第27話 緊迫の月基地潜行

前回のあらすじ
異星人バッフ・クランのダラム・ズバとギジェは、新たな重機動メカ『ガルボ・ジック』を手に入れてコスモ達ソロ・シップを襲った。
コスモのキッチンへの熱い想いが、新兵器を打ち破ったのかもしれない。
そして、コスモ達はダラムの追撃を逃れ地球圏へ突入した。
ハタリ
「流星が地球に落ちていったぞ」
ベス
「あぁ、噂は本当だったんだな」
アーシュラ
「綺麗だったわ。また来ないかな?」
コスモ
「一体、これでいくつめの流星になるんだろう?」
ベス
「17、8にはなってるんじゃないのか?」
カーシャ
「流れ星を不幸の証と見るか、幸運の報せと見るか、それは私達が決める事かもしれないわね」
シェリル
「そうね。でも、もうこれ以上の悪い事はないわ。私達は地球の目の前に居るのよ」
ギジェ
「ロゴ・ダウの異星人達、酷く辺鄙な宇宙に入りましたな」
ダラム
「ここにも、植民星があるというのか」
ギジェ
「意外とこんな所に、彼らの母星があったりしますが」
ダラム
「うむ、考えられるな」
ギジェ
「ガルボ・ジックは修理中です。コンピュータ・コントロール隊を探りに出しましょう」
ダラム
「うむ、母星なら今まで以上の抵抗を示す筈だ。やってみよう」
ダラム
「無人のズロウ・ジック、発進するぞ!」
シェリル
「私達の地球が……!」
ベス
「戻れというのか、軍は? 戻れとは、一体どういう事だ?」
コスモ
「行こう。構うもんか、このまま地球に向かうんだ」
ハタリ
「船が……科学アカデミーの船が上がってきた」
「向こうも慌てているな」
ベス
「何?」
コルボック
「私は、科学アカデミーのキラニン・コルボックと言います」
コスモ
「教えてくれ。どうして俺達は地球に着陸しちゃいけないんだ? 俺達は……」
コルボック
「貴方がたが異星人を引き摺ってきたから、軍は受け入れを断ったのです」
カーシャ
「私達を見殺しにするの?」
シェリル
「カーシャ、待ちなさい」
「では、科学アカデミーの貴方は何故来たのです?」
コルボック
「第六文明人の資料はフォルモッサ博士からも聞いております。それで、この資料を貸していただけたら、分析を……」
シェリル
「大型コンピュータ『グロリア』が使えるのなら、資料は出します」
コルボック
「グロリア……それは無理だ」
ベス
「何故?」
コルボック
「グロリアは軍の管轄下にあって、アカデミーの人間には……」
ハタリ
「敵機襲来! 敵機襲来!」
デク
「よし、出動だ!」
アーシュラ
「よし、出動だ!」
コスモ
「クソッ……! イデオ・デルタ、発進!」
モエラ
「イデオ・ノバ、発進!」
カーシャ
「イデオ・バスタ、発進!」
コスモ
「相変わらず素早い!」
カーシャ
「第二ブロック、何してるの? グレン・キャノンを撃って!」
ソロ星の軍人
「やっている! だけど、動きが速くて……!」
カーシャ
「落ちてしまえ!」
モエラ
「うっ! コスモ、カーシャ、このままじゃ駄目だ! ドッキング出来ないのか?」
コスモ
「分かった! カーシャ、ドッキング体勢に入る!」
カーシャ
「了解!」
コスモ
「やるな……!」
「みんな、吹き飛べ!」
デク
「やったぁ!」
コスモ
「油断するなよ。まだ居るかもしれないぞ」
コルボック
「こ、これがイデオン……これが第六文明人の遺跡というんですか?」
シェリル
「このソロ・シップもね。でも、問題なのは謎のエネルギーの方なんです。この船とイデオンを動かしていると思われる、伝説の力……」
コルボック
