第3話 みーんな当て外れ

前回のあらすじ
惑星ゾラと言われている地球。しかし人々は、ゾラという名前を忘れて久しい。
ジロン・アモスはエルチ・カーゴに試されたのである。
ホーラが襲撃させるブレーカーの仲間に入れられて試され、次はザブングルを盗ませるテストをした。
そして、ジロンはまんまとザブングルを手に入れた。
雇われ
「北西のまで追い込んだぜ、ホーラ」
ホーラ
「ちっ……」
雇われ
「機動性はいい、動きは早い……」
 〃
「とても俺っちのウォーカー・マシンじゃ歯が立たねぇ」
 〃
「あいてて……」
 〃
「あんな合体マシンはどうって事ねぇって言ってたけどよ。嘘だぜありゃ……」
ホーラ
「どいつもこいつも、旦那に顔向け出来やしねぇ。おめぇら、ブレーカーなんてやめちまえ!」
エルチ
「梃子摺っているみたいね」
キャリング
「お前の仕切り方が悪いからこうなるんじゃないのか?」
ホーラ
「いえ……」
キャリング
「三日目まで、あと二晩しかない。おめおめザブングルをあの小僧の物にしちまうのか?」
ホーラ
「絶対に取り戻します。それについて……」
キャリング
「当たり前だ。ワシの面子があるわい」
「イノセントに取り入って、ようやく手に入れた新型ウォーカー・マシンを、あんな小僧に……」
ホーラ
「分かってますよ。ですから……」
キャリング
「いいか? ワシら運び屋稼業は、ちょっとでも弱味を見せたら負けだ。他の運び屋に手形を取られちまうんだからな」
「この苦労が、まだお前には分かってない」
ホーラ
「分かってますよ。ですから……」
キャリング
「分かったら、さっさとやれ」
エルチ
「パパ……ホーラの話も聞いてやったら?」
ホーラ
「賞金を出してやってもらいたいんで」
キャリング
「あっ、あぁっ……?」
ホーラ
「賞金を出してやってもらいたいんで」
キャリング
「な、何でだ?」
ホーラ
「旦那の面子に関わる事です」
キャリング
「そ、そうだ」
ホーラ
「他の運び屋より、旦那は男でございます」
キャリング
「そそ、そうだ……」
ホーラ
「私が命を賭けるに値する方は、旦那でございます」
キャリング
「そ、そうだな」
ホーラ
「3000ギャラント、出してやってください」
キャリング
「へっ、あぁっ……」
「まからんかな? ホーラ君……」
ホーラ
「賞金が安ければ、旦那の面子が潰れます」
キャリング
「しかし……」
エルチ
「それとも、もう一台のザブングルを使う?」
キャリング
「両方、お釈迦にしたらどうなる?」
エルチ
「じゃあ、3000ギャラント」
キャリング
「んっ、んんっ……」
エルチ
「決まりね」
ホーラ
「はい、お嬢さん。私もプロメウスを出します。何としても3000ギャラント、ものにしますよ」
エルチ
「パパ、素敵よ」
キャリング
「3000ギャラントだぞ!」
ホーラ
「2000ギャラント! 2000ギャラントだ。キャリング様は、2000ギャラントの賞金を付けてくださった!」
雇われ
「2000だとよ、2000!」
ティンプ
「ふふっ……ようやく動き出したか。しかしあのランド・シップには、ビッグマン辺りをぶつける方が良さそうだ」
ホーラ
「自分達で人手を集めてもいい。とにかく、ザブングルをここへ持ってきた者の勝ちだ。掛かれ!」
雇われ
「おーっ!」
 〃
「2000ギャラントは俺のもんだ!」
ラグ
「いいよ」
「馬鹿! 何、グズグズしてんの?」
ブルメ
「あぁっ……!」
ラグ
「うっ!」
チル
「ラグ達、大丈夫?」
ダイク
「大丈夫さ。ブルメも一緒だし、まさか捕まったりは……おっ?」
「追っ手だ」
ジロン
「追っ手らしいな?」
チル
「ラグを置いて逃げらんないよぉ」
