第19話 コンドルよ、とべ!
- 前回のあらすじ
- あらゆる支配を、イノセントという特権階級に押さえられている、惑星ゾラ。
- しかし人々は、それを何の不思議もなく受け止めていた。
- アイアン・ギアーを飛び出して、家出ならぬ船出と洒落るエルチを前に、夜狼が現れる。
- ホーラの手先が来るやらで、危機一髪のエルチ・カーゴ。
- それを救うは、絵に描いたような美青年、エル・コンドルの美しさ。
- 更に見せますコンドルの勇気の前に、キッド・ホーラもた〜じたじ。
- ジロンと違った男伊達、揺れる心の不思議さに、エルチ・カーゴは首っ丈。
- コトセット
- 「全員に告げる。アイアン・ギアーは商売を続けなければならない」
- 「一時間以内にエルチが戻ってこなければ、それならそれでいい」
- 「失効して、新たなバザー開催地を見付ける」
- チル
- 「ねえ、エルチ置いてっちゃうの?」
- ダイク
- 「らしいな。いいんじゃない、さっぱりするぜ」
- ブルメ
- 「ははっ。始めっからそのつもりさね、俺達」
- ラグ
- 「ジロン」
- ジロン
- 「よっ」
- ラグ
- 「ジロン」
- ジロン
- 「いけないかよ」
- ラグ
- 「わざわざ行く事ないだろ?」
- ジロン
- 「そうはいくかい」
- 「わぁ、痛ぇなぁ」
- ラグ
- 「エルチがさ、自分勝手にアイアン・ギアーを出て行ったんだよ? もういいじゃない」
- 「ね、こないだから言ってるように、このままアイアン・ギアーとウォーカー・マシンを戴いてさ」
- ジロン
- 「俺はこんな船要らない。ザブングルもいい」
- ラグ
- 「何故さ?」
- ジロン
- 「もうちっと、いいウォーカー・マシン欲しいしさ。それに一人の方がいいもん」
- ラグ
- 「私が嫌いなの?」
- ジロン、ラグ
- 「ん?」
- コトセット
- 「ホーラか? トラック・タンカー、敵か?」
- 「ははっ、こりゃいい。タンカーが襲われてる」
- 「ジロン、ラグ、誰でもいい、ウォーカー・タンカーが襲われてる。助けに行ってこい。そうすれば油を貰えるぞ」
- ラグ
- 「ウォーカー・タンカー?」
- ジロン
- 「ん?」
- ラグ
- 「アイアン・ギアーには、一日分ぐらいの油しかないんだろ?」
- ジロン
- 「その筈だ」
- 「あっ!」
- ラグ
- 「みんな、援護しとくれ! 油を手に入れる。消化器も持ってね」
- ホーラ
- 「ふふっ、アイアン・ギアーの連中め。予定通り動き出してくれたぞ」
- 「ゲラバ、首尾はどうだ?」
- ゲラバ
- 「手間掛かってよ。気の利かねえ連中ばっかりだもんな。大沼の方の手筈はやったけどよ、あんなんでいいのかな?」
- ホーラ
- 「いい。ダブル・スケールの大砲の修理やらで、時間稼ぎにはこんな作戦しかあるまい。上手く行くよ」
- 「よーし、行くぞ!」
- ジロン
- 「やめろ! タンカーを襲うなんて汚いぞ!」
- ラグ
- 「止めるんだよ」
- 村人
- 「ブレーキーが……ブレーキもやられて、効かないんだ!」
- ラグ
- 「えっ? そんな事、早く言ってよ!」
- ブルメ
- 「避けろ避けろ、ラグ! トラッド11じゃ止められないぞ!」
- ラグ
- 「あぁっ、もう手遅れだよ!」
- 「あぁっ……!」
- 「ふぅっ……」
- ジロン
- 「やめないんなら……!」
- 「聞こえるか? タンカーにミサイルぶっ放すなんて、素人じゃないの?」
- 雇われ
- 「やりやがったな! 盗みの上前を撥ねるなんて面白いじゃねぇか!」
- 〃
- 「図体がでかいからって図に乗るなよ! 俺達だって!」
- 〃
- 「見てろ、うりゃっ!」
- 〃
- 「ははっ、見たか。これででかさは変わらねぇぞ。やい、道を開けろ!」
- ジロン
- 「本気なのか? あいつら」
- 雇われ
- 「いいか、見てろよ!」
- ジロン
- 「あっ!」
- 「あっ……?」
- 雇われ
- 「こいつ、このっ……!」
- 〃
- 「決まった!」
- ジロン
- 「凄い凄い! 流石流石!」
- 雇われ
