第9話 花は野に咲けマリア花

前回のあらすじ
惑星ゾラと言われている地球。しかし人々は、ゾラという名前を忘れて久しい。
ジロン・アモスは、孤児達を守って生活するマリアの為に戦った。
戦いはいけないというマリアの誤解を解く為に、ジロン・アモスは戦う以外、方法を知らなかった。
その誤解が解けた時、マリアは美しい髪を切った。
荒野に咲く白い花一輪、永遠に咲けよマリア花。
荒くれ
「おい、待ってくれ。ほら餞別だ」
 〃
「美味そうだなこりゃ、ありがとよ」
 〃
「生きてろよな!」
 〃
「お前もな」
チル
「ねえ、帰ろうよもう」
ジロン
「うん……」
チル
「次のバザーで捜したら? ここには居ないってば、ティンプは」
ジロン
「あぁ」
プロポピエフ
「ほれほれ、さっさと片付けないか」
荒くれ
「ミミ……」
ミミ
「あたい、あんたのカミさんには向いてないよ」
プロポピエフ
「ミミ、何やってんだ! テント畳むぞ」
ミミ
「うん、今行く!」
コトセット
「下手糞が! それでもブレーカーか!」
「次!」
ブルメ、ダイク
「ははっ……!」
コトセット
「ええい、もう一度やってみろ! もう一度!」
ダイク
「何人雇う気かな?」
ブルメ
「さぁな。ランド・シップ同士の戦いとなると、俺達だけじゃ心細いからな」
ラグ
「ほらよ」
「一杯入れときな。いつギャブレットやビッグマンが襲ってくるか分かんないんだから」
ハイヤ
「そりゃそうだけどね」
コトセット
「次!」
エルチ
「見付かったの?」
チル
「そう簡単には見付かんないよ」
ジロン
「あのブレーカー達か?」
エルチ
「えぇ、まとめて雇う事にするわ」
ジロン
「どこの誰とも分かんない連中すぎないか?」
エルチ
「ジロンもその口だったんでしょ?」
ジロン
「イノセントの上納ポイントへは、ルートを変えて行けないのか?」
エルチ
「ギャブレットが待ち伏せしているというんなら、コースを変えても来るわよあの年増女」
コトセット
「次!」
ジロン
「へぇ〜、やるじゃない」
エルチ
「使えるわ」
工作員
「へへっ……餓鬼共の所に入り込むなんざ、簡単なもんよ」
ジロン
「どうも分かんないな」
チル
「何が?」
ジロン
「ギャブレットの奴、どうしてこうまでアイアン・ギアーを狙うんだ? 今度はビッグマンも付いてるという」
チル
「教えてあげようか?」
ジロン
「チルには分かってんのか?」
チル
「女心ってね、複雑だからよ。分かった?」
ジロン
「分かった」
チル
「わっ……!」
ジロン
「ん?」
チル
「どうしたの?」
エルチ
「そろそろ来る筈よ、あの年増女。全員、だらけないで!」
コトセット
「第一砲座、機関砲座内、いいか?」
ブルメ
「OK、OK」
マーレ
「いつでもいいよ」
ハイヤ
「どうぞ」
ガルロ
「いつでも飛び出せるぜ」
コトセット
「年増女といっても、侮れないぞ?」
ダイク
「特に自分より若い女と見りゃ、目の色変えてくる」
エルチ
「そう。自分より美しい女性に会った時もね」
ダイク
「そうね」
エルチ
「だから気を付けなくっちゃ」
一同
「あっ……」
工作員
「動くな!」
ダイク
「『下手に動くと風穴が空く』……」
工作員
「へへっ、その通りだ。よく分かったな?」
エルチ
「パターンでしょ?」
工作員
「ナイフもガン・ベルトも外せ」
「時間稼ごうったって意味はないぜ」
ジロン
「……ブルメに知らせるんだ」
チル
「うん」
ジロン
「しぃっ……」
雇われ
「一体全体、何だっつんだよ? あいつら」
 〃
