第24話 アスフィー・ハート

前回のあらすじ
ペンタゴナ・ワールドをオルドナ・ポセイダルが一瞬の内に統一したのも、星々の間の争いが長く続き過ぎたからだ。
俺達は、ターナの運用を上手にやってるとは思えないね。
何しろ、ギャブレー如きに付け入られるだけなんだから。
しかし、敵の動きもシリアスになってきた。
ダバ
「何?」
「やっぱり……」
「キャオ、今のマシンナリィ、無人だ」
キャオ
「そりゃないぜ。このジャマーの厚さで、リモコンは無理だよ」
ダバ
「しかし……」
キャオ
「不可能だ。こんな近くでさえ、これほど映像が乱れてるんだぜ?」
「俺もディザードで出る。あと四機は居る筈だ」
ダバ
「居たぞ、キャオ!」
キャオ
「ダバ、ぶっ壊さず生け捕りにしろ! 本当に無人なら行動を調べたい!」
「どうした、追わないのか?」
ダバ
「有視界で戦わなくては不利だ。敵は無人のマシンナリィを操っているんだ」
ダバ、キャオ
「はっ……!」
ダバ
「これが無人だなんて、どういう事だ?」
「キャオ、左端のを捕まえる。他のを引き付けといてくれ」
アム
「どうして無人だって分かんのよ?」
レッシィ
「一機一機の動きが単純なのよ。見れば分かるでしょ?」
アム
「ジャマーの展開してる所で、リモコンは無理じゃないの?」
レッシィ
「それが分からないから慌ててんじゃないか」
アム
「へ〜、元十三人衆でも分かんない事があんのね?」
「あ、何?」
レッシィ
「どうした?」
ロンペ
「今、ヘビー・メタル・クラスの新手が見えた」
アム
「分かった。レッシィはそこで見てて」
レッシィ
「待ちなさいよ」
アム
「私は、ブースターで出るわ」
ダバ
「ワイヤー? 何?」
「そうか!」
「コントロールをしている者が居る筈だ。どこだ?」
アスフィー
「母の仇、ダバ・マイロード、覚悟しろ!」
ダバ
「母の仇だって? 何だ?」
アスフィー
「その胸に聞いてきな!」
ダバ
「誰だ? 俺は女子供を殺した覚えはない!」
アスフィー
「母の名は、ミヤマ・リーリンだ! そう聞けば思い当たろうが!」
ダバ
「リーリン……あの盗賊の女親分か」
「よせ、間違いだ。俺はリーリンさんを殺してはいない」
アスフィー
「(?)を言うか、ダバ・マイロード!」
キャオ
「何やってんだ、ダバ! 後ろ!」
「仕掛けが分かれば何の事はない。俺がやるぜ!」
ダバ
「やめろ、キャオ!」
キャオ
「どうしたってんだよ? リーリンの娘だろ?」
ダバ
「だからやる訳にはいかないんだ。因縁が深過ぎるのは良くない」
キャオ
「因縁が何だっての?」
ダバ、キャオ
「はっ……!」
アム
「私にも出来る!」
レッシィ
「無理よ! 敵の数が多いんだから!」
アム、レッシィ
「あっ!」
キャオ
「逃げろ、早く……!」
ダバ
「アスフィー、やめろ!」
アム
「もう駄目!」
レッシィ
「ごめんね、アム!」
アム
「いいの、二人で意地張り過ぎて。このまま死ぬなら、いっそ大空へ舞って美しく死にましょう」
レッシィ
「アム、嬉しい事言ってくれて……」
アム
「レッシィお姉様……」
レッシィ
「アムや〜!」
アム
「天国では仲良くしましょうね」
ダバ
「アム、レッシィ、起きろ」
アム、レッシィ
「……ん?」
キャオ
「リーリンの娘か何か知らないけど、鬱陶しく出て来んじゃないよ!」
アスフィー
「ここは一先ず引き上げるけど、まだ諦めた訳じゃないよ!」
アム
「……どっちが美しいかは、人が決める事でしょ?」
レッシィ
「なら自信ありそうな事、言うんじゃないの!」
アム
「自信あるなんて言ってないでしょ! 事実しか言わない!」
レッシィ
「その事実が間違ってるって……!」
アム
「何を?」
レッシィ
「ほら、醜い顔!」
ダバ
「やめなさい!」
アム、レッシィ
「あっ……!」
ギャブレー
「予備のパードナーはセットした。焦っては勝負には勝てぬぞ」
アスフィー
