第9話 アーミィ・ベース

前回のあらすじ
ペンタゴナという、太陽系の辺鄙な惑星コアムから、物語はミズン星に移ってしまった。
ダバの奴が、アマンダラ・カマンダラに会うのを拘ったからだ。
お陰で、ギャブレーには追い回されるわ、反乱軍のリーフって奴とはバイバイしちゃうやらで、
いい事な〜んにもないんだな、これが。
正規軍
「何だ、こんな所を……」
キャオ
「ぬぅぅっ……！」
正規軍
「何だ、あのフロッサー？」
キャオ
「よーし、そのまま付いてこいよ」
正規軍
「逃がすかい」
「自分からちょっかい出したのが、命取りなんだよ！」
キャオ
「ち〜っとも当たんないね」
「ダバ、抜けるぞ」
ダバ
「了解」
正規軍
「うわっ、仲間が居たのか！」
「エ、エルガイムじゃないか！」
「うっ、うわぁぁっ！」
キャオ
「へへっ、やったぜ〜」
キャオ
「……こいつは駄目だ。中に入るなんて出来やしないよ」
アム
「リーフ一人の為に、何でこんな事しなきゃなんないの？」
キャオ
「ステラなんて奴に義理立てする事はないのに……」
ダバ
「ステラには一度助けられている。リーフは俺の代わりに捕まったんだ」
キャオ
「じゃあ、一人でやんな」
アム
「ダバ、別に私達、反乱軍じゃないんだからさ」
ダバ
「決めた。正面ゲートから中に入る」
アム
「あんた正気？」
キャオ
「ダバ……！」
アム
「エルガイムで強行突破したってさ……」
ダバ
「強行突破なんてしないよ。堂々と入ってやる」
アム
「ダバが？」
ダバ
「三人一緒にさ」
アム
「あそこを？」
キャオ
「俺、やだ！」
ダバ
「大丈夫だって」
レッシィ
「用とは何か、ギャブレー？」
ギャブレー
「十三人衆っていっても、女って得だな」
レッシィ
「何だ、その言い方？　棘がある……」
ギャブレー
「そのつもりだから、当たり前だろ？」
レッシィ
「ふふっ……羨ましいのなら、手術でもして女になればいい」
ギャブレー
「女の憎まれ口は可愛いものだ」
レッシィ
「あっ、触るな！」
ギャブレー
「憎まれ口まではいい。だが、暴力まで振るうと、嫌われるぞ？」
チャイ
「何をしている？　ギャブレット、レッシィ」
ギャブレー
「チャイ隊長……いつ、こちらへ？」
チャイ
「ミズン星に来てまで、レッシィに意見するとはな」
ギャブレー
「盗賊達を後一歩の所まで追い詰めながら、常に逃げられてしまうのは……うっ！」
チャイ
「お前のような新参者に、意見される必要はない！」
ギャブレー
「がっ……！」
チャイ
「しかし、本日より私が、ミズンの軍を締め上げる」
レッシィ
「ギワザ・ロワウ様のご命令でですか？」
チャイ
「残念ながらそうだ」
「貴様は、捕虜にしたリーフの取調べをしていろ」
ギャブレー
「はっ！」
チャイ
「ガウ・ハ・レッシィ」
レッシィ
「はっ！」
チャイ
「お前の処分も、間も無くやる」
「盗賊共に船を乗っ取られたのだ。無能と言っていいな」
レッシィ
「格好付けようとするから格好悪くなるって事、分かんないみたいね」
「ま、精々、上官達に媚でも売って、セコく出世しなよ」
ギャブレー
「偉くなれば、何でも出来る……それが軍人だ！」
レッシィ
「軍人だけが生き方じゃないでしょうが！」
ギャブレー
「……何だ、あれは？」
レッシィ
「ギワザ・ロワウめ……ネイ・モーハンに気を奪われたな？」
「そっちがそうなら、私だって男の一人や二人、食ってやるよ！」
アム
「うっ……」
キャオ
「意外と俺の顔って、ロング・ヘアーが似合うじゃないか」
「な？」
アム
「そうそう。それで声出さなければ、完全に女よ？」
キャオ
「全くだぜ……女に化けるなんて土台無茶なんだよ」
ダバ
「仕方ないだろ？　ベースに出入りのパン屋が、女ばかりだとは思わなかったんだ」
「うっ、この口紅の気持ち悪さ、何とかならないの？」