「謎のエネルギー……」
シェリル
「『イデ』と呼んでいます。そのエネルギーの事と、コントロール・システムを調べたいんです」
ベス
「それに今の異星人達は、イデに無限のエネルギーがあると信じているんだ」
コルボック
「無限のエネルギー……」
シェリル
「コルボックさん、何とかグロリアを……」
コルボック
「多少の危険を覚悟なら方法はあります。ムーン・ランドに、グロリアの末端システムがあるんです」
シェリル
「月に?」
ダラム
「やはり、巨神のパワーは上昇しているな」
ギジェ
「コンピュータのデータは、全て過去のものですから」
ダラム
「作戦を変えよう。あの衛星の基地を三方から襲撃しろ。巨神の力を散らすんだ」
カーシャ
「ムーン・ランドを攻撃するつもりよ。コスモ、どうする?」
コスモ
「追うんだ、カーシャ!」
ベス
「コスモ、シェリル達が月に降りる。援護してくれ」
コスモ
「何だって?」
シェリル
「グロリアの末端プログラム・デスクが月にあるの」
コスモ
「了解。やるだけやってみるけど、命の保証までは……」
シェリル
「でもコスモ、貴方の力を信じているわ」
コスモ
「シェリルさん……どういう風の吹き回しだい?」
「しかし、イデの秘密を解くとなりゃ、死なせやしない」
「うっ……!」
デク
「大丈夫?」
コスモ
「平気だ」
デク
「まだ傷が痛むんじゃないの?」
コスモ
「平気だよ」
「カーシャ、モエラ、爆撃をやめさせる為に各個に撃破する!」
カーシャ、モエラ
「了解!」
コルボック
「兵隊に見付かったら、覚悟はしてくださいよ」
シェリル
「え? えぇ……」
「あっ、前から……!」
ジョリバ
「お、おい……!」
シェリル
「コスモ……!」
コルボック
「あれだ」
ベス
「ハタリ、地球の応答は?」
ハタリ
「まだない」
ベス
「地球は、月の基地を救わなくちゃならんのだ。何故、援軍を送ってこないんだ? 地球は月を見殺しにするのか?」
ギジェ
「ダラム様!」
ダラム
「うむ。援軍が来ないところを見ると、あそこもロゴ・ダウの異星人の母星ではないのかもしれん」
ギジェ
「はい。しかし気になります」
ダラム
「ん?」
ギジェ
「あの星に降った流星、我がバッフ星に降り出した流星と全く同じ状況です。偶然でしょうか?」
ダラム
「考え過ぎだな、ギジェ。例えお前の言う通りだとしても、今の我々にとって大切な事は、巨神を捕える事だ」
ギジェ
「はっ!」
ダラム
「次の作戦は?」
ギジェ
「私自ら、ガルボ・ジックで出撃します。ダラム様はこのゲロワ・ザンで待機し、網を張っていてください」
「一機ずつこちらに追い込んだ所を……」
ダラム
「俺が叩く、か」
ギジェ
「はい!」
ジョリバ
「コルボックさんよ。上手く忍び込めたって、使えるのかコンピュータ?」
コルボック
「軍のコンピュータ関係の情報はアカデミーに筒抜けさ。使えるよ」
コスモ
「あそこがコンピュータ・センターか」
デク
「コスモ、正面!」
コスモ
「よし、ここに近付けさせなければいいんだな!」
デク
「コスモ、何故スピード落とすの?」
コスモ
「騒ぐな」
デク
「だって、いつものコスモらしくないよ」
コスモ
「シェリルさんの為には、こちらが囮になる必要があるんだ」
「デク、いいか! 敵を引き付けるぞ!」
デク
「どうするの?」
コスモ
「こうするんだ!」
「チャンスを逃がさないでくれよ、シェリルさん!」
兵士
「応答してください、こちらムーン・ランド! 異星人の攻撃を受けています!」
