第37話 憎しみの植民星

前回のあらすじ
コスモ達は、自分達の手によってコントロールし切れなくなったソロ・シップを捨てた。
しかし、地球連合軍のスカラベリィとバッフ・クランのガルババ隊は、その隙を突いてソロ・シップを手に入れようとした。
やむなくコスモ達はソロ・シップに戻り、自爆装置を止めて戦闘に参加した。
しかし、数個の自爆装置を外す事が出来なかった。……が、ソロ・シップの内なる力がその爆発を封じ込めた。
シェリル
「あぁっ……!」
コスモ
「これで13機!」
デク
「コスモ! 8時の方向、上!」
コスモ
「何っ!」
グルダブラ
「ガンガ・ルブ隊、発進させろ! ガンガ・ルブ隊!」
デク
「重機動メカ2機がまだ来る!」
コスモ
「了解!」
「うっ……カーシャ、後ろから重機動メカだ!」
ソロ星の軍人
「落ちろ!」
デク
「コスモ、まだ落ちない!」
コスモ
「チッ!」
バッフ・クラン兵
「ガダル・ロウ隊、クローを打ち込め! 巨神メカの動きを止めるのが仕事だろう!」
コスモ、デク
「うわぁぁっ!」
ギジェ
「アァーッ!」
カーシャ
「キャーッ!」
コスモ
「調子に乗るな!」
デク
「ぶつかる!」
ベス
「コスモ、構うな! 戻れ!」
コスモ
「何でだ!」
ベス
「敵の本隊が接近している。今戦っている戦力以上だ!」
コスモ
「了解! カーシャ、ギジェ、脱出する!」
カーシャ
「了解!」
ギジェ
「了解!」
ベス
「3機着艦! ショート・デス・ドライブを掛ける!」
ハタリ
「転移座標は?」
ベス
「亜空間レベルでも構わん。とにかく敵を振り切ればいいんだ」
ハタリ
「了解!」
「デス・ドライブ空域コンピュータ、ランダム抽出!」
ソロ星の軍人
「パワー上昇、デス・ドライブどうぞ!」
バッフ・クラン兵
「亜空間飛行か?」
「ロゴ・ダウの異星人め、どこに逃げようっていうんだ!」
バッフ・クラン兵
「敵艦が亜空間飛行を掛けました!」
 〃
「すぐに追撃に移りますか? ドロン様」
グルダブラ
「今から回収作業をしていては、追い付けまい」
バッフ・クラン兵
「第一次攻撃隊は後で回収すれば……」
グルダブラ
「焦る必要はない」
バッフ・クラン兵
「はっ……?」
グルダブラ
「この空域には、かつて我が軍が叩いた異星人共の植民星がある。そこへ向かえ」
カーシャ
「ギジェ、覚えていて? 貴方が純光速ミサイルを撃ち込んで、私達を誘き出した星よ」
ギジェ
「よく覚えている。謝って済む事でもないが……」
コスモ
「ベス、降りるのか?」
ベス
「アジアンの軍は全滅の筈だ。どこかにキャラルの時のように、残された武器・弾薬がある筈だ」
カーシャ
「本当、何人の人が生き残っているかしらね?」
シェリル
「カーシャ……」
カーシャ
「私はね、純潔を守りたいのよ。地球人としてね」
シェリル
「悪かったわ」
コスモ
「はっ……!」
ハタリ
「敵だと思っているのか?」
コスモ
「仕方ないだろ、どこでもこうなんだから……」
ハタリ
「パワーの低い奴だ。損害はない」
コスモ
「ベス、やっぱり降りるのか?」
ベス
「やむを得んな。アジアンの理解を求めたい」
ハタリ
「アジアン、応答願います! こちらソロ号の避難民船です! 救助願います!」
コスモ
「ふっ、わざとらしいのね。避難民船?」
デク
「あー、びっくりした」
アーシュラ
「全然びっくりしてないぞ?」
デク
「キャリア、キャリア!」
「うっ……!」
リン
「キャッ! ルウ、大丈夫?」
ルウ
「まんま、まんま……」
リン
「こんな時にルウったら……」
ロッタ
「リン、みんなを船の中央へ」
リン
「デク、アーシュラ、立って!」
ベス
「臨戦態勢に入れ! 場合によっては強行着陸する!」
