第39話 コスモスに君と

カララ
「皆さん、お食事ですよ」
ジョリバ
「あぁ、そこに置いといてください。もうすぐ終わりますから」
カララ
「えぇ」
ジョリバ
「ん? どうしました?」
カララ
「いえ、何でも……」
「あっ……」
「まさか……幾ら何でも早過ぎるわ……」
ベント
「ジョリバさん、イデオンのゲージが……!」
ジョリバ
「え?」
「うわっ!」
ベス
「ど、どうしたんだ?」
ハタリ
「分からん。いきなりパワーが……」
コスモ
「イデオンのゲージが……!」
ベス
「あっ……!」
コスモ
「亜空間でも加速が続くのか?」
ハタリ
「ジョリバ、何が起こったんだ? 何故、力場で吸収し切れない程の加速が掛かった?」
ジョリバ
「そんな事分かるかよ! イデの流れはチェック出来るんだろう?」
ソロ星の軍人
「イデの流れは機関室へ集中している……!」
コスモ
「イデは、何かしようとしているのか?」
カーシャ
「冗談じゃないわよ! これは私達の船よ! イデなんかに……!」
ベス
「しかし、力はイデの方が上だ……!」
コスモ
「うわっ……!」
カーシャ
「うっ、うぅっ……!」
コスモ
「うぅっ、あっ……!」
ベス
「……停止した?」
ハタリ
「何故だ……」
ジョリバ
「カ、カララさん、怪我は?」
カララ
「ありがとう。大丈夫よ」
カララ、ジョリバ
「あっ……!」
カララ
「あぁっ……!」
ジョリバ
「カララ!」
カララ、ジョリバ
「あぁーっ!」
ベント
「き、消えた……? カララとジョリバが消えた……」
「ジョ、ジョリバ! カララ!」
ベス
「消えただと? 馬鹿な、よく捜したのか?」
ベント
「捜すとかそんなんじゃなくて、目の前で光と一緒に消えちまったんだよ!」
ベス
「そんな事がある訳ないだろう! とにかくもう一度捜してみろ!」
ベント
「しかし……」
コスモ
「まさか、敵の攻撃じゃないんだろうね?」
カーシャ
「もしも、バッフ・クランがマイクロ・デス・ドライブを開発していたら……」
コスモ
「俺達は終わりだぞ。船の中に核爆弾でも放り込まれてみろ、ソロ・シップはもっても俺達は助かりっこない」
シェリル
「ふふっ、ははっ……およしなさいよ、もう何をしてもイデの掌で踊っているだけなのよ。私達のやってる事ってね、ふふっ……」
ドバ
「な、何だ? 何事だ?」
バッフ・クラン兵
「バイラル・ジンの下に時空震! 原因不明の時空震発生!」
ドバ
「時間と空間が歪んでいるというのか」
ジョリバ
「あっ……」
カララ
「ここは……」
バッフ・クラン兵
「んっ?」
 〃
「何だ?」
カララ
「はっ……!」
ジョリバ
「え?」
バッフ・クラン兵
「何者だ、お前達? こんな所で何をしている? 手を上げて早く……」
カララ
「ジョリバさん、逃げて!」
バッフ・クラン兵
「あっ、待て!」
「侵入者発見! 第205番地区に逃走!」
「行くぞ!」
 〃
「おう!」
アナウンス
「第205番地区方面に逃走! 追跡を頼む! 第205番地区方面に逃走! 追跡を頼む!」
カララ
「こちらへ」
バッフ・クラン兵
「居たぞ! こっちだ!」
ジョリバ
「一体、どうしてこんな事になっちまったんだ!」
カララ
「分かりません。でも、ここがバッフ・クランの船だという事だけは事実です!」
