第28話 弱味みつけたイノセント

前回のあらすじ
支配階級イノセント、支配される者シビリアン……
その間にも、時代の流れともいうべき変化が起きようとしていた。
ジロン・アモスとアイアン・ギアー。
メッカバレーで船の修理と洒落込んで、ジロン、トロン・ミランと出会います。
蝶のように舞い、蜂のように刺す……トロン・ミランの謎めきの技、圧倒的に強いのです。
その決闘に水を差すのは、例の如く、キッド・ホーラとゲラバ・ゲラバ。
エルチはゲラバに騙されて、ビエルの元へと連れ去られ、
トロン・ミランは、ジロンを庇って哀れ謎を残して死に行きて、物語、漸くシリアスに相成りまする。
エルチ
「はっ……!」
研究員
「意外に強い抵抗だな」
 〃
「記憶保存本能です」
 〃
「視床下部にノルアドレナリン増加。脈拍下げて再テストしますか?」
 〃
「いや、始めはこの程度でいい。深層スキャンを済ませておこう」
 〃
「了解。すぐ処置します。覚醒は5分後にセットします」
 〃
「こんな辺鄙なポイントで、何をやらせようというのだ。ビエル執政官は……」
エルチ
「あ〜、いいお風呂だった」
召使い
「これをお召しになってください」
エルチ
「私のじゃないわ」
召使い
「ここでは、こういう楽なお召し物の方がお似合いです」
エルチ
「わ〜、綺麗ね。この艶、何? コットンじゃないみたい……」
召使い
「シルクで御座います」
エルチ
「ふ〜ん」
召使い
「さ、こちらへ……」
エルチ
「へ〜、やったぁ!」
「流石イノセント!」
ビエル
「またお会い出来ましたね、エルチ・カーゴ」
エルチ
「ビ、ビエル様……!」
ビエル
「エルチ、どうぞ」
エルチ
「え、えぇっ……!」
ジロン
「ヨーゼフのドックで値切るから、ちゃんとやってくれやしないんだ」
ダイク
「畜生、何だってこう荒れるんだ」
コトセット
「しょうがないでしょ。今、アイアン・ギアーは貧乏なんだから」
ダイク
「エルチだけは別だけどさ」
コトセット
「え?」
ダイク
「いい時に連れて行かれたよ。今頃ホーラと仲良く、お食事でもしてんじゃないの? ホーラの船でさ」
「畜生!」
コトセット
「あたたっ、助けて……!」
ジロン
「ブルメ、終わったのか?」
ブルメ
「え? 何だって?」
ジロン
「主砲の掃除は終わったのかよ?」
ブルメ
「まだ」
ジロン
「急いでくれ、ここは俺がやる」
ブルメ
「分かったよ」
ラグ
「わ〜っ!」
ジロン
「落ちたのか?」
ジロン、ブルメ
「ヒヒッ……」
ラグ
「笑い事じゃないでしょ?」
ジロン
「そうそう」
ブルメ
「あらよっと」
ジロン
「そ〜れ」
ラグ
「もうウンザリだ! こんな嵐の中での修理なんて!」
ジロン
「怒るなよ、ラグ」
ラグ
「エルチの為に風邪を引けっての? ふん、御免だね」
ジロン
「エルチの為? だな……本当なら、こんな日に移動する事なんかないんだもんな……」
ビエル
「当分預かると言っただろう。エルチを忘れられんというのか?」
ホーラ
「そんな甘い話じゃありません。あの女、アイアン・ギアーの事なら隅から隅まで知っております」
「ですから、部下に譲って欲しいのです」
ビエル
「妻になら将来譲ってやってもいいぞ?」
ホーラ
「ビエル執政官……!」
ビエル
「エルチは戦闘には向いておらんのだ。それより、未だアイアン・ギアーが討てんのはどういう訳か?」
ホーラ
「部下一人貰えず、要求だけするとは大したモンだな!」
ビエル
「くどいな。エルチは調べる事があるのだ」
ホーラ
「クッ……」
「ビエル様、まさかお忘れではないでしょうな? このホーラなくして、このポイントの安全はないという事を……」
ビエル
「脅すのか、ホーラ?」
