第20話 スター・ダスト

前回のあらすじ
ペンタゴナ・ワールドをオルドナ・ポセイダルが一瞬の内に統一したのも、星々の間の争いが長く続き過ぎたからだ。
ギャブレーは、そのポセイダルの手先になって、俺達を追い回すのに飽きないってんだから、まあご立派。
だけど、ターナといっても万能じゃないから、もう必死なのよね。
スカラ隊
「左前方に金属反応キャッチ……が、残骸のようです」
イレーネ
「確かか?」
スカラ隊
「間違いありません」
イレーネ
「確認を」
「……ん?」
ギャブレー
「異常は?」
イレーネ
「たまにはゆっくり風呂に入っていればいい。毎日イーイーとしていたら早死にをする」
ギャブレー
「余計なお世話だ。私は若い」
「それだけが取り柄なのだ。心配しないでくれ」
「ほれっ! ふんっ! はっ!」
イレーネ
「うっ……こっちが鬱陶しいんだよ!」
キャオ
「ダバ、動かしてみて」
ダバ
「おう」
キャオ
「ハッシャ、まだ繋がってない筈だ」
ハッシャ
「赤いのは繋げたぞ」
キャオ
「じゃあ黄色だ」
ハッシャ
「あっ!」
キャオ
「早くしろ」
「よしダバ、動かしてみろ」
ダバ
「行くぞ」
ロンペ
「わっ、わ〜っ!」
キャオ
「ロンペ……関節の下のコンピュータ・コアに何入れた?」
ロンペ
「緑色のコアだ。あんたがそうしろって言ったじゃないか」
キャオ
「電源切れ」
「っとに、もう……!」
ロンペ
「イタタッ……」
キャオ
「ったく、どいつもこいつも……」
ダバ
「無理だったな。チップは作るって訳にはいかないし」
アム
「ダバ、来て。パラートの管区内よ」
ダバ
「もう一度やってみてくれ」
キャオ
「ケッ、素人ばっかで何が出来るっていうんだよ、全くもう……」
「あ〜もう、壊れちゃったよ」
レッシィ
「待って、ダバ」
リリス
「あ〜、壊した〜!」
キャオ
「誰だ? こんな不良品、仕入れたのは?」
レッシィ
「鉱山よ。ポセイダルの直轄工区の筈よ」
ダバ
「じゃあ、正規軍が居るのか」
レッシィ
「居ないわ。視察が行くけど、飽くまで民間企業」
管理局
「パラータ・スター、入港管理局。貴船の認識番号確認」
ダバ
「登録ナンバーは幾つだ?」
アム
「え?」
ダバ
「登録ナンバーだ」
アム
「ああ」
管理局
「どうした? 貴船の認識番号は? 貴船の認識番号どうぞ」
「聞こえないのか? 認識番号は?」
ダバ
「申し訳がない。無線の状態が良くない。ジャマーが厚いんじゃないのか?」
管理局
「そんな事はない筈だ。通常の状態か?」
ダバ
「変だな……こちら……3・389・594」
管理局
「入港目的は?」
ダバ
「船とマシンの部品、買い付けだ。鉱石は要らない」
管理局
「アマン商会の船か。了解した。入港を許可する」
レッシィ
「了解、お会い出来て嬉しいわ。お顔見せてね」
管理局
「美人である事を期待します」
レッシィ
「後は、パラータの誘導に乗って」
「最後の言葉、何だか分かって?」
アム
「ごめん、分かんない」
ダバ
「暗号かい?」
レッシィ
「商船同士の合言葉みたいなものね」
「怪しまれたくなかったら、こういった業界の慣用語というのを知っておいた方がいいわ」
アム
「どうせ私は山出しですよ」
レッシィ
「そう卑屈になる事はないわ。山出しには山出しの長所があるんだから」
アム
「この〜っ!」
ダバ
「まさか、この船までちゃんと登録してあったとはな」
レッシィ
