第32話 俺の勝手はあんたの勝手

前回のあらすじ
支配階級イノセントと、支配される者シビリアン……
その間にも、時代の流れともいうべき変化が起きようとしていた。
シビリアンの平和の為にと叫ぶ、カタカム・ズシムが格好良いのか、ジロン・アモスが芋なのか。
どっちがどっちに転ぼうが、イノセントが敵なら同じ事。遮二無二突っ込む上納ポイント。
その騒動を抜け出したエルチ・カーゴは銃を取り、ジロン・アモスを付け狙い、本気で引鉄引きました。
慌てる人はジロン一人じゃありません。挙句の果てに、アーサー・ランクと出会います。
敵は一体誰なのか、エルチ一体何なのさ。ジロンの頭じゃ分からない。
ビラム
「我々の戦いは砂嵐と同じだ。砂は吹いても、その砂の下に隠れた虫共は増え続けている」
「地下組織ソルトだ」
ティンプ
「地下組織ね……」
「そりゃ、土竜みたいなもんすかい?」
ビラム
「そうだ、土竜だ」
ティンプ
「その土竜、戦力はどのぐらいなんすかい?」
ビラム
「奴らにはまだ、戦力と呼べるものはない」
ティンプ
「ん? それが何故、危険なんすかい?」
ビラム
「考えてもみろ、ソルトの組織とアイアン・ギアーの破壊力が一緒になった時の事を」
ティンプ
「ふむ……」
「ん、成る程……」
ビラム
「分かるか?」
ティンプ
「あ、あぁ……」
「で、あの新型のウォーカー・マシンを私にくれるんで?」
ビラム
「土竜共を虱潰しにしてくれるのならな」
ティンプ
「プッ、武器を持ってない連中をウォーカー・マシンでやるなら、そりゃ出来ますぜ」
「やってみせましょう、間違いなくね」
ティンプ
「私は、このギブロスの艦長だ」
「ククッ、この台詞は何度言ってもいいもんだ」
「私は、艦長のティンプ・シャローンだ」
「聞こえてるか、てめぇら!」
「決して安い金で雇った訳じゃねぇからな。ちゃんとやって貰うぜ」
「戦いが始まるまで、ウォーカー・マシンの手入れをしっかりしとけ!」
ギロ
「へい、徹底させるつもりです」
ティンプ
「つもりじゃ戦いは出来ねぇんだよ。徹底させろ!」
ギロ
「へ、へ〜い!」
ティンプ
「ププッ……アチッ、アチチッ!」
エルチ
「うっ、うぅっ……!」
ビラム
「どうだね、その後の様子は?」
Dr.マネ
「この娘の抵抗本能には驚くばかりです」
ビラム
「と、言うと?」
Dr.マネ
「幾ら記憶を消しても、すぐに再生してしまいます」
「こうなればいっそ、脳を直接処理すべきかと思います」
ビラム
「それはいかん」
Dr.マネ
「ですが、時間が……」
ビラム
「自分の意思で戦う、本当の戦士になって貰わなくては、新世代のチェックは出来ない」
「そうではないかね?」
Dr.マネ
「ご、ご尤もです……」
エルチ
「ジロン、ジロン……!」
ジロン
「イテェッ……!」
「敵か?」
ブルメ
「話があるんだ」
ジロン
「ここじゃいけないのか?」
ブルメ
「外に出ないか? 二人切りで話したい」
ジロン
「おい……」
チル
「ふぁっ……」
ジロン
「あ〜あ、ほら寝るんだ」
「わっ……!」
ラグ
「あっ……?」
「んんっ……」
ジロン
「う〜、寒い〜!」
ブルメ
「一度、誰にも邪魔されずに聞きたかったんだ」
「お前の本心をな」
ジロン
「何の本心?」
ブルメ
「エルチ救い出して、どうすんの?」
ジロン
「別に? それだけの事で、こんな所に呼んで……」
ブルメ
「待てよ」
ジロン