ホーラ
「まさか。ただ、ドワス様が私に……」
ビエル
「何が言いたいのだ?」
ホーラ
「いえ別に……では、行ってまいります」
ビエル
「ホーラめ、小賢しい……」
「そういえば、ドワスは……」
エルチ
「あっ、申し訳ありません」
ビエル
「御気分は如何かな?」
エルチ
「こんなに素晴らしい気持ち、生まれて初めてですわ」
ビエル
「それは良かった」
エルチ
「私、お風呂でウッカリ居眠りしちゃって……目が覚めたら、疲れが嘘みたいに消えてたんです」
ビエル
「貴方の若さのせいですよ」
エルチ
「ああ、本当に何もかも忘れてしまいそうですわ」
ビエル
「アイアン・ギアーの事も?」
エルチ
「え? 私、すっかり仲間の事を忘れていたわ」
ビエル
「彼らなら大丈夫ですよ」
チル
「東の雲が切れてる。すぐに晴れるよ」
ジロン
「そうか、やっと発進出来るな。後は修理さえ終われば……」
コトセット
「終わったぜ……」
ラグ
「は〜、参った参った」
ジロン
「よし、発進は10分後だ。チル、全員を戦闘配置に就かせろ」
チル
「うん」
「イタッ!」
ラグ
「御免だね」
チル
「何で?」
ジロン
「何でだ?」
ラグ
「この際、ハッキリ言っとくわ。エルチを助けるなんてお断りよ」
ジロン
「放っとけってのか?」
ラグ
「アイアン・ギアーを守るつもりなら、攫われたりするもんか」
ジロン
「俺はやるぜ?」
ラグ
「そんなに惚れてたの?」
ジロン
「勘違いするな。ラグの時に比べりゃ、エルチの方は助けに行く価値がある」
ラグ
「私の時、価値なかったの?」
ジロン
「あ〜、なかった」
ラグ
「じゃ、何で助けてくれたの?」
ジロン
「助けはしなかった。勝手に戻ってきたんじゃないか」
ラグ
「違わい、助けられたからよ」
「何よ!」
ジロン
「黙ってから黙っていろ!」
ラグ
「うっ……」
ジロン
「みんなだって、エルチを助けるのに反対じゃないだろ?」
ダイク
「んっ……」
ブルメ
「え〜っ……ま、反対はしないさ」
ジロン
「だろ?」
ブルメ
「だけど、急ぐ事ないんじゃないの?」
ジロン
「どうして?」
ダイク
「俺もそう思うな」
チル
「アタイも」
コトセット
「運び屋の手形は、エルチが持ってるんだぜ?」
一同
「わっ……!」
チル
「あっ、ホーラだ! ほらほら〜!」
コトセット
「お出でなすったか! エンジン始動、急げ!」
ホーラ
「ウォーカー・マシンを出せ、アイアン・ギアーを包囲するだけでいい」
ジロン
「ダイク! プロポピエフ達にも、砲塔へ行くように伝えろ!」
ダイク
「分かった」
ジロン
「コトセット、ジグザグに進め!」
コトセット
「ウルセェな、やってるでしょ!」
ゲラバ
「真っ直ぐ突っ込んできますぜ?」
ホーラ
「ふん、進歩のない馬鹿共よ」
ジロン
「ホーラの馬鹿! エルチを返せ! 攫っていったのは分かってるんだ!」
ホーラ
「確かに攫った! しかし、ビエルが取り上げていった!」
ジロン
「何? 何でだ?」
ホーラ
「知るかよ! エルチがビエルに熱を上げているんだろ、ビエルもな!」
ジロン
「そんな馬鹿な事が……イノセントと俺達とは……!」
ホーラ
「仕方ねぇだろ! 信じられねぇのなら、Kポイントに怒鳴り込んでみろ!」
「退却だ」
ゲラバ
「何で?」
ホーラ
「いいからKポイントへ戻れ!」
チル
「ん〜ジロン、これ何よ、あれあれ!」
ジロン
「どうした? 何だ?」
「他の窓から見ろよ……ん?」
ダイク
「数的に言えば、圧倒的に有利な筈なのに……」
ブルメ
「戦う気がねぇんだな」
ジロン
「ホーラの話が本当だって事か。エルチをビエルに取られたんだよ」
「よーし、確かめてやる!」
ゲラバ
「兄貴、聖域内で戦おうってんですか?」
