第27話 うたえ! 戦士の歌を

前回のあらすじ
支配階級イノセントと支配される者シビリアン……
その間にも、時代の流れともいうべき変化が起きようとしている。
新しいアイアン・ギアーに乗り換えたジロン達を狙うのは、何と、ビエルとドワスのイノセント隊。
エルチ真っ青、大慌て。やめて、よして、イノセント様……
白旗振るエルチの顔も霞むほど、イノセント隊は凄まじい。
「やるならやってやろうじゃん」ジロン・アモスは突っ走り、
新式ウォーカー・マシンをかっぱらい、上納ポイントで大暴れ。
ポイント燃えれば、アイアン・ギアーもお尋ね者。行く先一体どうなるか。
ダイク
「ムラなく塗るんだ、ムラなくな」
ルル
「ねえね、何でペンキ塗らなくちゃいけないのさ?」
キキ
「馬鹿ね、私達のお化粧と同じよ」
ブルメ
「それだけじゃないよ。錆止め。長持ちさせる為にね」
「尤も、前のアイアン・ギアーと同じにしとかないと、運び屋として困るんだろ。登録してるからよ」
ローズ
「チル、アンタも手伝ってよ」
チル
「上手く行けば、今夜は取り立ての焼肉よ」
ローズ
「アンタ、アンタ! チルが蜥蜴釣るんだってさ!」
プロポピエフ
「わっ、そりゃいい考えだ」
「頼むよ。いつも塩漬けで喉がカラカラだ」
チル
「一匹目はジロンの!」
ジロン
「ラグ、ドッキング・テストやるぞ」
ラグ
「オーライ、こんなんでいいんだろ?」
ジロン
「へ〜、意外に重いじゃないか。」
チル
「わ〜っ、来た来た、来た!」
ブルメ
「おっ、美味そうな肉付きだぞ」
一同
「わぁっ……!」
チル
「だ、誰か手を貸してぇ〜……あっ!」
ブルメ
「っと!」
一同
「おっ偉い、チル!」
ブルメ
「行け行け〜!」
チル
「……わっ!」
ブルメ
「どうしたの?」
エルチ
「今は、テスト走行中よ。文句は言わないで仕事やればいいの」
エルチ
「どうなの?」
コトセット
「メッカバレーで修理すれば、OKです」
ラグ
「あはっ、良く出来てるよ、シートが回転してさ」
「手持ちの武器が二つ三つあれば天下無敵よ」
ジロン
「だな。でも、金貨、ブルー・ストーンはあるのかな?」
エルチ
「そんなに一杯ある訳ないでしょ?」
ジロン
「エルチ」
エルチ
「機銃が付いてるんだから。取り敢えずはそれで、上手にやってもらわなくっちゃね」
ラグ
「よく言うよ、ホーラやイノセント相手にさ」
ジロン
「三日間逃げ切ればいいんだ」
「それよりさ、上納ポイントでコイツが簡単にかっぱらえたのは、不思議だと思わないか?」
エルチ
「確かにチグハグな感じがしたわね」
ビエル
「新しい作戦だと?」
ドワス
「アイアン・ギアーの力はチームワーク……つまり、彼らの協調性です」
ビエル
「そうだ。今までの世代のシビリアンでは、それほど認められなかった能力だ」
ドワス
「ですから、アイアン・ギアーのチーム・ワークを崩す為には、仲間割れをさせるか、誰か一人でも取り除くのです」
ビエル
「成る程……で?」
ドワス
「早速ホーラに命じて、エルチかラグを殺させます」
ビエル
「待ちたまえ」
ドワス
「はっ……?」
ビエル
「気に入らんな」
ドワス
「は?」
ビエル
「私は、殺せとは命令していない」
ドワス
「しかし……」
ビエル
「拉致しろ。一人拉致して、私の所へ連れて来るのだ」
ドワス
「はっ……」
ビエル
「ドワス君……私は君が、私に無断でガバリエをホーラに渡したのを何故かと堪えているのだ」
「それにまだ、君の転属願いを承知した訳ではない。命令だけは間違いなく実行してもらおう」
「いいな、ドワス君?」
ドワス
「分かりました」
「……ふん、ビエルは既にドームを二つも連中に破壊されているんだ。奴もこのままで済む訳はないだろう」
ゲラバ
「ヘヘッ、これは何て安定性の高い船なんだ。え、このガバリエはよ」
「な、兄貴?」
ホーラ
「イノセントの中でも技術革新が始まっているのだろう。使いようによっては、アイアン・ギアーに勝るとも劣らん」