「何だよ?」
ブルメ
「エルチは、完全にイノセントの仲間になったんだ」
「エルチにとって、俺達は敵でしかないって事は、お前も自分の目で確かめたろ?」
ジロン
「俺は信じないよ。エルチは騙されているんだ」
ブルメ
「みんなが反対してもか?」
ジロン
「反対? ……するもんか!」
ブルメ
「逆上せるな!」
ジロン
「だってそうだろ? エルチはずっと、アイアン・ギアーの艦長をやっていたんだぞ」
ブルメ
「三日限りの掟っていうのはさ、人間は、あのくらい変わっちまうって事なんだぜ?」
ジロン
「そんなの、イノセントが勝手に決めた事だろ?」
ブルメ
「俺達は、自由勝手気ままにやってきたんだ。それが俺達の生き方だって事を、教えてやるぜ!」
ティンプ
「いいぞ、てめぇら。聞こえてるか?」
ブレーカー
「聞こえます、ティンプの旦那」
ティンプ
「旦那じゃねぇ、艦長だ! ティンプ艦長!」
ブレーカー
「へぇ、ティンプ艦長!」
ティンプ
「よーし、それでいい」
「いいか、てめぇら。無線の届く範囲で広がって、ソルトって土竜、見付け出して叩くんだ!」
チル
「大変〜! ジロンとブルメが喧嘩してる〜!」
「みんな起きて、喧嘩だよ〜!」
ダイク
「ん?」
チル
「喧嘩だ〜!」
ラグ
「え?」
ラグ
「ははっ、ブルメ到頭爆発したね」
プロポピエフ
「傍迷惑ですな、こんな時間に」
コトセット
「どこだどこだ? 朝っぱらから」
チル
「面白がってないで、早く止めて!」
カタカム
「あれが、君達の日課なのかい?」
ラグ
「まさか」
チル
「ジロン、やめてよ〜!」
ダイク
「あっ、チル……!」
チル
「やめて〜!」
「やめてったら!」
ダイク
「ブルメ、その辺でやめとけや」
チル
「ジロ〜ン、駄目〜!」
ジロン
「邪魔すんな!」
ブルメ
「ジロン、もう一度聞く! エルチを救いに、どうしても行きたいか?」
ジロン
「行くともさ!」
ブルメ
「そうか、分かったよ……」
ジロン
「ブルメ! エルチは必ず救い出すからな!」
ブルメ
「ベェッ! ……やっとくれ!」
ジロン
「……な、何だよ?」
「何してんの、もう夜明けだぜ? 出発の支度でもしたら?」
ダイク
「ジロン、そう簡単には行かないぜ。食料や薬が底を尽いてるんだ」
「あいつら、居候の居るお陰でさ」
カタカム
「まあまあ、そのぐらいにして。食料と薬の事なら安心したまえ。すぐ手に入る」
「我々ソルトの補給部隊と出会う事になるだろうからね」
ジロン
「補給部隊もあるの?」
ダイク
「へぇ……」
ラグ
「流石、組織なのね」
カタカム
「分かるかね、諸君。ソルトの存在意義が」
ダイク
「存在? 何だ?」
ラグ
「この船の居場所は分かっているのかい? 補給部隊にさ」
カタカム
「仲間は至る所に居る。アイアン・ギアーの動きぐらい、ずっと掴んでいるさ」
ジロン
「よーし、これでエルチの救出作戦は続行だな」
カタカム
「ん? その代わりと言っては何だが、ジロン……」
「ポイントへ向かう第一目的は、アーサー・ランクと話し合うきっかけを作る事……いいかね?」
ジロン
「え? イノセントをやっつけないの?」
カタカム
「話し合い次第では、戦いは回避出来よう」
ラグ
「流石……!」
ジロン
「カタカム!」
カタカム
「その決意に満ちた表情、君は物分りのいいリーダーだ」
「そして貴方も、メカニック・マンあってのアイアン・ギアーですからな」