「アジアンから応答はないのか?」
ハタリ
「よく聞こえないんだが、あった。入るぞ」
ベス
「アジアンか? こちらはソロ星の避難民船だ」
コモドア
「今のは警告だ。アジアンへの着陸は許さん」
シェリル
「だからって……」
ベス
「私達は、アジアンへ降りる必要があります」
コモドア
「こっちには必要がない。貴様らは悪魔だ。今のアジアンの人口を知っているか? たったの10万だぞ!」
「それもこれも、お前達がアジアンへ来た結果だ! さっさとどっかへ失せろ!」
ベス
「ん?」
グルダブラ
「ソロ・シップ、着陸を許可します。着陸ポイントをトンキに取ってください」
ベス
「内輪揉めか?」
「ハタリ、分かるか?」
ハタリ
「あぁ、ものの20分で接触出来る」
コモドア
「始めの攻撃は市民軍が勝手に撃った事で、貴方との約束を破ろうとしたのではない」
グルダブラ
「それを押さえるのが貴方の役目でしょう。約束通りやってもらえねば、この星の残りの命を頂く事になりますぞ」
コモドア
「だがな、グラダブラ・ドロン殿。我々はソロ・シップの存在を許す事は出来んのだ! 自分達の力で彼らを倒してでも……」
グルダブラ
「それを私達がやってやろうというのだよ。我々の利害は一致しているのだ」
コモドア
「信じられるのか? 貴方を信じていいのか、えぇ?」
グルダブラ
「侍は、嘘は吐かん!」
「ドバ総司令の許可は取ってある。同時に、このドロンの契約書だ。戦いの後、ドバに示せばよい」
「貴公に対しての最大の礼を尽くしているつもりだ」
コモドア
「わ、分かった。ソロ・シップをドックに入れればいいんだな?」
グルダブラ
「そういう事だ。そこを我々が叩く」
コモドア
「我々にとって興味ある申し出があると?」
ベス
「はい。艦の修理の為のデッキを貸してくだされば、ソロ・シップの非戦闘員をこのアジアンに降ろしていくという条件は呑みましょう」
シェリル
「ベス……!」
コモドア
「結構です。アジアンにとって一人の女性は、数万発のミサイルに匹敵しますからな」
シェリル
「私が非戦闘員?」
ベス
「我々の戦闘が拡大している事を、君も気付いている筈だ。わざわざ命を危険に晒す必要はない」
シェリル
「でも私が居なくては、第六文明とイデの研究は出来なくなって……」
ギジェ
「その必要はない。イデは発動しているのだ」
シェリル
「ギジェ、貴方まで……」
カララ
「私にはここしか居る所がありません」
ベス
「君の心さえ変わらなければ、アジアンでも生きていける。それに……」
ギジェ
「私達が死ぬとは決まってはいない」
グルダブラ
「ふふっ、ようやく作戦開始か。これで我が軍が無傷でロゴ・ダウの異星人の船と巨神を手に入れられるという。ハハッ……」
ソロ星の軍人
「ミサイルはこっちじゃない、後ろに回れ!」
ジョリバ
「オーケー、オーケー、その荷物はBポイントへ」
「おぉ、そうだ」
ベス
「どうだ、調子は?」
ジョリバ
「流石に設備があると違うよ。それに、アジアンの人も協力してくれている」
ベス
「お互い、不自由に慣れてしまったからな」
ジョリバ
「全くな……。カララ達は行ったの?」
ベス
「あぁ」
ジョリバ
「辛い所ね」
ベス
「そうだな……」
ジョリバ
「いい時来るよ、ベス」
ベス
「あぁ……」
アーシュラ
「うわぁ、大きい!」
デク
「アーシュラ、騒ぐなよ」
アーシュラ
「ふふっ、大人振って! 非戦闘員!」
デク
「こいつっ!」
ロッタ
「駄目よ、デク」
アーシュラ
「ふふっ、ははっ……!」
デク
「あれ?」
リン
「どういう事かしら?」
シェリル
「さぁ……」
「リン、動かない方がいいわ」
リン
「あ、でも……」
「んっ……開かないわよ、ここ」