「入るぞ」
キャオ
「さ、心の準備も整いましてよ」
アム
「や、やめて……」
リリス
「うわっ……」
キャオ
「ま、失礼しちゃうわ」
キャオ
「おはよ……」
アム
「ございます」
警備兵
「パン屋か……」
「お前は、図々しい女なんだな」
アム
「どうしてさ？」
警備兵
「運転してる奴は、柄が大きいけど、奥床しいじゃねえか？」
ダバ
「ああん……」
アム
「フランチスカは木偶の棒よ？」
「私ね、『あぁ素敵な兵隊さんが居るな』って思って」
「こんな金髪のキャロリーヌに取られちゃやだわって思ったから、つい……」
「ね、ごめんしてね？」
警備兵
「そ、そりゃ、ごめんするよ」
「おっ……」
キャオ
「ふふっ……」
アム
「あ、キャロリーヌって焼餅焼きなのよ。ああやって男心を引こうとしてんだから」
警備兵
「やだね」
アム
「本当」
「じゃ、またね」
警備兵
「おう」
アム
「ダバのお陰だよ。好きでもない奴とキスしたりしてさ」
ダバ
「すまない」
アム
「唇が汚れたわい」
キャオ
「ははっ……あ〜、しんど」
アム
「キャオ、ばれるわよ？」
キャオ
「吐かないと、生爪剥がしてでも聞き出すぜ？　監獄はどこだ？」
レッシィ
「……監獄だと？」
リーフ
「わぁっ……！」
正規軍
「ちっ、薬が使えりゃ簡単なのに……」
ギャブレー
「自白対応剤ぐらいは飲んでいる。薬を使ったら精神錯乱に……」
リーフ
「うぅっ……！」
正規軍
「お前達のアジトを、喋りゃいいんだよ！」
リーフ
「わぁっ、うぅっ……！」
正規軍
「言え、言うんだ！」
ギャブレー
「拷問なんか下らんな」
正規軍
「何？」
ギャブレー
「こいつを泳がした方が、アジトを知るには手っ取り早いんじゃないのか？」
「上手くすれば、反乱軍の仲間割れの材料に仕立て上げる事だって出来る」
正規軍
「ん？」
「あっ……」
「何？」
ダバ、キャオ
「それ！」
正規軍
「わぁぁっ！」
正規軍
「こんなモンで上手く行くのか？」
ギャブレー
「原始的な方法だから、引っ掛かるのさ」
「この作戦を、チャイ殿に知らす」
「うっ……！」
正規軍
「うっ！」
ダバ
「手を上げるんでしょ？」
キャオ
「何笑ってんだよ？」
ギャブレー
「よく出会うなと思ってな」
ダバ
「リーフ、しっかりしろ」
リーフ
「うぅっ……」
ダバ
「電気ショックをやられたな。酷い事を……」
アム
「ダバ、急いでよ」
ギャブレー
「キャオ、君は、正規軍に入りたかったんじゃないのか？」
キャオ
「え？」
ギャブレー
「こんな真似をしていると、一生を棒に振るぞ？」
キャオ
「それは、今から軍に入りゃ、お前の下で働けってこったろ？」
ギャブレー
「んっ……」
キャオ
「人を舐めんのも、大概にしな！」
アム
「キャオもいい事言うのね」
キャオ
「ついでに、ダバの阿呆も感染ったけどな」
ダバ
「急げ」
アム
「は〜い」
リリス
「んんっ……！」
アム
「リリス、こっちはいいわ。あっちの人をお願いね」
ギャブレー
「どの道、君達は、私の手柄になるだけさ」
キャオ
「煩いんだよ、食い逃げ野郎！」
アム
「じゃあね」
正規軍
「くそ、野郎……！」
ギャブレー
「うっ……慌てるな！」
正規軍
「うわっ！」
ダバ
「しまった！」
リリス
「や〜ん、開けて〜！」
アム
「やだ、どうすんの？」
キャオ
「こんな仕掛けがあったのか」
ダバ
「来た！」
正規軍
「銃を捨てろ！」
アム
「銃を捨てろっていうの？　寂しくなるわ」
正規軍
「俺達が付き合ってやるよ」
アム
「私は、軍人は嫌いじゃ！」
正規軍
「好きにしてやるよ」
「おっ、何だ……？」
キャオ
「え〜、こんなとこに押し込めて……」
ダバ
「餓死でもさせるのかな？」
アム
「痩せたくないのに」
ダバ
「あれ……敵は？」
アム
