第17話 役者やのォで大勝負

前回のあらすじ
あらゆる支配を、イノセントという特権階級に押さえられている、惑星ゾラ。
しかし人々は、それを何の不思議もなく受け止めていた。
アイアン・ギアーを抜け出したジロン・アモスを待っていた、ハナワンの待ち伏せ部隊。
美少女ムーナと話す間もなく、多勢無勢に歯が立たず、戦士に追われて逃げに逃げますハナワンの島。
右に左に、上に下に、迷路のような洞窟の危機一髪を切り抜けて、挙句の果てのホーラの攻撃。
いつまで続くか泥の海。
ブルメ
「岩礁接近、左に切れ」
エルチ
「馬鹿ね、右よ」
ブルメ
「ソナーで確かめてんだ」
ダイク
「いっぺんに、右にも左にも行けるかよ」
エルチ
「ソナーなんて嘘っぱちなのよ」
ブルメ
「なら、何でこんな物あるんだよ? イノセントの作ったもんだろ?」
エルチ
「コトセットが使えるように整備してくれないのよ」
コトセット
「整備しても使えない物ってあるんです」
ラグ
「イノセントだって完璧じゃないって事さ」
「イノセントに剣突食わされた事、忘れたの?」
エルチ
「私が手形ちゃんとしなかったからなのよ」
ラグ
「この文化マニアが!」
エルチ
「イノセントは間違ってないわ!」
ラグ
「ええいっ!」
ジロン
「わっ、何だ?」
エルチ
「そら見なさい! あんたが分からない事言うから」
ラグ
「それはあんたでしょ? 艦長らしくやってれば……」
コトセット
「水が入ってるぞ!」
エルチ、ラグ
「えぇっ?」
ダイク
「コトセット、前の方のホバー・ノズルがやられただけじゃないのか?」
コトセット
「あぁ。あの辺は砲撃をもろに食らってるからな」
ブルメ
「お尻の方に傾いているんだぜ。このままだったら後ろから沈んでしまう」
ダイク
「理屈だな」
ラグ
「ドジ! ホーラが攻めてきたらどうすんのよ?」
エルチ
「ごめん」
ラグ
「遅いわい!」
エルチ
「……ふんっ」
プロポピエフ
「四、五時間は止まるんでしょ?」
ジロン
「そうだよ」
プロポピエフ
「ほらほら、出た出た」
ローズ
「キャーッ!」
ジロン
「何だ?」
プロポピエフ
「稽古。次のバザーで少しは稼がないとね」
ローズ
「たまには力一杯踊らなくちゃね」
「行くよ」
ルル・ミミ・キキ
「3・4……キャッホーッ!」
雇われ
「来たぜ」
ホーラ
「ん?」
ゲンナ
「こちらの支度はまだ出来てないようですな」
ホーラ
「心外だな。我々とてウォーカー・マシンの補給を待ち、修理に全力を挙げているんだ」
「それに、こうして体も鍛えている」
ゲンナ
「アイアン・ギアーが座礁した」
ホーラ
「座礁? 絶好のチャンス到来だな」
ゲンナ
「総攻撃を掛ける。今度こそ奴らを叩きのめすつもりだ」
ホーラ
「その意気だな。我々も共に参りますよ」
ゲンナ
「ホーラ様」
ホーラ
「ん?」
ゲンナ
「勝利の暁には必ず、我らの聖地へ案内していただきたい」
ホーラ
「勿論だ」
ゲンナ
「その言葉に表裏ある時は、宜しいかな?」
ホーラ
「あぁ、好きにしてくれ。ふふっ……」
「……その気合いで仕留めてほしいものだな」
ゲラバ
「そうすれば、アイアン・ギアーもやれて……」
ホーラ
「イノセントの言う、ハナワンの根絶やし作戦も進められるというものさ」
ゲラバ
「あぁ、ほんじゃエルチは諦めたのか? 兄貴」
ホーラ
「ふん、馬鹿……ちゃんとやるわい」
ゲンナ
「ホーラがどのような男であろうと、この憂きしな生活から抜け出て緑の大地へ、ハナワンの新たな文化を拓かせる」
「それは、私の長としての務めだ」
「ハナワンの戦士達よ、今や時が来た。敵は我らの手の中にある」
「アイアン・ギアーの中にある秘密の本を手に入れる為、髪の長い女だけは殺すな。後は全て叩け!」
「今、立つのだ! ハナワンの聖地と、かつての栄光を手に入れる為に!」
ハナワン族
「うぉーっ!」
