第36話 さらばソロシップ

前回のあらすじ
地球のスカラベリィのマーシャルは、手を組んでイデオンを追った。
ナイト・スターの衛星を落として、イデオンとソロ・シップを押し潰そうというのである。
しかし、イデオンの輝きはその直撃さえ跳ね除けていた。その力を見たマーシャルは絶句した。
ロン
「俺達、クラップの生き残りは30人……その上、100人以上乗せるってのは無理だ」
ベス
「貨物船として使うんだ。戦闘ブロックに乗せりゃ、500や600は乗る」
「それより何か? 貴様ら、ソロ・シップを奪いにきたんだから、こっちに残るか?」
ロン
「ば、馬鹿言え! こんな化物に取り憑かれたような船に、誰が乗るか!」
ベス
「じゃ、協力してくれ」
ロン
「地球に帰ったら死刑だ! 死刑だぞ!」
ベス
「どうだ?」
ソロ星の軍人
「順調です」
キロル
「もう嫌だ! 嫌だよ、こんな生活……!」
「俺は家へ帰るんだ! 家へ……!」
コスモ
「どうした、おい!」
キロル
「家へ帰るんだ! 俺、家に帰るんだ!」
コスモ
「貴様……男だろ! 今日まで戦ってきたんじゃないか、しっかりしろ!」
「帰りたい家なんてのは自分で作るもんだ! 男ならそうしなくちゃならないんだよ! 今は挫ける時じゃないんだ!」
カーシャ
「どうなの?」
コスモ
「良くない」
ソロ星の軍人
「行こう!」
キロル
「こんな所に居たら、どっちに居ても落っこちるだけじゃないか! どっちに居ても……!」
コスモ
「星のない所は、底なしか……」
ソロ星の軍人
「食料は大丈夫なんだろうな?」
 〃
「済んだ、済んだ!」
ジョリバ
「急いでください。ここの空気はいつ抜けるか分からないんです」
カララ
「これでいいと思いたいわ。生き残る為には……」
ベス
「ハタリ、分かるか?」
ハタリ
「ああ、キャリオカより新しいタイプだからな。扱い易い」
ベス
「物資の搬入を急がせろよ。この小さい船で、何ヶ月暮らすか分からんのだからな」
ミラクリン
「本当に捨てるつもりなんでしょうか?」
フランクリン
「ソロ・シップは人間にはコントロール出来ない……そう考えれば、連中は本気だろうな……」
ミラクリン
「ですが……」
フランクリン
「軍の命令だけが真理ではないよ、ミラクリン君」
ミラクリン
「あっ、はい……」
フランクリン
「連中に会おう。本当にソロ・シップを爆発させるつもりなのかどうか、確かめよう」
フランクリン
「悪魔に魅入られた船なら、捨てる気にもなるな……」
フランクリン
「船の中にも爆薬を仕掛けるのか?」
ベス
「閣下の攻撃にも耐えた船です。こうでもしなければ、破壊するのは無理でしょう」
コスモ
「じゃあ、後は頼む」
カーシャ
「ええ」
ミラクリン
「イデの分析も終わってないんです。地球に持って帰りましょう」
ベス
「ナイト・スターを破壊した力は、我々のコントロールで発生したんじゃありません」
コスモ
「赤ん坊がナイフ振り回すような事、やめた方がいいと思うな。人類が滅びるだけだ」
ミラクリン
「何だ、貴様……!」
フランクリン
「やめたまえ。彼の言う事は本当だ……が、君達の反逆罪の方は?」
ベス
「新しい星を見付けるだけです」
フランクリン
「うむ、それがいい。クラップはバッフ・クランに撃沈されたと報告しておく」
ベス
「はっ、有難うございます」
フランクリン
「但しだ、クラップの乗組員は引き取るぞ。君達ほど達観しておらんからな」
ベス
「はい」
フランクリン
「うむ」
ミラクリン
「閣下……」
フランクリン
「黙るんだ、ミラクリン君」
コスモ
「……スカラベリィの司令……?」
ベス
「うむ」
ギジェ
