第4話 ザ・コネクション

前回のあらすじ
ペンタゴナという、太陽系の辺鄙な惑星コアム。
ダバ・マイロードは、直接手を下した訳ではないが、
結果的には、リーリン姐さんをやっちまった事になっちまった。
人殺しはよくない……その、よくない事をやったからだろう。
今度はギャブレット・ギャブレーが付け狙ってきた。
ま、そゆ事だ。
キャオ
「へん、男ってのは、女らしいって見ればすぐこれだから、やんなっちゃうよ」
「イテッ」
アム
「私は女よ。らしくはないわよ。ちゃんとしてるわい」
柄の悪い男
「何だよ、お前達……?」
キャオ
「ちょっと聞きたい事があんだよ」
柄の悪い男
「金なんかねぇぜ、うっ……!」
キャオ
「お〜? そういう言い方って傷付くな。俺達たかりじゃないよ?」
ダバ
「アマンダラ・カマンダラの事が知りたい」
柄の悪い男
「知ってどうすんだよ?」
キャオ
「ほ〜れほれ、お髭をガラスで剃ろうか?」
柄の悪い男
「分かったよ」
ダバ
「アマンダラ・カマンダラって奴、何者なんだ?」
柄の悪い男
「タダじゃ言えねぇな……」
キャオ
「ナマ言うんじゃねぇよ」
柄の悪い
「言うよ……戦争屋だよ。この間の戦争でも、しこたま儲けたって話だ」
ダバ
「兵器商人なのか」
柄の悪い男
「この街にだって、奴の銀行があるぐらいさ」
キャオ
「へ〜、だから手形かよ」
アム
「でもさ、私は、リーリン姐さんからは何も聞いてないわ」
キャオ
「あ、おい……!」
ダバ
「やめとけ、キャオ」
キャオ
「だけどよ」
ダバ
「チンピラにまで睨みを利かせている……厄介な奴だ」
アム
「そうね。どうするの?」
ダバ
「却って好都合じゃないか。手形の交換だって、自分で出来る人なら」
アム
「ん、ちょっとちょっと……」
「リリスんとこの親父さんが銀行に照会しただけで、変なのが来たんでしょ?」
「不味かないの?」
ダバ
「不味かったら逃げてくるだけさ」
「わっ……!」
アム
「ふぅ、そんな調子で上手く行くのかしらね?」
キャオ
「おい、もっと聞き出さなくていいのかよ?」
受付嬢
「ご用件をどうぞ」
ダバ
「アマンダラ・カマンダラさんに、お目に掛かりたい」
受付嬢
「貴方のお名前は……」
ダバ
「ダバ・マイロードです」
受付嬢
「ダバ・マイロード様ですね?」
頭取
「手形を持っているという、ダバ……ダバが来たと?」
銀行の職員
「しかも、正面玄関からです、堂々と。破廉恥極まりない」
頭取
「いいじゃないか、こちらの手間が省ける。ご丁重にな」
アム
「だけどさ……」
ダバ
「入るよ」
銀行の職員
「ダバ・マイロード様でいらっしゃいますね? どうぞこちらです」
ダバ
「俺達のような坊や相手に、大層な事で……」
銀行の職員
「な〜になに、貴方がたが面白い事を言われるんで、こちらも気になるもので」
ダバ
「リリス、引っ込んでろ」
頭取
「知らないとはいえ、アマンダラ様の名前を、このプリャーモの街でペラペラと喋り回るなどと」
「田舎者でも許せませんな」
ダバ
「でも、預かり物を届けたいんだ。そしたら、聞くしかないだろ?」
頭取
「誰から? 何を預かったのだ?」
アム
「そんな事言えないわ。直にアマンダラ・カマンダラに会うまではね」
「どこに居るか、知ってんでしょ? この銀行のオーナーがアマンダラならさ」
頭取
「そんな事までご存知となると、もう帰せませんな」
ダバ
「あ、じゃあ、アマンダラさんに会わせてくれるんだ?」