ゲンナ
「行けっ!」
ハナワン族
「……恐ろしい事じゃ。雷がハナワンに落ちる……」
ムーナ
「ゲンナ、ゲンナ!」
ゲンナ
「ムーナか」
ムーナ
「あの人達は敵ではないのです!」
ゲンナ
「このハナワンの戦士達の、気力に満ちた熱気の分からぬムーナでもあるまい」
「私は、ハナワンの長としての務めを果たすだけなのだ」
ムーナ
「ゲンナ……あっ!」
ゲンナ
「出撃に遅れるぞ! ムーナは女達に任せろ!」
ハナワン族
「はっ!」
ゲンナ
「ムーナは、女達と島を守れ!」
ムーナ
「……ゲンナ。貴方が、貴方がそうならば……」
ハナワン族
「ムーナ様、どちらへ?」
ムーナ
「敵艦に一番乗りをします」
「嫌なら、私一人で行きます」
プロポピエフ
「はい、ぱっぱっと……。違う違う! ここ片足上げるだけじゃ駄目! 両足をぱっと……いい?」
「ちょっと! そのやかましいの、やめてくれませんか?」
ジロン
「何だと? 船にはまだ水が溜まっているんだ! 掻き出してこい!」
ハナワン族
「ご覧ください、穴だらけです」
「ここから入りましょう、ムーナ様」
プロポピエフ
「いいかね? 排水ポンプのスイッチをだ」
ローズ
「何でこんな……きゃっ!」
プロポピエフ
「え? ハナワン……!」
ローズ
「きゃっ!」
チル
「どこだ? これか、あっ……?」
「緊急報告! プロポピエフのとこにハナワンが侵入したらしい!」
ジロン
「ハナワン?」
コトセット
「何だと?」
ブルメ
「どこだ?」
ダイク
「この下のブロックだろう」
ルル・ミミ・キキ
「きゃあんっ!」
ダイク
「ラグ!」
ラグ
「向こうよ……あっ!」
ジロン
「へへっ、主人公だから……な?」
ハナワン族
「くっ……!」
ダイク
「おっ?」
ハナワン族
「あっ!」
ムーナ
「待って!」
ジロン
「待て、ダイク」
ムーナ
「待ってください、私達は話し合いに来ました」
ジロン
「話し合い?」
ラグ
「ハナワンがかい?」
ブルメ
「戦いのユニフォームを着てか?」
ジロン
「ムーナ、君か」
「傷の手当てをしてやれ、ダイク」
ダイク
「あぁ」
エルチ
「ジロン、誰これ?」
ラグ
「ハナワンの長の娘って子でしょ?」
エルチ
「ジロンを人質に取った?」
ジロン
「で、何でわざわざ君が?」
ムーナ
「貴方がたを殺しに来ました」
ジロン
「ははっ……今、話し合いに来たって言ってたじゃないか」
ムーナ
「確かめたいんです!」
ジロン
「え?」
ムーナ
「本当の敵かどうかを……」
ジロン
「あっ……」
ラグ
「んっ……」
ジロン
「よせ、手出しするな」
ラグ
「ジ、ジロン、でもさ……」
ジロン
「確かめさせてやるんだ。ダイクも手を出すな」
「貴方には撃てないよ、ムーナ」
ムーナ
「何故近付くの? 何故貴方は……そんなに優しい息遣いで近付いてこれるの?」
ジロン
「ムーナ……」
ムーナ
「何故貴方は、そうやってずっと優しくしていられるの?」
ジロン
「優しい? 俺が? 何言ってんだ、ムーナ」
ラグ
「ちょっとジロン、あんたこの子と何があったのさ?」
ジロン
「別に?」
ラグ
「嘘吐け!」
エルチ
「穏やかじゃないわよ、この子の言い方」
ジロン
「でも……」
ムーナ
「早く逃げて。ハナワンの総攻撃が始まるわ。ホーラ達も一緒よ」
ジロン
「総攻撃?」
ブルメ
「で、どのくらいの戦力なんだ?」
ムーナ
「恐ろしい事になるわ。私、その前に確かめたかったの。貴方達が本当の敵だったら……」
ジロン
「少しでもゲンナの力になろうとしたのか」
エルチ
「ふ〜ん、訳ありなのね」
プロポピエフ
「いや〜、泣かせますなぁ。愛する殿方の為、美しきヒロインは命を捨てて敵の虜に……」
「嗚呼、この悲しくも誇り高いドラマを、そのゲンナさんにお見せしたいものであります」
ブルメ
「黙れ、この場違い!」
プロポピエフ
「あらあら……どうして?」