「あっさりと引き上げたものだな」
ガルババ
「フンフン……♪」
バッフ・クラン兵
「ガルババ様」
ガルババ
「見たいか?」
バッフ・クラン兵
「はっ、ミヤ様の踊りなら」
ガルババ
「よーし、モニターを切り替えろ。ミヤを見せてやる」
バッフ・クラン兵
「この作戦を終えたら、式を挙げるので?」
ガルババ
「あぁ、幾ら見ていても飽きんのがいい。なぁ?」
バッフ・クラン兵
「はい」
ガルババ
「先発隊としての任務以上の力を示して、結婚祝いとしたいもんだよ。たかが重機動メカ程度の戦力一つ」
ハタリ
「博士号を取れる所だったのにな?」
シェリル
「フフッ……」
ベス
「ご苦労」
ギジェ
「ベス、スカラベリィに気を付けた方がいいな」
ベス
「うむ……監視はさせている」
ベント
「言ってるそばから動き出した! ソロ・シップに近付くつもりだ!」
ギジェ
「どうするか?」
ベス
「接触はさせん。足止めさせる」
カーシャ
「結局、私達を騙したのね、マーシャルっていう人」
コスモ
「ヘンッ、ソロ・シップに辿り着いたって、自爆装置を全部外せるものか!」
「1番砲塔コスモだ。ブリッジ、聞こえるか?」
ハタリ
「よーし、ソロ・シップに近付くものがあったら撃ち落とせ!」
カーシャ
「2番砲塔、スタンバイ!」
ギジェ
「4番砲塔、スタンバイ!」
フランクリン
「バッファがソロ・シップを包囲すると同時に、捜索隊はソロ・シップの自爆装置を外せ!」
「速やかに行動せよ、バッファ発進!」
地球連合軍兵士
「全部で12箇所だ。いいな、自分の守備範囲をよく覚えとけ!」
 〃
「一人で6発ずつ処理すりゃ済むんだ。慌てる事はない!」
ベス
「よし、各砲塔、威嚇射撃をしろ。当てる必要はない」
コスモ
「了解」
カーシャ
「了解」
地球連合軍兵士
「ソロ・シップの連中め、そっちがその気ならこっちはこう潜り込んでやるぜ!」
 〃
「ソロ・シップが盾になってくれる。行くぞ!」
コスモ
「こんなに遠くちゃ、足止めなんか出来やしない……」
デク
「クラップを前に出してもらってよ」
コスモ
「ベス、聞こえるか? クラップを……」
ベス
「待て」
ベント
「間違いない、デス・アウトしてくるんだ!」
ベス
「バッフ・クランか?」
シェリル
「コスモ、1時の方向にデス・アウトするものがあるわ」
コスモ
「え、こんな時に……?」
ガルババ
「キャッチした! ロゴ・ダウの異星人の船だ。叩くぞ!」
バッフ・クラン兵
「しかし、ロゴ・ダウの異星人の罠ではないのでしょうか?」
ガルババ
「何故そう思える?」
バッフ・クラン兵
「あの船の重力震は、如何にも見付けてくれというように発信しました。現に一隻ではありませんでした」
ガルババ
「かと言って、戦力的にはこちらの方が上だ。全力を尽くして叩くだけだな」
「ガンガ・ルブ・リブを出す。総力戦を掛ける!」
フランクリン
「数は?」
ミラクリン
「船は7隻、戦闘機の数は不明」
地球連合軍兵士
「バッファ、カルテット、発進させます!」
フランクリン
「よし、1機も残すなよ」
ミラクリン
「ソロ・シップに向かった戦隊は……」
フランクリン
「捜索隊を降ろしたら、バッフ・クランに向かわせろ」
「バッフ・クランといってもハンニバルとは違うぞ。油断するな」
「ソロ・シップめ、黙って引き渡せばいいものを……」
ハタリ
「この巡洋艦じゃ、我々は一発でやられちまうぞ。どうする?」
シェリル
「捜索隊はソロ・シップに取り付いたようだし……」
ベス
「しかし、後5分で爆発するんだ。間に合うかどうかギリギリだ」
コスモ
「ベス、ソロ・シップに戻ってくれ。これじゃ生き延びるって訳にはいかない」
カーシャ
