第17話 ライム・ライト

ギャブレー
「残存兵は必死だ! 舐めると痛い目に遭うぞ!」
「ん?」
「エルガイムか」
「こいつもコピーか」
「ん? また船か」
「まさか、ダバがあれに乗っているなどと……」
バラ
「頭、後退命令が出ましたぜ」
ギャブレー
「何?」
バラ
「ミノト空港に出向しろと」
ギャブレー
「ネイ殿の命令か」
バラ
「もっと上の人みたいですよ。えっと、ギワザ……」
ギャブレー
「何? た、確かか、それは?」
バラ
「はっ!」
ギャブレー
「総員、後退!」
反乱軍
「ダバ君。聞こえるか、ダバ君」
「君が兵を挙げる時は必ず声を掛けてくれ。すぐに駆け付ける。いいな?」
ダバ
「有難う」
キャオ
「アム、ここはいいぞ。ダバを手伝ってこい」
アム
「OK」
ダバ
「レッシィもブリッジへ上がってくれ」
レッシィ
「あっ……!」
ダバ
「うっ、何だ……?」
レッシィ
「無理よ、こんなんじゃ! ポセイダルとは対抗出来っこないわ!」
ダバ
「レッシィ……」
レッシィ
「今出て行ったばっかりの船があの通りで、私達、戦えるの?」
アム
「怖気付いたって訳?」
レッシィ
「逃げるだけじゃ駄目なのよ。別な所で反乱軍を再編成する必要がある」
アム
「へぇ、それをレッシィがやってくれるのね?」
レッシィ
「だから貴方も、ミズンじゃ顔が広くなったんだから、知った仲間を集めるくらいの事はしたら?」
アム
「おうさ! 仲間集めが一番ダバの為になるって事ぐらい、分かってるわ!」
レッシィ
「じゃ、ここで降りなさいな」
アム
「この船を……?」
レッシィ
「そう」
アム
「今……?」
レッシィ
「勿論」
アム
「ね、ダバ……」
ダバ
「アムの思った通りにするのが、一番いいんじゃないのか?」
「俺に付いてきてくれなんて言えない」
「自分で道を選んで欲しい」
アム
「ダバ……」
レッシィ
「ほらね」
「じゃあダバ、ここで……」
アム
「ダバ……」
レッシィ
「早く来るの!」
アム
「あっ、ダバ〜!」
ダバ
「アム……」
アム
「ダバ、元気でね? 風邪には気を付けるのよ?」
レッシィ
「何してるの!」
アム
「いや〜ん!」
「着替え、洗濯してキャビンの引き出しに入れてあるから。パンツだけは毎日変えてね?」
レッシィ
「早く……!」
アム
「食べる物はちゃんと食べてね。リリスに三食ちゃんとやって貰うのよ?」
レッシィ
「未練だろうが!」
アム
「ダバ……!」
「会えるよね? きっとまたすぐ会えるよね? だから……」
「うぅっ……!」
ダバ
「アム、アム……!」
キャオ
「ホロ・ガードが死んだんだ。アムとレッシィは?」
ダバ
「船を降りた」
キャオ
「え〜っ!」
ダバ
「訳は後だ。発進する」
キャオ
「前の敵は?」
ダバ
「やるしかない」
正規軍
「奥の奴か」
「うわっ!」
アム
「まだ出てないのよ?」
キャオ
「テイク・オフだ!」
ダバ
「んんっ……!」
「アム……」
アム
「ダバ……ダバ……会えるよね、また……」
「何?」
「このっ!」
「あ、レッシィは……?」
「あいつ、さっさと一人で行っちゃって……!」
ダバ
「ミズン星……俺はまた、生まれ故郷を離れていく……」
ギャブレー
「空港の司令は、この船に乗れと言ったのだな?」
ドモ
「へぇ、間違いありません」
ギャブレー
「ブリッジへ行くか」
「これは、A級ヘビー・メタルのバッシュ……!」
「格好いい〜!」
「……が、こんな所にバッシュを置く……グライア専門の私への当て付けか?」
「勝手に使ったら怒られるだろうな〜……乗ってみたい!」
ドモ、バラ
「ふふっ……!」
ギャブレー
「行くぞ!」
ドモ、バラ
「はい!」
ギャブレー
「船長は居るか?」
「女だらけ……」
イレーネ
「この船のキャプテンの、イレーネ・イルスです」