ホーラ
「今の話を聞いたジロン達が、イノセントの庭先で暴れてくれりゃ、俺達の有難みが身に染みるって訳よ」
ブレーカー
「成る程、こりゃ面白ぇや」
ホーラ
「右10度」
ブレーカー
「しかし、あっちにはイノセントの別荘がありますぜ?」
ホーラ
「構わねぇって事よ。このまま下がりゃいいのさ」
スタン
「早く……早く、ビエル執政官に繋げ!」
召使い
「スタン様! カプセルへお急ぎください!」
ビエル
「何事だ、スタン」
スタン
「シビリアンが、別荘の近くで戦いをしようとしています。排除して頂きたい」
ビエル
「ガバリエは我々の仕掛け人だ。食い止めてくれる」
スタン
「い、いや、追われているようだ」
「こっちへ来る!」
ビエル
「よし、手は打つ。貴殿は地下退避へ急げ」
スタン
「了解した。しかし、掟を守らぬシビリアンを何故、仕掛け人に……!」
子供
「ママ、ママ……!」
召使い
「スタン様もお早く!」
スタン
「家族を先に逃がすんだ!」
召使い
「は、はい!」
ゲラバ
「あ、スタンの別荘だ」
ホーラ
「放っておけ」
ゲラバ
「Kポイントをビエルから任されてた男ですぜ?」
ホーラ
「構わん」
コトセット
「逃げ足が早いな」
ラグ
「ジロン、真っ直ぐドームに突っ込んでエルチを助けるの?」
ジロン
「それがどうした」
ラグ
「それは無茶だよ。上手く行く訳ないだろ」
ジロン
「悪いってのか?」
チル
「あ、ドームだ!」
ブルメ
「小さいな。Kポイントじゃない……」
コトセット
「ありゃ別荘さ」
ジロン
「別荘……?」
コトセット
「イノセントの執政官達のな」
ジロン
「一つ、人質にでもとっ捕まえてみるか」
「確かにラグの言う通り、ポイントに突っ込んだって上手くは行かないだろうからな」
ラグ
「ジロン……」
ブルメ
「どうなってんの、あのドーム?」
コトセット
「ドームの柱の所が、ハッチになっているらしい。地下にも行けるらしいけどな」
ジロン
「プロポピエフ、ドームの足を狙え!」
召使い
「あっ……!」
スタン
「家族達は?」
召使い
「地下へ避難なさいました!」
スタン
「どうした、動かんのか?」
召使い
「は、はい。パイプがやられたようです」
スタン
「シビリアンが、イノセントのドームを攻撃するのか……!」
「うわっ!」
「あっ、あぁっ……!」
コトセット
「ジロン! やるなら今だ!」
ジロン
「よーし、止めろ止めろ」
「わっ……」
ラグ
「あっ、ごめん」
ジロン
「……行くぞ!」
ブルメ
「お前一人なのか?」
召使い
「いや、御主人様が今、地下に……!」
ブルメ
「ダイク、階段だ!」
召使い
「あっ……!」
ブルメ
「あっ、深いんだな。あれがご主人様って訳ね」
ダイク
「らしいな」
スタン
「うぅっ、来た……!」
チル
「お先〜」
ダイク
「おっ……!」
スタン
「わっ……!」
「どうした、何故動かん?」
「来た!」
ブルメ
「逃がすかい!」
「ヘ〜イ、電源を切ったのさ。イノセントのオッサン」
チル
「バ〜ッ!」
スタン
「私はスタン、二級執政官だ。取り引きに応じようじゃないか」
ブルメ
「ちょっとだけ、アンタに人質になって貰いたいんだ。とにかく外から出な」
スタン
「それだけは許してくれ!」
ダイク
「人質になるだけでいいんだ」
チル
「言う事聞かないと、このガラス壊すぞ?」
スタン
「やめてくれ、外界の空気は私には堪えるんだ」
ダイク
「このっ!」
スタン
「わぁぁっ!」
ジロン
「見付かったのか? ダイク、ブルメ」
ダイク
「おう、二級執政官だって言ってるよ」
ブルメ
「暴れんなっての」
スタン
「頼む、外には連れて行かないでくれ! 嫌だ!」
「うぅっ……!」