ダイク
「ハナワンとホーラの大部隊が、一斉に掛かってきたら……」
ブルメ
「ザブングルだけじゃ防ぎ切れないぜ」
ラグ
「トラッドが、もう少し使えりゃいいんだけどね」
ジロン
「幕を降ろすのは早いさ。プロポピエフ、お前の出番だ」
プロポピエフ
「え?」
ジロン
「ムーナは敵に捕われて人質となる。それを知ったゲンナはどう出るか、その先の筋書きを作ってくれ」
ゲンナ
「どうだ?」
ハナワン族
「依然、動きはありません」
ゲンナ
「よーし、始めるか」
ハナワン族
「あ、待ってください。ちょっと変です。甲板に人が……」
ゲンナ
「何?」
「ムーナ……!」
ブルメ
「行くぜ」
プロポピエフ
「さっ、しっかりね、コトセット」
コトセット
「あー……こら聞いとるか、ハナワンの半魚人共」
プロポピエフ
「いい調子」
コトセット
「ムーナは貰った。攻撃出来るものならやってみるがよい」
「どうせ俺達は死ぬ身だ。その前に、ムーナを思い切り可愛がってやるか、ははっ……」
ゲンナ
「汚い! アイアン・ギアーめ」
ホーラ
「ゲンナ・ハラム、攻撃はどうした?」
ゲンナ
「攻撃は中止だ!」
ホーラ
「何だと? 一人の女の為に、民族の運命を捨てるというのか」
ゲンナ
「そうじゃない」
ホーラ
「では、私が攻撃するぞ」
ゲンナ
「待て、それは駄目だ!」
ラグ、ダイク
「ははっ……」
ダイク
「いや、驚いた。名演技だったね」
ラグ
「隠れた才能ね、コトセット」
コトセット
「人は見掛けによらないってな」
チル
「悪役が向いてんだよ、やっぱ」
エルチ
「でもこの先、筋書き通りに運ぶかしら?」
プロポピエフ
「あぁ、そりゃ劇作家としての私の洞察力にご信頼あれ」
ムーナ
「ゲンナ……」
ホーラ
「ふふっ……ゲンナの奴、女を助けに突っ込む気らしい」
ゲラバ
「二時間経ったら攻撃してもいいそうだ」
ホーラ
「そんなには待てんが、次の幕を楽しむとするか。ふふっ……」
ムーナ
「あぁっ! あぁっ!」
コトセット
「あ、痛かった? ムーナさん」
ムーナ
「大丈夫よ、コトセットさん……あぁっ!」
エルチ
「各砲塔はハナワンを近付けさせないように砲撃開始! 無駄弾撃つな! 近付けさせなければいいんだから!」
ブルメ
「分かってるよ! こっちはブリッジから主砲まで全力疾走だ! こういうの何とかならないの……わっ!」
エルチ
「ジロン! 作戦は開始されているのよ? 早く……!」
「あっ、抱き着くな!」
ジロン
「しょうがないだろ? 作戦の為には、ムーナをゲンナが侵入してくる所に置かなければ意味ないんでしょ?」
「な? プロポピエフ」
プロポピエフ
「そりゃそうです。ゲンナの侵入をこのブリッジまで許したら、アイアン・ギアーが危険になりますからね」
ジロン
「そら見ろ」
「ムーナさん、下まで降りてもらいます。もう少しの辛抱ですからね」
ムーナ
「大丈夫です、私は。すみません、エルチさん」
エルチ
「え? いえ……」
「キキ、ミミ、ルル! 左の機銃が撃ってない! ラグはどうしたの? むざむざハナワンの接近を許しちゃ駄目よ!」
ラグ
「ヒステリーを起こしてる暇があったら、あんたも撃ったら?」
ハナワン族
「し、しまった!」
 〃
「わ、罠か?」
ゲンナ
「しまった……こうなったら死なば諸共。せめてムーナの姿を見届け、この船から脱出させて……」
ムーナ
「やめてください!」
コトセット
「ええい、白状しろ! お前らの隠れ家はどこなのだ?」
ムーナ
「あぁっ!」
コトセット
「しぶとい奴め! とりゃぁぁっ!」
ムーナ
「あぁっ!」
コトセット
「白状せんのなら、泣くがよい! 喚くがよい! ははっ……!」
プロポピエフ
「ファットマン、そんな飲んじゃ駄目よ。これお芝居なんだから、雰囲気だけでいいの」
コトセット
「そりゃっ!」
ムーナ
「あぁっ! あぁっ!」