ギャブレー
「今、何と言ったか?」
イレーネ
「イレーネ……作戦参謀の貴方をお待ちしておりました」
ギャブレー
「参謀? 私が?」
イレーネ
「はい。ギワザ閣下の任命書です」
「発進準備はすぐに完了します」
ギャブレー
「そうか、急いでくれ。しかし、女性ばっかりで無用心ではないのか?」
イレーネ
「たまたまブリッジが女性になっただけです。しかし、ネイ・モーハン様のような戦士を目指す者ばかりです」
ギャブレー
「ふん、ネイ・モーハンみたいなのにウヨウヨされたら堪らんな……」
「お前達、通信と操縦の補佐に就け!」
「ん、急げ!」
ドモ、バラ
「は、はい!」
「皆さん、宜しくね……!」
ギャブレー
「いいか? 私がこの船の参謀で居る限り……」
イレーネ
「スレンダー・スカラです」
ギャブレー
「スレンダー・スカラは、ポセイダル1の船にしてみせる!」
ドモ
「張り切っちゃって……!」
バラ
「好みの女が居たんじゃない?」
ギャブレー
「しかし、ギワザ閣下は、こんな船を私に与えて、私に何を……?」
ドモ
「参謀、通信です」
ギャブレー
「誰からか?」
ドモ
「ギワザ・ロワウ閣下であります」
ギャブレー
「待て待て!」
「よし、出せ」
ギワザ
「今回のリトル・セイの働きを買った。その船で遊撃隊を編成しろ」
「正規軍を離れての行動だ」
ギャブレー
「ゲリラですか……?」
ネイ
「貴公に向いている任務だ。気に入らんのか、ギャブレー君?」
ギャブレー
「いえ……」
バラ
「正規軍じゃないのか」
ドモ
「話が違うね、うっ……!」
ギャブレー
「男は戦場で死するが本懐! 机の前で生き長らえる気はございません!」
ギワザ
「ギャブレーは私の悪口を言っておる」
ネイ
「可愛いじゃありませんか」
ギワザ
「女の目から見ればそうか?」
ネイ
「いいではありませんか」
ギャブレー
「おっさんとおばんがイチャイチャと見苦しい……」
ギワザ
「お前の心意気、買おう」
「お前にはこれから、ミズンを脱出した残党狩りを命ずる」
ギャブレー
「はい」
ギワザ
「出世は出来んが、ヘッド・ハントを目指せばいい」
ギャブレー
「ヘッド・ハント?」
ギワザ
「全軍から称えられる戦士だ」
ギャブレー
「補給が必要になりますが、どのように?」
ギワザ
「私が送る。では」
ダバ
「キャオ、ガストガルへセットしたな?」
キャオ
「あぁ、逃げた逃げた」
「しかし、レッシィもアムもよく降りたな」
ダバ
「人には、他人の人生まで決められないもんな」
キャオ
「んじゃ、俺の人生は責任持ってくれんの?」
ダバ
「男同士なら共にやれるさ」
キャオ
「はっ、そりゃそうだ。俺だって自立してるもんね〜。二人きりなんて久しぶりだね〜」
ダバ
「ま、振り出しに戻ったと思えばいいさ」
「うっ!」
キャオ
「イテッ! 何だ、何すんだよ、この暴力ミラリーめ!」
リリス
「私も居るの!」
キャオ
「へん、わぁったわぁった。やめろよこら〜」
「本当に妖精か? 天下を取れんのかよ、この子と……!」
リリス
「まあね!」
キャオ
「ふふっ、何でもありませ……わっ!」
「もう追っ手か?」
ダバ
「いや、コントロール系が第二ブリッジへ移った。オート・レイバーの目的地も変わってる」
キャオ
「何?」
ダバ
「キャオ、レーザーの出力は最低に落としとけ」
キャオ
「大丈夫、コントロール中のブリッジには傷付けないよ」
ダバ
「いいぞ」
「ん……?」
「お前……」
キャオ
「一人か?」
「ん……?」
ダバ
「レッシィ!」
キャオ
「どういうの?」
レッシィ
「ダバをガストガルに行かせない為には、こうするしかないでしょ?」
「ガストガルへ直接行こうなんて、死にに行くようなもんだわ」
ダバ
「それだけじゃないみたいだな」
レッシィ
「何よそれ、私はダバの為に……」
