第12話 ディコイ・ディコイ

前回のあらすじ
ペンタゴナという太陽系のミズン星で、反乱軍とポセイダルの正規軍とが遣り合ってるんだな。
アムとレッシィの鞘当ての間に居る男の心境……デヘヘッ、こりゃ辛いってもんだ。
しかし、事態はバタバタと深刻になってる。
反乱軍
「トップの入れ替えでいいんだぞ。レーザー・パックは火薬庫へ入れるって」
反乱軍
「早く」
アム
「うぅっ……」
「ご命令通りの武器の数持ってこられなくて、ダバ達が言う事聞かず……」
ステラ
「心配しなくていい」
アム
「え?」
ステラ
「お礼を言いたくて呼んだのだから」
アム
「やだ〜、そうだったの? ステラ・コバン同志!」
ステラ
「感謝しているよ、アム」
アム
「感激」
ステラ
「私の気持ちを受け取って欲しい」
アム
「え?」
「こ、これ、金貨……」
ステラ
「私の気持ちだ」
アム
「こんなに一杯?」
ステラ
「私の気持ちだ」
アム
「あ、これ、みんなで貰っちゃいけません?」
ステラ
「君に、私の心を伝えたいと……」
アム
「でも、私一人の手柄じゃないし……ほら、私だけだと剥れる連中ばっかりでしょ?」
ステラ
「ううむ、しかしな……」
正規軍
「ロアンヌ・ベースを中心に、ロード・ルートは、全て反乱軍にシャットアウトされています」
ネイ
「おやおや……」
ギャブレー
「何をしているんだ、チャイ・チャー殿は!」
アントン
「若造が何を言うか」
ギャブレー
「若くとも、私には……」
アントン
「何だ?」
ネイ
「パワーがあるんだろ、坊や? 私は単独行動を取るから、ギャブレー君は指示を待て」
ギャブレー
「はっ!」
アントン
「ちっ……」
ネイ
「チャイ・チャーに、コード32Aの暗号伝聞を打て」
「明日五時、ポイントL1を叩き、血路を開け」
ギャブレー
「しかし、反乱軍にはガウ・ハ・レッシィが居ます。暗号は解読されます」
ネイ
「それがテクニックだろうが、坊や?」
リリス
「うっ……」
ステラ
「やっぱりか! やっぱりそう言うのか、お前は!」
ダバ
「お金は辞退します」
ステラ
「また言う! んん、何が気に入らんのだ!」
「全く……」
アム
「ダバ! ステラさんはね、私達が100%上手く行った訳じゃないのに、褒めてくれてんのよ?」
キャオ
「エルガイムの部品代の金が要るんだって言ったじゃないか」
アム
「これを貰うだけでいいのよ。そしたら、反乱軍の士気そのものが高まって……」
レッシィ
「そんな事言ってんじゃないの。これじゃ、ポセイダル軍のやり方と変わらないって……」
キャオ
「先立つものは金ですよ?」
ステラ
「そうだ。戦っていくには、食料、武器以外に、兵をさせるものが要るのだよ」
ダバ
「俺は、ミズン星を解放出来れば、それでいい」
ステラ
「それは私も同じだ」
ダバ
「金は要らない。反乱軍の兵だって、十分に戦わせてやればいいんです。間違いないね」
ステラ
「私が、そうではないというのか?」
キャオ
「ははっ、融通の効かない奴で、すいませんね」
「あっ、歯がありやんの」
「あ、イテッ……いてぇよ、リリス、おい放せ、こらおい……!」
レッシィ
「ステラ同志に当てにされると、大変ね」
ステラ
「待ちたまえ、ガウ・ハ・レッシィ君」
「君にはまだ用がある。元コアム師団の十三人衆として、グーガーまで来てもらおう」
レッシィ
「確かにこのコードは、ネイ・モーハンがよく使うものね」
アム