ゲラバ
「ええ、今度こそ奴らをギャフンと言わせてやれますぜ」
ホーラ
「この近くで、船の整備が出来る所といや、メッカバレーだ。この辺で連中を捕まえてやるぜ」
ブレーカー
「ボス、ビジョンが入ってます」
ホーラ
「イノセントからか?」
ドワス
「ガバリエを与えた代償として、特別の命令を与える」
ホーラ
「はっ、何でしょう?」
ドワス
「アイアン・ギアーのクルーの二人の内、どちらかを誘拐して私の元へ連れて来るのだ」
ホーラ
「二人のクルーの内の……どいつです?」
ドワス
「この女か、この女だ」
ホーラ
「は? こいつか、こいつ……?」
ホーラ、ゲラバ
「あっ……」
ゲラバ
「エルチ! ラグだ、ラグ!」
ドワス
「この命令は絶対である。いいか、無傷のままここに連れて来い」
ホーラ
「はっ、必ず!」
ドワス
「よし」
ホーラ
「……無傷で女を連れて来いだと?」
ゲラバ
「どういうんですかね?」
ホーラ
「それも、ラグかエルチだと?」
ゲラバ
「ヒヒッ、いいじゃないすか」
ホーラ
「何でだ?」
ゲラバ
「まだエルチを嫁さんにしたいんでしょ? この際、攫って嫁さんにしちゃったら……うっ!」
「何ですよ? 何か凄く悪い事、言いました?」
ホーラ
「イノセントが寄越せと言ってるんだ。逆らったら、這い上がるチャンスもなくなる」
ゲラバ
「そんな……イノセントが、俺達シビリアンを取った事あります? ちょっと調べてすぐ釈放してくれますよ」
ホーラ
「とにかく、ラグに狙いを付けりゃいいんだ」
ゲラバ
「あのジャジャ馬をですか?」
ホーラ
「エルチだってナイフ使いだ」
ゲラバ
「そりゃそうですが……」
ホーラ
「いい手がある。お前にやって貰おう。ウォーカー・マシンの整備をしておけ」
ゲラバ
「はい」
ホーラ
「それにしても、俺は何故こうまでアイアン・ギアーの連中に拘るのかな……」
ゲラバ
「でも……」
ホーラ
「何だよ?」
ゲラバ
「やるんなら、エルチの方が楽そうでいいや」
ホーラ
「ふんっ。しかし、女だって他に一杯居るんだがな……」
村人
「ほう、変わった型のランド・シップだな」
 〃
「ウォーカー・マシンみたいだな」
 〃
「何だ?」
ジロン
「ガルロ、人には気を付けるんだ」
トロン
「ふん、イノセントにオベッカを使う運び屋共め」
エルチ
「ドックはどこにするの? コトセット」
コトセット
「この新型を宥められるのは、ヨーゼフって奴のドックしかありませんね」
エルチ
「ダイク、あんたは武器・弾薬などの補給を頼むわ」
ダイク
「了解」
エルチ
「ラグ、ドック入りしたら食料の買い付けをすんのよ?」
ラグ
「何で私が、主婦の真似をやんなきゃなんないの?」
エルチ
「トイレット・ペーパーも忘れんじゃないの」
ラグ
「ふんっ!」
コトセット
「とにかく急いで欲しいんだ。アンタの腕を見込んでの事なんだ」
ヨーゼフ
「こんなタイプは知らんな。艤装は終わっとらんのだろ?」
「金は掛かるぜ。イノセントでやって貰えばいいじゃないか。運び屋だろ?」
コトセット
「そうは行かんのさ。金はある」
ヨーゼフ
「ああ、手形は持っているのか?」
エルチ
「一応はね」
ヨーゼフ
「コイツの整備なら一週間だな」
コトセット
「24時間だ」
ヨーゼフ
「三日……でなきゃ、余所をあたりな」
コトセット
「二日で頼みたい」
ヨーゼフ
「二日?」
コトセット
「いい腕だって評判なんだろ? それを聞いてやって来たんだぜ、な?」
ヨーゼフ
「そりゃいい腕だ」
エルチ
「じゃあね!」
ヨーゼフ
「ん?」
エルチ
「みんな、行動開始よ!」
一同
「イェーッ!」
ジロン
「ちわ〜、大砲おくれ」
「へぇ〜ひゃあすげぇ。中古が一杯」
「何だこりゃ? 十年吊るしてたの?」
店主
「冗談じゃない、新品新品」
ジロン
「これが? 嘘だろ、まけとけよ」
店主