ダバ
「アムを船に乗せたくなかったという理由があるな」
キャオ
「そりゃ、フェアじゃないね」
「な、リリス?」
レッシィ
「ダバ、分かってよ! 私だって、こんな真似するの嫌だったのよ。でも、アムは戦士じゃないわ」
キャオ
「女の偏見だね」
「ね?」
レッシィ
「煩い!」
「ダバだって分かってるでしょ? アムはステラの居る時に……」
ダバ
「キャオ、自動航行装置をガストガルへ戻してくれ」
キャオ
「ハイッサー!」
レッシィ
「ダバ……!」
キャオ
「ええと……何?」
ダバ
「どうした?」
キャオ
「内輪揉めの間に敵だぜ?」
ギャブレー
「よし、マシンナリィ一個小隊を出せ」
正規軍
「はっ!」
ギャブレー
「コックピットはあんまり変わらないな」
「スレンダー・スカラはこの空域で待機しろ」
イレーネ
「ラジャー」
ダバ
「後部ハッチから出る。敵の数は?」
キャオ
「分かんないよ」
ダバ
「レッシィには船を直掩してもらえ」
「いいな、レッシィ?」
ダバ
「上か!」
「外せるのか、わっ……!」
「何?」
「A級ヘビー・メタル?」
ギャブレー
「他愛ないな」
「最後の足?きもこれまで!」
「エルガイムめ、どこか……!」
「流石A級、よく持った」
ダバ
「パイロットはB級か」
ギャブレー
「何? 下?」
ダバ
「遅い!」
レッシィ
「やたら動くとそうなるのよ」
「キャオ、もっとアステロイドの中へ入って」
キャオ
「これ以上入ったら岩にぶつか……」
「あっ、来た!」
レッシィ
「速い、あっ……!」
キャオ
「アステロイドベルトに入っちまうぜ?」
「アム、航路を読んでくれよ」
「ん、畜生! 何でこんな時にアムが居ないんだよ?」
レッシィ
「あぁっ……!」
キャオ
「レッシィ、船にぶつかってくる事はないでしょ」
「わっ……!」
「一人じゃ無理なんだ、一人じゃ……コ・パイロットが居るんだよ」
「リリス、お前やれ」
「リリス」
ダバ
「場合によっては船だけ逃げる。出来るか?」
レッシィ
「アム……」
キャオ
「レッシィ、来たぞ!」
レッシィ
「はっ……!」
ダバ
「しまった、セイバーが……!」
ギャブレー
「パワーの違いは如何ともしがたいな、ダバ君!」
ダバ
「わぁぁっ!」
ギャブレー
「味わってもらおう、ハンドメイドとの差をな!」
ダバ
「バリア・サッシュか、うっ……!」
ギャブレー
「バッシュのパワーに恐れ入ったようだな」
ダバ
「最後までやってみなければ……!」
ギャブレー
「たかがランサーで、バッシュのスピアがいつまで防げる?」
ダバ
「パワーが違い過ぎる!」
「くっ……!」
ギャブレー
「はぁぁっ!」
「逃げるか!」
「たぁぁっ!」
「逃げてない? 居たの?」
ダバ
「ギャブレーに刃物って言葉が出来たね」
ギャブレー
「何と!」
ダバ
「飛んでけぇっ!」
ギャブレー
「まだあんなパワーが……!」
「奴は……何?」
「本気か? ここのアステロイド・ベルトの中心に逃げ込むなど……!」
バラ
「隊長、どうしますか?」
ギャブレー
「んっ……!」
バラ
「これじゃ、手が出ません」
ギャブレー
「奴らは入った。我々も入ればいい」
ドモ
「そんな……アステロイド・ベルト用の戦闘プログラムなんて、ありませんぜ?」
ギャブレー
「船ごと突っ込ませる!」
バラ
「そんな無茶な……!」
ギャブレー
「避ければいい!」
ダバ
「ガストガルへ行きたいんだ。邪魔しないでくれよ」
キャオ
「ったく、一人じゃ無茶だよ。アムが居ればな……結構役に立ってたんだよ」
ダバ
「キャオ、口より手を動かせ」
キャオ
「動かしてます!」
「はっ、正面来るぞ、レッシィ!」
レッシィ
「あっ、間に合わない、くっ……!」
キャオ
「わっ、照明の配線がイカレちまったのか」
「ダバ、船を流すから、その間に岩を頼む」