ジロン
「この辺は足場が悪い。あそこに陣取ろう」
ダイク
「OK」
ブルメ
「賞金で追っ手を集めるなんて、青いのはよっぽどお宝なのかね?」
「キャリングぐらいなら、また買やいいのに」
ラグ
「運び屋の面子さ。世間に知れたら、いい笑いもんだからね」
ブルメ
「なら、運び屋なんかやめちゃえ」
ラグ
「そうは……あっ!」
「んっ……!」
ブルメ
「エルチか?」
エルチ
「あんた達もしつこくやるわね?」
ラグ
「ザブングル使うには、ガソリン要るからね」
ブルメ
「弾もよ」
エルチ
「分かってるわよ」
「あんた達には任せておけないよ」
ラグ
「ブルメ、負けんな」
ブルメ
「おう」
ラグ
「……ん?」
エルチ
「ちっ、慣らし運転も十分にしてないの?」
ラグ
「あいつ……! 急いで、ブルメ」
キャリング
「お?」
キャリング
「エルチ! どこへ行く気だ?」
「どこへ行く気だ、エルチ」
エルチ
「んんっ……加勢は多い方がいいでしょ?」
キャリング
「馬鹿な、怪我をするからやめなさい。とにかく降りなさいエルチ!」
「エルチ!」
キャリング
「どうしてああなんだ? 跳ねっ返りめ……」
「ファットマン! 貴様まで行ったら、このアイアン・ギアーはどうなる? 動くな!」
エルチ
「ん、もう……」
「んっ……はっ!」
「誰? 何の真似?」
ティンプ
「どちらへ? お嬢さん」
エルチ
「キャリング・カーゴの娘のエルチよ。貴方も賞金稼ぎ?」
ティンプ
「レディまで捕り物とは恐れ入ったな」
エルチ
「まさか。私は家出してきたの」
ティンプ
「家出……。ふふっ、踊り子でもやる気か?」
エルチ
「私には夢があるのよ。この地球に文明の花を咲かせるの。映画、演劇、小説……」
ティンプ
「文明の花? ふふっ……その前に野垂れ死にしなさんな」
エルチ
「そう簡単に死ぬもんですか」
「キャーッ! 調子出てきた!」
チル
「こいつぅ!」
ダイク
「弾を無駄にするな、チル」
チル
「これでも狙って……うわっ、いた〜い!」
ジロン
「チル、トレイラーのコックピットに乗ってくれ」
チル
「何でぇ?」
ジロン
「ザブングルで叩くんだ」
チル
「オッケー」
ジロン
「ダイク、援護してくれ」
ダイク
「おう」
チル
「ジローン」
ジロン
「よっ……!」
「俺が出たら、このレバーを入れて発進させるんだ」
チル
「うん」
ジロン
「力一杯こいつを踏んで、走り出して30数えたらこっちを踏む。順番間違えるなよ?」
チル
「このレバーで発進、こいつを踏んで30数えたらこっちを踏む!」
ジロン
「すご〜い、チルは天才だぁ」
チル
「あったりぃ」
雇われ
「うわぁぁっ!」
ジロン
「チル、行くぞ!」
チル
「ラジャー」
「んっ……」
「わぁぁっ!」
ジロン
「チル、大丈夫か?」
チル
「7・8・9……」
「21・22・23……」
雇われ
「この野郎、畜生!」
ジロン
「27・28・29・30……チル、まだか?」
チル
「29・30!」
ジロン
「30!」
「おわぁぁっ?」
雇われ
「上だ、上だぁっ!」
「わぁぁっ!」
ジロン
「わぁぁっ!」
チル
「わぁぁっ!」
雇われ
「あっ、あっ……ぎゃぁっ!」
 〃
「わぁぁっ、ぐっ、ぐぇっ……!」
ジロン
「いいぞ、ダイク……あっ!」
ダイク
「急げ、ジロン!」
雇われ
「わぁぁっ!」
ジロン
「ラグか!」
ラグ
「チルは?」
ジロン
「乗ってるよ」
ブルメ
「やるじゃんか」
チル
「まぁね〜」
雇われ
「貰ったぜ、青いの! うりゃぁぁっ!」
ラグ
「くっ、えぇいっ……!」
「くっ……!」
雇われ
「ええい、このぉっ!」
「うぉっ、ぅっ、うわぁっ……!」
ラグ
