第7話 信ずるものは浮かばれる

前回のあらすじ
惑星ゾラと言われている地球。しかし人々は、ゾラという名前を忘れて久しい。
ジロン・アモスは、ティンプに操られたグロッキー一家と対決をした。
しかし、グロッキーはティンプにやられて終わる。摩訶不思議。
ティンプ・シャローンは何者か。
ティンプ
「話はこれで終わりだ。要するにビッグマンのお役に立てれば、あんたはもっと着飾れる」
「その美しさを何十倍にも出来るって訳さ」
ギャブレット
「話は分かるけどね。カーゴは商売敵だしさ。トラン・トランをけしかけてでもみるかい?」
ティンプ
「トラン・トラン?」
ギャブレット
「口を慎みな。トラン・トランは気が荒いからね」
ティンプ
「失礼。で、奴らは、あとちょっとで楽園に入る」
「んっ、アチッ! アチッ! アチチッ……!」
コトセット
「お前達、あれが見えなかったのか?」
ブルメ
「でもなぁ」
チル
「信じらんないよ、森や湖なんて」
ダイク
「写真でなら見た事あるけどな」
コトセット
「ガスの切れ目から確かに見えたんだよ」
「おい、お前も疑ってんのか?」
一同
「あぁっ……!」
ラグ
「こんなに緑が一杯じゃないのさ。凄い……」
チル
「これが森かぁ。へぇ〜」
ブルメ
「あんなオアシスがある……あんなでかいの、見た事ないぜ」
ダイク
「写真と同じだ」
ジロン
「わぁーっ、わぁーっ……」
ホッター
「んんっ……。ん?」
ジロン
「やっほ〜う!」
一同
「ははっ……!」
ラグ
「やっほ〜い! ははっ……!」
ジロン
「わっ!」
一同
「ははっ……!」
エルチ
「呆れたな。あんな単純な連中とはね」
プロポピエフ
「でもお嬢様、私もこれほどの景色を拝むのは久方振りです。実に美しい」
エルチ
「まっ、文化論的に考えれば、美しい物に心を動かされるってのはまだ救いがあるって事ね」
プロポピエフ
「あっ……」
「ひゃぁぁっ! お嬢様……!」
エルチ
「あぁっ……!」
ジロン
「ん?」
コトセット
「見ろ、大昔のウォーカー・マシンだ」
「わっ……」
「砲撃だ! 発進用意!」
エルチ
「駄目!」
コトセット
「でも、振り落とさなくっちゃ……」
エルチ
「ザブングル、発進させるのよ。ファットマン、機銃を撃って!」
ホッター
「ヘッヘッ……。こんなデカブツはこのワシが……ヒッヒッ……」
「ヒヒッ、図体ばかりでかくでも、何の役にも立たんわい」
エルチ
「ジロン、ハッチ開けるわ」
「コトセット、発進するわよ!」
コトセット
「分かってます」
ダイク
「ちゃんと撃てるのか?」
チル
「これでも鉄砲手よ」
ホッター
「そんなヘナヘナに当たるかい。ヒヒッ……!」
エルチ
「ちょっとあんた達。この船、穴だらけにする気?」
ラグ
「じゃあ、あんたやってご覧よ」
ブルメ
「中々、これで難しいんだぜ」
ホッター
「ヒヒッ……! 今度はここらを」
「ケッ、へなへなウォーカー・マシンが! この!」
「このぉーっ! このぉーっ!」
「くそぉーっ、くそぉーっ……」
ジロン
「何だこいつは?」
「あっ……」
ホッター
「ヒィッ、ヒィッ……」
ジロン
「あぁっ……」
「あっ……?」
チル
「どこも怪我はないよ?」
ブルメ
「歳だよ、歳」
ジロン
「何で、一人で攻撃してきたんだ?」
ラグ
「ロックマンなら当たり前だろ?」
「ロックマンがやたらに余所者を警戒するって時は……」
ダイク
「ブルー・ストーンか」
ブルメ
「ははっ、まさか……。緑がある所にブルー・ストーンがある訳はないんだぜ? ははっ……」
ラグ
「ふむ……」
「えいっ!」
「あぁっ……?」
ブルメ
「何だ? ラグ」
ラグ
