第13話 コンタクト

前回のあらすじ
ペンタゴナ・ワールドを、オルドナ・ポセイダルが一瞬の内に統一したのも、星々の間の戦いが長く続き過ぎたからだ。
で、ポセイダルの独裁を叩く為に、俺達は反乱軍の基地、リトル・セイに住み着いたって訳だ。
反乱軍
「ホロ・ガードを掛けろ」
 〃
「よし」
 〃
「もうちょっと右だ右、よーし」
ステラ
「ワークスに、ブースター用のフロスターを取り付けたというのか?」
「エルガイムの量産の次は、あの騒ぎか」
反乱軍
「ダバの奴、自分のグループの勢力を強めようとしているんでしょう」
ステラ
「この図面を提供して、私に恩を売るつもりなのさ」
「このマシン、ミズンのメカニック・マンが関係していると思えないか?」
反乱軍
「ミズンの?」
ステラ
「ダバはコアム星の出身と言っていたが」
「このマシンの、ムーバル・フレームの使い方などは、昔のヤーマン・タイプの癖がある」
キャオ
「何してんだよ、作業中止して?」
「エルガイムのコピー造んの、ステラ同志の命令だろうが」
反乱軍
「ポセイダルが、ミズン星のヤーマン狩りを始めたって噂……」
レッシィ
「そんな話、ネイ・モーハンの心理作戦に決まってるでしょ」
反乱軍
「ポセイダルが直々に軍を動かしてきたら、俺達なんて……」
キャオ
「馬鹿言うな。だからエルガイムを一杯造ってだね……」
アム
「ははっ、それで事が済めば、誰も苦労しないよ」
キャオ
「そりゃそうだね」
反乱軍
「俺達は、根絶やし作戦になんか遭いたくねぇもんな」
 〃
「俺も御免だよ」
キャオ
「今から逃げんなよ、おい」
レッシィ
「ポセイダルは何故、ヤーマン族を目の仇にするのだ?」
アム
「でもさ、ヤーマンなんての、もう一人も居ないんでしょ?」
ダバ
「怠けないで働こうぜ」
反乱軍
「ステラ同志。コアムの反乱軍は、ギワザ・ロワウに押さえ込まれたようです」
ステラ
「十三人衆のギワザ・ロワウが……ポセイダルの息の掛かった男という、あやつが……」
反乱軍
「ポセイダルの……」
ステラ
「兵達はポセイダルが動き出した事で動揺している。その上、コアムの援軍が来ないと知ったら……」
反乱軍
「どうします、ステラ同志?」
ステラ
「座して討たれる訳にはいかん。思い切った手を打つ以外にはない」
ダバ
「すいません、怪我しなかったですか?」
キャボット
「君か、エルガイムを持ってきたのは」
ダバ
「あぁ、そうですが」
「うっ、わっ……!」
「何です、いきなり……!」
キャボット
「出てけぇ!」
ダバ
「……大丈夫かい? 無茶苦茶だな、爺さん」
キャボット
「こっから出てけ! お前の持ってきたヘビー・メタルには、ヤーマン族の伝えるシステムが使われている!」
「これ以上、ポセイダルの目が我が軍に集中すれば、今の我が軍はすぐ潰れる!」
「それは何としても避けねばならん!」
ダバ
「何故、それが分かる?」
キャボット
「このミズンでは、ポセイダルの虐殺を始めさせる訳にはいかん!」
反乱軍
「爺さん、本当なのか?」
キャボット
「出てけ!」
ダバ
「あれは、父が独自に開発したシステムで……」
キャボット
「嘘吐け!」
ダバ
「うわっ!」
キャボット
「このシステムを知って、ポセイダルが出て来たんだ」
ダバ
「偶然だ。ポセイダルと戦う為の軍が、何故そんなに恐れるんだ?」
キャボット
「貴様にはヤーマンの血が臭うんだ! ムーバル・フレームの優秀さだけは認めるが、ヤーマンは要らん!」
反乱軍
「ダバ、居るか?」
ダバ
「え?」
反乱軍
「何してんだ? ステラ同志が呼んでるぞ」
ダバ
「了解」
ダバ
「カモン家の名前は口にするな、という事か……」
ステラ
「我が反乱軍の動揺を静める為には、積極的な攻撃が一番だ。分かっているな?」
ダバ
「望む所です」
キャオ
「ハッチ閉じるぞ、ダバ」
ダバ
「おう」
レッシィ
「無茶です、ステラ・コバン。ポセイダル艦隊の布陣も分からず出るなんて」
ステラ
「ポセイダルはまさか、我々がこうして打って出るなんて想像しておらんよ」
ダバ
「そう思う。だからこの作戦は成功する」