「キャリングは追っ手を駆り集めてるからね。何としてでも……」
ジロン
「あぁ、逃げ切ってみせる。あと一晩と一日だ」
「俺にはどうしても、この青いウォーカー・マシンが必要なんだ」
エルチ
「貴方も賞金稼ぐつもり?」
荒くれ
「さっき、キャリング旦那んとこのホーラさんに聞いてな。おめぇさんもか?」
エルチ
「賞金を独り占めする気はないの?」
荒くれ
「勿論、そのつもりだ。でしゃばると女でも遠慮はしねぇぜ」
エルチ
「まっさか。私は高見の見物。面白そうだもん」
荒くれ
「面白くしてやるよ。楽しみにしてな。後で賞金懐に遊びにいくぜ」
エルチ
「……ばーか、精々仲間割れでもするのね」
「またやってるな」
 〃
「キャリングの旦那か」
キャリング
「何故動かんのだ? このメカは、イノセントから譲り受けた新品だぞ? ここまで来れたのに……」
コトセット
「計器は全て良好です」
キャリング
「良好で何故作動せん?」
コトセット
「旦那が急ぎすぎるからです」
キャリング
「ホーラだけに任せてはおけんのだ。娘も連れ戻さにゃならんし、次のバザーにも間に合わせなきゃ……」
「あっ、動いた」
コトセット
「水平に! 変形するんじゃないんだから!」
雇われ
「ホーラさん、どうもすいません」
ホーラ
「しくじったのか……。頼りない奴らめ」
「ん? まさか……」
「イノセントのドームじゃないか。小僧らめ、ドームを盾にする気か」
ダイク
「どうする? これ以上、先には進めないな」
ラグ
「一つだけはっきり言えるわ。ここに居る限り、追っ手は絶対に攻撃してこれないって事」
ジロン
「二日間、ここで粘る気か?」
ブルメ
「イノセントにもしもの事があったら大変だよ」
ダイク
「後ろに狼、前に虎か」
ジロン
「上手くいけばこっちのもんだけど」
ラグ
「追っ手の人数が増えたみたい」
ジロン
「金持ちのやる事はいつでもこうさ。賞金に釣られた命知らず共だ。油断は出来ないな」
ラグ
「食べ物が心配よ。手に入らなかったんだよ」
チル
「えぇ〜っ! 何もないの?」
ラグ
「大丈夫。二日ぐらい何とかなるわよ」
雇われ
「獲物を目の前にして手も出せねぇなんて、癪に障るぜ全く」
 〃
「そうだとも。一気に攻めちまえばいいじゃねぇか」
ゲラバ
「なら、てめぇら行きな。イノセントのドームを傷付けずに取り返せるか?」
雇われ
「二日間、指を咥えて見てるだけかよ。けっ! えぇいっ、畜生!」
ホーラ
「俺だって、いつかきっとイノセントと直に取引してみせる。となると、また面倒だな……」
ゲラバ
「ホーラ、何か上手い手でも思い付いたか?」
ホーラ
「小僧達が眠るのを待ちな」
ティンプ
「ふっ、イノセントのドームを後ろ盾にするとは考えたな。賞金を賭けるだけあって、貰っといて損のない代物だ」
ジロン
「ふわっ、あぁ〜……」
ラグ
「んんっ……」
チル
「ふぁっ……」
ジロン
「ん? あっ……」
ラグ
「ん?」
ジロン
「あっ……」
チル
「うわぁぁっ、やだぁ〜!」
ジロン
「チルー!」
ラグ
「くっ……!」
チル
「助けてぇぇっ!」
雇われ
「こいつが可愛けりゃ、日の出までにザブングルを渡せ!」
チル
「お姉ちゃ〜ん!」
ラグ
「チル!」
ジロン
「待てよ、今出たら皆殺しだ」
ラグ
「何よ、チルを助けないの?」
チル
「お姉ちゃん、助けてぇぇ!」
ダイク
「汚い奴らだ」
チル
「あぁ〜ん! あぁ〜ん!」
「あぁっ……あっ!」
「わーん、わーん……」
「わぁぁんっ! おーい、おいおい……」
「おーいおい……ジロン! 逃げてぇ」
ジロン
「馬鹿だな! 声を出しちゃ駄目じゃないか……うっ!」
「あぁっ、駄目だ。もう少しだったのに……くっ!」
「わぁっ、いてぇっ!」