シェリル
「開かない……?」
カララ
「シェリル」
コモドア
「諸君には気の毒だが人質になってもらう」
カララ
「人質……?」
シェリル
「何ですって?」
コモドア
「アジアンでこれ以上の殺し合いをやめてもらう為だ」
コスモ
「あれ? どうしてやってないんだ? 休みなの?」
ハタリ
「あぁ、ドックの連中が休みを取るんで降りてった」
コスモ
「晩飯かい?」
ハタリ
「さぁ……」
ベス
「どうした? 作業が続いてないのか?」
ジョリバ
「ベス、ドックの作業員が戻ってこないんだ」
ベス
「何?」
「ハタリ、ブリッジへ戻れ。ジョリバ、発進準備急げ」
ジョリバ
「え、何……?」
ベス
「ノーマル・エンジン、始動急げ!」
ハタリ
「どういう事?」
ベス
「ちょっと気になるんだ。このドックからなるべく早く離れた方がいい」
ギジェ
「離れるだと?」
「ここを頼む!」
バッフ・クラン兵
「ソロ・シップ、動き出しました!」
グルダブラ
「何? 気付かれたのか……。足を止めろ!」
「コモドアに繋げ。裏切ったのか……!」
ハタリ
「ジョリバ、エンジン臨界!」
ベス
「コスモ! 発進してただちにドッキングしろ!」
コスモ
「了解! カーシャ、発進する!」
カーシャ
「ギジェが居ないのよ! どこに行ってるの?」
コスモ
「ミサイルを取りにいってる!」
「イデオ・ノバは、リモコンでドッキングさせる!」
「サインが出ない……?」
カーシャ
「どういう事なの?」
コスモ
「パワーが安定していないんだ」
グルダブラ
「貴様、ソロ・シップに作戦を教えたのか。人質は取ったんだろうな?」
コモドア
「そちらが先に手を出したのだろう。人質は居る! これだ、見えるか!」
ギジェ
「バッフ・クランなのか?」
ベス
「あぁ」
ハタリ
「ベス、コモドアから通信だ」
ベス
「何?」
コモドア
「ソロ・シップとイデオンをバッフ・クランに引渡したまえ。そうすれば、攻撃をやめるように計らう」
ベス
「何だと?」
コモドア
「私には、アジアン人10万の安全を守る責任がある」
ベス
「コモドア! ソロ・シップとイデオンをバッフ・クランに渡したら……!」
コモドア
「ソロ・シップの女子供達が人質だという事を忘れるな」
ベス
「貴様……!」
コモドア
「今すぐ戦いをやめなければ、人質を一人ずつ殺していく。脅かしではないぞ!」
ベス
「コモドア……!」
ギジェ
「むぅっ……!」
リン
「キャッ!」
シェリル
「はっ……!」
ロッタ
「あぁっ……?」
デク
「あっ……」
カララ
「はっ……」
リン
「うっ、うぅっ……」
カララ
「シェリル……!」
シェリル
「リンが……!」
カララ
「リン!」
シェリル
「リン! あぁっ……!」
ロッタ
「リンが?」
デク
「リン!」
シェリル
「リン……リン……! リン、しっかりして! 死んじゃ駄目! リン、リン……!」
リン
「あっ……」
コスモ
「イデオンのサインが来た? カーシャ、ドッキングだ! 行くぞ!」
カーシャ
「了解! 急速ドッキング!」
コスモ
「行くぞ!」
ベス
「反撃するな! ソロ・シップに戻れ!」
コスモ
「ど、どういう事だ?」
カーシャ
「ソロ・シップのバリアの中に入れって」
バッフ・クラン兵
「動きが遅くなった! 叩くチャンスだ、やるぞ!」
アジアンの軍人
「何? 止まれ……うわっ!」
ベス
「二人だ!」
アジアンの軍人
「うぉっ……!」
ベス
「手を上げて!」
シェリル
「リン、リン……!」
コモドア
「何だ?」
アジアンの軍人
「6番ゲート前で何かあったらしい」
 〃
「早くしてくれ。こっちもソロ・シップの攻撃を手伝いに……」
コモドア
「余計な事はするな。責任者はどこに行った?」