レッシィ
「ポセイダルは、そんな甘い相手じゃないのよ?」
アム
「来たくなきゃ来なくたっていいのよ?」
レッシィ
「あっ……!」
「失礼」
「あんたは、ポセイダルの艦隊の事を知らないんだから、引っ込んでなさい!」
アム
「そんな事、やってみなくちゃ分かんないでしょ」
「ダバ、行こう」
ダバ
「ああ」
レッシィ
「待ちなさいよ!」
キャボット
「よりによって、あの男を出撃させるとは……」
反乱軍
「ステラ同志は、疫病神を追っ払うつもりなのだよ」
キャボット
「しかしあの男、本当に……」
反乱軍
「爺さん、どこに行くんだ?」
艦長
「急げ、発進する」
レッシィ
「あっ……!」
アム
「……いつまで乗ってんのよ、図々しいわね!」
ダバ
「仕方ないだろ、動けないんだから……!」
艦長
「通常上昇はしない。このまま昔流に、Gを掛けたまま軌道上まで出る」
キャオ
「船体は持つのか?」
艦長
「正規軍の追撃を受けたくない」
レッシィ
「ごめんね?」
ダバ
「いいんだ」
アム
「何さ、嫌らしいんだから……!」
キャボット
「うぅっ……!」
「ダバ・マイロードは、ひょっとすると、カモン家の忘れ形見か……!」
正規軍
「ギャブレー、そっちはどうだ?」
ギャブレー
「反乱軍ベースから、ロケットの出る受信が多少キャッチ出来た」
正規軍
「衛生軌道上まで上がるつもりかな?」
ギャブレー
「ネイ殿は……」
ギャブレー
「ネイ・モーハン殿」
ネイ
「何か?」
ギャブレー
「わっ、失礼しました……!」
ネイ
「急ぎの報告なら構わん。何だ?」
ギャブレー
「反乱軍のベースから、スペース・シップが発進した模様です」
ネイ
「宇宙へか?」
ギャブレー
「はっ!」
「わっ……!」
ネイ
「何がそんなに怖いか?」
ギャブレー
「こ、怖くはございません」
ネイ
「ダミーのスペース・シップではないのか?」
ギャブレー
「全てがダミーではありません」
ネイ
「そうか……」
ギャブレー
「ネイ殿」
ネイ
「ポセイダル様の艦隊へ仕掛けたか」
ギャブレー
「まさか」
ネイ
「しかし、ステラが逃げたとも思えん」
ギャブレー
「はい」
ネイ
「私の流した噂に引っ掛かって、宇宙へ出たのだ、ギャブレット」
ギャブレー
「はっ!」
ネイ
「我々は宇宙へ出る」
ギャブレー
「しかし、今からでは間に合いません」
ネイ
「私がここに拠点を置いている理由を、お前が想像していなかったというのは残念だな」
「衛生軌道上まで追撃戦を行う」
正規軍
「はっ!」
ネイ
「よし、発進用意」
正規軍
「はっ!」
ネイ
「……という訳だ」
ギャブレー
「はっ……?」
ネイ
「鏡の前の化粧セットを持ってきてくれ」
ギャブレー
「……こんな所から、何が発進だ!」
ギャブレー
「うっ……!」
「こ、こんな所に……」
ネイ
「さっき言ったろ?」
ギャブレー
「あ、どうも……」
ネイ
「私の素顔は見られないだろう?」
ギャブレー
「いや、美しくあらせられます」
ネイ
「有難う」
アム
「へ〜、私にも操縦出来そうね。あんた、な〜んもしてないんだもん」
キャオ
「な〜んもしないで済むように、プログラミングしたのがキャプテンなの。アムには無理だね」
アム
「え〜?」
「プログラム教えて、キャプテン」
艦長
「よ、よしなさい」
ハッサー
回想「お前はワシの子、ダバ家の子ではない。ダバ家の子ではないんだ……」
ダバ
回想「ダバ家の子ではない?」
ハッサー
回想「覚えているだろう、王宮を……」
ダバ
回想「父さんの仕えていたお城の事?」
ハッサー
回想「その城とは、ミズン星のヤーマン族のお城だ。お前はそこの王子だ」
ダバ
回想「父さん……でも俺は、父さんの子だって……ダバ家の子供だって……」
ハッサー
回想「二番目の棚を開けて、中にある物を……」
ダバ
回想「棚……?」
ハッサー
回想「早く……!」
ダバ
回想「はい」
ハッサー
回想「ケースがある。開けてみるがいい」
ダバ
回想「あっ……」
ハッサー
回想「それは、お前がヤーマン族の王子、カモン家の一族である証じゃ」
ダバ
回想「違うよ」