「応答してください! お願いです、月を見捨てないで! こちらムーン・ランド!」
シェリル
「キーワードは?」
コルボック
「分かっています」
シェリル
「流石、アカデミーね」
コルボック
「ええ。それでいて、詰まらん事が分からなかったり……これが世の中でね」
シェリル
「そうね。インプットは普段と変わらないの?」
コルボック
「いいプログラム・カードのようですね」
シェリル
「ありがとう」
ジョリバ
「急いでよ、お二人さん!」
シェリル
「は、はい! 記録テープは?」
コルボック
「その左のボックスへ入れてくれ」
ジョリバ
「ふん、朴念仁が……浮かれてやがる」
コルボック
「解析照合に入ります」
オーメ財団兵
「巨神のメカは分離しています。これでゲルを使うのは無理です」
ギジェ
「ゲロワ・ザンに引き込めば、巨神にもなってくれようが……」
コスモ
「頭痛メカが出てきたのか」
デク
「わぁっ!」
コスモ
「しまった……!」
モエラ
「ええい!」
ギジェ
「やるな!」
「占めた! 巨神メカが3機揃ったぞ! ゲル結界、発射!」
コスモ、カーシャ
「あぁっ……!」
モエラ
「このぉっ!」
コスモ
「二度も同じ手段に引き込まれるなんて……!」
ベス
「イデオン3機が捕まった?」
ハタリ
「また、あの光だ!」
ベス
「右舷、重機動メカを狙い撃て!」
「これは、コスモの言っていた頭痛じゃないのか?」
カララ
「重機動メカから異常電波を出しているに違いありません! 離れて!」
ベス
「ハタリ、ニュートロ・ビーム・スコープを!」
ハタリ
「おう!」
ベス
「三つの発信源があるのか」
コスモ
「あぁっ……!」
ギジェ
「よし、3機を捕まえるぞ!」
カララ
「ベス、ソロ・シップを……!」
ベス
「ソロ・シップ、フル・パワー!」
シェリル
「エネルギー係数ね」
ジョリバ
「どうだ?」
シェリル
「イデは実在するわ、エネルギーの場としてね」
ジョリバ
「本当かよ!」
シェリル
「無限エネルギー? イデが?」
コルボック
「まだ結論じゃない。だが、無限大のエネルギーが存在するとなると……」
シェリル
「今度は、イデのシステムの分析ね」
ジョリバ
「しまった、気付かれたか!」
兵士
「貴様ら、何者だ!」
コルボック
「私は、科学アカデミーのキラニン・コルボックだ」
兵士
「参謀本部以外の者が、グロリアを使う事は禁じられている筈だ。下がれ!」
シェリル
「待って、私達は……!」
兵士
「問答無用!」
コルボック
「待て!」
「あっ!」
シェリル
「はっ……!」
「コルボック!」
兵士
「銃を寄越せ……うっ!」
ジョリバ
「シェリル、データを持って逃げるんだ!」
シェリル
「ジョリバ!」
ジョリバ
「シェリル、急いでくれ!」
シェリル
「いいわ!」
兵士
「わぁぁっ!」
コスモ
「うっ……!」
「やらせるか!」
ギジェ
「うぉっ!」
「貰った!」
コスモ
「やるな!」
「デク、周りは?」
デク
「敵機なし!」
コスモ
「よし!」
オーメ財団兵
「だ、駄目だ! 貰ったら……!」
ギジェ
「最後まで撃て! 一発ぐらいは当たる!」
コスモ
「しぶとい!」
ギジェ
「巨神めぇ!」
「あの巨神は無敵というのか?」
「な、何だ?」
オーメ財団兵
「脱出カプセルのコントロールが効きません!」
ギジェ
「おい、急げ!」
「うわっ!」
「カ、カプセルが……!」
ダラム
「ガルボ・ジックが落ちたのなら連携作戦は取れん! 退け!」
オーメ財団兵
「脱出カプセルは出たようです!」
ダラム
「構わぬ、放っておけ! 失敗の続いたギジェの生死なぞ、もう構ってはおれん!」
