第18話 ガストガル・デモ

前回のあらすじ
ペンタゴナ・ワールドをオルドナ・ポセイダルが一瞬の内に統一したのも、星々の間の争いが長く続き過ぎたからだ。
パメラ
「作戦参謀、アステロイド航行用のプログラムなしでは、これ以上進む訳にはいきません」
ギャブレー
「現代人は、何でもメカに頼らなきゃ出来んのか……」
「何の為に、目、付けてんだ?」
イレーネ
「軍においては規則が全てです。船の運用を……」
ギャブレー
「今はスレンダー・スカラ遊撃隊だ。独立部隊だ。規則はいい。マニュアル・レイバーでやればいい」
パメラ
「作戦参謀殿」
ギャブレー
「何か?」
パメラ
「サートスター確認しました」
ギャブレー
「よし、モニターへ」
イレーネ
「ギャブレー参謀、あの私有地は治外法権地区です。我々でも迂闊に攻撃は掛けられません」
ギャブレー
「私は、そんなものは無視しても良いと言われている」
イレーネ
「しかし、ここはポセイダル陛下のいらっしゃる、ガストガルの近く……面倒は起こしたくありません」
ギャブレー
「作戦参謀は私だ!」
イレーネ
「……ギャブレー、私は知らない事にしましょう」
ギャブレー
「どこへ行くのか?」
イレーネ
「シャワーです」
ギャブレー
「何だ、あの女……!」
「私のやり方が気に入らない者は、今からでも船を降りろ!」
「夢を求めてやまない者だけ、付いてきてくれればいい!」
「フッ、いい言葉……」
スカラ隊員
「はぁっ……」
パメラ
「夢……?」
警備隊
「飛行物体、急速接近中。現行速度で六分後にサートスター・エリアに侵入」
「第二級警戒態勢。ベアーズ隊はスクランブル」
スー
「各システム、オール・クリア。スタンディング・バイ」
警備隊
「ベアーズ隊、全機スクランブル」
パメラ
「サートスターのヘビー・メタル、来ます」
ギャブレー
「何?」
パメラ
「同ヘビー・メタルより入電、メイン・スクリーンに切り替えます」
スー
「こちら、サートスター警備隊だ。この空域は正規軍の船であろうと、許可なく侵入は出来ない」
ギャブレー
「貴様ら、反逆者を匿ってる筈だ。引き渡しを要求する」
スー
「反逆者なぞ、このサートスターには居ない」
ギャブレー
「知らぬ顔をするのならば、力尽くでも引き渡してもらう!」
スー
「分からん話だ。立ち去らねば、攻撃を開始する」
ギャブレー
「女狐共め……!」
「ヘビー・メタル隊を出せ!」
パメラ
「戦闘指令、戦闘指令、グライア隊は直ちに出動せよ!」
スー
「スペース・グライア……正規軍の連中が、マニュアル・レイバーでどこまで出来るか」
正規軍
「あぁっ、岩が近過ぎて……!」
スー
「ははっ、どこを見て狙っているんだ!」
正規軍
「うわっ、来る!」
「わぁぁっ!」
ギャブレー
「くっ、プログラム戦闘ばかりやっているから……!」
「ここは奴らの庭みたいなものだ。まともに戦っては勝ち目は薄いか……」
パメラ
「ギャブレー参謀」
ギャブレー
「何だ?」
パメラ
「私も出撃させてください」
ギャブレー
「考えがあるのか?」
パメラ
「はい。サートスターは女性ばかりの星という事ですから……」
ギャブレー
「ほう……」
パメラ
「射出OK、コース良好」
キャオ
「イェイ、最高……!」
ダバ
「確かにここを入っていったな」
「妙だな……確かに入るのを見たんだけどな……」
「ん?」
「わっ……!」
フラット
「誰か?」
ダバ
「あっ……」
「ご、ごめんなさい」
フラット
「客人か。無礼な……」
ダバ
「すみません。ドアが開いていたので、つい……。私の無礼を許して……」
「あっ……」
フラット
「許せない無礼というものがある」
ダバ
「処罰をお待ちします」
フラット
「ダバ・マイロード。ここまで来て、何を知りたかったのか?」
ダバ
「貴方は、我々を自由にしておいてくれました。他にも色々知っているようです」
「何故、我々を助けたのです?」
フラット
「何事も理由が要るのか」
ダバ
「我々が、ポセイダルにとっては、虫ケラ以下だから生かしておくとも考えられる……」
フラット
「意外と卑屈なのだな」
ダバ
「卑屈……?」