- 「へへっ。では行くぜ、青いの!」
- 〃
- 「わっ……!」
- 〃
- 「おい、しっかりしろ!」
- ジロン
- 「あ〜っ! もう終わり!」
- 雇われ
- 「あら〜っ!」
- ラグ
- 「どう?」
- ブルメ
- 「油臭ぇ! けど真っ暗で、何にも見えないね」
- ラグ
- 「こいつに聞こうよ」
- ブルメ
- 「おしおしっ」
- ラグ、ブルメ
- 「え?」
- ラグ
- 「これ、タンカーだろ? 油を運ぶマシンだろ?」
- ブルメ
- 「そうですよ? 何で入ってないの?」
- ラグ
- 「畜生!」
- ブルメ
- 「痛ぇっ!」
- 「おい、消火なんかしなくていいぞ。タンカーは空っぽだ」
- コトセット
- 「何、空っぽ?」
- 村人
- 「うぅっ……」
- ラグ
- 「大丈夫かい?」
- 村人
- 「うっ……!」
- ラグ
- 「よしなよ。私はあんたを助けた方の仲間だよ。油はどこさ?」
- 村人
- 「金を盗りにきたんじゃないのか」
- ラグ
- 「金じゃないよ。油はどうしたの?」
- 村人
- 「奴らに売ったんだよ。そしたら奴ら、その金を奪い返しにきやがった」
- ラグ
- 「しっかりするんだよ」
- 「ブルメ!」
- エルチ
- 「何故、エルが一人で村へ行くの? 私も連れてってよ」
- コンドル
- 「ホーラの船をやったのが私だと分かれば、ホーラは村の人達に仕返しをするかもしれない」
- エルチ
- 「エル・ドラドの村の人達は、貴方に冷たいのよ? あんな人達、放っておけばいいのよ」
- コンドル
- 「連中が私の事をどう思おうが、私には関係ない。コンドル家が守ってきた土地の住人を守るのは、私の義務だ」
- エルチ
- 「あの人達は、コンドル家の人間が生き残っているのを嫌っているのよ?」
- コンドル
- 「それに君を、私達の事に巻き込みたくないしな」
- エルチ
- 「もう関わっているわよ!」
- 「もう、格好付けちゃってさ」
- 村人
- 「うぅっ、滲みる! ヨーチンをぶっ掛けるのはやめてくれ!」
- ラグ
- 「男だろ? 化膿するよりいいの」
- ジロン
- 「誰に油を売ったんだ?」
- 村人
- 「キッドとかホーラとか言ってたな」
- ジロン
- 「ホーラ? 何でそんなに急に油が要るんだ?」
- 村人
- 「何か、ウォーカー・マシンを一杯集めてたな」
- 「うぅっ、滲みる! エル・ドラドの連中の一人が言う事を聞かなかったんで、仕返しをするらしい」
- ジロン
- 「俺達を助けてくれた、エル・コンドルの事かな」
- 「ラグ……」
- ラグ
- 「だね。エルチもエル・ドラドに居るんだろ?」
- ジロン
- 「危ないな、エルチ」
- ラグ
- 「どこ行くの?」
- ジロン
- 「エルチ捜しに……」
- ラグ
- 「このままアイアン・ギアーで行こうよ」
- ジロン
- 「嫌だ!」
- ラグ
- 「あっ!」
- 村人
- 「うぅっ、し、滲みる……!」
- 村人
- 「昨日もタンクの近くで争いがあった」
- 〃
- 「ここはコンドル家とは縁切りの筈だ、近付かんでくれ」
- 〃
- 「青いウォーカー・マシンが居たな。あんた、連中に手を貸して争い事を大きくしてんだろ?」
- コンドル
- 「誤解だな。私がここを守ろうとするのが嫌なら、あんた方が出てってもいいんだぞ」
- 村人
- 「ここはもうコンドル家の土地じゃないんだ。あんたが出てけ」
- コンドル
- 「よくもそんな事が言えたものだな。緑の大地に住んでいられるのも、私が居るお陰だと……」
- エルチ
- 「エル、どういう事なの?」
- コンドル
- 「貴方には関係がない」
- 「ん? 山火事?」
- 「くそ、火を付けられた」
- 「おい! 村の周りに火薬を仕掛けて、その爆発で火を消すんだ!」
- 村人
- 「見ろ! これもお前が居て、余所者と関わり合いを持つからだ!」
- 〃
- 「あんたの指図は受けねぇ! オイラ達だけでやる!」
- コンドル
- 「私はミサイルで北側の火を消す!」
- 村人
- 「急げ!」
- コンドル
- 「みんなは南側の……!」