「駄目駄目、足りないよ」
ジロン
「残りは後で払うよ」
トロン
「ちょっと待った。親父さん、嘘言っちゃ困るな。こんないいバズーカがあるんじゃないか」
店主
「トロン・ミランさん……」
トロン
「こんなのが欲しいって注文したのは、確か、僕の筈だったな」
店主
「へぇ、しかしね……」
トロン
「ソルトが嫌いだから、売らなかったってのかい?」
ジロン
「俺は手付けを払ったよ」
トロン
「は〜、さっきのランド・シップに乗ってた顔だね?」
ジロン
「それがどうした?」
トロン
「他人の物を上手に巻き上げる、お利口さんらしい面だってのさ」
ジロン
「喧嘩を売りたいらしいな?」
トロン
「フフッ……」
「手付けは要らないぜ、坊や?」
ジロン
「あっ、うっ……!」
トロン
「怪我をしない内にバズーカを諦めるんだな、坊や」
ジロン
「まだ終わっちゃいないぜ、ていっ!」
トロン
「あっ!」
「少しは骨があるっていう事? よし、勝った方にバズーカが行く。いいね?」
ジロン
「よーし、くっ……!」
トロン
「フフッ……」
ジロン
「ていっ、ていっ、ていっ!」
トロン
「タッ!」
ジロン
「うっ!」
トロン
「トァーッ!」
ジロン
「くっ、くそっ……!」
ラグ
「喧嘩だってさ」
チル
「見る見る!」
ラグ
「はぁ?」
「女にやられてる。しかも一方的」
チル
「あちゃぱ……」
ジロン
「あのバズーカは、俺のモンだ!」
トロン
「僕の物だ、諦めな!」
ジロン
「嫌だ!」
トロン
「アンタのしぶとさに免じて、どうだい? ウォーカー・マシンで決着を付けるか」
ジロン
「いいとも……ナロッ!」
チル
「大丈夫かい?」
ラグ
「よしなよジロン、無駄だよ、分かんないのかい? アイツのは何か違うんだよ。ただの喧嘩じゃない」
ジロン
「煩い!」
ラグ
「ホッ……」
チル
「そんな事言っても無駄だわさ、ジロンの性格だもん」
ラグ
「やれやれ、完全に相手の女に呑まれちゃってるよ」
ブルメ
「見ちゃいられねぇな」
ダイク
「相手は、カプリコ・タイプのウォーカー・マシンの癖をよく知ってる」
ラグ
「でもな、慣れるには丁度いいよ。この果し合いならさ」
ブルメ
「ははっ、あんま壊さないで欲しいけどな」
トロン
「あっ……!」
ジロン
「卑怯だぞトロン、ウォーカー・マシンの果し合いにミサイルは使えない!」
トロン
「僕は、そんな卑怯じゃない! 向こうからだ!」
一同
「わわっ……!」
ジロン
「卑怯だぞトロン、ウォーカー・マシン同士の決闘に飛び道具はご法度だって事ぐらい知ってるだろ!」
トロン
「アンタの目は節穴かい? 今のミサイルは僕じゃない! この距離で外す訳ないじゃないか!」
ジロン
「ん?」
「あっ……!」
「流れ弾か! アイツが狙われてるんだ!」
「ホーラの船のウォーカー・マシンか?」
「トロンとか言ったな、この勝負は預けてくれ」
トロン
「何だい、ホーラって? 訳アリだね?」
ジロン
「イノセントの仕掛け人だよ。こっちに来るウォーカー・マシンは、ホーラの部下だ」
トロン
「ジロン! ちょっと、どういう事だよ?」
「イノセントのエージェントだと言ったな……」
ホーラ
「レッカバレーに入り込まれた。これ以上の追撃をすると面倒な事になる。後退して、暫くゲラバの動きを監視するぞ」
「フフッ……」
ジロン
「手動で撃てるのかな?」
「おっ」
「ゲラバ、出て来い! どういう事なんだ?」
ゲラバ
「あ、撃つな撃つな! 降参だ!」
ジロン
「ガラパゴスなんて仰々しいマシンで来て、何が降参だよ」
ゲラバ
「何言ってんだよ。そっちのウォーカー・ギャリアがありゃ、ガラパゴスぐらいでビビる事ねぇだろ?」
ジロン
「どうも分からないな。ホーラに金魚の糞みたいに引っ付いていたのが、どういう事なんだ?」
ゲラバ
「昨日まではホーラの右腕だった。けどよ、アイツは駄目だよ。自惚れやになっちまってよ、とても食えねえんだよ」