「解読してよ」
レッシィ
「やってるでしょうが」
「『明朝五時、ポイントL1を叩け』です」
ステラ
「ポイントL1か……」
「ベース北側のゴルダの荒野は、我が反乱軍の一番手薄な所だ。そこかな?」
レッシィ
「しかし、ポイント・コードは毎週変わりますから」
ステラ
「そのようだな」
アム
「ステラ同志」
ステラ
「ん?」
アム
「攻撃隊が出るという事は、ベースが手薄になるという訳でしょ?」
「こっちもゴルダに囮の部隊を出して、私達は、エルガイムでベースに殴り込みを掛ける」
「……というの、どうでしょう?」
ステラ
「こちらも戦力を分ける事になるな」
アム
「これならダバも戦えるし……」
レッシィ
「ネイ・モーハンは恐ろしい人よ。そんな単純な作戦に乗る人じゃないわ」
アム
「私だって、リーリンとこで、夜襲の掛け方ぐらいやってるわ!」
レッシィ
「軍隊と盗賊を一緒にしないで」
アム
「今は軍隊のつもりよ」
レッシィ
「そ、本音はどうだか分かったもんじゃないわ」
アム
「あんただって、ダバ一人の為に動いてんじゃないの」
レッシィ
「女の生き甲斐は、殿方に命賭ける事よ?」
アム
「いい加減にしてくれない? ダバはね、あんたみたいな正規軍上がりが居るから」
「ここの仲間に、痛くもない腹を探られ……あっ!」
レッシィ
「言ってはいけない事を言った!」
アム
「本当の事でしょうが!」
「あんた、そんなにダバの事考えてるなら、ゴルダに行って、ヘビー・メタルの十台や二十台……!」
レッシィ
「ぶち壊してみせるわ!」
アム
「私の作戦を実施します」
ステラ
「おお、良かろう」
アム
「レッシィ、あんたはゴルダへ行って」
レッシィ
「ハイ・サー!」
アム
「あっ……!」
反乱軍
「並んで! 順番に書類に!」
 〃
「入隊希望者は、氏名と年齢、扱える武器類を記入しろ! その後、隊を決めるまで待て!」
ネイ
「ワガマイの旧跡か……使えるものだな。この建物からすると、火薬庫はこちらの神殿辺りか」
ダバ
「ステラか……あの自己顕示欲の強さに、人は集まってくるのだが……」
「火薬庫の中へ……?」
ネイ
「これだけの火薬なら、ロアーヌのベースを潰せる……」
「しかし、火を入れればここのキャンプなぞ……ん?」
ダバ
「パトロールの者か?」
「あっ……!」
ネイ
「向こう見ずな奴……!」
ダバ
「あっ、くっ……!」
「二、三箇所、同時に点けられたらお仕舞いだ」
ネイ
「迂闊だったな、あんな馬鹿が居るとは……」
ダバ
「火薬庫で使える訳がない」
ネイ
「たかが一人に気圧されるのか?」
ダバ
「気配が消えた」
ネイ
「はっ、上……!」
ダバ
「えやぁぁっ!」
「あっ……!」
「女狐……!」
「ま、待て!」
「うっ……!」
「足音に騙された」
「あっ……?」
「レッシィがアローンへ? 何故だ?」
アム
「捕獲したマシンの塗り替え、急いでね」
反乱軍
「はっ!」
ダバ
「アム!」
アム
「ダバ」
ダバ
「どういう事だ、これは?」
「レッシィ」
レッシィ
「命令よ、アムのね」
ダバ
「命令? お前が?」
アム
「『お前が』はないでしょ、部隊長に」
ダバ
「どんな作戦なんだ?」
アム
「痛い……!」
ステラ
「レッシィ君も同意した上での作戦だ」
ダバ
「レッシィが?」
レッシィ
「そうなのよ。内の守りはステラさんに任せて、私達は、外で戦うって訳なの」
「今日の作戦は、貴方の為に戦ってくるわ」