「取り敢えず、何とかなるかも」
ダバ
「どうかな……必要な部品の買い付けだけを済ませたら、直ちに脱出する」
アム
「んんっ……!」
ダバ、レッシィ
「ん?」
レッシィ
「拡大して」
「人だわ」
ダバ
「助けが出ないのか?」
ダバ
「大丈夫なようだな」
アジーン
「ここは?」
ダバ
「心配ないよ、すぐに入港する」
アジーン
「嫌だ! パラータには戻りたくない!」
「何で助けたんだよ? パラータに戻るくらいなら、死んだ方がいいんだ!」
アム
「入港完了、ハッチ開きます」
レッシィ
「待って。開けちゃ駄目よ、アム」
アム
「もう遅いわ」
出迎えの男
「ご苦労様です。我々の従業員をお助けくださいまして……」
「元気なようだな。良かった」
アジーン
「はい、お陰様で……」
「有難う御座いました」
出迎えの男
「部品の買い付けに来たんだろ? 案内するよ」
レッシィ
「あ、えぇ、有難う」
「……スーツは着ていた方がいいわね」
イレーネ
「パラータに入り込んだとしたら……」
ギャブレー
「どういう所だ?」
イレーネ
「ガストガルのマクマトンの管理なのだが……照会してみるか」
ギャブレー
「駄目で元々だな」
キャオ
「冗談じゃねぇ、四倍の値段だぜ」
店員
「なら、買わなくたっていいんだぜ?」
ダバ
「必要な物は必要なんだ。買うしかないな」
リリス
「人が……!」
ダバ
「人だ」
店員
「見せしめの為にやってる。ミズンでは怠けモンだから」
ダバ
「さあ、買うもんを買ってしまおう」
ギャブレー
「そいつらだ! 間違いない、引き渡してもらおう」
ボンサーンス
「ここはマクマトン司令長官の管轄だ。長官の許可がなければ渡せんな」
ギャブレー
「マクマトン長官との話は、我が方でケリを付ける」
ボンサーンス
「なら構いませんが、彼らも我々の事を気付き始めている。そろそろ捕えたい」
「そうしたら、貴船に引き渡す事を考えよう」
ギャブレー
「間違いないな?」
ボンサーンス
「お若いの、余計な心配は老けを早く呼びますぞ?」
ダバ
「どうも胡散臭いな……早く抜け出した方が良さそうだ」
レッシィ
「ん、ダバ……!」
警備隊
「賞金付きのお尋ね者! 監禁する!」
キャオ
「こりゃ、どうも逃げられそうもないね」
ギャブレー
「奴に手柄を取られてたまるか」
イレーネ
「ここはポセイダル直轄のアステロイドだ。あまり派手にやるな」
ギャブレー
「分かっている」
労働者
「降りろ!」
アジーン
「あっ……!」
ダバ
「君は……」
アジーン
「あっ……」
労働者
「お前のスーツが直るまで、それで働くんだ。さっさと行か……あっ!」
ムト
「何者なんだ?」
アジーン
「知らないけど、俺を助けてくれたんだ」
音声
「ここは自治管制区域だ。軍のものといえども、了解なき侵入に対しては、自衛手段を講じる!」
ボンサーンス
「やれ! 母艦も撃沈しろ!」
部下
「はっ!」
ボンサーンス
「マクマトンは?」
部下
「軍司令部には居りません。バカンスだそうです」
ボンサーンス
「ヘビー・メタル隊を出撃させろ!」
ギャブレー
「ふっ、力尽くで排除しようというのか」
キャオ
「これで全部だ」
ダバ
「分かった」
ムト
「本当に、ボンサーンスを倒せるというのか?」
ダバ
「今は、ポセイダルに反抗しようという人が、各地で反乱を起こしているんです」
ムト
「そんな話、聞いた事がない」
ダバ
「でも、本当なんです」
ムト