「あ、焦る……どういうの、これ?」
頭取
「な〜に、もうビルの地下室でジッとしてればいいんですよ。一週間ぐらい、飲まず食わずでね」
アム
「そういうダイエット、やだわ! 死んじゃう〜!」
銀行の職員
「死んでもらうの」
アム
「え、本気で言ってる……」
キャオ
「手形返すだけなんだよ?」
銀行の職員
「ダバ・マイロード、その手形を持っているのなら……!」
ダバ
「いや、あんたには渡せないよ」
頭取
「そいつを寄越せ! 我々からアマンダラ様に届けて……」
ダバ
「そりゃ駄目だ。預かり主からは、直に渡せと頼まれている」
「それに、死に際の約束はちゃんと守れって、爺ちゃんに言われてっから」
頭取
「この! 我々が渡すと言っとるだろうが!」
銀行の職員
「手を挙げて、エレベーターに乗れ」
アム
「ふんっ!」
銀行の職員
「うっ!」
「うわぁぁっ!」
銀行の職員
「あっ……!」
 〃
「あぁっ、ぁっ……!」
「逃げた!」
頭取
「追え!」
リリス
「私、人を蹴飛ばしちゃった、嘘……」
ダバ
「リリス」
盗賊の手下
「あ、てめぇ、俺のフロッサーに唾を吐いたな?」
 〃
「な〜に、因縁付けんだよ?」
 〃
「恍けんじゃねぇ!」
 〃
「やめろよ!」
 〃
「わわっ……!」
ギャブレー
「よく飽きないものだな」
盗賊の手下
「飽きない?」
 〃
「何を?」
ギャブレー
「お前達、いつまで盗賊をやっているつもりだ?」
盗賊の手下
「どういう事だ?」
ギャブレー
「このままでは、正規軍の軍人にはなれないという事だ」
盗賊の手下
「ポセイダルの正規軍の事か?」
 〃
「笑わせるぜ、盗賊が軍に入れる訳ねぇだろ?」
ギャブレー
「邪魔なお前らが居ても、俺は、決めた事はやる」
盗賊の手下
「そうだよな、親戚中の金を集めて買った、中古のヘビー・メタルの借金を返さなきゃなんねぇもんな」
ギャブレー
「可笑しくない!」
盗賊の手下
「可笑しいよ」
ギャブレー
「貴様……!」
盗賊の手下
「あ、怖いわ、苛めないで〜」
ギャブレー
「斬るぞ」
盗賊の手下
「新しい頭」
ギャブレー
「何だ?」
盗賊の手下
「例のダバ……ダバ、アマンダラに会うつもりですぜ?」
ギャブレー
「アマンダラ? そいつは何者なのだ?」
盗賊の手下
「ポセイダルの正規軍に、力を持ってる男ですわ」
ギャブレー
「正規軍、そうか……」
「よし、あいつらを捜し出して、見付け次第、動きを封じろ」
盗賊の手下
「じゃあ、あんたはどうすんだよ?」
ギャブレー
「貴様……!」
「リーリンからお前らを預かったのが、私だという事を忘れるなよ?」
「先にする事があるんだ」
盗賊の手下
「わ、分かってるよ、頭……」
頭取
「見世物小屋の有翼人も居た」
「もし奴らを取り逃がしたら、私の立場は……!」
ダバ
「どうなるって言うの?」
頭取
「わぁぁっ!」
ダバ
「頭取、アマンダラ・カマンダラと連絡を取ってもらおうか」
キャオ
「ヒヒッ、偉いさんを脅かしちまおうなんて、余計な事言うんじゃなかったよ」
「ダバが本気でやるなんてね」
アム
「あんた、やっぱり逃げ足だけは早いのね」
キャオ
「るせぇ!」
アム
「約束の場所まで直行よ」
リリス
「うぅ……っ!」
アマンダラ
「百万ギーンの手形を持ってる少年に、脅かされたという訳か」
頭取
「いえ、私の判断に余りますので、ご連絡を……」
アマンダラ
「ならば、定例報告以外はするな」
頭取
「はっ……!」
ダバ
「ここにあるんだぜ? 直接渡したいんだがな」