「もしそう聞こえるのなら、ここが異常な星だからだ」
フラット
「ポセイダルの臭いがしない、か……?」
ダバ
「ペンタゴナは、どこもここも乱れているのにな……ここはパラダイスだ」
フラット
「パラダイスに大人しく住むつもりになるのなら、さっきの無礼は許してもいい」
ダバ
「んっ……」
フラット
「そのマイロード君の気持ちが、身を滅ぼすぞ?」
ダバ
「強がりだけど、構わないと思っている」
フラット
「物怖じしないのはいい。見せておくれ……」
リリス
「レッシィ……」
レッシィ
「はぁっ……」
リリス
「レッシィ、寝よ?」
「ん、寝るの……!」
「アムの事考えてるの? いいとこあんのね」
レッシィ
「どうしてあんな事したんだろ、私……しっかりダバに嫌われちゃってさ」
リリス
「う〜ん、悩んじゃうね」
「ん、どこ行くの?」
キャオ
「おいダバ、こっちこっち」
ダバ
「いつまでも遊んでないで、船の整備をしなよ」
「わっ……!」
パメラ
「死んでもらう!」
警備隊
「客人に手を出す事は許さん!」
パメラ
「やぁっ!」
スカラ隊
「はっ!」
警備隊
「うぅっ!」
パメラ
「ダバ・マイロード、覚悟!」
ダバ
「ギャブレーの部隊の者か!」
スカラ隊
「はっ!」
「あっ……!」
ダバ
「ごめんよ!」
「おっと……!」
パメラ
「はっ、あっ……!」
ダバ
「……ん?」
「ご、ごめん!」
キャオ
「おい、ダバ待てよ〜」
スカラ隊
「放せ、放せ〜!」
キャオ
「もう、静かにしろ!」
「あっ、知らない……!」
「ダバちゃ〜ん!」
キャオ
「ギャブレーがダンサーを潜入させたのか?」
ダバ
「ああ、多分な」
リリス
「ダバ〜!」
「きゃっ……!」
ダバ
「このっ!」
パメラ
「あっ……!」
ダバ、パメラ
「あっ……!」
パメラ
「うわぁぁっ!」
ダバ
「誰が動かしてる?」
キャオ
「ゲートの前でバーニア噴かしやがって……!」
リリス
「レッシィよ、レッシィが船を……!」
ダバ
「本当か?」
「キャオ!」
キャオ
「おう!」
レッシィ
「管制室、ゲート・オープン願います」
キャオ
「どのハッチも中からロックしてる」
ダバ
「外部マニュアルから切り替えられないのか?」
キャオ
「今やってるでしょ?」
「開くぞ」
ダバ
「あっ、お見事!」
レッシィ
「ゲートを開かなければ破壊するが、いいな?」
警備隊
「フル・フラットの許可のない船は、出港を認められません」
レッシィ
「何度も聞いている!」
ダバ
「レッシィ!」
レッシィ
「ダバ……放っといて! 私、ミズンに帰るんだから!」
ダバ
「何故だ?」
リリス
「アムを呼び戻すつもりよ?」
キャオ
「今更、何言ってんだ!」
レッシィ
「いつまでも貴方が冷たいのは、私のせいだって分かってるわ……だから!」
ダバ
「馬鹿! こんな事をして……!」
フラット
「ダバ・マイロード、出るのか?」
ダバ
「い、いや……」
レッシィ
「出るわ!」
キャオ
「わっ……!」
フラット
「正規軍の遊撃隊が外で待っているよ、お嬢さん」
レッシィ
「突破してみせる!」
ダバ
「一人じゃ無理だ!」
フラット
「夢を追う者は、常に危険の中へ飛び込んでいく訳だ。いいのか、そういう運命で?」
ダバ
「や、やってみせますよ。今はこの子の面倒を見る事と、これ以上、貴方のスターで騒動は起こしたくないし……」
フラット
「分かったよ、ダバ君」
「お嬢さん、もしダバ君が気になるのなら、いい女にならないとね」
レッシィ
「分かってるわ」
「あっ……!」
「ふぅっ……」
キャオ
「ん、俺もうやだ……!」
フラット
「若い内は好きなようにやってご覧」
レッシィ
「言われるまでもないわ!」
キャオ
「あぁ、俺あのスターに残る筈だったんだ」
パメラ
「前にも後ろにも行かせないよ!」
ダバ
「君、生きてたのか……!」
パメラ
「簡単に死んでたまるものか。ここでアステロイドの仲間入りをしてもらうよ」
「動くな!」
レッシィ
「あっ……!」
ダバ
「ごめんよ!」
パメラ
「あぁっ……!」
キャオ
「ん、こいつめ! めっ、めっ、でしょ!」
パメラ
「あっ、くっ……!」
ギャブレー