- ジロン
- 「ん、焦臭いな」
- 「火事? エル・ドラドの方向だ」
- 「ただの火事じゃないし、ただの爆発じゃない」
- 「あっ、あぁっ……!」
- 「しまった! 罠に嵌った!」
- 「くそっ」
- 「しまった!」
- 「わぁっ、足場がない……!」
- 「ま、不味い! 火事も広がっている!」
- 「あっ、ホーラ!」
- ホーラ
- 「ははっ、正面から機銃が狙っているんだ。運転席から出るなよ。ロープなんか使ったら撃つぜ」
- ジロン
- 「き、きたねぇぞホーラ! こんな泥沼で、溺れさせる気か?」
- ホーラ
- 「そりゃそうだ。弾だって安くはないんだ。このまま見てりゃいいなんて安いもんよ」
- 「アイアン・ギアーもエルチもバラバラで、おめぇも居なくなる」
- 「これで俺は、エルチもアイアン・ギアーも好きに出来るってもんだ」
- 「お前を誘き出す為に、エル・ドラドに火を付けた甲斐があったってもんよ」
- ジロン
- 「戦わせてくれ! お前の銃にやられる方が、男らしいってもんだ! このままじゃ惨め過ぎるよ!」
- ホーラ
- 「なら、出ておいでよ。間違いなく狙い撃ちにしてやるぜ、ジロンちゃん」
- ジロン
- 「くっ、拳銃ぐらいは抜かしてくれよ!」
- 「あぁっ……!」
- ホーラ
- 「ははっ、滑って転んでちゃ、しょうがねえじゃねえかよ」
- ジロン
- 「くそっ、今度こそは……!」
- ホーラ
- 「どうだジロン、大丈夫か? まだ出来るか?」
- ジロン
- 「あっ、あぁっ……!」
- ホーラ
- 「これまでだな。ま、今度は私が主人公になれば済む事だし」
- 「6・7・8・9・10! ふふっ、これで本当にお終いだ!」
- 「わっ!」
- 「ま、不味いよ……!」
- 「あばよ、ジロンちゃん」
- 村人
- 「わぁぁっ!」
- エルチ
- 「高いミサイルを使って助けてあげる事ないのに、エル……」
- コンドル
- 「コンドル家は村の人には借りがある。守るのが私の義務なんだ」
- エルチ
- 「義務? 何それ?」
- コンドル
- 「恩義みたいなものだな」
- エルチ
- 「一宿一飯の?」
- コンドル
- 「ん? 無線が入ってる。ホーラの動きが分かるかもしれない」
- エルチ
- 「は、はい」
- ジロン
- 「うっ、うぅっ……」
- ジロン
- 「アイアン・ギアー、聞こえるか? アイアン・ギアー!」
- 「ザブングルが泥に嵌って……」
- エルチ
- 「このまま真っ直ぐ行って。電波は強くなっているわ」
- コンドル
- 「大沼の方だな」
- エルチ
- 「大沼?」
- ジロン
- 「ラグ、ジロンだ! ラグ、助けてくれ!」
- エルチ
- 「何よ! ラグの事ばっかり呼んで!」
- ラグ
- 「何なの?」
- ダイク
- 「あの運転手、ホーラの仲間だったりして」
- ブルメ
- 「唐突だな」
- コトセット
- 「奴が機関室へ潜り込んだんだ」
- ラグ、ダイク
- 「本当?」
- ブルメ
- 「信じる信じる」
- コトセット
- 「調べりゃ分かる」
- 「あっ、わっ……!」
- ラグ
- 「不味いよ、当たったよ」
- 「チル!」
- ダイク
- 「おっ、どうした?」
- ラグ
- 「エンジン・ルームか?」
- ブルメ
- 「何しやがるんだ!」
- ホーラの手先
- 「ちっ、見付かったか。参ったよ」
- 「それっ!」
- ダイク
- 「こいつ……あっ!」
- ラグ
- 「あっ、こいつ!」
- ジロン
- 「はっ、はっ、空気、空気……」
- 「イタッ!」
- 「あ?」
- エルチ
- 「ザブングルの洗濯でもしていたの? ジロン」
- ジロン
- 「エルチ! 無事だったのか……っと喜びたい所だけど、よくもまあ抜け抜けと!」
- エルチ
- 「ラグじゃなくてお生憎様! 後は自分で出来るでしょ?」
- 「エル、もういいわ」
- ブルメ
- 「わっ、ダ、ダイク……!」
- ホーラの手先
- 「わっ、わぁっ……!」
- 「俺の足に勝った? あんたバケモンだ」