「嫌だ! 戻してくれ!」
ダイク
「いい加減にしろ」
チル
「執政官なんだろ、覚悟しなよ」
スタン
「表には出さないでくれ……」
ジロン
「人質に死なれちゃ大変だ。船に乗せて、何か薬を飲ましとけ」
ダイク
「おう」
ラグ
「ったく、もうちょっと若くてピチピチしたの居なかったの?」
プロポピエフ
「ほ〜、あぁ多少熱があるようだけど、別にね」
ジロン
「じゃあ、何故意識が戻らないんだ?」
プロポピエフ
「私は芸術家ですよ? 分かる筈がないでしょ」
ブルメ
「コイツはイノセントなんだ。寿命も俺達とは桁違いさ」
ジロン
「うん……でもな、イノセントと俺達ってどこが違うのかな?」
プロポピエフ
「教養ですよ。文化とも申しますがね。それを持っているかいないかが……」
ジロン
「そんなのがあっても、病気治せないんじゃ仕様がないでしょ」
「行くぞ。ダイク、ブルメ」
ブルメ、ダイク
「おう」
プロポピエフ
「さ、エルチ様が心酔して止まない気高いイノセント様。御心配めされるな、私めが付いておりますぞ」
ホーラ
「ビエル様にすぐ会いたい。手続きを急いでくれ」
「うっ、あぁっ……!」
ビエル
「おめおめとよく来たな、ホーラ!」
「何故スタンを見捨てた? 聖域へアイアン・ギアーを入れたのは、私への嫌がらせのつもりか」
ホーラ
「違う! 奴らが強過ぎるんです!」
ビエル
「見え透いた事を……今ここで殺してやりたいが」
「ホーラ、これが最後の命令だ。スタンを必ず取り戻せ!」
ホーラ
「はい……!」
ビエル
「失敗すればエルチを殺すぞ」
ホーラ
「えっ……!」
ビエル
「いいな、ホーラ」
ホーラ
「か、必ず……!」
ゲラバ
「兄貴」
ホーラ
「出撃する!」
ゲラバ
「またですか?」
ホーラ
「今度は掛値なしの決戦だぞ。クソッ、あの殺菌室がなければエルチを……!」
プロポピエフ
「私共にも文化が理解出来るという事が分かってくだされば……」
スタン
「うぅっ……!」
プロポピエフ
「こ、これははたまた……わっ!」
「また戦い……わっ、何!」
ジロン
「やっぱりホーラか!」
ブルメ
「コトセット、右へ逃げろ!」
ラグ
「ふぁっ……煩いね、戦いなんてパターンじゃないか。煩い!」
ジロン
「ラグ! ラグはザブングルで出撃してくれ」
ラグ
「嫌だよ」
ジロン
「気は確かか?」
ラグ
「エルチの為に戦うのは嫌だ」
ジロン
「早くするんだ!」
ラグ
「何で、エルチの為に戦わなくちゃいけないんだよ?
「そんな事するぐらいなら、このままホーラの弾にやられちゃう方がいいよ」
ジロン
「馬鹿!」
ラグ
「うっ、やったな!」
ジロン
「気が済んだか?」
「じゃあ、話は後だ! いいから来い!」
ラグ
「うっ、分かったよ……!」
プロポピエフ
「た、助けて……!」
ジロン
「どうした? 敵が潜り込んだのか?」
プロポピエフ
「あれ、あれ……!」
ジロン、ラグ
「わっ……!」
コトセット
「何して……わっ!」
ジロン
「あぁっ……!」
「こ、こいつは……!」
「し、死んだのか?」
「わっ!」
ホーラ
「やったぜ!」
ジロン、ラグ
「わっ……!」
コトセット
「クッ……!」
ホーラ
「今日のアイアン・ギアーは腑抜けだ! 乗っ取るぞ! ゲラバ、急げ!」
ブレーカー
「大人しくしろ、動くな!」
ジロン
「だったら撃たなけりゃいいだろ?」
ブレーカー
「わっ、撃つな! 相打ちになる!」
ホーラ
「ふふっ、どうしたジロン? いつもの元気は」
ジロン
「コイツがイノセントだって分かりゃ、少しは動転するんじゃないの?」
ホーラ
「ん、うっ……何だコイツは!」
ジロン
「スタンさ。あの別荘に住んでいたイノセントだ」
ホーラ