「見てよ」
チル
「あっ……」
ブルメ
「あっ、ラグ」
ダイク、チル
「ラグ!」
ブルメ
「あぁっ……!」
ラグ
「ふぅっ……粗悪品」
ジロン
「本当か?」
ホッター
「触るんじゃねぇ!」
ジロン
「あっ、爺さん……」
ホッター
「横取りしようったってそうはいかねぇぞ! ヘヘッ……!」
ラグ
「冗談じゃないよ! 誰がこんなもん欲しがるかい。売り物にもなんにもならない、下の下じゃないか!」
「このぉっ!」
ホッター
「やっかましい! そんだけの量を精製すれば、大金持ちになれるんだ!」
「おっと、おめぇからやられてぇのか?」
「ひぃぃっ!」
ラグ、ダイク
「うわぁぁっ!」
トラン・トラン
「おわぁぁっ、ぐっ……!」
 〃
「ホホッ……!」
ホッター
「トラン・トランの奴らだ」
ラグ
「トラン・トラン?」
ブルメ
「あんなのがまだ居たのか」
ジロン
「爺さん一人じゃ無理だ。ここは俺達に任せな」
ホッター
「黙れ、黙れ! 奴らを甘く見んな!」
ラグ
「ふっ、無理するなって」
ブルメ
「反撃と行こうぜ」
一同
「よーしっ……うわぁぁっ!」
ホッター
「ヒヒッ……!」
ジロン
「いててっ……」
ホッター
「おめぇ達の始末は後でしてやる。トラン・トランの日干しの刑にならんだけでも有難いと思いな!」
ジロン
「おい、爺さん……!」
ホッター
「けっ、餓鬼共……」
トラン・トラン
「あぁーっ!」
ホッター
「ひゃぁぁっ!」
「このっ!」
トラン・トラン
「あっ……」
「ヒャホーッ!」
ホッター
「触るんじゃねぇ!」
ジロン
「爺さん、開けろ!」
ブルメ
「やられたんだ」
ダイク
「肩、乗れ」
トラン・トラン
「ん? ホホッ……!」
ダイク
「奴ら、出てったみたいだぜ」
エルチ
「大丈夫、怪我はないわ。でも、石は残らず持っていかれたようよ?」
ラグ
「ジル・ホッター、ダミアン・ホッター、アンナ・ホッター」
チル
「ミオ・ホッター。ねぇ、これ5つぐらいの子供だよ?」
ダイク
「みんな、あのトラン・トラン共にやられたんだな」
ブルメ
「こんな土地にしがみ付いてて、何になるんだよ」
ラグ
「屑同然の石の為にね……」
ジロン
「そんなに大事なのかな、ブルー・ストーンがさ」
「俺の親父も、ロックマンになってから死んでったんだよな」
ホッター
「えぇい、離せ! 石を取り戻しに行かにゃ……!」
エルチ
「だから言ってるでしょ? 貴方のマシンは修理中だって」
プロポピエフ
「それに石ならご安心、ジロン達が取り返しに行きましたから」
ホッター
「何だと? 何の為に?」
プロポピエフ
「そりゃ、あんたの為でしょう」
ホッター
「何故だ、えぇ?」
プロポピエフ
「知りませんがね。変な連中でね、一度何かに拘ると一生拘るようですね」
「文化的な考え方ってんですって」
ホッター
「ヒヒッ……! 他人の為に何かをするなんてブレーカーや宿無しが居るもんかい!」
「おめぇらこそ変じゃねぇのか? ふんっ!」
「えぇいっ!」
ホッター
「コノヤロ! 俺のマシンに手を出すな! 触るな!」
コトセット
「あいたっ! くそぉっ……」
「うわぁっ、あぁっ……!」
「直してやったんだぞ! 礼ぐらい言え!」
ホッター
「ベーッ、だ!」
「騙されやしねぇぞ、ワシは近道を知ってるんだ。餓鬼共め……!」
ホッター
「ヘヘッ……! これしきの待ち伏せ!」
「うぅっ……!」
トラン・トラン
「ホホッ……!」
ホッター
「ぬぅっ、わぁっ……!」
「さぁ殺せ、もう殺せ! 構う事はない、好きにしろぉぉっ!」
チムニー
「好きにするぞ、ホッター!」
ホッター
「何?」
チムニー