「何か食わしてくれよ。朝から逃げっ放しでクタクタなんだよ、な?」
ジロン
「信用出来ないな」
ゲラバ
「信用させてやるって」
ジロン
「よーし、やって貰おう」
ゲラバ
「乗れよ」
ジロン
「これじゃ、一掴みで潰されちまうじゃないか」
ゲラバ
「信用してくれねぇのかな? これでも昔は、アイアン・ギアーで働いてた俺だぜ?」
ジロン
「分かったよ」
「やってくれ」
「わっ!」
「やったな!」
ゲラバ
「ちゃうちゃう! 追っ掛けられて調子が悪いんだよ!」
ジロン
「うっ……!」
「首は動かすなよ。このまま上げろ」
ゲラバ
「了解」
「ヘヘッ、ちょっと惜しかったかな」
ジロン
「歩くくらい出来るだろ? 立てよ」
ゲラバ
「了解」
ブルメ
「迂闊だぜジロン、ゲラバをそんなに簡単に信用しちゃ」
ダイク
「ガラパゴスはこっちで運転した方がいいって」
ジロン
「おう」
「ゲラバ、他の連中を乗せる。低くするんだ」
ゲラバ
「乗ってくれ」
「っと、アンタが運転してくれんのか?」
ラグ
「ヨイショっと」
ゲラバ
「何だ?」
ラグ
「トイレット・ペーパーに石鹸に束子にペンキと色々ね」
ゲラバ
「……ホーラがエルチを攫いたくねぇのは、イノセントに取られるのが嫌だからなんだよな」
「チャンスと言えばチャンスだ。ここでやっちまうか……?」
「うっ……!」
ダイク
「出来るかい?」
ラグ
「行ける行ける」
ブルメ
「俺達は、上の甲板に行くわ」
チル
「アタイも」
ゲラバ
「……余分なのも付いてきやがって。これじゃ、別のチャンスを狙うしかねぇか」
ブルメ
「よーし、いいぞ」
ジロン
「トロン、悪いな」
トロン
「イノセントの下っ端を捕まえたんなら文句は言わないよ。徹底的に締め上げてくんな」
ジロン
「本当、後でちゃんと決闘やるからさ」
エルチ
「あっ、ゲラバ!」
ゲラバ
「お嬢さん」
エルチ
「どういう事? ホーラの手下が何の用なの?」
ゲラバ
「飯食わしてください。そしたら話す元気も出るし、ね……」
ブレーカー
「ヒヒッ……ゲラバめ、潜り込んだな」
「ホーラの旦那、聞こえますか? ゲラバはアイアン・ギアーに潜り込みました」
ホーラ
「了解、すぐ戻れ」
ブレーカー
「へい!」
ホーラ
「エンジン始動! 主砲、メッカバレーに向けろ。各砲ニ発ずつ、撃てぇーっ!」
ゲラバ
「作戦の失敗の責任をみんな俺に擦り付けて、ホーラの野郎、イノセントの前でエエカッコしたんだよ」
エルチ
「信じられないわね」
ゲラバ
「俺を始末する約束で、ガバリエなんて新型のランド・シップ貰ってんだぜ?」
ジロン
「……何だ?」
ゲラバ
「ほら、ホーラはアンタ達と一緒に俺を始末するつもりなんだよ」
ブルメ
「眉唾なんだよ。臭いんだよな」
ゲラバ
「何でさ。俺は、朝から飯も食わずに逃げてきたんだ。信用してくれよ」
エルチ
「証明してもらうわ。アイアン・ギアーに乗って」
ブルメ
「そっ、戦闘準備もあるしな」
「ジロン、ダイク、外は任せっぞ」
一同
「おう!」
ジロン
「チルはギャリー・ウィングに乗って」
チル
「あい」
ラグ
「私は?」
ジロン
「ザブングルを使え」
ダイク
「え、俺は?」
ジロン
「サブキャラだからな。ブリッジに行ってよ」
ダイク
「ったく……!」
ヨーゼフ
「何だと? 艤装工事中だというのに出撃だと?」
コトセット
「そんなのいつもの事だ! アンタのドックがぶっ壊れてもいいのか?」
ヨーゼフ
「そりゃ困る」
コトセット
「なら商売は、戦闘中やるんだな」
ダイク
「エンジン始動!」
ジロン
「来たぞ!」
トロン
「修理が終わっていないのに出撃なのかい? イノセントの下っ端が来るっていうのか」
ブルメ
「このぐらい食えなくっちゃ、証明にはならないぜ?」
ゲラバ
「当たり前だよ」
エルチ
「で、役立つ情報ってのを教えて……」
「ファットマンは大砲でも撃ちにいくの!」
「……貰いたいもんね」
ゲラバ