- 「いや……ホーラは俺にアイアン・ギアーの足止めをさせて、その隙にエル・ドラドのエルとかって奴を……」
- 「うわっ!」
- ホーラ
- 「お前らの仲間の一人が、俺のランド・シップに手を出した!」
- 村人
- 「俺達が何をしたってんだ?」
- 〃
- 「俺達は、余所者に恨まれる事は何もしちゃいない!」
- ホーラ
- 「何もしなさ過ぎる、てめぇらがいけないってんだよ!」
- 村人
- 「俺達は自分達だけを守りたいんだ!」
- ホーラ
- 「それが冗談じゃないって言ってんだ!」
- コンドル
- 「やめろ、ホーラ! エル・ドラドの者を一人でも傷付けると、このエル・コンドルが許さない!」
- ホーラ
- 「許すも許さないもないだろ、この!」
- 村人
- 「わぁぁっ!」
- コンドル
- 「よくも……!」
- エルチ
- 「ミサイルを撃てば、エル・ドラドの人も傷付けるわ!」
- コンドル
- 「村を出て、外で戦え!」
- ホーラ
- 「やだね」
- 村人
- 「わぁぁっ!」
- コンドル
- 「や、やめろ、ホーラ! エル・ドラドの人を傷付けるのはよせ!」
- ホーラ
- 「ならばウォーカー・マシンの運転席から出なよ、エル・コンドルさん」
- コンドル
- 「分かった。ここの人には手を出すなよ」
- エルチ
- 「エル……」
- 村人
- 「エルが、エル・コンドルが身代わりになるというのか」
- ホーラ
- 「ふふっ、素直ないい子だ。でもな、俺は甘ちゃんじゃない」
- コンドル
- 「うわっ!」
- エルチ
- 「エル!」
- 「何で私のエルを撃ったの?」
- ホーラ
- 「や、やめろ! エルチは殺したくない!」
- エルチ
- 「当たり前でしょ! 好きな私を撃てる訳がないじゃない!」
- ゲラバ
- 「エルチめ!」
- エルチ
- 「私を傷付けたら、貴方、ホーラに殴られるわよ!」
- ゲラバ
- 「あっ! 何で知ってんの?」
- コンドル
- 「オットリッチを止めろ。エル・ドラドから出ちゃ駄目だ」
- エルチ
- 「駄目よ、ここに居たら貴方はやられてしまう」
- コンドル
- 「どこに行こうというのだ」
- エルチ
- 「アイアン・ギアーへ連れて行くわ」
- コンドル
- 「駄目だ! 運転は私がする」
- エルチ
- 「嫌よ、怪我をしているのに無理よ」
- コンドル
- 「大丈夫だ。右腕一つあれば」
- エルチ
- 「殺されるわよ」
- コンドル
- 「私は殺されはしない。エル・ドラドを守るのだ」
- エルチ
- 「エル……」
- コンドル
- 「お前は邪魔だ。オットリッチを降りろ」
- ジロン
- 「これがホーラの仕業なのか」
- 「ん?」
- 村人
- 「出て行け、疫病神!」
- 〃
- 「余所者は出て行け! 油でも何でもくれてやる!」
- 〃
- 「これ以上、エル・ドラドを滅茶滅茶にしないでくれ!」
- ジロン
- 「こういうの苦手だな、油をくれるのはいいけど」
- 「俺はエルチっていう女の子を捜しているんだ」
- エルチ
- 「私は嫌よ。エルと別れるなんて嫌。私はどこまでも一緒に行くわ」
- コンドル
- 「駄目だ! 煙幕を張ってホーラを引き離す。その隙に君は降りるんだ。私はあの連中を……!」
- エルチ
- 「絶対に貴方をアイアン・ギアーに連れて帰るわ」
- コンドル
- 「そんな君なら、私は嫌いになる!」
- エルチ
- 「え?」
- コンドル
- 「私の生き方を認めてくれない女なら、私は嫌いだ」
- エルチ
- 「エ、エル……」
- ホーラ
- 「ええい、火事の煙の上に煙幕まで張りやがって」
- エルチ
- 「何故、自分から危険な目に遭おうとするの?」
- コンドル
- 「大地を守るのは男の義務なんだ。流れもんの君には分からん事だ」
- エルチ
- 「エル! エル、行かないで、エル……あっ!」
- 「エル、行っちゃうの?」
- 「あ〜あ、エル……」
- 「ホーラ?」
- 「ザブングル? ジロン? ジロン、ここ、ここ……あっ!」
- ジロン
- 「ん? エルチ」
- エルチ