「信じられない……そんな夢みたいな話……」
ダバ
「これでもか?」
ムト
「そ、それは……ヤーマン族の紋章!」
仲間の男
「ヤーマン族は根絶やしになった筈だ」
ダバ
「俺が生き残っているというのに?」
ムト
「あんたが? あんた、ヤーマン族なのか?」
レッシィ
「行くわよ、ダバ」
ダバ
「ああ」
「皆さん」
仲間の男
「おっ……!」
音声
「各工区は退避コアに緊急退避。各工区は退避コアに緊急退避……」
ダバ
「何だ?」
ムト
「空襲だ。普通の事じゃない」
ダバ
「チャンスじゃないか。我々はこの機会に脱出する」
「皆さんも蜂起を」
レッシィ
「さあ、早く!」
ムト
「みんなに武器を渡せ! 他の工区の連中にも呼び掛けるんだ!」
ダバ
「アム、行くぞ!」
ギャブレー
「よし、このまま突っ込むぞ!」
警備隊
「新型のヘビー・メタルだ!」
 〃
「うわっ!」
アム、キャオ
「わっ……!」
ダバ
「掴まるんだ」
アム
「やん、どこ掴んでんのよ?」
キャオ
「あぁ、ワリワリ」
ダバ
「この上の階が、さっき捕まった所だ」
アジーン
「待って」
「通信機だ。こっちにも一つ持ってる」
ダバ
「用意がいいな。じゃ、そっちは任せた」
ダバ
「あった」
キャオ
「さっき買った奴だ」
ボンサーンス
「暴動だと? このパラータ・スターで、そんな……」
「兵を向けろ! 暴動が拡大しない内に、鎮圧しろ!」
「ギャブレーめ……!」
ギャブレー
「サーンス、これ以上の破壊はしたくない。ダバ達を渡せ」
ボンサーンス
「この報復はタダでは済まんぞ、ギャブレー!」
警備隊
「サーンス様!」
ボンサーンス
「何か?」
警備隊
「第三ゲートです。何者かが爆弾を……わっ!」
ギャブレー
「サーンス」
ボンサーンス
「貴様、港まで爆撃させているのか……!」
ギャブレー
「部下の事は知らんな。気の荒い連中が多いので」
ボンサーンス
「全兵力を投入しても、貴様を沈めてみせる!」
ギャブレー
「ふん、自警団レベルで私が落とせるものか」
「ん?」
警備隊
「うわぁぁっ!」
警備隊
「うわぁぁっ!」
ダバ
「俺はエルガイムを出す。キャオ達は、パラータのマシンを奪って援護してくれ」
キャオ
「ラジャー」
レッシィ
「ラジャー」
警備隊
「居たぞ、撃て!」
正規軍
「ギャブレー隊長、ターナです!」
「はっ……!」
ダバ
「急げ、リリス!」
リリス
「ん、ん……!」
ダバ
「来たのか」
リリス
「あんっ!」
ダバ
「リリス!」
リリス
「やってるよ〜!」
ギャブレー
「ふっ、左腕が使えんのか」
ダバ
「動いた。よくやった、掴まってろ」
「ギャブレー!」
ギャブレー
「しまった、くっ……!」
「腕を持って付いてこい!」
ダバ
「あの岩の陰か」
「ん?」
レッシィ
「キャオ、こっちを頼むわ。私はエルガイムの援護を」
キャオ
「分かった」
「アムは?」
アム
「キャオ、上を狙って!」
キャオ
「やってる!」
警備隊
「お、お前達は……」
「うわぁぁっ!」
ムト
「お前達も決起してくれたのか」
仲間の男
「こんなチャンスはそうそうないからな」
 〃
「う、うわっ……!」
ムト
「マシンに強い奴は、ノーザンを動かせ!」
アジーン
「味方のヘビー・メタルには、塗料をスプレーするんだ!」
ムト
「ダバ達に連絡出来るか?」
アジーン
「出来るよ」
「ダバ、味方のヘビー・メタルは黄色の塗料を塗ってる。聞こえる?」
ダバ
「聞こえる、了解」
