第10話 タイム・リミット

ステラ
「ゆっくり体を休めてくれ、リーフ」
リーフ
「はい」
反乱軍
「……ダバ・マイロードを、信じていいのですか?」
ステラ
「リーフを助けてはくれたが、同志に迎えるには、もう少し試す必要がある」
反乱軍
「はい」
ダバ
「よーし、ちょい……もうちょい……」
レッシィ
「あ、邪魔しないで。終わってないんだから」
アム
「あれま、まだ終わってなかったの?」
レッシィ
「知っててやったんだろ?」
アム
「あら、そんな風に思えた?」
レッシィ
「アムさんがそんな人だとは思ってないわ。クレーンさんが意地悪なのよね?」
「ダバ、済んだ?」
アム
「お〜、嫌だ! 嫌味な女!」
反乱軍
「ダバ・マイロード君」
アム
「ん?」
ダバ
「はい」
キャオ
「ステラ・コバン様、直々の御出座しだぜ」
アム
「あはっ、ステラ・コバン!」
「私に出来る事は、何でも命令してください」
ステラ
「有難う。君にも任務は予定している」
アム
「ん、嬉しい!」
キャオ
「あいつは、オジン好みだったのか……?」
ダバ
「え?」
ステラ
「君達に、行ってもらいたい所があるのだ」
ダバ
「は、はい」
「アム……」
ステラ
「まず、ダバ君に話してからね」
アム
「有難う!」
ステラ
「我々は、反乱軍ベースのセイに移動するまでに、武器と軍資金を調達しなければならん」
「で、この人物と、このポイントで合流して欲しい」
ダバ
「こ、この人と……」
レッシィ
「やっぱり……」
キャオ
「でも、こいつは……ポセイダル軍に出入りしている財界人だぜ?」
ステラ
「喋るな。その人物の事は、反乱軍の中でも知っている者は少ない」
ダバ
「だから、こんな紙にメモをして、秘密を守るという訳ですね」
ステラ
「そうだ。それに、アムさんには別の任務を頼みたいので、ここに残ってもらう」
アム
「は〜い」
ステラ
「彼から仕事を聞いてくれたまえ」
ダバ
「いや、アムは俺達クルーの一員だ」
ステラ
「彼女には盗賊能力がある事が分かった」
キャオ
「残してくんなら、こっちの女の方がいいな」
レッシィ
「キャオ、どういう事?」
キャオ
「ん、お前は怖いからよ」
「お前の事じゃないって……!」
ステラ
「ダバ君」
ダバ
「はい」
ステラ
「明日の朝までには戻ってきてくれ」
ダバ
「は?」
ステラ
「でなければ、アムさんに万一の事が起こるかもしれん」
ダバ
「ステラ・コバン……!」
「アム、俺達と行こう」
アム
「嫌〜よ!」
ステラ
「ダバ君、明日の朝七時までだ。いいな?」
ダバ
「しかし、ポセイダルのベースに、どう侵入するんです?」
ステラ
「それは君の才覚次第だ」
キャオ
「……正気で行くつもりなの?」
ダバ
「頼まれたんだからな」
キャオ
「ロージナのエア・ポートに侵入するんだぜ?」
ダバ
「またリリスに働いてもらうさ」
レッシィ
「ダバ」
キャオ
「ちっ……!」
レッシィ
「キャオ!」
キャオ
「あぁっ……!」
ステラ
「私は、ダバ君が無欲過ぎるので、信用出来ないのだよ。アムさん」
アム
「ん、言えてる」
ステラ
「私が反ポセイダル軍を旗揚げしたのも、かつての、ミズン王朝時代の貴族の生活を再現したいからなんだ」
アム
「貴族さんだったの?」
ステラ
「そう。ポセイダルだけが高貴なのが許せんのだ」
アム
「う〜ん……流石、私ら下賊とちゃうわ」
ステラ
「まあね」
レッシィ
「ダバ、前方の町で止めて」
ダバ
「何でだ?」
レッシィ
「町の向こうに、地方軍の野営地がある筈よ。こんな音立てたまま近付くの?」
キャオ
「光が見えた。ワークスを隠せ」
ダバ
「グライアまで来ちゃったか」
キャオ
「何だと? 時間がないってのに……」
「一機だけか?」
「うっ……!」
「ふう、脅かすなよ」