「いえ、愚図愚図していては見失いますから。この空域では目を瞑って探すようなものですので」
「今なら、まだ検討が付きます」
ギャブレー
「そうか」
アスフィー
「母の最期を思えば、休息などはとても……」
ギャブレー
「若いのに良い覚悟だ」
「その心意気、部下達に聞かせてやりたいものだ」
ハッシャ
「は、はい……!」
アスフィー
「お借りしたパードナー、無駄には消耗致しません」
ギャブレー
「宜しく頼むぞ、アスフィー」
アスフィー
「ご協力感謝します、ギャブレット・ギャブレー様」
「では」
ギャブレー
「うむ」
「生まれてすぐに各地のマシン競技会に出ていた娘か……」
「お前に騙されていると知ったら、後が怖いぞ?」
ハッシャ
「あんな小娘……」
ギャブレー
「いや……あの娘は、一度に数機のマシンをリモート・コントロール出来る天才的な少女だ」
「その娘が、ミヤマ・リーリンを殺したのがお前だと……」
ハッシャ
「ギャ、ギャブレー様、滅相もない!」
ギャブレー
「こら、ハッシャ、やめんか……!」
ハッシャ
「し、失礼しました」
ギャブレー
「くれぐれも気を許すなよ」
ハッシャ
「はい!」
アスフィー
「ミヤマ・アスフィー、発進します」
ギャブレー
「ハッチ開けろ」
「わっ……!」
アスフィー
「今度こそ、ワイヤー・リモコンの確実さを見せてやる」
ダバ
回想:「よせ、間違いだ! 俺はリーリンさんを殺してはいない!」
アスフィー
「危なくなると、人は嘘を言う!」
ギャブレー
「アスフィーのトレースは無理か?」
イレーネ
「残念ながら。電離層の乱れもありますので」
ギャブレー
「うむ……」
イレーネ
「先程のギワザ殿の通信の再生は終わりました。ご覧になりますか?」
ギワザ
「ギャブレット、ダバ・マイロードの追跡は甘いようだな」
「これではヘッド・ハンターなどは、夢のまた夢という所だ」
「状況は変わりつつある。急げ」
「言われなくとも……」
ギャブレー
「修復してこんなものか?」
イレーネ
「はい」
ギャブレー
「ギワザ殿は、何を焦っておられるんだ?」
イレーネ
「存じません」
ギャブレー
「総員、出撃態勢に入り、そのまま待機しろ!」
ダバ
「また来るかな、あの子?」
キャオ
「そりゃ来るだろ」
「おっと、ストップだ!」
「あ〜水だ、間違いない。水がなきゃ、この……!」
ダバ
「俺が仇か……」
キャオ
「もう、勘弁出来ねぇ!」
「うっぷ、くせぇ! 腐ってるよ!」
「も〜、人が必死で探してるってのに……ダバ!」
ダバ
「ここは兵器工場の跡のようだ」
キャオ
「あっ……!」
アム
「あんたが変なもん触るから!」
レッシィ
「あんたが何だろうって聞いたんでしょうが!」
アム
「もう、あんたのお陰で、命が幾つあっても足りないわ!」
レッシィ
「お互い様でしょうが!」
ダバ、キャオ
「はっ……?」
アスフィー
「何か光ったが?」
ダバ
「あの子なら殺すなよ、キャオ」
キャオ
「んなの、分かるかい!」
「あ、ダバ……!」
ダバ
「ドッキング・センサー!」
キャオ
「間に合うのか?」
ダバ
「キャオ、撃つなよ。守るだけだ、いいな?」
「何としても誤解を解かなきゃならない」
キャオ
「守るったって、無傷で捕まえるなんて無理だ」
ダバ
「守るだけだ!」
キャオ
「分かったよ」
ダバ
「(?)が出た」
キャオ
「あっ……!」
ダバ
「あの子……」
キャオ
「今撃てばイチコロだってのに、何考えてんだ、あいつ?」
アム
「敵が出て来たみたいよ?」
「ロンペ、監視カメラ出して」
ロンペ
「はっ!」
アスフィー
「ダバ・マイロード、話がある!」
「はっ、カメラか……」
アスフィー
「母を殺したのは貴方ではないと言った。その話を詳しく聞きたい」
レッシィ
「何か企んでるのかしら?」
アム
「若い女は油断ならないからね」
アスフィー
「あの気の強かった母が、命乞いをするのを無視して、お前は殺したと聞いたが」
レッシィ
「本当なの?」