「そうよ。スカラベリィの工作員も時限装置を止めているとなれば、むしろ怪我の功名じゃなくて?」
シェリル
「戦闘機隊が接触したわ」
ベス
「ハタリ、クラップをソロ・シップへ!」
ギジェ
「どうするのだ?」
ベス
「ソロ・シップへ戻る」
ギジェ
「うむ」
ベス
「総員に告げる。ソロ・シップに接触したら、ただちに自爆装置の解除を手伝え。イデオンを発進させる!」
デク
「よっ!」
カララ
「甲板にもあるのでしょう?」
ジョリバ
「捜索隊は中に入ったんだ。じゃあ……」
シェリル
「ジョリバ、タイマーのタイプって、見れば分かるわね?」
ジョリバ
「三種類しかない。すぐ分かる」
コスモ
「時限装置を止めていないじゃないか」
「うっ……?」
ベス
「6時、60度だ!」
ハタリ
「クラップ、上昇するぞ!」
コスモ
「うわっ!」
デク
「わぁっ!」
コスモ
「よーし、上出来!」
デク
「下には人が居るっていうのに……」
コスモ
「イデオンに急げ」
ソロ星の軍人
「わぁっ……!」
ジョリバ
「こっちだ! ベントは外を再チェックしてくれ!」
ベント
「よし、二手に別れて確認しろ!」
ジョリバ
「機関室の方は済んだのか?」
ソロ星の軍人
「行ってない筈だ」
ジョリバ
「何だと? あそこが一番数が多いんだぞ!」
ソロ星の軍人
「どんな旧式な仕掛けよ」
地球連合軍兵士
「ここに12発もあるのか」
 〃
「お前ら、ソロ・シップの連中か! 何しに来た!」
ジョリバ
「文句は後で聞く。タイマーを外せ!」
カララ
「このタイプは、3をマイナスに……」
シェリル
「69式ね。YRを0に戻して……よし」
カララ
「えっと、R2を0に戻して……」
地球連合軍兵士
「貴様らがこんな事をしなければ……!」
ジョリバ
「後8発ある! 話はそれからだ!」
ガルババ
「戦闘隊が敵と接触をした。第一・第二艦隊は敵の大型艦を殲滅しろ!」
「本艦はロゴ・ダウの船を捕える!」
フランクリン
「対艦戦用意! 下から潜り込んでくるぞ!」
デク
「ゲージが来た!」
コスモ
「了解! ギジェ、カーシャ、タイマーの方は解除出来たか?」
ギジェ
「後2発で終わる。やってくれ!」
コスモ
「よし、行くぞ!」
「うっ……!」
ギジェ
「うぁっ……!」
コスモ
「あのデカいのが……!」
ギジェ
「し、しまった! うおぉっ……!」
「止まった……! カーシャさん、そちらは……!」
カーシャ
「ギ、ギジェ……止めて!」
ギジェ
「えぇっ!」
「駄目か……!」
カーシャ
「ごめんなさーい!」
コスモ
「時間だ……!」
ギジェ
「遅かった……!」
デク
「えぇーっ!」
ジョリバ
「残り4つだ……誰でもいい、タイマーを止めろぉ!」
カララ
「あっ……!」
ソロ星の軍人
「まだあったのか!」
シェリル
「左の方……!」
ベス
「時間だ……」
ソロ星の軍人
「うわっ!」
フランクリン
「時間の筈だが……工作隊、上手くやったな。自爆装置を全て止めたか」
デク
「コスモ、時限爆弾を全部止めたんだろ?」
コスモ
「ギジェ、カーシャ、聞こえるか? 上手くいったか?」
ギジェ
「よく分からん……」
コスモ
「タイマーは止めたんだろ?」
ギジェ
「いや、止められなかったんだ……しかし、爆発がバリアで……」
カーシャ
「爆発が封じ込められたのよ……!」
コスモ
「爆発が封じ込められた?」
カララ
「はっ、爆発は……!」
シェリル
「カララ、爆発はしたわ。けど、しなかった……」
ジョリバ
「あ、ああ。しなかったな……」
ギジェ
「爆発を封じ込めたのか。イデの防衛本能が……」
カーシャ
「防衛本能?」
「キャーッ!」
ギジェ
「うぉっ……!」