ダバ
「リリス、何人の兵隊が居るか、見てきてくれ」
正規軍
「週に一回、三人がとばっちり食うんだよな」
 〃
「こんな町、爆破しちゃえばいいのによ」
 〃
「見せしめの為に残しとくんだとよ。ヤーマン族みたいなのに出て来られたら、また、惑星間戦争だぜ」
キャオ
「三人なら強行突破しようぜ、ダバ」
ダバ
「しかし……」
レッシィ
「私がやろうか?」
キャオ
「やるって?」
「わわっ……!」
ダバ
「おい、大声出すなよ」
キャオ
「誰が好きで大声を……」
ダバ
「レッシィ、どうするんだ?」
レッシィ
「これよ、軍の認識票」
キャオ
「何〜、裏切るんじゃないんだろうな?」
レッシィ
「あんたには裏切るわ」
キャオ
「何?」
レッシィ
「でもね、ダバと一緒に居る限り、あんたは私に裏切られないわよ?」
「何で、そういうデリケートな事、分かんないの?」
ダバ
「キャオ、ここはレッシィに任せてみよう」
キャオ
「俺は信じたくない」
「あ、待てったら……!」
正規軍
「止まれ、止まれ!」
レッシィ
「私は、コアム情報師団、ガウ・ハ・レッシィだ」
正規軍
「コアム情報師団だと? 身分証は?」
「こ、この認識票は、十三人衆の……失礼しました!」
キャオ
「信用していいのかい?」
「あ、動き出した」
レッシィ
「ふふっ……」
キャオ
「ダバ、あいつ裏切ったぜ?」
ダバ
「まさか……!」
キャオ
「ダバ、どいてろ!」
ダバ
「やめろ、キャオ!」
キャオ
「何にもやらないのより、いいだろ?」
ダバ
「俺はレッシィを信じたい」
キャオ
「どけよ、ダバ!」
ダバ
「……え?」
キャオ
「あれ、どうなってんの?」
ダバ
「行っちゃったみたいだよ」
レッシィ
「へへ、心配した?」
ダバ
「レッシィ」
キャオ
「お前、俺達を虚仮にしたな?」
レッシィ
「まっさか。あんたなんか相手にしてないの」
ダバ
「今の内に行くぞ」
キャオ
「ん、もう、痛ぇな……!」
キャオ
「ロージナの外れのエア・ポートだなんていったって、れっきとしたベースじゃないか」
レッシィ
「私の情報は古いからね……」
ダバ
「でも、パトロールのフロッサーは、レッシィの言った時間通りに通過したよ」
キャオ
「問題は、アマン商会の船が来てるかどうかでしょうが」
ダバ
「四番ゲートの筈だけど……」
レッシィ
「向こうから出て来れば良さそうなものをね」
ダバ
「リリス、行けるかい?」
正規軍
「あ、何だ? 何の真似だ?」
 〃
「何なんだ?」
 〃
「曲者が……!」
キャオ
「御免!」
ダバ
「どこだ、四番ゲートのアマンダラは……」
レッシィ
「誰かに聞いてみようか?」
キャオ
「スパイしてるのに、一々聞けるか」
「うっ……!」
ダバ
「うっ」
キャオ
「っと、決まった」
ダバ
「はひふへほ……」
キャオ
「急に止まるんじゃないよ」
ダバ、キャオ
「うっ……!」
ダバ
「正規軍じゃない……」
軍人を装った男
「アマン商会です。こちらへ……」
ダバ
「分かりませんね。貴方が何故、ステラ・コバンに協力するのか……」
アマンダラ
「その話は後でもいいだろう」
ダバ
「しかし、何故だろう?」
「手形?」
アマンダラ
「以前、君達が運んでくれた百万ギーンの手形だ。現金に出来るようにした。軍資金に使え」
ダバ
「分かりません」
アマンダラ
「それでいい」
「武器は今、選別させている所だ」
ダバ
「どこにあるんですか? 持って帰れるんですか?」
アマンダラ
「無論だ。但し、ヘビー・メタル用のソーラ・エンジンとブースター1機だ」
ダバ
「何故、こんな所で受け渡しを出来るんです?」
アマンダラ
「ここの方が簡単なのさ」
キャオ
「分かんないな。じゃあ、この間のヨットは何なんだよ?」
アマンダラ
「私にだって個人の生活がある」