「ポタン砲って知ってんだろ? ガバリエ、アイツ三つも持ってんだよ」
エルチ、ブルメ
「三つも?」
ホーラ
「ウォーカー・マシン隊、総攻撃開始だ。アイアン・ギアーを徹底的に潰せ。各砲塔もぶっ放せ!」
「ただし、ブリッジには当てるなよ」
「そうそう当たらんか」
ブルメ
「どうした?」
エルチ、ブルメ
「ゲラバ……!」
ゲラバ
「うぅっ、苦しい苦しいよぉ……」
エルチ
「急にお腹一杯食べたからなの?」
ブルメ
「まっさか。コイツが蜥蜴を食ったくらいで……」
エルチ
「しっかりしてよ、アンタそれでも一端のブレーカーなんでしょ?」
ゲラバ
「腹が、イテテテッ……お助け、エルチ嬢様、ね……」
ブルメ
「エルチ、放っとこ」
ゲラバ
「イテェ、腹が……」
エルチ
「はっ、ブルメ……!」
ブルメ
「わっ!」
エルチ
「あっ……!」
「ゲラバ!」
ゲラバ
「フフッ、さてと……おぇっ」
ジロン
「ん、弾が切れたのか……このっ!」
ホーラ
「チッ、全砲火を、緑のウォーカー・マシンにだけ集中しろ!」
ガルロ
「うわっ!」
ラグ
「ガルロ!」
ガルロ
「大丈夫だ! 俺は、走ってアイアン・ギアーに帰る!」
ラグ
「アイアン・ギアー! ジロンが孤立するわ、何とか援護して」
ジロン
「わっ……!」
チル
「ジロン、足を止めちゃ狙われる!」
ジロン
「くそ〜、新型のパワーを当てにし過ぎたか」
「あっ……!」
「流石、エルチ! や、ラグかな? あれ、違うの?」
トロン
「見ちゃいられないんだよ、坊や」
ジロン
「ンッ……トロン・ミラン?」
トロン
「僕もイノセントに楯突く事では、少しは知られた女でね。手伝うよ」
ジロン
「イノセントに楯突くなんて……わっ!」
チル
「ジロン!」
ジロン
「にゃろぉ、舐めるなぁっ!」
「トロン、後ろだ!」
トロン
「すまない」
ジロン
「お相子さ」
トロン
「後は、あのランド・シップだけだ」
「何? 後退を始めた……」
「逃がすかい!」
「あっ……!」
ジロン
「トロン! 野郎!」
「トロン、死んじゃ駄目だ! アンタには聞きたい事が一杯あるんだ!」
「トロン!」
トロン
「フフッ、このバズーカ、アンタのウォーカー・マシンに似合うようだね……」
ジロン
「トロン……くそぉっ!」
「わぁぁっ!」
「逃がすか! トロンの仇も討てないなんて、冗談じゃないよ!」
「ホーラ、戻せ! 引き返せ! トロンの仇を討たせてくれ! トロンの仇を……!」
ゲラバ
「15分後だな、了解」
エルチ
「ゲラバ!」
ゲラバ
「待ってくれ、お嬢さん」
エルチ
「卑怯者! 手が使えないと思って、甘く見ると怪我するよ!」
ゲラバ
「違う、お嬢さん。アンタ、イノセントの市民になれるかもしれないんだぜ?」
エルチ
「イノセントの? 馬鹿な……」
ゲラバ
「本当さ。実はこの誘拐の芝居は、イノセントのお偉方の直接命令なんだよ」
エルチ
「まさか……」
ゲラバ
「だからこそ、傷一つ付けねぇでこんな面倒な手続きを踏んだんですぜ?」
「俺だって、元はと言やお嬢さんの下で働いてた者だ。恩義がありまさ」
エルチ
「そんな昔の事に拘ってるなんて、意外だわね」
ゲラバ
「俺だって一丁前に男ですから」
ジロン
「馬鹿野郎! 貴様が居て、何でエルチが取られちまうんだよ!」
コトセット
「ゲラバが上手かったんだ。奴の芝居に、ブルメが引っ掛かっちまったんだよ」
ジロン
「しかし滅茶滅茶じゃないか。これじゃ俺達は、ホーラに手玉に取られて……!」
「ファットマン! 貴様だって居たんだろうに!」
ブルメ
「エルチを取り返すの手伝うよ。悪かったな……」
ラグ
「全くさ、一々借りを作っちまってさ」
ダイク
「そういう言い方はないだろ」
ラグ
「ふんっ」
ジロン
「仲間割れしてる時かよ」
コトセット
「ジロン、ヨーゼフに修理を急がせて出撃だ。喧嘩はよせ」
ジロン
「分かったよ」
「必ず取り返してやる! ホーラめ!」