ジョリバ
「イデが仕組んだのか!」
カララ
「でしょうね」
「あっ、うっ……!」
ジョリバ
「カララ、さあ……!」
バッフ・クラン兵
「よーし、そこまでだ! あっ、カララ様……」
ドバ
「カララ……娘のカララか?」
「そのような事があるものか!」
バッフ・クラン兵
「いえ、お言葉ですが現に……!」
ギンドロ
「ドバ総司令、見たまえ。これは確かにカララ嬢ちゃんだよ。多少女らしくなってはいるがな」
ドバ
「カ、カララめ……」
「付近に敵の気配は?」
バッフ・クラン兵
「ありません。全く……」
ジョリバ
「しかし、この船大きいな」
カララ
「えぇ、これは噂されていた巨大戦艦だと思います。父が乗っているかもしれません。となれば父と会って……」
ジョリバ
「しかし、こんな状態で……ん?」
バッフ・クラン兵
「カララ様、ここまでです。電源は切らせていただきました。手を上げて!」
カララ
「父上……」
ベス
「ん、聞こえたか?」
ハタリ
「あ、あぁ」
ベス
「カララの声だ。な、そうだな?」
ハタリ
「あぁ……ベス、あれ!」
ベス
「カララ……!」
ハタリ
「ジョリバもだ。蜃気楼なのか?」
ベス
「いや、イデだ。イデの力が我々にこんな映像を見させているんだ」
ドバ
「どうやって入った?」
カララ
「イデの導きによって」
ドバ
「イデだと? イデか……。何の為に?」
カララ
「使者として」
ドバ
「イデの使者というのか?」
カララ
「はい」
ドバ
「イデがそのような考えを示したというのか」
カララ
「はい」
ドバ
「話の内容によっては宇宙に放り出す。いいな?」
ジョリバ
「あんた、それでも親か! 自分の娘を……!」
カララ
「ジョリバさん、ここは私に……」
ドバ
「娘一人のお陰で何千もの兵が死んでいるんだ、今更……。バッフ・クラン語をよく覚えたな」
ジョリバ
「言葉を覚えた? 俺は……」
「これもイデの仕業か」
ベス
「何とかなりそうか?」
ハタリ
「イデの流れに不定形な部分があるんだ。その波の終着点を突き止めれば、ひょっとしてポイントが……」
ベス
「頼むぞ。カララ……!」
カララ
「ベス……!」
ドバ
「あ? イデか?」
カララ
「父上……いえ、ドバ総司令。もう貴方にも分かっている筈です。戦いがイデの力を増大させている事を」
「そちらの地球にも流星の落下が増えているのではありませんか?」
ドバ
「その流星もお前の乗る宇宙船が発生させている節もある。ならばソロ・シップと巨神は抹殺せねばならん」
ジョリバ
「イデは自分を守る力を備え始めたのですよ」
カララ
「コントロールも不可能になっているのです」
ドバ
「だからといって放ってはおけぬ。異星人共がイデの力を持って、我らの緑成す地球を襲わないと誰が保証するか」
カララ
「私が命に代えても」
ドバ
「馬鹿な事を! 裏切り者の命など屑同然。何の保証になるのだ」
カララ
「ロゴ・ダウの異星人といってもバッフ・クランと全く同じです。必ず理解し合えます。その証拠に、私のお腹の中で新しい命が育っているのです」
ドバ
「何?」
ギンドロ
「子を身篭ったというのか?」
ジョリバ
「カララ……!」
ドバ
「おのれ……!」
ジョリバ
「ぐぁっ!