「うっ……!」
ギャブレー
「急げ!」
ムト
「おいそこの、急いでくれ。用意の出来た者からマシンに乗れ」
レッシィ
「ギャブレーの船が見えたら、撃って!」
マルシェ
「分かった!」
「各砲座、ギャブレーの船が見えたら撃て!」
「うっ……!」
ムト
「何で狙撃された?」
アジーン
「俺達の通信を傍受されたんだ」
レッシィ
「待って、味方よ」
キャオ
「ボンサーンスは逃がしちゃったのか?」
ムト
「いや、大丈夫だ。別働隊が炙り出している。逃がしはしないさ」
アム
「んっ……?」
「突っ込むわ!」
ダバ
「ん、うっ……!」
ギャブレー
「ダバ、そろそろ限界だな。一人ぼっちではな」
ダバ
「俺は、自分の人生を見るまでは、一人ぼっちでも寂しくはない!」
ギャブレー
「立派と言いたいが、取り巻きがいれば寂しくはないんだよ! 俺は一人で、立派にやってみせている!」
仲間の女
「何か来るわ」
仲間の男
「サーンスか?」
 〃
「うっ……!」
 〃
「ガス弾だ!」
ボンサーンス
「……ん?」
「後退しろ」
アジーン
「あれは……」
「ボンサーンス!」
キャオ
「何?」
アジーン
「あれは、サーンス家の紋章だよ」
ムト
「確かか?」
アジーン
「いつも威張って見せてたじゃないか」
ムト
「追うぞ!」
アム
「ダバ、ボンサーンスを見付けたわ。私達もこれから追う。南側よ」
ダバ
「ラジャー」
「レッシィ、どこだ?」
レッシィ
「貴方の右よ」
ダバ
「行ってやってくれ」
レッシィ
「こっちはどうするの?」
ダバ
「大丈夫だ。ここの人々にとっては、今がせっかくのチャンスなんだから」
レッシィ
「ラジャー」
ダバ
「うっ……!」
ギャブレー
「どうだ! まだ強がりを言えるか! ダバ、言ってみせろ!」
ダバ
「寂しくはない! 強がりでもないさ!」
ギャブレー
「ダバ!」
「邪魔をするな!」
ダバ
「うっ……!」
「何だ?」
ギャブレー
「核爆発だ」
ボンサーンス
「回避しろ!」
「はっ……!」
アジーン
「捕まえた!」
レッシィ
「あっ……!」
アジーン
「あぁっ……!」
レッシィ
「ダバ、こちらは終わったわ! ダバ!」
ダバ
「こっちはまだだ! さっきの爆発は何なんだ?」
レッシィ
「昔の原子炉の跡だって。近くに居ると危ないわ!」
ダバ
「原子力発電所?」
ギャブレー
「頂き!」
ダバ
「ギャブレーは……!」
ギャブレー
「死ねぇぇっ!」
「あぁっ……!」
「またか!」
ダバ
「今度の爆発は本物さ」
ギャブレー
「ふ、不覚……!」
ダバ
「正規軍の追撃はありますよ」
ムト
「我々には生産能力があります。設計図も頂きましたから」
ダバ
「我々が賞金付きでなければ、協力したいんだけど……」
アジーン
「ここを基地にして戦えばいいのに」
キャオ
「俺達にはね、反ポセイダルの同志を集める任務っていうものがあるの」
「行くぜ」
アーザン
「ダバ、また会えるかな?」
ダバ
「騒ぎのある所に、ダバ・マイロードありってね」
アム
「ところで、キャオ」
キャオ
「あ?」
アム
「さっきの、本気なんでしょうね?」
キャオ
「何が?」
アム
「『俺達には任務がある』って、あれよ」
キャオ
「ん、当たり前だよ」
リリス
「この顔は、本気の顔だわ」
レッシィ
「でも、あの人達、アステロイド・ベルトを脱出するだけの力があるの?」
ダバ
「勿論さ。パラータは自由な星になれるかもしれない……」