「ギャブレットの手下だろ、恐らく」
プロポピエフ
「何だかやけに騒がしいね」
ローズ
「運動会でもやってんでしょ。ほら、あんたの番でしょ」
ジロン
「俺とブルメでブリッジの連中を助ける。お前らはプロポピエフに応援を頼め。こっちの味方は少ないんだ」
工作員
「上手くいってるぞ。殆どの箇所は押さえた」
 〃
「呆気なかったな」
 〃
「全くだぜ。間抜けな奴ばっかりだ」
一同
「ははっ……!」
ルル・ミミ・キキ
「えぇっ……!」
プロポピエフ
「アイアン・ギアーが、ギャブレットの手下に乗っ取られた?」
ローズ
「あんた! 降参しましょう。こういう時は降参するのが一番よ」
ガルロ
「そらよ」
「冗談じゃない。あんた達も手を貸すんだよ!」
プロポピエフ
「え? ワシらが助太刀?」
ローズ
「馬鹿をお言いじゃないよ。踊り子に鉄砲持たせてどうしよっつんだい?」
ハイヤ
「あぁそう、そうなの? ギャブレットのブレーカー達は、腕試しにお宅らを蜂の巣にしたがってるようだけど?」
プロポピエフ
「ワ、ワシらを蜂の巣に?」
ローズ
「あんた、男ならこういう時は戦うべきよ」
プロポピエフ
「ワシ一人で?」
ミミ
「そうよ。だって私達、銃の扱い方得意じゃないもの」
マーレ
「ショット・ガンなら簡単よ。弾込めて引き金引くだけでいいんだ」
ミミ
「ふ〜ん……こう?」
一同
「わわわっ……!」
ガルロ
「そ、そうだよ……」
チル
「1・2・3……!」
ジロン
「それっ!」
「ていっ、たっ!」
チル
「わぁっ!」
ブルメ
「えいっ!」
工作員
「ぐわぁぁっ!」
ブルメ
「決まった……へへっ!」
工作員
「動くな! 動くと撃つぞ!」
ジロン
「ほい!」
エルチ
「ごめん!」
ラグ
「同じく!」
ダイク
「どうも、どうも!」
工作員
「わぁぁっ!」
ガルロ
「行くぞ!」
キキ
「や〜ん!」
ブルメ
「急げ!」
ガルロ
「こっちだ、こっち! 急げほら!」
一同
「うわっ!」
工作員
「居たぞ!」
ジロン
「あっ……参った!」
ローズ
「あんた……」
工作員
「ん?」
ローズ
「ふふっ……」
工作員
「うわぁぁっ!」
チル
「ふふっ、決まったね」
一同
「あぁっ……!」
ジロン
「どうしたんだ、一体?」
エルチ
「どいて」
「そっか……さっ、手伝って」
ガルロ
「開いた!」
プロポピエフ
「それっ!」
ガルロ
「ほら」
ブルメ
「来るぞ!」
エルチ
「悪くない所に飛び込んだわ」
ミミ
「ねぇ、この大金庫、何? 何が入ってるの?」
エルチ
「見たい?」
「んっ……」
一同
「あぁっ……!」
ミミ
「凄いブルー・ストーンの山……」
ガルロ
「はぁ、あるとこにはあるもんだな」
ダイク
「最高の目の保養だ」
エルチ
「だから、私達がここに居る限り、彼らは迂闊には手が出せないって訳」
ラグ
「ブルー・ストーン様々だよ」
一同
「うわっ!」
ジロン
「船が……しまった!」
「ギャブレット……!」
工作員
「ギャブレット様!」
ラグ
「ん? 年増女が……」
ジロン
「あっ……」
「ティンプ!」
「んっ、くっ、わぁぁっ!」
「来ちゃったか! いてぇ……」
ギャブレット
「エルチ・カーゴは? それから、あの小娘ラグ、ジロンとかいうのは……」
工作員
「へい、まだこの下で頑張ってます」
ギャブレット
「まだ制圧出来ないのか」
ティンプ
「ふふっ……全くだらしねぇな。これだけの大人が揃っててよ」
ギャブレット
「言われたってしょうがないでしょ?」
工作員
「しかし、こんな溝鼠野郎に言われる事はないんだ。俺達は一生懸命やってるんだから」