レッシィ
「ポセイダル軍へ納品するエンジンを、反乱軍へ回すって訳ですね?」
キャオ
「本当なの?」
アマンダラ
「私だって、ポセイダル軍に絶対必要な人間とは、思われていないからね」
ダバ
「貴方は、本当の死の商人なんですね……」
「敵味方に武器を売って、必要以上に戦争を起こそうとするなんて……」
アマンダラ
「私は、金はポセイダル軍からしか貰っていないよ」
ダバ
「な、何ですって?」
正規軍
「やっぱり、ここの地形は違っているぜ」
「洞窟があったのか。ホロ・スコープ・ガードか?」
「うっ、何だありゃ……!」
アマンダラ
「渡した通行証を見せればパス出来る。気を付けてな」
部下
「アマンダラ様、ホエールが見付かってしまいました」
アマンダラ
「何だと?」
キャオ
「出るぜ」
ダバ
「待て」
「アマンダラさん、ホエールってあのヨットの事ですか?」
アマンダラ
「君達には関係がない。行きたまえ」
部下
「ホエールを迎撃するつもりです」
アマンダラ
「ベースを逃げ出すチャンスだ」
ダバ
「はい」
「キャオ!」
アマンダラ
「私が行こう」
キャオ
「おう!」
キャオ
「何です、この騒ぎ?」
正規軍
「お前達には関係がない」
「アマン商会のものか」
「行け」
キャオ
「荷物、調べないの?」
正規軍
「今、取り込み中だ」
ダバ
「ワークスへ着いたら、エルガイムで出る」
キャオ
「どこへ?」
ダバ
「ホエールがどうなってるか心配だ」
キャオ
「あのね、このまま真っ直ぐに行けば、逃げられるんだよ?」
レッシィ
「今は午前四時……真っ直ぐ帰ったって、約束の時間に間に合うかどうかよ?」
ダバ
「分かってるよ。けど、アマンダラだって……」
キャオ
「あのね……ステラがアムを人質に取ってんのは、俺達を試してるんだ」
レッシィ
「キャオ、前!」
ダバ
「あの人だって、反乱軍の協力者なんだ。捨てておけない」
レッシィ
「ポセイダル軍にも手を貸してる人よ?」
キャオ
「死を売る商人は嫌いなんだろ?」
ダバ
「しかし、ポセイダルに抵抗していく為には……ステラ・コバンのように戦う必要はある」
レッシィ
「本気で反乱軍に入るの?」
キャオ
「リーフの義理があるから、手伝ってたんじゃないのか?」
ダバ
「ペンタゴナの五つの惑星が、ポセイダル一人の為に支配されるなんて、可笑しいよ」
レッシィ
「ポセイダルは、ダバが思ってるほど甘い相手じゃないわ」
ダバ
「やってみないで決めるのかい?」
キャオ
「突っ込むぞ」
ダバ
「レッシィは、ブースターの操縦出来るんだろ?」
レッシィ
「ダバ……!」
「キャオ、あんたの友達、どういう性格?」
キャオ
「人の事言えんの? 元十三人衆……わっ!」
ダバ
「わっ……!」
正規軍
「何故だよ、この船。応答なしだぜ」
 〃
「なら、やられたっていいって事だろ」
アマンダラ
「業務は怪しまれないように続けろ」
部下
「アマンダラ様、危険です」
アマンダラ
「ホエールがポセイダル軍に捕獲されたら、私の全てが知られてしまう。その方が危険だ」
「私の迂闊さだ……」
正規軍
「基地を任意に散開しろ! 反乱軍の軍艦という事は、十分にあり得る!」
ギャブレー
「どうした、何か起こったのか?」
正規軍
「はっ! チャイ殿の探しておられたヨットが発見されたようです」
ギャブレー
「何?」
「アローン各機は援護に向かえ。私は空から行く」
「ブースター1機をくれ。フライヤ用のブースターのチャーターを頼む」
正規軍
「はっ!」
アマンダラ
「しまった、始まったか……!」
チャイ
「撃沈は避けろ。船の正体を突き止めねばならん」
正規軍
「チャイ司令」
チャイ
「何か?」
正規軍
「ギャブレーのグライアが、ブースターを要求してきました」
チャイ
「今頃ノコノコと、私に従う気になったか」