回想「俺は父さんの子だ。ダバ・マイロードだ。カモンなんて名前は知るもんか」
ハッサー
回想「何をする。こうでもしなければ、ヤーマン族の血統はポセイダルに絶たれた……!」
ダバ
回想「ポセイダル?」
ハッサー
回想「カモン家の一族は、ヤーマン族の人々全てに慕われていた王家だ、うぅっ……!」
回想「エルガイムの基礎技術は全て、ヤーマン族の遺してくれたものだ」
回想「それを私が改良を加えて、量産にも向くシステムにした」
回想「同志を集めろ。ポセイダルの世を嫌ってる人々を集めて……」
ダバ
回想「父さん……」
ハッサー
回想「ポセイダルの正規軍に入って出世し、ポセイダルに近付くという手もあるが……」
回想「やめた方がいいかもしれん、うぅっ……!」
回想「ポセイダルは、人を堕落させる事しか考えておらん奴だ……」
ダバ
「民族の根絶やし作戦……ポセイダルは何故、そんな事を企むんだ……」
アム
「あ、ハッチに居ないと思ったら」
「ダバ、ポセイダルの……」
ダバ
「何だ?」
アム
「ポセイダルの艦艇を、レーダーがキャッチしたわ」
ダバ
「嬉しがる事じゃないでしょ」
「老人、乗っていたのか」
アム
「誰?」
ダバ
「メカニック・マンだ」
キャボット
「あんたが、ポセイダルにやられる所を、見せてもらおうと思ってな」
アム
「ダバがやられる訳ないでしょ?」
ダバ
「貴方の身も、危険な目に遭いますよ?」
キャボット
「そのくらい覚悟の上だよ、カモン君」
アム
「あ、ダバ……」
キャオ
「見てあれ、お出でなすったぜ?」
ダバ
「レーダーの計算は間違ってないな?」
艦長
「誤差は10%、ジャマーを展開しておるからな」
ダバ
「まあまあか」
艦長
「うむ、敵艦の分析データを出してみよう」
「エイプだ」
ダバ
「いつのデータです?」
艦長
「一年前のだ」
ダバ
「大丈夫なのかな……」
艦長
「うむ……」
ダバ
「よしキャオ、エルガイムを出してくれ」
アム
「あ、待って」
キャオ
「レッシィ」
キャオ
「アムは駄目だ」
アム
「どうして駄目なのよ? アローン1機ぐらい、私にだって扱えるわよ」
キャオ
「ここは地上じゃないの!」
アム
「やってみなきゃ分からないでしょうが!」
レッシィ
「お先」
アム
「あっ、こら待て〜!」
「あいつが良くて、どうして私が駄目なのよ?」
キャオ
「レッシィは正規軍で訓練受けたんだ!」
アム
「私だって、れっきとした盗賊上がりよ!」
キャオ
「足手纏いになりたいのか?」
アム
「レッシィの肩持って、私の邪魔だけしてんじゃないの!」
キャオ
「援護しなけりゃ、エルガイムだって戦えないよ」
アム
「キャオ……あんたいつから、そんな利口になった?」
キャオ
「昔からだい」
ダバ
「ドッキング・センサー」
「ハッチどうした、開け」
艦長
「回線チェックしている、待ってくれ」
ダバ
「リリス……こんなんじゃ宇宙服にならないよ。専門家に作ってもらえ」
レッシィ
「キャプテン、急いで」
「出られる?」
反乱軍
「ラジャー」
レッシィ
「他の船のヘビー・メタルは?」
反乱軍
「出ています」
レッシィ
「ラジャー」
「ダバ、先に行くわね」
ダバ
「レッシィ、今度の相手はいつもとは違うぞ。先行し過ぎるな」
反乱軍
「うっ、攻撃してきた!」
ダバ
「うっ……行くぞ!」
リリス
「行け!」
ダバ
「来た! レッシィ、気を付けろ!」
「バリアは当てにするな。敵の火力は分かっていないんだ」
「レッシィ!」
レッシィ
「私より前に先行しているヘビー・メタルがあるのよ。それが心配で……」
「あっ、入られた!」
「レッシィ、戻ります! ダバ!」
ダバ
「了解!」
「この程度のアステロイドでも、コントロールは辛いだなんて」
キャオ
「キャプテン、銃座いつでもOKだ」
アム
「私にやらせてくれるって言ったじゃないの」
キャオ
「他の銃座に回れって」
アム
「きゃっ!」
キャオ
「来た!」
アム
「撃ちな!」
キャオ
「野郎!」
正規軍
「見たか……うぉっ!」
レッシィ
「はぁっ、間に合った……」
「キャオ、アム、しっかり防御してよ! 世話焼かせないで!」