アム
「本当な訳ないでしょ?」
リリス
「何言ってんの、あの子」
アスフィー
「やってないというのなら、その証拠を見せてもらいたい」
ダバ
「分かった、一時休戦という訳だな」
「みんな、聞いた通りだ」
アスフィー
「お前が、ダバ・マイロードか」
ダバ
「君がリーリンさんの娘か」
キャオ
「まだ子供じゃないか。本当にお前がヘビー・メタルを?」
アスフィー
「ダバ・マイロード以外には用はない。引っ込んでろ」
キャオ
「何だと、こいつ……!」
ダバ
「キャオ、よせ」
「ミヤマ・アスフィーと言ったな。誰から聞いたか知らないけど、俺は君のお母さんを殺してはいない」
アスフィー
「証拠を見せてもらいたい」
「証拠を見せてもらいたいと言っているのだ。船にでもあるのか?」
ダバ
「いいだろう、船で見せよう」
アスフィー
「本当だな?」
ダバ
「どうぞ」
キャオ
「おい、よせよダバ……駄目だ駄目だ」
「身体検査だけはさせてもらう。後ろからズドンとやられちゃ構わないからな」
ダバ
「よせ、相手は子供だ」
キャオ
「ダバ、甘いんだよ」
「むふふっ……!」
アスフィー
「あっ……!」
キャオ
「ぐっ……!」
アム
「余計な手出しはいいの」
レッシィ
「そう」
「あの子は、ハッシャなんかとは違う。本当に仇の証拠を見たがっているのよ?」
キャオ
「お前ら……!」
アム
「第一、女の身体検査は、女がやるのが当たり前でしょ?」
「という訳です。まず銃を預かります」
アスフィー
「分かったわ」
アム
「どうも」
アスフィー
「これは裏切りだよ! 私は言葉ではなく、証拠を見せろと言った!」
ダバ
「もし僕がやましければ、君は邪魔だ。だから、ここに来るまでの間に、君を殺す事だって出来たんだ」
「これが証拠だと思って……」
アスフィー
「子供だと思って馬鹿にするのか!」
「もし母さんが死んだ時の戦いがお前の言う通りならば、母さんを殺す手引きをした奴を知っているんだろ?」
「教えなよ!」
ダバ
「それは出来ない。僕は君に人殺しをさせたくないんだ」
「殺した人の名を言えば、君はそいつを殺すだろう。そんな事をしたって何にもならないんだよ!」
アスフィー
「ははっ……じゃあ、オルドナ・ポセイダルが親の仇だって言った、あんたはどうなのさ?」
「あんたはこんな船まで手に入れて親の仇討ちなのに、私にはやめろって言うの?」
ダバ
「ああ、そうさ」
アスフィー
「帰らせてよ」
ダバ
「ドアを開け」
レッシィ
「待ちなさいって、ミヤマ・アスフィー!」
「あんた素直に乗り込んできたのは、ダバを信じたかったからなんでしょ?」
「ダバだってもし後ろめたい所があれば、貴方を捕虜にしたわ。帰しもしないわよ」
「アスフィー」
アスフィー
「そうよ、それは分かってしまったのよ。でも、でも私には……」
「ハッシャとかギャブレーの言う事も信じられたから……!」
レッシィ
「ギャブレー?」
「あっ、うっ……!」
アスフィー
「ふん、乗り込んできたのはね、こういうチャンスが欲しかったからさ」
アム
「子供だと思って気を許し過ぎよ。相手は本気なのよ?」
ダバ
「そうかもしれない。でも、俺が仇を討ちたいように、あの子だって討ちたいだろうって事さ」
キャオ
「あいつが、あの妙なヘビー・メタルで攻めてくるかもしれないんだぜ?」
アム
「ちょっと可愛かったからね、あの子……」
キャオ
「いい子?」
アム
「気安く触るな!」
キャオ
「ん、こんなのばっかですもの……!」
ダバ
「ぐわっ……!」
アスフィー
「死ね、ダバ・マイロード!」
ダバ
「お、俺が……母さんを殺した証拠なんてない……」
「やめろ……人を殺すと、君は……」
「もう、普通の娘に……なれなくなるぞ……!」
アスフィー
「ママ……」
ダバ
「不確かなままで、人を殺す……」
「後悔するぞ……それでよければ、殺りな……」
アスフィー
「ママ、どうすればいいの……?」
アム