「スタンはイノセントだぞ」
ラグ
「ジロンが何度もそう言ってるでしょうが、分からず屋」
ブレーカー
「ボス!」
ホーラ
「何だ?」
ブレーカー
「ドームの方から、ホバー・ヘリが来ます」
ホーラ
「何だと?」
「アイアン・ギアーは完全に占拠した。ここにスタンも居る」
ビエル
「よくやった。このカプセルにスタンを乗せろ」
ホーラ
「エルチを引き渡せ。交換と行こうじゃないか」
ビエル
「イノセントに楯突いてどうなるか分かっているのか?」
ホーラ
「イノセントも死ぬ事があると分かれば、何が怖いものか」
ビエル
「何だと? ではスタンは死んだのだな?」
ホーラ
「あっ……」
ビエル
「ははっ、それならば用はない。ホーラ、ご苦労だった」
ホーラ
「ビエル! エルチを渡せ! でなけりゃ、スタンを徹底的に調べ上げて、イノセントの秘密を暴いてやるぞ!」
ビエル
「構わん。スタンを調べようが、お前らのレベルで分かる訳がない」
ホーラ
「わぁぁっ!」
ジロン
「ホーラ、大丈夫か?」
ホーラ
「休戦だな、ジロン」
ジロン
「そんな感じね」
ホーラ
「俺はKポイント攻撃に移る。お前も……」
ジロン
「勿論」
ホーラ
「全員、ガバリエに戻らせろ! ゲラバに伝えろ、俺はガラパゴスで出るぞ!」
チル
「何か、すっご〜く複雑だと思わない?」
ラグ
「そうだけどね。あんなの見せられちゃね」
チル
「そ、そうね……」
ジロン
「ははっ、ホーラが寝返るとはね。これから宜しく頼むぜ?」
ホーラ
「調子に乗るな。取り敢えずの同盟って訳だ」
ジロン
「ドームの中にはどうやって入れる?」
ホーラ
「ゲートから堂々とさ。こんな時の為に、手は打ってある」
ジロン
「よーし、頼む。チル、いいか?」
チル
「いいよ、足とか走ってる」
ジロン
「前へ出ろ」
チル
「了解!」
ジロン
「ラグ、遅れるなよ」
ラグ
「分かってるよ」
ホーラ
「ガバリエ、突っ込め! ハッチを閉じさせるな!」
職員
「ゲートが閉じません! コントロール回線が切れています!」
ビエル
「誰がこんな事を……!」
職員
「ウォーカー・マシンが、ゲート内に侵入して来ます!」
ビエル
「財産を守る事が先だ。全員に避難させろ」
職員
「はっ!」
ビエル
「ドワスの差し金か……!」
ホーラ
「ビエルを炙り出すんだ!」
ジロン
「ホーラ、こんなにまでやる事ないんじゃないの?」
ホーラ
「なら、イノセントのパトロール隊が出て来ていいってのかよ?」
「真っ直ぐに行け。ビエル達の居るタワーが見える」
ジロン
「タワーだと? エルチも居るのか?」
ホーラ
「コントロール・システムが集中している所だ。間違いない」
ジロン
「エルチ、待ってろ。必ずお前を助け出してやるからな」
ビエル
「あれが分かりますか? ミス・エルチ」
エルチ
「ウォーカー・ギャリアですわ。でもどうして……」
ビエル
「彼らはこの聖域を破壊しに来た」
エルチ
「何故……何故です?」
ビエル
「彼らが文明の破壊者だからです」
エルチ
「えっ……?」
ビエル
「好きにさせましょう。私達は次の楽園へ飛びます」
ジロン
「エレベーター? 当たれ!」
「あっ……?」
「あっ、またあの空飛ぶ機械だ!」
ホーラ
「ビエルが逃げるんだ!」
ジロン
「ホーラ、撃つな! エルチが乗っているかもしれない!」
ホーラ
「クッ……!」
ジロン
「逃がすかぁーっ!」
「わぁぁっ!」
チル
「わぁぁっ!」
ジロン
「エルチ! エルチが乗っていた……」
コトセット
「逃げられたな……」
ダイク
「結局、何も得る物なしか」
ブルメ
「でもないさ」
ブルメ、ダイク
「うぅっ……!」
ブルメ
「イノセントも死ぬって事が分かったんだ」
ダイク
「あぁ……」