「隠れてんの？」
リリス
「誰も居ない」
レッシィ
「……世話の焼ける連中だよ」
正規軍
「金貨だ……ポセイダル・ゴールド」
「な、何だ？」
　〃
「ぐわぁぁっ！」
　〃
「うぅっ！」
　〃
「うっ、うぅっ……！」
ダバ
「キャオ、いいか？」
キャオ
「いいけど」
レッシィ
「あの連中、あんな車だけでベースを出られると思ってんの？」
キャオ
「置いてくぞ」
正規軍
「うわっ！」
ダバ
「もうすぐゲートだ」
アム
「きゃっ！」
「上手〜」
ダバ
「そりゃ鍛えてる。男の嗜みだからな」
アム
「とっても良いよ、そういうの」
ダバ
「ミッド・フロッサー！」
リーフ
「うぅっ……！」
アム
「後ろのリーフ、ボロボロになっちゃうよ？」
ダバ
「意識はあるんだ、死にはしないよ」
キャオ
「こうも金貨使うんじゃ、堪んないな」
「それっ！」
ダバ
「出たよ！」
アム
「あ〜！」
キャオ
「グライア！」
アム
「レーザーの雨の中、戻ってどうすんのよ〜？」
ダバ
「グライアよりマシだろ？」
アム
「そうは思わないわ」
キャオ
「狙ってるぞ」
アム
「降参しよ、降参しよ。後の事はそれから考えよ？」
ダバ
「あれ？」
正規軍
「何をする、どこのグライアだ？」
「うわぁぁっ！」
ギャブレー
「ふふっ、予定通りベースを出てくれたか」
「これで、レッシィは出し抜け、私の名前はギワザ・ロワウにまで聞こえる筈だ」
正規軍
「うぅっ、わっ……！」
ダバ
「あのグライアには、反乱軍の同志が乗っているのか？」
アム
「でなきゃ、助けてくれる訳ないでしょ？」
キャオ
「でもよ、味方と決まった訳じゃないぜ？」
「止まれ……レッシィ！」
レッシィ
「あんた達、甘いんだよ。ベースからあんた達の力だけで、逃げられると思ってんの？」
キャオ
「何だと？」
レッシィ
「どいて」
ダバ
「何をするんだ？」
レッシィ
「ほら、送信装置だ。あんた泳がされていたんだよ」
「アジトを見付けられて、一網打尽さ」
キャオ
「信じるか、ダバ？　軍人のこいつが、何で俺達を助けるんだよ？」
レッシィ
「何でかね……」
ダバ
「な、何でって……」
アム
「スパイだよスパイ、こいつこそ探知機持ってんじゃないの？」
キャオ
「俺も信じないぜ」
レッシィ
「心が貧しい連中は、人間の言う事を信じないのかい？」
キャオ
「え？　あら、何すんの……？」
ダバ
「レ、レッシィさん、まさかスト……スト……やるのね……」
アム
「あらあんた、露出趣味の人？　いけず……」
「私より大きいか？」
ダバ
「ま、待て。俺は、助けてくれたのは、芝居じゃないって信じる」
キャオ
「この女に、俺達を助ける理由はないってんだよ」
アム
「私には分かったよ」
キャオ
「俺には分かんねぇよ」
レッシィ
「分からず屋！」
アム
「この子、ダバに惚れたんだよ」
ダバ
「え？」
レッシィ
「貴方、何言ってんの？」
アム
「ムキになる所が本物ね」
レッシィ
「私は、あんたほど単純な女じゃないよ」
「私はね、ポセイダルの腐り切った軍の連中に、一泡吹かせたかっただけだ」
アム
「そうかしらね？」
レッシィ
「やらしい勘繰りはやめてよ」
アム
「やらしいのはあんたでしょ？　すぐ裸になって……」
レッシィ
「悔しかったらなってみなよ！」
アム
「おう！」
ダバ
「やめなよ、女同士で」
「今は、ここを脱出する方が先だ」
レッシィ
「私のグライアをどうするの？」
ダバ
「置いて行く」
ギャブレー
「奴ら、探知機が一つだけだと思って安心している事だろうが、ふっ……」
反乱軍
「こちらノーブル」
「な、何だ……？」
ステラ
「敵か？」
反乱軍
「リーフが……リーフが帰ってきました」
ステラ
「何？　あの新参者がやってくれたのか」
「確かにダバのワークスか？」
反乱軍