コスモ
「クッ……!」
デク
「コスモ、突破されたらしいよ、防衛ラインが……!」
コスモ
「来たぞ!」
デク
「まだエネルギーが上がってないけど、イデオン・ソード使ってみる? コスモ」
コスモ
「ソード? よし、回線回せ!」
デク
「了解!」
コスモ
「よーし、来いよ……!」
「行けっ!」
「やったか?」
デク
「1機撃墜!」
コスモ、デク
「わぁっ!」
地球連合軍兵士
「うわぁぁっ!」
フランクリン
「バ、バッフ・クランにソロ・シップを渡しちゃならんぞ! 少なくとも我々は……うわぁぁっ!」
ハタリ
「あっ、スカラベリィが撃沈された!」
ベス
「ソロ・シップの下へ回り込め!」
ハタリ
「了解! ソロ・シップで何があったんだ、ベス?」
ベス
「タイマーは全てストップした。バッフ・クランの艦隊を落とせばいい!」
ガルババ
「よーし、残るはロゴ・ダウの異星人の船のみか。全戦力を集中して叩け!」
バッフ・クラン兵
「はい!」
ガルババ
「ミヤも見るがいい。お前へのプレゼントだぞ」
ジョリバ
「各員、対空……わっ!」
シェリル
「ジョリバ!」
ジョリバ
「イデオン波動ガンを放出しろ!」
カララ
「各工作隊員は近くの機銃・ミサイルで対空戦を!」
シェリル
「波動ガンのハッチ、開きます!」
ジョリバ
「よし、イデオンはどこだ?」
「コスモ、波動ガンを放出する。受け取れ!」
コスモ
「使えるのか?」
ジョリバ
「大丈夫の筈だ! 敵艦隊は7隻も居る!」
コスモ
「よーし!」
デク
「パワー来てる!」
コスモ
「よし! デク、一発で艦隊を殲滅する!」
デク
「了解、射線軸はもっと上だ!」
コスモ
「了解! よく分かるな」
デク
「熟練、熟練!」
コスモ
「行くぞ!」
「掴まえた! ソロ・シップ、ショート・デス・ドライブを掛けろ! イデオン・ガン、発射する!」
「もう遅い、お前達の帰る所はなくなる!」
ガルババ
「亜空間飛行だと……ぐわぁぁっ!」
バッフ・クラン兵
「ガルババの艦隊が消えた!」
 〃
「ぜ、全滅だ! 一瞬に全滅した!」
 〃
「(?)生体発振器を上げろ!」
コスモ
「ギジェ、カーシャ、帰還するぞ」
デク
「ソロ・シップにかい?」
コスモ
「嫌か?」
デク
「い、嫌じゃないけど……」
コスモ
「嫌じゃないけど、帰りたくもない所だ……。俺達は、本当にイデに取り込まれちまったんだな」
コスモ
「ありがとう」
ギジェ
「我々は切腹も出来ないという事だ。自殺しようにもイデに止められる。ただの巡り合わせじゃない」
シェリル
「ソロ・シップがバッフ・クランを呼んだという訳ね? 私達みんなをソロ・シップに呼び戻す為に……」
ギジェ
「あぁ、イデの考えでな」
ベス
「イデは、既に我々と同じように意思を持ち始めているという訳か……」
カーシャ
「どうなるの、そうなると? 目覚めたイデに対しては、善き心を示しても答えてくれないんじゃないの?」
コスモ
「あり得るな。けど、もしイデが俺達を呼んだのなら、イデは俺達を必要としているのかもしれない」
ハタリ
「そう思いたいな」
カララ
「善き力によるイデの発現というのがあるからかしら」
ベス
「その筈だ。そうでなけりゃ、我々は呼び戻されなかったよ」
「考えてもみろ。イデのお陰で戦い続け、挙句の果てにみんな滅びたりしてみろ。俺達は間尺に合わんよ」
コスモ
「あぁ、滅びは嫌だな。イデだって滅びたくないから、俺達を呼び寄せたと思うな」
ナレーション
ハルルは、ガルババ隊が全滅した事を知って息を呑んだ。バッフ・クランの先発隊が一瞬にして沈んだのである。
バッフ・クランは、イデオン打倒にその命運を賭けざるを得なかった。