チル
「このっ!」
ジロン
「いたたっ……」
ラグ
「援護するのよ!」
ジロン
「ひぇっ!」
ダイク
「ジローン!」
ブルメ
「大丈夫?」
ラグ
「ジロン!」
ジロン
「水くれぇ、水ぅ」
ティンプ
「あの小僧、最近どっかで会ったような気がするな」
ホーラ
「そろそろ時間だ」
ラグ
「何が何でも取り返すつもりね」
ブルメ
「みすみす渡しちまうのか」
ダイク
「チルを助けるには、それしかないよ」
ホーラ
「どうした? 用意はいいな?」
ジロン
「今なら奴らのウォーカー・マシンは動けないな」
ラグ
「え?」
ジロン
「チルと交換したら、すぐ撃つんだ」
ダイク
「ジロン」
ジロン
「約束だ! チルを離せ!」
ホーラ
「慌てるな。お前が降りてからだ」
ジロン
「んっ……」
ホーラ、ゲラバ
「うっ……」
ジロン
「あぁっ!」
「あぁっ……」
チル
「ジローン」
雇われ
「人質が逃げたぞー」
ジロン
「くっ……」
ホーラ
「お嬢さん……どういうつもりです?」
エルチ
「見損なったわ、ホーラ。人質を取るなんて、あんたそれでも男? 私、この子の加勢をするわよ」
ジロン
「んっ……この子?」
ホーラ
「そ、そんな、お嬢さん……」
エルチ
「見損なったのよ、あんたを」
ホーラ
「お、お嬢さん……」
ラグ
「あいつ、気安いじゃないの。ジロンはね……」
ブルメ
「あたしのものなのよ〜ん」
ラグ
「ブルメ!」
エルチ
「命が惜しけりゃ逃げなさいよ」
雇われ
「やろぉ!」
 〃
「どけ! 馬鹿野郎、撃てねぇだろう!」
 〃
「うるせぇ! おめぇこそどけぇ!」
ラグ
「ジローン」
「あんたは引っ込んでてよ」
エルチ
「ホーラ相手に、あの子にだけに任せておけて?」
ラグ
「ジロンなら平気よ……あっ!」
エルチ
「ま、強気だこと。お好きなように」
雇われ
「まだか。賞金を持ってかれていいのかよ?」
 〃
「分かってるよ……ん?」
「やめてよぉ!」
エルチ
「やぁ〜んっ!」
ホーラ
「大人しくしていてください、お嬢さん」
エルチ
「何よ!」
ジロン
「エルチ!」
ホーラ
「まとめて掛かれ! てめぇら1機ずつで敵うものか!」
ジロン
「わぁぁっ!」
エルチ
「あ、ごめん」
ラグ
「ほらご覧、邪魔なだけよ」
エルチ
「邪魔じゃないわよ」
ティンプ
「新型ウォーカー・マシンが2機か。悪くないな」
ジロン
「あぁっ……!」
「ぬぅぅっ……!」
「間違いない! あいつだーっ!」
「うぉっ、ととっ……!」
「親父の仇! 出ろぉっ!」
「親父とお袋の恨み、今晴らしてやるぅっ!」
ティンプ
「何だと? そうか、あの時の小僧だったのか」
ジロン
「煩い! 思い知れぇ!」
ティンプ
「血迷うな! 三日以上も仇が討てなかった癖に、今更聞いて呆れるぜ」
ジロン
「何ぃぃっ!」
ティンプ
「盗んだもんでも三日経てば自分のもんだ」
ジロン
「煩い!」
ティンプ
「もう一週間は経ってるぞ」
ジロン
「仇討ちは別だわ! えぇいっ!」
ティンプ
「こいつ!」
ジロン
「第一あの日以来、お前とは……くっ!」
ティンプ
「がっかりしたぜ。見所があると思って逃がしてやったのに……」
チル
「っしょ!」
ジロン
「わぁぁっ!」
ティンプ
「ぐぁっ……!」
ジロン
「んっ、くそぉぉっ!」
「おぅっ……!」
ティンプ
「えぇいっ!」
ジロン
「あっ、うぅっ……!」
ティンプ
「諦めろ!」
ジロン
「待てぇぇっ!」
ホーラ
「発砲はするな!」
ジロン
「逃がすか!」
「このぉぉっ!」
キャリング
「何をしてる、早く故障を直さんか」
コトセット
「はい、はい、はい」
キャリング
「急ぐんだ! こんな事で、肝心な時に変形出来るのか?」