス
「そんな簡単に開発出来る訳はない!」
コスモ
「重機動メカが、わざわざ1機になったのか? どういうつもりだ?」
カーシャ
「コスモ、離れるのよ! 距離を取って!」
ギジェ
「離されるな! 無理をしてでも格闘戦に持ち込まなくては、ゲル結界は張れんぞ!」
ベス
「これでは援護射撃も出来ない! コスモめ、何故離れないんだ?」
「ハタリ、左へ回り込め!」
ソロ星の軍人
「狙い撃ちするぞ! このぉ!」
コスモ
「人を盾にする気か?」
ギジェ
「巨神めぇ!」
オーメ財団兵
「ガルボ・ジック、格闘戦中!」
ダラム
「ギジェめ……巨神の格闘性能を試しているのだろうが、いつまでも続けてはならん」
「ガルボ・ジックのパワーでも、まだまだ見劣りがする」
オーメ財団兵
「大丈夫なんですか、ダラム様?」
ダラム
「あれだけが新兵器ではない」
ギジェ
「思考回路破壊ビーム……ゲル結界を張れ!」
オーメ財団兵
「はっ!」
オーメ財団兵
「ゲル結界?」
ダラム
「そうだ。脳細胞を破壊するビーム砲と思えばよい」
オーメ財団兵
「そのような物が開発されていたのですか」
ダラム
「人の考える力が、イデのパワーを呼ぶという証拠を手に入れたのだ。となれば、あの巨神の戦力を低下させればよい」
「つまり、パイロットの脳を直撃すれば、巨神は無傷で手に入る訳だ。フフッ……」
デク
「あっ、何の輝きだ?」
コスモ
「頭が、頭が……!」
カーシャ
「何なの? 何故、急に頭痛が……!」
ダラム
「後、5分!」
ハタリ
「ベス、イデオンの動きが止まってしまった!」
ベス
「コスモ、コスモ! 応答しろ、どうしたんだ?」
シェリル
「何かしら? イデオンのパイロットの脳波が乱れているわ」
カララ
「脳波が?」
ベス
「ソロ・シップ、イデオンに接近させろ! 救出する!」
ギジェ
「異星人の船を巨神に近付けさせるな!」
シェリル
「カララ、知らないの? あの重機動メカ……」
カララ
「知りません。あんな輝き……」
ベス
「イデオンにもっと近付け!」
シェリル
「バッフ・クランはイデの事が分かったんだわ!」
ベス
「何だと?」
シェリル
「あの輝きは、対イデオン用の兵器なのよ」
ベス
「イデの秘密が分かったからこそ出来た兵器だというのか」
シェリル
「次々と新兵器を繰り出してくるバッフ・クランに対して、これじゃ勝てっこないわ!」
ダラム
「よし、ガルボ・ジックを援護しろ!」
コスモ、デク
「うわっ!」
コスモ
「あっ、キッチン、キッチン……!」
「デク、デク、大丈夫か? デク!」
「負けてたまるか! 正面に居る奴が、正面に居る奴が……!」
「手を貸してくれ、デク……!」
「こいつ!」
「デク、敵はどうなってる?」
デク
「変な輝きが弱くなっているよ」
コスモ
「よーし!」
ギジェ
「避けろ!」
「早く体勢を立て直せ!」
コスモ
「ん、頭痛がなくなった!」
ベス
「今だ! コスモ、カーシャ、イデオンを帰還させろ!」
コスモ
「戻るのか?」
ベス
「早くするんだ!」
コスモ
「しかし、仇は討つ!」
デク
「コスモ!」
ダラム
「逃げるのか!」
ベス
「ショート・デス・ドライブ!」
ハタリ
「ショート・デス・ドライブ?」
ベス
「デス・センサーでも読み取れないぐらい、短くデス・ドライブする!」
ハタリ
「了解! ジョリバ、メイン・エンジン全開!」
ジョリバ
「了解!」
ギジェ
「亜空間飛行に移るのか!」
ダラム
「生体発信機を打ち込め!」
「生体発信機が付いている限り、宇宙の果ての果てに逃げようとも発見してみせる!」
ベス
「目標、地球!」
ハタリ
「地球?」
ベス
「座標軸合わせ、急げ!」
ハタリ
「座標軸、合わせろ! 地球だ!」
シェリル
「地球……」
カララ
「地球……」
ソロ星の軍人
「座標軸合わせ、OK!」
 〃
「YX各軸、微調整OK!」
ベス
「よーし、デス・ブレーキ!」
シェリル
「地球……」
テクノ
「帰ってきた」
デク
「あれが、地球……」
コスモ
「地球だ。俺達の母星だ」
カーシャ
「あれが、地球……」
カララ
「地球……貴方がたの母星」
ベス
「貴方の新しい母星だ。これからは、一瞬でもバッフ・クランに帰りたいと思ったら、俺は貴方を殺さなければならない」
カララ
「ベス、私の知っている地球と全く同じです。私も馴染めそうです」
ロッタ
「これで、やっと戦いから解放されるのね」
コスモ
「そりゃそうさ。俺達は地球に着いたら、ソロ・シップを降ろされる」
カーシャ
「それはそれでいいんじゃないの?」
コスモ
「けど、キッチンの仇は討てなくなる」
デク
「コスモ……」
コスモ
「す、すまない」
ベス
「参謀本部と回線を開け!」
ナレーター
コスモ達の母星の瑞々しい姿が次第に迫る。ソロ・シップは、地球と通信を交わした。心時めかせて……。