キャオ
「いいのか、あんな事言わせて?」
アム
「良かないわい!」
アム
「そのブースター、出られて?」
キャボット
「あんたが出るのか?」
アム
「いけないの?」
キャボット
「宇宙船の経験は?」
アム
「ある訳ないでしょ」
キャボット
「じゃあやめとけ、ブースターを壊すのが落ちだ」
アム
「レッシィが戦ってんのよ? 何で私が出来ないの?」
キャボット
「宇宙服もちゃんと着とらんで……」
アム
「え?」
キャボット
「後ろのバルブが繋がっとらん」
アム
「え、どこ、これ、え?」
キャボット
「やっぱり……ちゃんと着てるかどうかも、自分で分からんのか?」
アム
「騙したのね?」
キャボット
「うぉっ……!」
アム
「私だってやれるわい!」
「レッシィに負けちゃおれんのよ」
「爺さん、ハッチ開けんの」
キャボット
「あの娘も、あの青年に付いて戦おうというのか……」
ダバ
「各アローン、トランスポーターの援護を頼む。俺はエイプへ突っ込む」
反乱軍
「ラジャー」
レッシィ
「今の声はダバ? 一機では無理よ、いけない!」
反乱軍
「エイプが撃ち出した。先行のアローン隊は……」
ダバ
「避けろよ……!」
レッシィ
「ダバ、無茶よ! 一人で突出しないで!」
ダバ
「すまない、レッシィ」
「ん?」
「こいつ、新型のヘビー・メタルか……いや、ポセイダルの近衛兵用のバルブドか」
ネイ
「どうやら間に合ったようだな。ポセイダル様の前で戦いを仕掛けるなど……」
「私はオージェで出る。お前は船の指揮だ」
ギャブレー
「はっ!」
艦長
「何、後方からも敵?」
「キャオ、後方!」
キャオ
「ラジャー!」
ネイ
「この程度のバリアなら、これで……!」
キャオ
「オージェだ! ネイ・モーハンか!」
ダバ
「流石、手強い……」
リリス
「あっ……!」
ダバ
「ん?」
レッシィ
「アムはバルブド・タイプを。私はオージェを狙う」
アム
「貴方に命令されたくないけど、今は……分かったわ」
ダバ
「あっ……!」
リリス
「あ〜、船船、船〜!」
ダバ
「ぬっ……!」
「ポセイダル……?」
「うっ!」
「セ、セイバー同士のビームが……!」
ネイ
「ぬっ、エイプの近くで……」
レッシィ
「エルガイムが!」
ダバ
「どいてくれ! ポセイダルが行っちまう!」
「まだ邪魔するのか!」
ネイ
「若造め!」
アム
「ダバ!」
ネイ
「う、迂闊だった……ポセイダル様が……!」
リリス
「行った!」
ダバ
「ポセイダルにも行かれてしまった……」
「アム、有難う」
アム
「ふふっ、気にしない!」
ステラ
「エイプに接触出来ただけでも大戦果だ」
ダバ
「我々の戦力だけでは、力がなさ過ぎました」
キャオ
「エイプは、あんなもんじゃないんだろ?」
ステラ
「だがこの事は、我が軍の士気高揚になるよ、ダバ・マイロード君」
ダバ
「エイプの動きが止まったというのなら、この隙に戦力の補強……編成の強化を是非」
ステラ
「分かっている。ミズンの反乱軍の集結は急がせている」
キャボット
「それに、少年……戦果は少なかったが、この年寄りにもいい夢を見させてくれた」
「もう少し長生きをしろというな」
ダバ
「有難う、ご老人。でも、俺はエルガイムで戦っただけですよ」
キャボット
「あんたが、ヤーマン族でなければいい」
ステラ
「コックピットのシステムを変えればいいんだろう? 同志ギャボット」
キャボット
「そういう事だ。協力してくれるかね、ダバ君?」
ダバ
「勿論です、同志ギャボット」
レッシィ
「紛れが本気になられちゃ困るから、同志アムは地上勤務に戻ってもらおうか?」
アム
「同志ギャボットから、いい勘してるって褒められた」
レッシィ
「同志キャオから、同志アムのドジ振りは聞いた」
アム
「それがどうした、ヘビー・メタル乗りゃ……!」
レッシィ
「私の方が……」
アム
「上手いわい!」
レッシィ
「嘘吐け!」
アム
「嘘じゃない!」
レッシィ
「口だけじゃ!」
アム
「ないよ!」
アム、レッシィ
「見てろ〜!」
キャオ
「あっ……?」
ダバ
「また?」
ステラ
「あの二人か……」