コトセット
「ははっ……女、喚け! 泣け!」
「うわっ!」
ゲンナ
「動くな!」
「ムーナ、怪我はないか?」
コトセット
「こ、この野郎! この……っと!」
「あたっ!」
プロポピエフ
「いてっ!」
ゲンナ
「ムーナ!」
ムーナ
「ゲンナ様、よく来てくださいました!」
ゲンナ
「ムーナは、ハナワンの血筋を正しく継ぐ者だ。誰が見捨てるものか」
ムーナ
「ゲンナ様、ありがとうございます」
ゲンナ
「急ごう。仲間が総攻撃の合図を待っている。何としてもここを突破して……」
ムーナ
「ゲンナ様、この船の人は敵ではありません。まだ分かりませんか?」
ゲンナ
「何だと? 今の今までお前は鞭で打たれて……」
ムーナ
「私の体を見てください。どこが傷付いています?」
ゲンナ
「ん?」
ムーナ
「みんな、貴方を誘き寄せて分かってもらう為のお芝居だったのです。あの方のストーリーです」
プロポピエフ
「ははっ、そうなんですゲンナ・ハラムさん。貴方とお話し合いがしたくって……」
ゲンナ
「ムーナ、お前は私を裏切ったのか?」
エルチ
「そんな言い方ないでしょ?」
ゲンナ
「女……!」
ジロン
「動くなよ、ゲンナ・ハラムさん。銃を降ろせ」
ゲンナ
「わっ!」
ジロン
「いい加減で、ムーナさんの言ってる事を信じてやったらどうなんだ?」
チル
「そうだよ、ムーナさんが可哀想だよ」
エルチ
「ホーラにどう言い包められたか知らないけど、ハナワンの聖域の事を本当に教えてもらえると思っているの?」
ゲンナ
「男同士の約束だ。女には分からん」
エルチ
「ホーラは余所者でしょ? 流れ者のブレーカーよ? 当てになるもんですか!」
ジロン
「俺達は、ずっと前のホーラも知っている。今の奴は、イノセントに使われている仕掛け人かもしれないんだ」
ゲンナ
「ホーラは我々にイノセントのマシンを安くくれたのだ。お前達の持っている本を手に入れる為にな」
ジロン
「そんなもん知らないって言ってんだろ?」
ゲンナ
「ホーラはあると言った!」
ムーナ
「ゲンナ、貴方は騙されているのよ」
ゲンナ
「女は口を出すな」
エルチ
「ちょっとゲンナさん……」
ゲンナ
「何だ?」
エルチ
「ええい、さっきから女、女って、気に入らないわね!」
ゲンナ
「これがお前ら種族の女なのか?」
ジロン
「ん、まぁね」
ゲンナ
「哀れだな、お前ら……」
ジロン
「こういう女も居る」
チル
「女の端くれ」
ゲンナ
「子供は男でも女でもないな」
「ムーナ、私はハナワンを栄光の地に戻す為には、多少の危険は……」
ジロン
「冗談じゃない。その多少の危険に、俺達が巻き込まれるのは御免だ。ハナワンの戦士達に引き上げの命令をしろ!」
「そうしなければ、今度こそムーナさんを傷付けるか、殺すかするぞ!」
ゲンナ
「貴様がそれをやると言うのか?」
ジロン
「当たり前だ! 自分の命は惜しい、このマッド・シーからも抜け出したい」
「その為には、ムーナさんとお前の命を引き換えに、ハナワンに手を引かせる!」
ゲンナ
「ふんっ、どうやって?」
ジロン
「え? ど、どうやってって……」
ゲンナ
「我々を人質に取って、どうするのだ?」
ジロン
「だからさ! お前の爪を全部引っぺがして、ハナワンの戦士が引かなければ……」
ゲンナ
「引かなければ?」
ジロン
「ムーナさんの片腕をちょん切るんだ!」
ゲンナ
「それで引かなければ?」
ジロン
「もう一本腕を折る!」
ゲンナ
「それで駄目なら?」
ジロン
「あんたを殺すんだよ!」
ゲンナ
「それで戦士達が引かなかったら?」
ジロン
「馬鹿野郎!」
ムーナ
「ジロン……!」
ジロン
「貴様なんか、八つ裂きにして魚の餌にしてやる!」
「人をからかって、この……お前は何様だと思っているんだよ! こいつめ!」
ムーナ
「やめて! 早く止めてください!」
ジロン