アマンダラ
「今日は駄目だ。明日、ここに来い」
ダバ
「勿体振った人なんだね」
アム
「はっ……!」
キャオ
「やめときな、ポセイダルの正規軍だ」
「グライアだぜ、あれ」
アム
「珍しくないわよ、あんなの」
キャオ
「ひょ〜」
「ダバ……俺はやっぱ正規軍に入って、あいつを動かすぞ」
ダバ
「コネがなけりゃ、金を積むか、ヘビー・メタルを持ち込むかしなけりゃ入れやしないんだ。やめときな」
キャオ
「金なら、ダバの持ってる手形があるじゃないの」
ダバ
「気に入らない奴だけど、アマンダラと会う約束はしたんだ。駄目だよ」
キャオ
「へん、人の手形に振り回されて、面白いのかよ?」
ダバ
「振り回されちゃいないよ」
キャオ
「振り回されてるよ、頑固者!」
「わ〜っ!」
アム
「あれま……」
キャオ
「薬が効いたみたい」
「へへっ……」
「入隊したら、迎えにくっからよ」
「悪いな、ダバ……男には、賭けをしたくなる時ってのがあるんだよ」
ギャブレー
「ガマラ・バウを飼っているだと? 流石だな……」
エイマン
「何の用だ、若い方?」
ギャブレー
「アマンダラ・カマンダラの邸宅と教えられて来た。取次いでもらいたい」
アマンダラ
「すまんな。私は目が弱いので、サングラスは外せない。許してくれ」
ギャブレー
「こう簡単に会える方と、思っていませんでしたので……」
アマンダラ
「誤解だよ。ガマラ・バウをあっという間に倒せる若者とは、会いたくなるものさ」
ギャブレー
「百万ギーンの手形の件は、ご存知で?」
アマンダラ
「それは知っているが……」
ギャブレー
「ではその手形を、私が銀行の方に代わって、取り返してみせましょう」
アマンダラ
「条件は?」
ギャブレー
「ポセイダル軍への推薦状が頂きたい」
アマンダラ
「欲がないな……。私の力なら、君を士官にも出来るが?」
ギャブレー
「士官には実力でなります」
アマンダラ
「いいな、若者の心意気としては……。約束しよう、ギャブレット・ギャブレー君」
ギャブレー
「有難う御座います、アマンダラ様」
アマンダラ
「ふふっ、ギャブレット・ギャブレーにダバ・マイロードか……期待するぞ、若者達……」
リリス
「んっ、んんっ……!」
アム
「今日、返しに行く約束だったんでしょ? どうすんのさ、キャオが持ってっちゃったのに」
ダバ
「キャオの奴は、発作を起こす事はあっても、戻ってくるさ」
アム
「あんなの放っといて、二人で旅しようよ」
ダバ
「俺は、アムと二人だけで、旅をするつもりはないよ」
アム
「ん、楽しいよ?」
ダバ
「それだけなら、村へ帰って畑仕事をやる」
アム
「ダバ……!」
ダバ
「俺は、手形に振り回されるだけの男なのか、試してみたいんだ」
アム
「そうですか、そうですか! なら、私にも考えがあるわ!」
「私は私の実力で、ダバを私の言いなりにしてみせるわ、ふんっ!」
ダバ
「お〜、怖……」
アム
「待ってらっしゃいよ!」
ダバ
「さて、困った……」
エイマン
「宜しいのですか?」
アマンダラ
「ふふっ、使えるよ、あの男はな」
盗賊の手下
「何だ、あの煙?」
ダバ
「わっ! ジーンプラは、これだから嫌なんだよな」
「見付かった?」
「マシンナリィかヘビー・メタルが来るっていうのか」
リリス
「ああんっ……!」
ダバ
「リーリンの仇討ちをするっていうのか」
キャオ
「く〜、格好の良いお姿……!」
ギワザ
「この手形は、既に銀行停止となっていて、現金には変えられんな」