ダバ
「俺の為に?」
アム
「あ〜っ!」
レッシィ
「じゃあね、アム」
アム
「ね、ダバったら……ちょっと」
「どうしてなの、悔しい!」
ダバ
「アムの奴、ステラに騙されてるんじゃないのか……?」
「ん?」
ネイ
「はっ……!」
レッシィ
「後一時間待とう。敵が現れるとしたら、その時だ」
反乱軍
「はっ!」
ダバ
「キャオ、スピリッツいいな?」
キャオ
「ラジャー、エンジン・スタート」
「各機、遅れるなよ?」
反乱軍
「ラジャー」
 〃
「ラジャー」
キャオ
「行くぜ」
キャオ
「こんなに数出して、ステラんとこ、ガラ空きになっていいのかよ?」
ダバ
「キャオはどう思う、この作戦? 女性同士の諍いのとばっちりって感じがするな」
キャオ
「へん、今始まったこっちゃないでしょ?」
ダバ
「ん?」
リリス
「はぁっ、はぁっ……」
ダバ
「リリス、こんな所で何やってんだ?」
「バズーカを運んだのか」
「この中に、一人で入っちゃいけないって、言ってるでしょ」
リリス
「んっ……」
ダバ
「分かった分かった、いいから……」
「全く、アムもリリスも、女ときたら気が強くて……お前、女だよな?」
反乱軍
「可笑しいよ、敵の動きは全くないじゃないか」
レッシィ
「L1がゴルダって決まってる訳じゃないしね」
「ネイの囮に嵌められたのかな」
ギャブレー
「確かに、ネイ殿のコール・サインだな?」
正規軍
「はっ! ジャマーの薄いポイントです。間違いありません」
ギャブレー
「ん、見えた」
「ネイ殿、作戦は?」
ネイ
「私が失敗する訳がなかろう?」
ギャブレー
「はっ!」
ネイ
「グーガー以下、大した戦力は残っていない」
「反乱軍の首謀者の一人、ステラ・コバンを叩くぞ」
ギャブレー
「はっ!」
ネイ
「さて、予定時間十五秒前」
ステラ
「どうしたね、アム?」
アム
「ここの警戒を、もっと厚くしなくていいの?」
ステラ
「新しい志願兵も入れた。大丈夫さ」
ネイ
「出ろ!」
アム
「あっ……!」
ステラ
「何?」
「ポイントL1は、ここの事か……!」
アム
「ステラ同志、どうするの? 私達、引っ掛かっちゃったわ!」
キャオ
「ダバ、着陸体勢いいか?」
ダバ
「ああ、降りるぞ」
「各機、地方ベースだからって甘く見るなよ?」
「何だ?」
キャオ
「待ち伏せだ。引っ掛かった……!」
正規軍
「反乱軍は大した量じゃない。動けるマシンナリィのみ出ろ。第三部隊、第五部隊と交替しろ」
チャイ
「ふん、ネイめ……どうせ引き出すのならば、もう少し、数を多く引き出して欲しかったな」
「これでは、張り合いがない」
キャオ
「ダバ、ロアンヌ・ベースは、ゴルダへ戦力投入してるんじゃなかったのか?」
ダバ
「分かんない。少なくとも作戦は失敗してる。ステラとコンタクト出来るか?」
反乱軍
「駄目だ、ここはジャマーが厚い」
「うっ……!」
ダバ
「キャオ、撤退だ。殿を頼む」
キャオ
「ラジャー」
ダバ
「ダブリオールのスピリッツは大丈夫か?」
反乱軍
「生きてるぜ」
ダバ
「頼む」
反乱軍
「ラジャー」
ステラ
「残っているマシンナリィ、ヘビー・メタル隊は防衛に当たれ」
「マシンのない兵は個々に撤退、リトル・セイへ集結しろ」
アム
「撤退は早過ぎます。敵の戦力は分かっていないんですよ?」
ステラ
「ここまでの敵の手回しが見えんのか? 我々は完全に嵌められたのだ」
アム
「レッシィやダバの部隊はどうするんです? 見捨てるんですか?」