ギャブレット
「一生懸命でもちゃんとやってなきゃ、努力は認められないの!」
工作員
「はい」
ギャブレット
「ビッグマン様」
ビッグマン
「ギャブレット・ギャブレイ、何故お前がまたアイアン・ギアーに居るのだ? ワシに攻撃を任すのは不服なのか?」
ギャブレット
「この船の小娘達には私も貸しがあるのです」
「攻撃地点に行くまで、必ず私がこのランド・シップを始末してご覧に入れますから、お待ちを」
ビッグマン
「ブルー・ストーンも手に入れられるか?」
ギャブレット
「はい、私の面子に賭けて」
ビッグマン
「ふふっ、聞き飽きた台詞だな」
ギャブレット
「いえ、私の美貌に賭けても」
ティンプ
「ひひっ……!」
ビッグマン
「ま、信じよう」
ティンプ
「すまなかった、マダム・ギャブレット」
ギャブレット
「ミス・ギャブレット!」
雇われ
「あぁっ……!」
ティンプ
「ふふっ……」
ギャブレット
「エルチ! エルチ、それからラグ、ジロンも聞こえるだろ?」
ジロン
「どういうつもりだ?」
ギャブレット
「お前達三人と捕虜の交換だ。出て来なければ一人ずつ殺す」
ジロン
「どうする、ラグ?」
「エルチ……」
エルチ
「う〜ん、三十女の恨みは怖い。人質とブルー・ストーンの交換ならOKしてもいいわ」
一同
「えぇっ?」
ジロン
「本当かよ」
ローズ
「だからさっき、さっさと降参しときゃ良かったんだよ」
ラグ
「今からじゃ遅いかしら?」
ダイク
「完全にね」
ジロン
「捕虜とブルー・ストーンの交換ならOKだ! マダム・ギャブレット!」
ギャブレット
「ミス・ギャブレット!」
工作員
「ちょ、ちょっと待った。本当かそれは?」
ジロン
「本当だ。一人につき、1ギニオンスの袋一つだ」
工作員
「1ギニオンスといや、ひと財産だぜ。OKしろよ」
 〃
「マダム、こいつは悪くない話だ。早く返事を」
ギャブレット
「ミス・ギャブレット! 私はあの小娘達と交換する」
工作員
「マダム……!」
ギャブレット
「ミス!」
「さもなきゃ、あの中に鉛の弾をお見舞いしてやるんだ」
ジロン
「どうするんだ? ブルー・ストーンと交換したくないのか?」
工作員
「マダム……」
ギャブレット
「ミ・ス! もうっ……!」
ジロン
「へへっ、大分ふらついてるみたいだ」
ラグ
「そりゃそうよ。命より大事なブルー・ストーンを交換するなんて、誰も思わなかったろうよ」
「エルチ、あんた文化的ね」
エルチ
「本気よ、私」
チル
「ブルー・ストーン要らないの?」
エルチ
「私には、何の役にも立たないもん」
工作員
「もう我慢できねぇ!」
ギャブレット
「何するのさ!」
工作員
「分かってるだろう。小娘達とブルー・ストーンのどちらが大事か」
ギャブレット
「何するのさ、お放しよ! 放せったら!」
工作員
「話はOKだ。一人一袋、間違いないだろうな?」
ジロン
「間違いない!」
工作員
「よーし、じゃあまず最初の一人だ。ついでにこの女もくれてやる」
ギャブレット
「この裏切り者が……!」
ギャブレット
「あっ……!」
ブルメ
「ははっ……!」
ラグ
「どうしてやろうかね? 年増女」
「ふんっ!」
ギャブレット
「あっ、あぁっ……!」
チル
「ふふっ……」
ギャブレット
「はっ……!」
「あっ……」
一同
「ははっ……!」
ギャブレット
「あ、ははっ……」
工作員
「見ろ、間違いない。ブルー・ストーンだ」
 〃
「触るな、誰も触るんじゃねぇ。早く交換するんだ」
ギャブレット