「こんな物で、ポセイダル軍に入隊を希望するのは、とても無理というものだ」
「ミラウー・キャオ君」
キャオ
「え〜? だって昨日までは、アマン銀行の連中がこのカードを……」
ギワザ
「ん? アマン銀行の連中?」
キャオ
「あ、いえ……」
「わ〜っ!」
軍人
「ネイ・モーハンに投げられたかい? それだけでも有難いと思うんだな」
キャオ
「お、女かよ……」
軍人
「おら、行けよ」
キャオ
「ええい!」
「おめぇらには負けねえつもりだから、志願しに来たんじゃねえかよ」
軍人
「待てよ、おい……!」
キャオ
「るっせぇな! 百万ギーンを欲しくないってのが可笑しいんだよ!」
「あっ……」
軍人
「野郎!」
アム
「ん、ごめんして?」
軍人
「何だ?」
キャオ
「アム……」
アム
「手形カードがないと、ダバの男が立たないのよ?」
「何て事してくれたの、あんたって人は?」
ダバ
「くぅっ……!」
「当たってくれんなよ? 地の利のいい所は……」
「無駄を撃っても駄目だ」
ギャブレー
「あそこか」
「ジャイロ隊は上から押さえ込め。ゼッタにリスタ、そのまま突っ込めばいい」
「フロッサー隊は鼻面を押さえるのだ」
ダバ
「直進コースだ。オートマチックでやるか」
「リリス、どこへ行く?」
「へ〜、当たった。感動!」
「3・2・1……」
ミスタ
「エルガイムに乗ろうってのか?」
ギャブレー
「間に合わないのか」
ダバ
「連中、とても素早い」
キャオ
「な〜」
アム
「何よ?」
キャオ
「そんな邪険にしないでよ」
「やっぱり帰りづらいな」
アム
「そんな腐った根性なら、取り成してあげないよ?」
「ふんっ!」
キャオ
「な〜アム、別ルート探して、ポセイダルの正規軍に入らないか?」
アム
「あんた、まだ分かんないの? あんた、ダバに試されてんのよ?」
「寝たふりして、手形を盗ませてね」
キャオ
「奴が、そんなに捷い訳ねえじゃねぇか」
アム
「全く、おめでたいんだから……」
リリス
「きゃっ!」
アム
「リリス、痛いじゃないのさ?」
「え、ダバが襲われてんの?」
キャオ
「今しがた、飛んでったジャイロも、そうなのか?」
リリス
「うん、うん」
ダバ
「速い……慣れてきたな」
「左腕が動かない。バインダーが取れれば……」
「ペラペラ煩いんだよ!」
盗賊の手下
「わ〜、お助け〜!」
 〃
「あれ、ジャンプしてねぇぞ?」
ダバ
「偉い、エルガイム。よくぞ足が持ったもんだ」
「うっ……!」
ミスタ
「やった!」
ギャブレー
「やったのか?」
キャオ
「あっ!」
アム
「遅かった!」
「だから……!」
キャオ
「イテッ」
リリス
「ダバ〜!」
キャオ
「あぁっ……!」
アム
「え?」
キャオ
「アム!」
アム
「分かってるわい!」
盗賊の手下
「あっ、わっ……!」
ギャブレー
「ミスタ、前へ! 一発で仕留めてみせろ!」
「手形を手に入れれば正規軍へ入れる約束を、アマンダラと取り付けてきたんだ! 分かっているか?」
ミスタ
「本当か? そりゃいいや!」
「目晦ましを掛けようったって……あれ?」
「ん、イテッ……!」
ギャブレー
「ん、あの馬鹿……!」
ミスタ
「わ、助けて……!」
ダバ
「やはり、ギャブレーが指揮をしていたのか」
「山賊を志すような男ではない筈なのに……」
アム
「あは、逃げる逃げる」
キャオ
「おいダバ、消化器持ってこい。リスタの部品には、使えんのが一杯あんだぞ?」
ダバ
「了解」