ステラ
「リトル・セイに集結する手順は教えてある」
アム
「でも……!」
ステラ
「もう一度銃殺にされたいか!」
アム
「ステラ同志……」
ステラ
「グーガー、強制浮上!」
アム
「あっ……!」
反乱軍
「敵マシン、接近!」
ステラ
「何?」
アム
「あぁっ……!」
ステラ
「何だ?」
アム
「え?」
ギャブレー
「わざわざ、的になりに上昇するとはね!」
アム
「あぁっ……えっ?」
ギャブレー
「私とセイバーを合わせる事が出来る者が、反乱軍に居るのか?」
「うっ……!」
「だ、誰だ? このパワーは……!」
レッシィ
「いつまでもゴルダに居ると思うなよ。ガウ・ハ・レッシィだ!」
ネイ
「ゴルダに行った連中が戻ってきたか」
「ん?」
「どうした? 味方の減り方が多過ぎる!」
ダバ
「アムやステラはどうした? グーガーが見えない……ん?」
「かなりの数が入ってる」
「オージェとか……!」
リリス
「あっ、あぁっ……!」
ダバ
「くっ、マシンの性能だけじゃない……来た!」
ネイ
「中々可愛い坊やだったけど、反乱軍じゃね」
「三秒後の位置へ、ランサーを三本」
ダバ
「そんな物で……!」
リリス
「ベェッ!」
ダバ
「勿体無いね」
「しかし……」
「急に気配が消えたな」
「邪魔」
「上だ!」
ネイ
「今度はこっちが上だよ!」
「惜しかったね」
ダバ
「そ、そうは行かない!」
「やったか!」
「あっ?」
「シールドが?」
ネイ
「ここん所が違う所さ。ハンドメイドとオージェとはね」
ダバ
「ダバーッ!」
ネイ
「この、女の顔を……!」
「また潜ったか?」
「はっ……!」
「何を?」
「坊や坊やと、優しく言っていれば……!」
「生意気、生意気……!」
「何て奴だ、私の射撃を紙一重の所でかわすとは!」
リリス
「んっ、んんっ……!」
ネイ
「駄目か、自己嫌悪……手を変える!」
「見ていろ……はっ!」
「冗談……」
ダバ
「冗談はなし!」
ネイ
「こ、こいつ……!」
ダバ
「ここからだったら、シールドは効かないね!」
ネイ
「か、顔ばかりを狙って……これでは密林での戦いは不利か!」
「ギャブレー君、引き上げる!」
ギャブレー
「ネイ殿、オージェのマスクは?」
ネイ
「不意打ちを食らった」
ギャブレー
「ネイ殿……!」
ネイ
「煩い!」
レッシィ
「引き上げてくれた?」
「ダバも、間に合ってくれて……」
ステラ
「確かに君達の機転で助かった……私の判断ミスが、火薬庫を消失させた事は認める」
「しかし、君達が命令違反を起こした事は事実なのだ」
アム
「ステラ同志……!」
ステラ
「理由はどうあれ、組織の中に居る以上は、規律は守ってもらう」
ダバ
「分かっています。でもこのままでは、反乱軍は……」
ステラ
「それ以上は言うな!」
「処分は、リトル・セイに入ってから知らせる」
アム
「ステラさん……」
「ダバ、レッシィ……!」
「私、強情張っててごめんなさい……」
レッシィ
「私だって判断ミスして、ごめん、ダバ……」
ダバ
「お、俺に言う事じゃないよ、二人共」
「ん?」
「ああ」
「アム、リリスが美味しいお茶淹れてくれるって。おいで」
アム
「ダバ……ごめん、ダバ〜!」
レッシィ
「めっ!」
アム
「何で〜?」
レッシィ
「チョメチョメだもの」
「それに、今日は私の番」
ダバ
「今日は、リリスお手柄だったからな」
アム、レッシィ
「あ〜ん!」