- 「足を動かしちゃ駄目よ、ジロン。エルがホーラと一騎打ちするつもりなの」
- ジロン
- 「自分の実力も考えずに……場所は?」
- エルチ
- 「艦長命令、アイアン・ギアーは直ちに北北東に針路を取り、ザブングルの救助をすべし」
- ジロン
- 「おい、ザブングルはどこもやられてないぜ?」
- エルチ
- 「さっき助けられたでしょ?」
- ジロン
- 「囮か、俺が」
- 「あそこか」
- ホーラ
- 「ちょこまかしやがって。ゲラバ、左へ回れ」
- 「へっ、エル・コンドルなんてご大層な名前だが、逃げてばっかりじゃ名前が泣くぜ」
- 「どうだ、お前から姿は丸見えだ。どっからでも撃ってこい」
- コンドル
- 「お調子もんが」
- ゲラバ
- 「どっちがお調子もんだ? すぐ気を許してよ」
- ホーラ
- 「散々邪魔をしてくれたお礼をさせてもらうぜ」
- エルチ
- 「エル、貴方は怪我をしてるのよ?」
- コンドル
- 「何で戻ってきた?」
- ホーラ
- 「こうまで邪魔する事はなかろう!」
- コンドル
- 「子供は引っ込んでろ」
- ジロン
- 「こ、子供って……あんたに引けを取るつもりはない!」
- コンドル
- 「力むな、坊や」
- 「教えてやろう。俺達一族はかつて、イノセントと戦ったんだ」
- エルチ
- 「エル……」
- ジロン
- 「イノセントと戦ったんだと?」
- コンドル
- 「そうだ。その為にエル・ドラドの人々は、コンドル家を嫌った」
- ホーラ
- 「わぁぁっ!」
- ジロン
- 「あのドームが、その時の跡なのか」
- コンドル
- 「かつてのコンドル家の土地に、イノセントが棲むのを許しておけなかったのだ」
- 「その血の義務を守る為に、俺は、一人の女とか一つの戦いぐらいで敗れたりはしない!」
- ジロン
- 「待てぇーっ!」
- 「迂闊だぞ!」
- ゲラバ
- 「うぉぉっ!」
- ホーラ
- 「チャンスだ!」
- コンドル
- 「ぬっ……!」
- エルチ
- 「ジロン!」
- ジロン
- 「あっ!」
- エルチ
- 「エル! エル・コンドル!」
- ホーラ
- 「分かったか。俺は俺でケリを付けさせてもらうのよ」
- エルチ
- 「ホーラなんていいわ。エルよ。私のエルがやられたのよ」
- ジロン
- 「エルチ、そんなにエルチは……」
- エルチ
- 「当たり前でしょ、あんたとは違うのよ。あの人は大人よ。いつも優しかったのよ」
- ジロン
- 「優しかった?」
- ジロン
- 「緑のある所の人って、決してその土地を離れようとしない。みんな同じだ。トラン・トランもホッターもそうだ」
- ラグ
- 「マリアって子だって、それに近いんじゃない?」
- ジロン
- 「あぁ、そんな事で面白いのかな?」
- ブルメ
- 「面白い訳ないじゃないか」
- チル
- 「ウォーカー・マシンぶっ飛ばす事ないしさ」
- ダイク
- 「ブルー・ストーンがありゃ、どこでも食っていける。土地やら家を守ってどうなるんだ」
- ラグ
- 「一箇所に居られるってのはさ、ブルー・ストーンを掘る間ぐらいだよね」
- コトセット
- 「私も一箇所に留まれない宿命よ。こいつが動いている限り……ちょっと気障だったかな、ははっ」
- チル
- 「ふふっ」
- ジロン、ラグ
- 「ははっ……」
- ブルメ、ダイク
- 「ははっ……」
- エルチ
- 「ええいっ!」
- ジロン
- 「エルチ! いい加減にしないか」
- エルチ
- 「ジロン……」
- ジロン
- 「なあエルチ、好きな人が死んで気が立っているのは分かるけれど、今のは乱暴すぎるぞ」
- 「みんなにもしもの事があったらどうするんだ」
- エルチ
- 「でも、でも……でもエルが……あぁっ!」
- 「エル・コンドルが……!」
- ラグ
- 「ジロン……エルチ……」
- ジロン
- 「泣いて気が済むんならどっさり泣くんだな、エルチ」
- エルチ
- 「うぅっ……!」
- ジロン
- 「ほらエルチ、エルが……エルが飛んでいる」
- ラグ
- 「あ? やってらんないよ」
- エルチ
- 「うぅっ、エル……!」