「お前は、石を取り返しに来たのか?」
ホッター
「んっ、当たりめぇだ。おめぇらに殺された家族が命懸けで掘った石だ。ワシの命だ、返してもらう!」
チムニー
「よし、ホッター。返してやろう」
ホッター
「何で?」
チムニー
「我々は情け深いのだ」
ホッター
「嘘吐け!」
チムニー
「今嘘ではない!」
ホッター
「後で嘘吐くだろ!」
チムニー
「そうだ!」
ホッター
「ペッ!」
チムニー
「おっ……」
「野郎!」
「言う事を聞けば、ずっと嘘ではないぞ?」
ホッター
「ぬぬっ……」
ホッター
「何だと? おめぇらも騙されてた?」
チムニー
「そうだ。石を奪えば酒をくれると約束した」
ホッター
「そうだったのか。ワシを救う振りなんかしやがって、あの餓鬼共」
チムニー
「青いマシンがここに来て石を持っていった。だからここにはない」
ホッター
「お互い、まんまと騙されたって訳か」
「おい、縄を解いてくれ」
チムニー
「お前は我々を信じるか?」
ホッター
「ワシャ、誰も信じねぇ! ヒヒッ……!」
「だが、おめぇらには手出しはしねぇ」
「見ていろよ、奴らを叩きのめしてやるからな」
チムニー
「お前の機械は古い」
ホッター
「そりゃ、そうだがな」
チムニー
「いい道具がある。それをお前の機械に付けると、うんと強くなるぞ」
ホッター
「こりゃ、ビーム・スナッチャーじゃねぇか。このパーツは10年前に製造中止になった筈だ」
チムニー
「トラン・トランは物持ちだ。昔の物も沢山ある。商売の為だ」
ダイク
「不味い事になってきた」
ブルメ
「早く引き上げた方がいい」
チル
「ジロン……わっ!」
「あぁっ……ジローン!」
「ひぃっ、わぁぁっ……!」
ジロン
「んんっ……!」
ラグ
「あそこ……?」
「何よ、何よ?」
ホッター
「待ってたぜ、青いの!」
ラグ
「爺さん! 私を相手にする事ないでしょ? トラン・トランはどうしたのさ?」
ホッター
「よくも抜け抜けと……何を言うか! ブルー・ストーンをかっぱらっておいて!」
ラグ
「ジローン! どこに居んのよぉー!」
ホッター
「ヘッ! ワシを騙したバチが当たったんだよ、ヘヘッ……!」
チル
「あっ!」
ジロン
「あっ!」
ダイク
「あっ!」
ジロン
「んんっ……」
チル
「いててっ……急にお腹痛くなってきたぁ」
ブルメ
「チル、見え見えだぜ。そんな芝居にこいつらが引っ掛かるもんか」
ジロン
「いや、案外いけるかもよ?」
「たぁっ!」
トラン・トラン
「わぁっ!」
チル
「当ったりぃ〜」
トラン・トラン
「うわぁっ!」
ダイク
「てぇいっ!」
チル
「わ〜!」
ダイク、チル
「大成功!」
ジロン
「喜んでる場合じゃないぞ」
「こっちだ」
ダイク
「……行ったな」
チル
「ねぇ、見て? これ爺さんのブルー・ストーンだよぉ」
一同
「え? おぉっ……」
チル
「よいしょっ……。ほら!」
ジロン
「トラン・トランめ、結局は爺さんを騙して、俺達と戦わせるだけだったんだ」
「やり口が汚い……汚すぎる!」
ダイク
「こりゃ、トラン・トランの知恵じゃないな。裏で糸を引いてる奴が居るぞ」
ブルメ
「そいつは同感だ。誰だと思う?」
ジロン
「決まっているよ。ティンプだ、あの殺し屋のティンプだ。そうでなけりゃ、こんな汚い手は思い付くもんか」
「ホバギーだ。爺さんを追い掛けよう」
ホッター
「ヒヒッ……!」
ラグ
「あれま!」
「わぁぁっ……!」
ジロン
「ラグ!」
「わぁぁっ!」
「ラグ、開けろ!」
ラグ
「ジロン!」
ホッター
「二人になっても、ウォーカー・マシンの数が増える訳じゃなかろう!」
ジロン、ラグ
「わぁぁっ……!」