「ダバ、レッシィが……!」
レッシィ
「ダバ……!」
アム
「くっ……!」
レッシィ
「よくも……!」
ダバ
「撃つな!」
アスフィー
「動くな! 動くと今度こそ命を貰う!」
「ダバ・マイロード、決着はヘビー・メタルで付けよう」
「私には、もう……!」
キャオ
「大変だ、みんな!」
「あら?」
アスフィー
「やるか?」
キャオ
「あぁ、いえ……」
「あの子、まだ居たのかい? いいのか、追わなくて?」
アム
「止められるなら止めてみれば?」
ダバ
「何だ?」
キャオ
「あ、いけねぇ。スレンダー・スカラのお出ましだぜ」
「あいつが手引きしたんだ」
ダバ
「キャオ!」
キャオ
「おう!」
アム
「ダバ〜、服、服……!」
ダバ
「持ってきてくれ!」
アム
「ああん、見えた見えた! もうお嫁行けない〜、なんちゃって」
アスフィー
「ダバ・マイロード……」
パメラ
「ギャブレット。ターナ、キャッチしました」
ギャブレー
「よし、アスフィーはターナを足止めしといてくれた」
「総員、戦闘配置に就け! 私はバッシュで出る!」
イレーネ
「お気を付けて」
ダバ
「アムは、リリスとターナに残って援護を頼む」
アム
「また? やだ〜!」
キャオ
「来たぞ! ダバ、急げ!」
ダバ
「ドッキング・センサー!」
ダバ
「アスフィーか。本体はどこだ?」
「ん?」
「アスフィー、俺の前に出てくるな。俺にだって感情があるんだ」
「怒る時もある!」
「うっ……!」
アム
「アスフィーは私に任せて! ダバは、今日は前方の敵を!」
ダバ
「アム! ターナで援護しろと言ったろ!」
アム
「私だって、レッシィぐらいにはやれるわ!」
キャオ
「その自信過剰が怖いんだよ!」
レッシィ
「アム、わざと譲ってやったんだ! アム、ダバの足手纏いになったら承知しないよ!」
「分かってんの?」
アム
「任しといてよ、レッシィちゃん」
「やった〜!」
「あっ……!」
ギャブレー
「貰った!」
ダバ
「アムはグライアを!」
「ちっ、かわせるか!」
ギャブレー
「アスフィー、ハッシャ、何をしている? エルガイムへ一斉攻撃だ!」
「数を利用しなければ……!」
アスフィー
「ダバ・マイロード、母の仇……!」
ダバ
「来るな、アスフィー! 来るなら俺だって……!」
「え?」
「くっ……!」
「アスフィー!」
「いつまで冷静で居られるか、俺だって自信がない……!」
「むっ……!」
アスフィー
「何故撃たなかった、ダバ? 情けなんて、思い上がりも甚だしい!」
ハッシャ
「親子共、この手に掛かるとは皮肉なもんだな」
「悪く思うな、アスフィー。ギャブレーに弱みを握られたままなんて、我慢出来ん!」
ギャブレー
「いいぞハッシャ、一気に突っ込め!」
ダバ
「アスフィー! 来るのか?」
アスフィー
「わぁぁっ!」
ダバ
「やめなさい!」
アスフィー
「放せ、ダバ!」
ダバ
「やめるんだ、アスフィー!」
「後ろ!」
ハッシャ
「アスフィー、ごめんよ!」
ダバ
「何だ、あのグライアは……!」
アスフィー
「ハッシャ、今私に何をした?」
「ダバ、エルガイム……くっ!」
ハッシャ
「援護したんだ! それをお前が押さえられなかったから……!」
ダバ
「悪いけど! アスフィー、どけぇ!」
アスフィー
「あんたは私を狙った!」
ハッシャ
「何を証拠にそんな事をいう! 俺はお前を助けに来たんだ!」
アスフィー
「証拠……?」
「ハッシャが私に向かって撃ってる! 私を、撃ってる……?」
「あぁっ!」
ダバ
「アスフィー!」
アスフィー
「あぁっ……!」
ダバ
「何ていう子だ……」
ハッシャ
「うぉっ!」
ギャブレー
「ええい! ハッシャ、下がれ!」
ハッシャ
「へ、へい! アスフィーが裏切りやがって……!」
ギャブレー
「分かってる! 我々が安易過ぎた!」
「少女を当てにした自分が恥ずかしい……!」
アスフィー
「ダバ、大丈夫なの……?」
「ダバ……最後まで……」