「さぁやっとくれ。お殺しよ、殺すんならさっさとお殺し。さぁやっとくれよ」
ジロン
「殺しはしないから、落ち着きなよ」
ギャブレット
「お前らに情けを掛けてもらうほど、落ちぶれてはいないよ」
ジロン
「何でだ? 何で、お前の所にティンプが居るんだ?」
ギャブレット
「そんな事知らないね」
ジロン
「じゃあ、ビッグマンとティンプとの関係は?」
ギャブレット
「知らないね。私がお前らを消せば、パープル・キャットを私の名義にするってビッグマンが約束してくれただけさ」
ジロン
「そういう事か」
ギャブレット
「ふふっ、それにもうすぐこのアイアン・ギアーは、ビッグマンの艦隊に粉々にされるわ」
「あんた達だけで守りきれる? 私を助けてくれたら手を打つわよ? ビッグマンに攻撃するなってね」
エルチ
「分かるもんですか」
ティンプ
「おい、ビッグマンの艦隊に信号を送れ」
工作員
「はっ!」
ジロン
「袋の鼠か」
ラグ
「見て」
ブルメ
「くそっ!」
ラグ
「ブルメ」
工作員
「わぁぁっ!」
ブルメ
「ちぇっ……」
ジロン
「脱出が始まったんだ」
ギャブレット
「もうお終いね。いよいよビッグマンの標的になるという訳よ?」
エルチ
「どうするの、ジロン?」
ブルメ
「でも、こんなに居たんじゃな……」
ジロン
「よーし……それっ!」
「ビッグマンに勝つチャンスは、アイアン・ギアーを戦闘ロボに変えるしかなさそうだな」
ハイヤ
「あっ! 危ない、ラグ!」
ラグ
「あっ……!」
エルチ
「くっ!」
ブルメ
「この野郎!」
ラグ
「およしよ、相手はもうボスじゃないんだ」
「ダイク!」
「みんな、各砲座へ急ぐんだ。撃ってくるよ!」
ギャブレット
「はっ……ビッグマン……」
雇われ
「ティンプからの連絡です。間もなくアイアン・ギアーから離脱するそうです」
ビッグマン
「ギャブレットはどうした?」
雇われ
「また、失敗したようです」
ビッグマン
「ふふっ……射撃訓練の的にでもしろ」
雇われ
「はっ! 全砲手、射撃用意!」
ジロン
「ティンプ……!」
ティンプ
「そろそろ始めてくれ。一分経ったら総攻撃だ」
「んっ……?」
ジロン
「んっ!」
ティンプ
「ていっ!」
ジロン
「あっ……」
ティンプ
「ふふっ……小僧、また会ったな。これでお前もいよいよ最後だ」
「くっ!」
ギャブレット
「ティンプ! 出て来い、ティンプ!」
「あっ……!」
ティンプ
「うぉぉっ!」
ギャブレット
「あっ!」
ジロン
「とぉっ、くっ……!」
ギャブレット
「ティンプ!」
工作員
「急げ! 総攻撃が始まるぞ! 急げぇ!」
「わぁぁっ!」
ティンプ
「たぁぁっ!」
ギャブレット
「ティンプ! 裏切り者!」
工作員
「わぁぁっ……!」
ギャブレット
「お前が現れてから、何もかも滅茶滅茶だ! 許さないよ……あっ、あぁっ……!」
「ティンプ……!」
ギャブレット
「ティンプ……!」
「ラ、ランド・シップが……私のランド・シップが、燃えていく……」
ジロン
「うわっ、んっ……?」
ギャブレット
「ティンプ……ティンプ……!」
「ティンプ、お前が悪いのだ何もかも。お前が悪いのだ! お前が悪いのだ! ティンプ!」
ラグ
「あれが、ハイ・ミスの姿なのね……」
ビッグマン
「ふっ……」
ラグ
「勝ったわ、一回戦目」
コトセット
「まだまだ……油断は出来ない」
エルチ
「ジロン、戻ってよ! ビッグマンとの戦いは始まったばかりなんだから」
ジロン
「ティンプだ! 今度こそは、どんな事があっても追い詰めてやる!」