ダイク
「爺さん、ブルー・ストーンだ!」
ブルメ
「トラン・トランが隠してたんだ」
ジロン
「この分からず屋が……!」
ホッター
「ぐぅっ!」
ジロン
「爺さん、見ろよ。確かにあんたのだろ?」
ホッター
「あぁ、そうだ」
ジロン
「あんたは利用されてんだ! 目を覚ませ!」
ホッター
「ワシャ、ワシの考えでやった! 誰にも利用なんかされとらん!」
ジロン
「一人ぐらい信じたっていいだろう?」
ホッター
「ワシのブルー・ストーンだ。確かにワシのだ。ヒヒッ……!」
ジロン
「よーし、爺さん。敵は?」
ホッター
「あっちか」
トラン・トラン
「うわぁぁっ!」
ホッター
「ヒヒッ……!」
チムニー
「ホッター! 青いのに止めを刺せ!」
ホッター
「もう騙されんぞ!」
トラン・トラン
「うわぁぁっ!」
チムニー
「逆らうと吹っ飛ばす! お前のマシンには物騒な物を取り付けてある!」
ホッター
「何ぃ?」
チムニー
「こいつめ!」
ジロン
「しまった! ホッター、脱出しろぉ!」
ホッター
「トラン・トランめ、ホッター一族の最後の一人が野垂れ死になんかするもんか……!」
チムニー
「うわぁぁっ!」
ジロン
「しっかりしろ、爺さん」
ホッター
「おめぇ、本当にワシを信じとったのか……」
ジロン
「当たり前じゃないか。あんたが石っころを信じてたようにね」
ホッター
「ふっ……」
ジロン
「違うのか?」
ホッター
「もう駄目だ。なぁ、向こう向かせてくれ」
ジロン
「さぁ……」
ホッター
「どうだ? 楽園の眺めは……」
ジロン
「うん、綺麗だ」
ホッター
「信じられるか? これを……この楽園を作ったのは、ワシだって事をさ……」
ジロン
「爺さんが?」
ホッター
「ブルー・ストーンのある所に緑はないと云われてるだろ。ありゃ、イノセントの作った迷信だったのさ……」
ジロン
「ん? 爺さん……おい、爺さん!」
ティンプ
「全滅かよ」
ギャブレット
「トラン・トランは他にも居るわ。今回はちょっと遊んでみただけ」
ティンプ
「女の突っ張りは大概にした方がいい」
「このサンプル、分析の結果、上物で出た」
ギャブレット
「何で、あんな所に?」
ティンプ
「そんな事は知らん。知らんがこの謎、イノセントに報せる必要がありそうだな」
ギャブレット
「はっ……今なんて言った? ティンプ」
ティンプ
「何もかも、あの餓鬼共の物になった訳だ。ふんっ、悔しくねぇのか?」
ギャブレット
「んっ……えい! あっ、悔しい……!」
ジロン
「自分の手で作った楽園に家族と一緒に眠るってのも、いいんじゃない?」
エルチ
「へぇ、ジロン。意外と文化的な事、言うじゃない?」
ジロン
「あったりまえじゃないか。問題なのは、あの楽園がブルー・ストーンの鉱脈の上にあったって事だ」
「そっちの方に興味を持つな」
ラグ
「同感だね。ブルー・ストーンのある所には緑がないって、イノセントが言ってんだろ?」
ダイク
「それがそうじゃないって事か」
ブルメ
「イノセントの言う事が間違ってるなんて、信じられないぜ」
ジロン
「どういう事かな」
ラグ
「さぁ……」
エルチ
「緑のない所にブルー・ストーンがあるって事……」
ラグ
「緑は生えないって言われてたのよ?」
エルチ
「変じゃない」
ラグ
「変よ。すご〜く、変!」
エルチ
「そう、変だわ!」
ラグ
「本当に変よ!」
エルチ
「本当に変ね!」
ラグ
「本当だわよ!」
エルチ
「少し、変なんじゃない?」
ラグ
「どっちが変よ!」
エルチ、ラグ
「あんたじゃない! あんたよ! あんたが変なの!」
ギャブレット
「私が出れば、変じゃなくなるわよ?」