「ド、ドバ……!」
ハタリ
「結果が出た。意外と近いぞ」
ベス
「よし、救出に向かう」
ドバ
「せめてもの親子の情けだ。ひと思いで殺してやる。動くな!」
ジョリバ
「実の父親が、子供を殺そうというのか?」
ドバ
「アジバ家の名誉の為だ!」
「はっ……!」
カララ
「私は、新しい命の為になら父親殺しの汚名も被りましょう」
ドバ
「カララ……」
カララ
「この距離なら、この小型レーザー発信器で間違いなく父上の心臓は射抜けます」
ドバ
「むうっ……!」
「ワシを撃つのはいいが、兵共に射殺させる」
カララ
「お好きに、父上」
「その代わり、私達をここに飛んでこさせたイデの力は、私達に何かあった瞬間に何千人もの兵を送り込みます」
「ここは既に見張られているのです」
ドバ
「イデの力はコントロール出来ぬと言った筈だ」
カララ
「はい。力を弱める為のコントロールが出来ないのです。より強力な使い方なら……」
ギンドロ
「ドバ総司令、カララ嬢ちゃんが脅しを言ってるとは思えん」
ドバ
「しかし、軍は退けん」
ギンドロ
「あの二人は現にここに居るのだ」
ドバ
「しかし、私は認めん」
「カララめ……。全艦の内外に警戒態勢を敷け。どこから異星人が現れるか分からん」
「そして、カララを見付け次第、殺せ!」
カララ
「大丈夫ですか?」
ジョリバ
「ああ、しかし作業用の検電ミニコンがこんなとこで役に立つとはな」
カララ
「重機動メカの格納庫」
ジョリバ
「それで脱出しよう」
カララ
「えぇ」
バッフ・クラン兵
「うっ……!」
 〃
「どうした? 居たのか?」
 〃
「うぅっ……!」
ジョリバ
「ふんっ!」
ドバ
「我がバイラル・ジンの周りに、僅かな重力震が起こっているんだ」
「原因を探れ!」
バッフ・クラン兵
「はっ!」
ドバ
「まだカララは捕まらんのか?」
ギンドロ
「総司令、大丈夫だろうな? このバイラル・ジンなら……」
ドバ
「ふっ、さてね……」
ギンドロ
「総司令……」
バッフ・クラン兵
「出た! 異星人の船だ!」
ドバ
「しょ、正面か!」
「ロゴ・ダウの異星人め!」
コスモ
「あっ……?」
ベス
「出た! 真正面に……」
ハタリ
「ブレーキだ!」
ベス
「このままだ、このまま突っ込め!」
ドバ
「ロゴ・ダウの異星人め、特攻を掛けるというのか?」
バッフ・クラン兵
「ぐぁぁっ!」
ドバ、ギンドロ
「うぉっ……!」
ハタリ
「ぐわっ……!」
ベス
「これで、他の艦からの攻撃はやりにくくなる。対艦戦用意!」
カララ
「ソロ・シップ……ソロ・シップが来てくれた!」
「ジョリバさん」
ジョリバ
「すまない」
「来てくれた? ソロ・シップが来てくれた……」
「うっ、うぅっ……夢じゃないんだな?」
カララ
「行きますよ」
ジョリバ
「あ、あぁ!」
バッフ・クラン兵
「居たぞ!」
カララ
「飛びます」
カーシャ
「キャーッ!」
コスモ
「右だ!」
デク
「了解!」
「アディゴ隊が来る!」
コスモ
「クッ、イデオン・ガンを……。ソロ・シップ、ベス、イデオン・ガンを発射出来ないのか?」
ハタリ
「ベス、どうしたんだ?」
ベス
「あのモニターの中に……何だろうな?」
ハタリ
「え?」
ベス
「内乱かな?」
ハタリ
「拡大する。バッフ・クラン同士で追い掛けっこか?」
ベス
「はっ! カララ……カララだ!」
ハタリ
「ベス! どこに行く?」
ベス
「砲塔だ!」
コスモ
「うっ……!」
「この野郎!」
「ワァーッ!」
カーシャ
「コスモ、どうするの? このままじゃ取り囲まれて……!」
ベス
「どこだ? あそこか!」
カララ
「ソロ・シップから?」
ジョリバ
「カ、カララさん。これで脱出しましょう!」