ダバ
「こちらは何とかする。レッシィは後ろへ回ってくれ」
レッシィ
「ラジャー」
キャオ
「全く、碌な事がないな、女が絡むと……」
「リリス、懐中電灯どうしたの?」
「わっ……!」
「お前もしかして、妖精じゃなくて悪魔じゃないの?」
リリス
「むっ……!」
キャオ
「わっ、向こう向け、向こう!」
「この先は空気が薄いの。それ!」
ダバ
「重いな、こいつは……」
レッシィ
「ね、ダバ、聞こえて? ダバ、無線……」
ダバ
「聞こえるよ、レッシィ」
レッシィ
「私、今からでもこの船を降りてもいいと思ってるの」
ダバ
「何故だ?」
レッシィ
「私、貴方の言う通り、フェアじゃない事をしたわ」
「アムが戦いに向いてないからって、降ろそうとしたの、本当よ」
「でも、それ以上に私、アムが……」
ダバ
「もういい、言うな。アムの居ない所でそれ以上言うのも、フェアじゃないな」
レッシィ
「でも私、どうすればいいの? 私は、昔の私には戻れないの?」
ダバ
「待て! レッシィ、外を見ろ。岩が多過ぎないか?」
レッシィ
「はっ……」
「可笑しいわ。確かに、船を囲むように集まってるみたい」
ダバ
「しかも、岩だけでもなさそうだ」
「キャオ。聞こえるか、キャオ」
キャオ
「ギャブレーが来たの?」
ダバ
「何かに囲まれてる」
キャオ
「囲まれてる?」
ダバ
「強行突破を掛けるかもしれない。ブリッジへ上がってくれ、キャオ」
キャオ
「こっちはもう終わる」
ダバ
「キャオ、前へ行ったぞ」
レッシィ
「ギャブレーは、アステロイド・ベルト用の特殊部隊でも連れてきたのか」
キャオ
「ダバ、こっちはOKだ。厄介な事になりそう?」
ダバ
「ああ」
「むっ……!」
「逃げた? ん?」
レッシィ
「動くしかない」
キャオ
「じゃ、船は任せてもらうよ」
ダバ
「よし!」
「奴は、岩の動きを完全に読んで動いている」
レッシィ
「あ、あのマシンは確か……」
「くっ、来た……!」
「やはり、サートスターのベアーズ!」
「ダバ、キャオ、攻撃をやめて! ここでは勝ち目がないわ!」
ダバ
「何故だ、レッシィ!」
レッシィ
「サートスターに抵抗しても無駄よ」
キャオ
「何だ、サートスターって?」
レッシィ
「ここは、ポセイダルの正規軍だって、近付くのを避けてる所よ」
キャオ
「信じないね」
レッシィ
「えっ?」
キャオ
「アムを騙した人の事なんか、信じないよ!」
レッシィ
「そんな……!」
ダバ
「待て、レッシィ! どこへ行くんだ!」
レッシィ
「私だって女をやりたいのよ! 軍人の前は女だったのよ!」
「しまった!」
「ダバ、あぁっ……!」
ダバ
「女をやりたいなら後ろに回っていろ、レッシィ!」
レッシィ
「ダバ……」
ダバ
「逃げた? 有利なのに……」
フラット
「そこまでにしてもらおうか」
ダバ
「何?」
フラット
「正規軍を振り払った力は認めるが、武装解除して誘導に従いなさい」
キャオ
「何だ、こいつ?」
フラット
「無駄な抵抗は命を短くする」
レッシィ
「フル・フラット……これがフル・フラット……」
ダバ
「どうやら、命令通りにした方が良さそうだな」
「ここは貴方がたのテリトリーのようだ」
キャオ
「サートスターって奴のかい?」
ダバ
「そうだ」
「レッシィ、船に帰投するんだ」
レッシィ
「フル・フラットがこんな空域に居るなんて、一体……」
キャオ
「はぁ、流石だ。ルートが出来てく」
ダバ
「何者なんだ、レッシィ?」
レッシィ
「ごめんなさい。彼女については、私も名前しか知らない」
キャオ
「あれか? サートスター」
レッシィ
「えぇ」
キャオ
「へぇ、アステロイドを利用してベースにしてんのか」
「あっ……」
レッシィ
「あれが噂の……」
ダバ
「フル・フラットなのか?」
レッシィ
「多分……」