ハタリ
「こっちは戦闘中だ。バッフ・クランの攻撃をやめさせなければ、話し合いも出来ん!」
コモドア
「では、ソロ・シップもイデオンもバッフ・クランに渡すのだな」
「下手な抵抗はやめるのだな!」
カララ
「リンが流れ弾に当てられて……」
ベス
「あぁ……」
シェリル
「こんな事って……こんな事って……ないわよぉぉ!」
カーシャ
「コスモ、何とかしてぇ!」
コスモ
「人質が取られているんだ。救出出来ない限り……」
グルダブラ
「バリアを切らせろ! 動かんだけでは降参した事にはならんぞ、コモドア!」
コモドア
「もう一息だ、待ってくれ!」
コモドア
「ソロ・シップ、バリアを切れ! また一人、人質が死ぬんだぞ、ソロ・シップ! いや、今度は10人だ、10人!」
ベス
「ギジェめ、いいぞ!」
ギジェ
「ギジェ……?」
ベス
「はっ……!」
ギジェ
「ぬっ……!」
ベス
「これ以上は殺させん、コモドア!」
コモドア
「き、貴様……い、いつの間に……!」
ベス
「バッフ・クランにソロ・シップを渡すという事の恐ろしさを、何故分かろうとしないんだ?」
コモドア
「アジアンを巻き添えにした貴様達に何が言える! 私達は私達の力で身を守る必要があるんだ!」
「皆殺しにしろ!」
シェリル
「こいつ!」
ベス
「シェリル!」
シェリル
「畜生、畜生!」
「お前なんか、お前なんか……!」
ギジェ
「ハタリ、人質を解放した!」
ハタリ
「分かってる。反撃に移る!」
ギジェ
「頼む! 健闘を祈る!」
ハタリ
「了解!」
コモドア
「何故だ……何故、我々まで巻き込む……」
ギジェ
「我々も巻き込まれた口だ……!」
「トドメが要るか?」
コモドア
「頼む……」
シェリル
「あぁっ……」
ベス
「ギジェ! 大丈夫か!」
ギジェ
「済んだ」
カララ
「シェリル……」
シェリル
「リン……リン……あぁっ!」
コスモ
「何? リンが死んだ?」
ハタリ
「人質は解放したが、詳しい事は分からん」
コスモ
「リンが死んだ……。バッフ・クランめ!」
カーシャ
「コスモ、イデオン・ゲージが!」
コスモ
「行くぞっ!」
バッフ・クラン兵
「巨神が来ます!」
グルダブラ
「全艦脱出! コモドアが死んだ今、作戦変更は仕方あるまい」
コスモ
「逃がすか!」
ハタリ
「コスモ、波動ガンを発射する! 受け取れ!」
コスモ
「波動ガン……了解!」
グルダブラ
「最大加速を掛けて離脱しろ!」
コスモ
「掴まえた! リンの仇だーっ!」
バッフ・クラン兵
「わぁっ……!」
シェリル
「うっ、うぅっ……リン、ちっとも優しくしてあげない内に、何で死んじゃったの……リン、あぁっ……!」
ナレーション
ソロ・シップの過酷な運命は、始まったばかりなのである。ドバ総軍の包囲網は確実に縮まりつつあった。
バッフ・クラン兵
「我が軍の包囲網は、直径150万後年に及んでおります」
「ロゴ・ダウの異星人は、どの艦隊とも接触せずに脱出する事は不可能です」
ドバ
「しかし、敵の動きが分からぬでは意味はないな」
バッフ・クラン兵
「グラバ星域でグルダブラ・ドロンの艦隊と接触があったようです。しかし……」
ドバ
「落ちたのか?」
バッフ・クラン兵
「はっ……」
ドバ
「各個艦隊の独断専行はなしだ」
バッフ・クラン兵
「はっ」
ドバ
「飽くまで『包囲して殲滅する』を基本とする。各艦隊司令に徹底させい」
バッフ・クラン兵
「はっ!」
ドバ
「独断は許さん。巨神の力は見掛け以上に上がっている」
「侍共は自分の手柄だけを考え過ぎる……」
ギンドロ
「ふふっ……だから私が付いてきた。オーメ財団の代表としてな」
ドバ
「私はガンド・ロワまで使おうとは思わんのだ。軍のメンツがあるでな」