「ん? 『可愛い部下をお返しします――ダバ・マイロード』……ふんっ!」
「ポッドを開けてやれ!」
「ダバめ、一気にケリを付けてやる!」
キャオ
「ギャブレーか?」
レッシィ
「前に回られた!」
ギャブレー
「もう逃がさんよ」
「ヘビー・メタルを発進させるぞ」
イレーネ
「ヘビー・メタル隊の援護! ミサイル発射!」
ギャブレー
「結構」
ダバ、レッシィ
「わっ……!」
キャオ
「わっ、ぶつかる……!」
レッシィ
「マニュアル・レイバーで抜けてみせる!」
ダバ
「よし、抜けた」
「レッシィ」
キャオ
「ふぅ、助かった……」
レッシィ
「良かった……」
ダバ
「ん?」
キャオ
「待ち伏せ?」
ダバ
「全速で突っ込め」
「キャオは援護してくれ。俺はエルガイムで出る」
キャオ、レッシィ
「ラジャー!」
キャオ
「いつまでも逃げ回ってると思うなよ?」
「食らえ!」
ギャブレー
「ここまで追い詰めながら、何を手古摺ってるんだ」
「バッシュをスタンバイさせろ! 私が止めを刺してやる!」
イレーネ
「いや、駄目です! アステロイド圏を抜けます!」
ギャブレー
「だから何だというのか?」
イレーネ
「この船は、まだ、ガストガル管制空域での登録を済ませておりません」
ギャブレー
「だから何だ?」
音声
「こちら、ガストガル監視衛星」
ギャブレー
「監視衛星?」
ステラ隊
「アーナンダです」
音声
「事前通告なしに戦闘を行う者、所属部隊を報告せよ」
ギャブレー
「事前通告? 所属部隊?」
「キャプテン、無視しろ。戦いが事前に分かる訳などはないだろう」
イレーネ
「ならば、アーナンダに撃墜させられるだけです」
ステラ隊
「急速反転、空域離脱します」
ギャブレー
「ん、私の命令なしでやるのか?」
ステラ隊
「反転します」
ダバ
「どうしたんだ? ギャブレーの奴、後続部隊を出さないで……」
キャオ
「いい加減に諦めたんでないの?」
レッシィ
「ガストガルの管制下に入ったのよ。監視衛星に見付かったわ」
ダバ
「ここまで来て、ガストガルに入る事も出来ないのか」
音声
「警告、警告。登録ナンバーを報告せよ」
レッシィ
「撤退するしかないわ。無理よ」
ダバ
「俺は、ポセイダルがどんな所に隠れ住んでるのか、見てみたいんだ」
音声
「応答なし、攻撃を開始する」
レッシィ
「ダバ……」
ダバ
「敵を見なければ、どう戦っていいのかも分からないんだよ」
キャオ
「うぇっ、こんな数が来んの?」
リリス
「いや〜ん!」
ダバ
「流石、ポセイダルの本拠地……!」
レッシィ
「緊急回避!」
ダバ
「あの数ではバリアだって持たない……!」
レッシィ
「何とか射程外へ出れば……!」
ダバ、キャオ
「くっ……!」
レッシィ
「ダバ、諦めて。気持ちは分かるけど……」
ダバ
「嫌だ。ここまで来て退けない」
音声
「隕石流、ニアミスの危険有り。回避せよ」
ダバ
「隕石流?」
「隕石流か……。ガストガルの大気圏へ発見されずに入るよ」
レッシィ
「発見されずに?」
キャオ
「んな事、無理でしょ」
ダバ
「隕石に接近して突っ込む」
レッシィ
「隕石に隠れるの?」
キャオ
「怖いよ」
ダバ
「キャオ、コントロールこっちへ回してくれ」
キャオ
「責任取ってくれよ?」
ダバ
「これで駄目なら、俺には運がなかったという事さ」
音声
「侵入中メテオ、降下方位141、ポイントTR、大気圏突入後消滅すると予測される」
「航行中の船舶なし、放置する」
ダバ
「隕石が加速している。怯えたら発見されるぞ」
キャオ
「ダバ、進入角が滅茶苦茶だ! これ以上加速なんかしたら、船が分解しちまう!」
レッシィ
「大気圏突入よ! 早く回避しないと、分解に巻き込まれるわ!」
キャオ
「駄目だ……!」
レッシィ
「ダバ、離れて……!」
ダバ
「頼む、持ってくれ……!」
キャオ
「大気圏だ!」
レッシィ
「やったの?」
ダバ
「何とか」
「アム、船の損傷を調べてくれ」
レッシィ
「ラ、ラジャー」
正規軍
「ポイント133、RJに所属不明機発見」
 〃
「803秒前の監視衛星のデータを回せ。急いでくれ」
艦長
「所属不明機はキャッチ出来なかっただと? どういう事だ?」