カララ
「え? えぇ!」
コスモ
「こいつら!」
ジョリバ
「強くなったな、貴方は」
カララ
「え? えぇ。行きましょう」
ベス
「カララ達が脱出した。ソロ・シップを引き離せ。イデオンを呼び戻して、カララの援護をさせろ」
ハタリ
「了解!」
コスモ
「あれか。あれにカララとジョリバが。援護しろったって、これじゃ……」
デク
「コスモ、掴まえちゃえ。イデオンの手で掴まえて、バリアの中に取り込んじゃうんだ」
コスモ
「それしかなさそうだな」
「よし、掴むぞ!」
「あっ……!」
ベス
「カララ……!」
コスモ
「カララ……ジョリバ……!」
「わぁぁっ! 何故だ、何故殺す、何故戦う? 何故そっとして置けないんだ!」
コスモ
「何故カララさんを殺した? カララさんの理想主義がイデを抑える鍵だったかもしれないんだ!」
ドバ
「な、何だ、これは? これは異星人の声だ。異星人の言葉が聞こえるのか?」
ギンドロ
「確かに、ロゴ・ダウの異星人の声」
コスモ
「イデの力が解放したらどうなるか、誰も分かっていないんだぞ。貴様達が、貴様達が責任を取ってくれるのか? 貴様達が……」
ベス
「カ、カララ……」
「ルウ、ルウだ。ルウはどこに居るんだ、ハタリ」
ハタリ
「ロッタ達と船の中央に居る。その証拠に、イデオンのゲージは正常だ」
ベス
「よし、脱出するぞ。逆噴射用意!」
ハタリ
「りょ、了解!」
ベス
「カララ……。カララは本当に死んだのか?」
ドバ
「異星人め、成ろう事なら何で戦うか? 使う必要のない軍船など造りはせん」
「バッフ・クランの民の為には、大帝からお預かりしたこの大艦隊、全てを注ぎ込もうと殲滅せずに置くものか!」
カーシャ
「コスモ、帰るわよ。ソロ・シップに帰って」
コスモ
「了解。ミサイルも少なくなった」
「はっ……!」
デク
「あっ、あの光の中……」
コスモ
「カララ?」
カララ
「脱出しましょう、コスモ」
コスモ
「了解。カララ……」
「カララとジョリバを救出した」
ベス
「何?」
コスモ
「カララとジョリバを救出したんだ」
ベス
「コスモ、今何て言ったんだ?」
コスモ
「カララとジョリバを救出したんだ」
ベス
「助け出したのか? 生きてるのか、カララは?」
コスモ
「カララは怪我もしていない。助けたんだ」
ベス
「そうか……そうか。ジョリバも無事なんだな?」
カーシャ
「大怪我をしているけど……」
ベス
「よし、イデオン着艦次第、デス・ドライブを掛ける!」
カララ
「ジョリバ、大丈夫ですか?」
ジョリバ
「あ、あぁ、何とか……。しかし不味ったな」
カララ
「何を?」
ジョリバ
「こんないい人なら、ベスより先に口説くんだったよ。君を」
カララ
「ありがとう、ジョリバ」
ドバ
「全艦で追跡しろ! 宇宙の果ての果てまで追い掛けてでも、ロゴ・ダウの異星人の船を叩け!」
ナレーション
その瞬間であった。イデの発動が起こったのは……。
カララ
「あぁっ……!」
ベス
「何だ?」
ハタリ
「何が起こったんだ?」
シェリル
「ふふっ、みんなイデが仕組んだのよ。イデが発動したのよ。みんな、みんな、みんな、滅んでしまえばいいんだわ」
ロッタ
「キャーッ!」
デク
「わーっ!」
カーシャ
「キャーッ!」
ナレーション
そう、カララとドバの対面こそイデが与えた最後のチャンスだったのだ。
それを人々はお互いに拒否した。その為にイデは、その無限力を解放していったのだ。
その力が、新たに生まれつつあるカララの赤ちゃんがきっかけになっていた事は、事実である。
そして、地球もバッフ・クランの人々も、因果地平……即ち、宇宙の果てへ四散したのかもしれなかった。