「このっ、このっ……!」
エルチ
「ジロン!」
ジロン
「こいつっ……!」
ゲンナ
「ジロン・アモス、と言ったな……? お前の涙が私の顔に掛かった。よく分かる……君は勇者になれる」
ジロン
「はぁっ、はぁっ……」
ゲンナ
「君には、ハナワンは手向かえない」
「砲撃? まだハナワンが総攻撃を掛ける時間ではないぞ」
ムーナ
「ゲンナ……」
ゲンナ
「ん? ホーラの攻撃だ。明らかに私達がこの船に居るのを知って、攻撃をしている!」
エルチ
「ねぇ、ジロン! ホーラよ、ホーラの攻撃よ!」
ジロン
「あ、あぁっ……」
ムーナ
「ホーラが本当に私達の事を思っているのなら、攻撃はしてこないわ」
ゲンナ
「もう分かった事を言うな。だから女っていうのは……」
ジロン
「もういいじゃない、ゲンナ」
ゲンナ
「ん?」
ジロン
「もう、ふふっ……」
ルル・ミミ・キキ
「いやぁ〜ん!」
ハナワン族
「攻撃をやめてください! まだ約束の時ではありません! あの中にはゲンナ様が居るんです!」
ゲラバ
「もうとっくに死んでるさ、気にするな」
ジロン
「ホーラめ、いつまでもハナワンを騙せると思うなよ」
ゲラバ
「オットリッチとホバー・ボードの組み合わせは無理のようだな」
ホーラ
「違うな、日雇いブレーカーは当てにならんという事だよ」
ジロン
「うぉぉっ!」
「いつまでも同じ所に居るかよ!」
ホーラ
「まともにやったら、こちらのが強い!」
ジロン
「二台か!」
ゲラバ
「ははっ、まるで玩具じゃねぇかよ!」
ブルメ
「ブリッジ! もう一台ザブングルがあるだろ? それを出してくれよ。主砲だけじゃ支え切れない」
ラグ
「分かってる。ブリッジ、スキッパー出るよ」
エルチ
「こんな所で変形とドッキングは無理じゃないの? ラグ」
ラグ
「やってみてのお慰み!」
「マーレでもガルロでもいい、ザブングルのライフル持っといで! 行くよ!」
マーレ
「ラグ!」
ホーラ
「ははっ、もう遊びの時間はお終いだ! ちょっとパターンかな?」
「止めだ、行くぞ!」
「うっ、何だ?」
ラグ
「あぁっ……!」
ジロン
「ライフルがなくっちゃ……」
ホーラ
「よーし、後は時間の問題だ。アイアン・ギアーを落とせ! その上で、エルチは俺が戴く!」
ジロン
「ん、アイアン・ギアーが……」
ラグ
「あっ……!」
エルチ
「アイアン・ギアー、動かないの?」
コトセット
「芝居やってなけりゃ直せたんだ」
ダイク
「素人にはすぐに直せないよ」
ジロン
「あっ、当たった」
ホーラ
「な、何だ?」
ゲラバ
「ウォーカー・マシンが……」
ジロン
「ゲンナ達か!」
ゲラバ
「ホーラ! ハナワンが……」
ホーラ
「畜生、ゲンナが裏切ったのか」
ゲラバ
「裏切りはこっちの方が先のようだがな」
ホーラ
「裏切っちゃいない。こっちは始めからの計画通りだ」
ゲラバ
「そりゃそうだ」
ホーラ
「ゲラバ、退くぞ! 船を守る事が先だ!」
ゲンナ
「我々が戻るべき大地は、本当にあると思うか? ムーナ……」
ムーナ
「あると思います。人は元々、大地に住むものと私は思いますから」
ゲンナ
「それも、あのジロンが教えてくれたのか?」
ムーナ
「えぇ、あの少年の体中からそんなものが匂ってきます」
コトセット
「ちゃんとやれよ?」
ジロン
「やってるでしょ?」
コトセット
「とにかく、あっちこっち穴だらけで……」
プロポピエフ
「あの、コトセットさん」
コトセット
「何だ?」
プロポピエフ
「今度上陸したら、お芝居やりたいんです。コトセットさんが主役でもってね」
コトセット
「そうか、どんなのをやる?」
プロポピエフ
「えぇ、極悪人で悪魔の役どころ。史上空前の大悪魔。悪魔の……」
コトセット
「何でそうなる!」
プロポピエフ
「飽くまでも悪魔!」
コトセット
「俺に悪魔が出来るもんか、このっ!」
ジロン
「出来る、出来る」