ギジェ
「ぬっ……何だ? 馬鹿な、見捨てられたのか……ダラムめ、見捨てたというのか!」
シェリル
「コルボック……」
コスモ
「シェリルさん、グロリアは使えたのか?」
「どうかしたの?」
カーシャ
「地球は、私達を見捨てたのね」
ベス
「自ら戦う事を放棄して、民族が守れるか!」
シェリル
「いえ、戦わない事が守りになる場合もあるわ」
ベス
「何?」
コスモ
「どういう事なんだ、シェリルさん?」
ジョリバ
「ソロ・シップとイデオンが、無限力を持っている事が分かったんだ」
コスモ
「何だって?」
カーシャ
「無限力ってどういう事?」
シェリル
「イデオンとソロ・シップの力が解放された時、ひょっとしたら、地球の一つや二つ……」
「いえ、それ以上の物が破壊出来る力って事でしょう」
ベス
「確かなのか、シェリル?」
シェリル
「コルボックが調べてくれたのよ、確かよ。何億人かの第六文明人の意思の力を封じ込めるシステムが、イデ……」
「そのイデの力を破壊の為に使ったら、私達……」
コスモ
「で、そのイデのコントロール・システムは分かったのかい?」
シェリル
「え、コントロール・システム?」
コスモ
「シェリルさん……しっかりしてよ! コントロールする方法が分からないんじゃ、何にもならないじゃないか」
シェリル
「そ、それは、ムーン・ランドの兵隊がコルボックを殺しちゃって……。いけないんですよ、調べられなくて……」
ジョリバ
「シェリル、後は俺が説明する」
シェリル
「そうね、頼むわ。何だか興奮しちゃって……」
ベス
「少し、休んだ方がいいな」
シェリル
「大丈夫よ。ベス、ここに資料もあるんだし……ここでみんなの話、聞いてるわ」
ベス
「そうか。で、そのイデってな、第六文明人の意思を……」
ジョリバ
「うむ。イデオ・ナイトのバリアが封じ込めてんだな、この空間に。それをエネルギーとしているのがイデ……」
ハタリ
「それが何故、動き始めたんだ?」
ジョリバ
「封じ込められたイデの、防衛本能らしいんだ」
カーシャ
「防衛本能?」
ジョリバ
「より純粋な自己防衛に応えて、イデは動き始めたという事さ」
コスモ
「より純粋な防衛本能……」
ジョリバ
「例えば、パイパー・ルウのような赤ちゃんの、自分を守りたいという考え方にイデは同調したんだ」
「俺達は偶然にしろ、ルウのような赤ちゃんをソロ・シップに乗せた」
「そのお陰で、イデの力が俺達を守ってくれていたという訳さ。でなけりゃ……」
コスモ
「いや、おかしいよ。自己防衛意識の塊にしては、俺達を守ってくれない」
ベス
「いや、イデそのものが独立したものになっていたら考えられるぞ?」
「ソロ・シップとイデオンが完成して、数多くの意思の力が一つのパワーになった時……」
カララ
「イデは自らの存在を他の者に侵略されぬ前に、他者を滅ぼす。例え、それがイデを生み出した第六文明人であっても……」
「イデも、エゴ……我儘な力なのでしょう。愛などというものではなくて……」
シェリル
「そうなのよ、そのイデに取り込まれているのよ。私達は……」
コスモ
「取り込まれている? 無限力のイデにか?」
「でもさ、カララ……バッフ・クランの伝説にあるよな。善き力によってイデは目覚めるって……」
カララ
「でも、イデを生むシステムを考え出した第六文明人は、何故滅びたのでしょう?」
「私達のようにコントロール出来なかったからでしょう?」
コスモ
「そりゃ、そう考えられる……けど……」
ルウ
「わぁ、綺麗……!」