「はい。コードも合ってましたし、何よりも、リーフが出ました」
ステラ
「ならば、奴らは嵌められたんだ。敵を案内しおって……」
反乱軍
「ステラ同志、何か……？」
ステラ
「敵襲だ」
反乱軍
「え？」
キャオ
「ダバ、反乱軍の連中だ」
ダバ
「ステラ・コバン」
ステラ
「貴様は、追っ手と我々を出会わせる為に騙されたな？」
「そんな奴を、我が反乱軍に接触させる訳には行かん！　下がれ！」
ダバ
「え？　そんな馬鹿な……！」
「追っ手を連れてきてるなんて……」
キャオ
「レッシィ、てめぇやっぱり……！」
レッシィ
「何だ？　私が追っ手を呼んだっていうのか？」
キャオ
「当たり前だろ！」
アム
「やっぱお前が……！」
レッシィ
「私がそんな女に見えるかい？」
アム
「ドジな女じゃないんでしょ、あんた？」
レッシィ
「そうだよ！」
アム
「きゃっ！」
レッシィ
「あっ……」
「あのマニキュア、マニキュアじゃないわ」
アム
「この、あっ……！」
「汐らしくしたって……」
レッシィ
「こいつの足を見てご覧。これは塗料に隠した発信機だよ」
アム
「何？」
レッシィ
「電波発信をする塗料だって言ってんの。この電波、追い掛けられて……」
アム、レッシィ
「あっ、うっ……！」
アム
「じゃあ、あんたのマニキュアだってそうでしょうが？」
レッシィ
「私のは違うよ」
アム
「信じられるか」
レッシィ
「あんたこそ、何て下衆な女なんだよ。どうしたら信じるの？」
ギャブレー
「この先の森に集結しているというのか」
「行くぞ！」
ステラ
「マニキュアだという話は信用しよう。しかし、追っ手をズルズル連れてきた責任は？」
ダバ
「取る。あの五機を撃退してみせればいいんだろ？」
ステラ
「反乱軍を逃がさねばならん」
ダバ
「分かってます」
「キャオ……わっ！」
ステラ
「ゴロンゴ・タイプのアローンを出せ。エルガイムを支援させろ」
反乱軍
「うわぁぁっ！」
正規軍
「うわっ……！」
ダバ
「キャオ、行くぞ」
「ドッキング・センサー」
アム
「キャオは、下のレーザーだけやって」
「あんた、まだ居たの？」
レッシィ
「マニキュアを分解してたのよ。あんたには出来ないでしょ？」
ダバ
「そこか！」
ギャブレー
「道案内助かったぜ、ダバ」
ダバ
「ギャブレーの声だ」
「貴様……！」
アム
「そうそう、中古のヘビー・メタルにはやられないってんだよ」
「言ったろうがさ」
「あ、あの女、いつの間に……」
「あいつ、やっぱり……！」
キャオ
「どうした、アム？」
「わっ……！」
レッシィ
「ダバめ、たかが一機のグライアに梃子摺っているんなら……」
ギャブレー
「やる！」
ダバ
「この落下スピードに耐えられるか？　落ちる間に倒せるか？」
「ちっ……！」
レッシィ
「ダバ……！」
ダバ
「ギャブレー！」
ギャブレー
「森の中へ……飛べるものか」
ダバ
「そうだな」
ギャブレー
「何？」
「ダバ、今度こそは……！」
ダバ
「機会があればね、ギャブレット・ギャブレー君」
アム
「口は便利だからね」
キャオ
「ダバの加勢に行ったなんて、誰が信じるかい」
レッシィ
「分かったよ、信じさせりゃいいんだろ？」
アム
「ストリップじゃ信じませんからね」
レッシィ
「分かったわ」
キャオ
「と、止めは刺さないぜ……やってやんないよ？」
リリス
「あっ……」
ダバ
「レ、レッシィ……！」
レッシィ
「女の命を切るわ」
アム
「ん？」
ダバ
「レッシィ！」
レッシィ
「ほら、これを持って行け。これが私の証だよ」
アム
「要らんわい、女の髪の毛なんか……！」
レッシィ
「じゃ、これ……ダバ、受け取ってくれて？　私を信じてくれて？」
ダバ
「信じよう、レッシィ……ガウ・ハ・レッシィ」
レッシィ
「ならいいわ」
ダバ
「じゃ、行こうか。反乱軍のアジトへ」