「全員、チェック急げ!」
レッシィ
「スヴェート、サイド・センサーのエリア内に入ります」
「いいのね?」
ダバ
「ああ、是非この目で見てみたい」
レッシィ
「スクリーンに投影するわ」
「首都のスヴェートです」
艦長
「何て事だ……ガストガル警戒網にキャッチされずに侵入するものがあるのか」
正規軍
「エリアレット方面の警備隊は、この未確認機を迎撃せよ」
ダバ
「あそこにポセイダルが居るんなら、一発のレーザーでもいい、撃ち込んでやりたい」
レッシィ
「ダバ、無理よ。あまり近付き過ぎたら、スヴェートのオートマチック……」
キャオ
「ダ、ダバ、見付かっちまったようだぜ……」
正規軍
「ふん、スクランブルと言われて来てみたが、ただの鼠か」
「一気に潰してしまえ!」
ダバ、レッシィ
「くっ……!」
キャオ
「あ、圧倒的だ、無理だ。やられちまう!」
ダバ
「スヴェートに入れば、敵は迂闊には攻撃は出来ない!」
キャオ
「ダバだけ出ようってのかよ?」
正規軍
「馬鹿な! 突っ込んでくるのか!」
ダバ
「敵の懐に飛び込めば、活路も開けるさ!」
正規軍
「敵ヘビー・メタルに飛び込まれました!」
 〃
「敵はそんなに早くはない!」
 〃
「戦闘プログラムが、敵の動きに追い付きません!」
 〃
「ジャマーが厚過ぎるのだ、ここは……!」
 〃
「どうします?」
 〃
「マニュアルで追え! ヘビー・メタルも出せ!」
ダバ
「ヘビー・メタルが……!」
正規軍
「何故、落とせない?」
 〃
「せ、接近されすぎて、砲撃出来ません!」
キャオ
「へん、戦闘がプログラム通りに行きますか!」
ダバ
「ポセイダルめ、権威の象徴という訳か!」
「レッシィ、降下!」
「ポセイダル、見るがいい! お前に逆らう者は、幾らでも居るという事を!」
レッシィ
「ダバ、本隊が出て来たわ! 数が居るわ!」
キャオ
「もう遅いんだよ!」
「こっちはたった一機なんだぜ? ちょっと大袈裟じゃないの?」
ダバ
「やむを得ない。上空へ離脱するぞ」
「上からも?」
レッシィ
「初めの船だわ」
キャオ
「もっとスピード出ないの?」
レッシィ
「シールドのパワーを回してくれれば、何とかなる」
ダバ
「駄目だ、追い付かれる」
リリス
「お仕舞い?」
ダバ
「リリス……」
レッシィ
「ダバ……!」
キャオ
「これ以上、シールドも維持出来ない!」
ダバ
「ごめんよリリス、今度ばっかりはちょっと無理し過ぎたかな」
リリス
「ダバ、大丈夫よ」
レッシィ
「損傷度限界! エンジン圧、低下!」
キャオ
「ここまでか……!」
レッシィ
「ダバ、ごめん。十分に手伝えなくて、こんなんなっちゃって……」
ダバ
「レッシィ、僕こそ……」
アム
「いい加減、安っぽいメロドラマはやめにしたら?」
ダバ
「アムの声……?」
アム
「お久し振り。元気してた、ダバ?」
ダバ
「アム!」
リリス
「アム!」
レッシィ
「アム……!」
キャオ
「アム!」
アム
「ふふっ」
「SLSを使うわ。センサーが完全に死ぬけど、上手く出来て?」
ダバ
「SLS? あ、ああ、やってみる!」
レッシィ
「このままじゃ、どの道やられるだけだもの。頼むわ」
アム
「それじゃ、後で会いましょ」
艦長
「何? また新手か?」
「何だ、あの光は……!」
正規軍
「SLSを使われた模様です」
艦長
「ミズン星域でヤーマンが使った奴か」
正規軍
「各艦、迂闊に動くな! 同士打ちになるぞ!」
レッシィ
「お願い、まだ壊れないで……!」
キャオ、レッシィ
「ダバ」
キャオ
「大丈夫か?」
ダバ
「ああ」
「ご苦労さん、レッシィ」
レッシィ
「ダバ……」
アム
「は〜い、元気らしいわね」
キャオ
「有難うよ、アム。助かったぜ」
ダバ
「アム、よくも来てくれて……」
アム
「うふ、そりゃそうよ。女の一念って怖いんだから」
「レッシィ、君がそこに居るとなれば、益々ね……!」
レッシィ
「あ、あの、そう言われてしまえば、そりゃ……」
アム
「すぐそっちへ行くからね!」
レッシィ
「えっ、勘弁、お姉様……!」
アム
「勘弁してやんない!」
ダバ
「してやって、アム」
アム
「あっ……!」