「やらせろ。命令は伝えてな」
ダバ
「キャオはエルガイムを放出したら、トレーラーを持ってステラの所へ戻れ」
キャオ
「そのつもりだ」
ダバ
「ドッキング・センサー」
レッシィ
「この機体は始めてなんだから、上手く行かなくったって知らないからね?」
「へぇ、意外とパワー・アップ」
ギャブレー
「よし、やってくれ」
ダバ
「レッシィ、行くぞ」
レッシィ
「完熟飛行もさせないで、よく言うよ」
ダバ
「レッシィなら出来るって信じてる」
キャオ
「リリスも手伝え、トレーラーを繋げるんだ」
「ぬぬっ……!」
アマンダラ
「ホエールめ、私が来るのを知って、待っていてくれるな」
「水上であの距離を行けるか……?」
ギャブレー
「ほう、あんな大きな船が船籍不明というのか」
「全く、ポセイダル軍とは、どこまでも腐敗しきった所だ」
アマンダラ
「遂に、直撃を加え始めたか……!」
「間に合うのか?」
「気付いてくれた」
ギャブレー
「チャイ殿に報告しろ。撃沈しなければ止まらん。直撃を掛ける」
「何だ?」
ダバ
「間に合ったのか?」
レッシィ
「それほど楽観的ではないわね」
「左!」
ダバ
「え?」
ギャブレー
「エルガイムめ、んんっ……!」
アマンダラ
「おお、スピリッツも使いこなしている……」
ギャブレー
「ええい、空中機動力を身に付けたのか、エルガイムは!」
ダバ
「ヘビー・メタルが、地上を這い付くばかりじゃないって事……!」
「パイロット、脱出しろよ」
「よし、次は……」
「そんな動きが鈍いんじゃ、当てるよ」
ギャブレー
「ダバ……!」
レッシィ
「くっ……!」
正規軍
「謎の宇宙船が逃げるぞ!」
レッシィ
「たかが船一隻、見逃したって……!」
「ダバ、何やってんの? ボヤボヤしてたら、ロアンから援軍が来るわ!」
ダバ
「こいつは機動力がない癖に、パイロットがいい」
ギャブレー
「私は、どんな苦境でも……!」
ダバ
「ん、当たっちゃいない」
「あのパイロット、出来る」
レッシィ
「ダバ、早く離脱しないと……!」
ギャブレー
「貰った!」
ダバ
「うっ……!」
ギャブレー
「ば、馬鹿な……!」
ダバ
「レッシィ、離脱する」
レッシィ
「ラジャー」
キャオ
「ちょっと、本気なのあんた? アムを銃殺刑にしようだなんて……」
「取り敢えず、武器は運んできたんでしょうが!」
ステラ
「軍資金はまだ着いていないのに、時間は一時間は経っているのだ」
キャオ
「リリス、あいつ殴っていいぜ?」
ステラ
「やめんか。反乱軍の統制を取る為に、見せしめは……うっ!」
「見せしめは必要だ。そうしなければ、烏合の衆の軍は……」
キャオ
「ステラ! なら、アマンダラがやられちまってもいいのかよ?」
ステラ
「その名前は出すな」
キャオ
「うるせぇ! そんなこっちゃてめぇ、反乱軍なんかやってけねぇぞ!」
アム
「キャオ、私、銃殺されないわよ」
キャオ
「何でだ?」
アム
「帰ってきたもん」
キャオ
「え〜っ?」
「ダバ……!」
「レッシィか、そいつ動かしてんの」
アム
「ダバ〜!」
ダバ
「あれ、どうしたの?」
キャオ
「ステラさんが軍資金代わりに、アムを死刑にするとこだったんだよ」
ダバ
「ふ〜ん、暗いのね」
「はい、軍資金」
ステラ
「い、いや、色々事情があってな」
アム
「ダバ、助かったわ。本気で死刑だったんよ?」
レッシィ
「い〜い、暫くそうしてなさい。その方がサッパリするわ」
アム
「何を〜? あんた、私の知らんとこで、ダバと何してたん?」
レッシィ
「いい事」
アム
「何ぃ〜?」
レッシィ
「ふふっ……」
アム
「レッシィ!」
レッシィ
「悔しかったらここまでおいで。おせ〜てあげる」
アム
「うぅ、だ〜っ!」
レッシィ
「あっ……!」
アム
「ダバ〜!」