「ははっ……」
「さあ諸君、この辺で朝食にしないか? いつもより早いかもしれないがね」
ジロン
「おい、カタカム……!」
ラグ
「駄目駄目、ジロンの負けだよ。ここはね」
ジロン
「イーッ!」
ソルト・メンバー
「おいラモン、遅いな」
ラモン
「もうすぐさ」
ソルト・メンバー
「アイアン・ギアーが味方になれば、私達もグッと楽になるわね」
ラモン
「そりゃそうだ。基地になるんだから」
ブレーカー
「艦長、土竜を見付けました」
ティンプ
「そうかい、早速居やがったかい」
「よーし、一人も逃がすんじゃねぇ。てめぇらの働きに期待するぜ」
ラモン
「あっ!」
「みんな、トラックに乗れ!」
 〃
「わぁぁっ!」
チル
「コーヒー飲む?」
ジロン
「要らない」
チル
「あっそう」
ジロン
「どこなんだ、補給部隊ってのは……!」
カタカム
「もうじきだ」
ラグ
「カタカムって本当、私が見込んだような男だよ」
「ジロンなんかより、余程やる事がスマートじゃない?」
ブルメ
「ラグ、そろそろ決心する時だぜ」
ラグ
「何を?」
ブルメ
「ラグ」
ラグ
「え?」
ブルメ
「一緒にここを出て、昔に戻るんだ。気ままなサンドラットの暮らしにさ」
「ハイヤとマーレも俺と一緒に行く……ダイクもだ」
「ラグ、俺はさ、お前を……」
ラグ
「やめなよ……」
コトセット
「全員、ブリッジに集まれ!」
ブルメ
「ラグ……!」
ジロン
「補給部隊だな」
カタカム
「あぁ……」
ジロン
「出るぞ!」
「カタカム、アイアン・ギアーの指揮はお前が執れ」
カタカム
「私が……?」
コトセット
「おい、相手は素人だぜ?」
カタカム
「それはいい。やってみよう」
ラグ
「カタカム! ジロンは、あんたを試そうとしてるのよ?」
カタカム
「望む所さ。私の仲間がやられているんだ、黙っていられない!」
ジロン
「流石だ」
ラグ
「ジロン……!」
ジロン
「ベロベロベ〜ッ!」
チル
「あたいも行く!」
ジロン
「カタカム、しっかりな」
チル
「なっ!」
ブレーカー
「お、アイアン・ギアーが出て来た」
「旦那、聞こえますか?」
ティンプ
「旦那じゃねぇ! 言ったろ、ティンプ艦長だ!」
ブレーカー
「すんません!」
ティンプ
「ったくよ……」
「よーし、俺も行く! ギブロスの主砲で叩いてやるぜ!」
「それまで、アイアン・ギアーの足を止めとけ!」
「……ちょっと土竜探しに、ウォーカー・マシンを分散しすぎたかな?」
一同
「わっ……!」
カタカム
「各ウォーカー・マシンは、迎撃急げ!」
コトセット
「カタカム、進路は?」
カタカム
「右……」
ラグ
「違うよ!」
カタカム
「左……」
ラグ
「違うってば!」
カタカム
「ま、真っ直ぐ……」
ラグ
「わっ!」
一同
「わっ……!」
コトセット
「敵の動きぐらい、ちゃんと見ててくれよな!」
カタカム
「すまん……」
ブルメ
「ぼやっとするな! 来るぞ!」
カタカム
「あぁっ……?」
ジロン
「わぁ〜っ!」
「カタカム、何やってんの! ゆっくり出撃もさせてくれないで、戦いをやってるつもりか!」
ブルメ
「ラグ、お前もザブングルで出るんだろ?」
ラグ
「え? あ、あぁっ!」
ソルト・メンバー
「おい、まだか?」
ブルメ
「何やってんだよ、お前ら!」
ソルト・メンバー
「や、このエンジン……」
ブルメ
「どけよ!」
ソルト・メンバー
「え?」
 〃
「掛かったぞ!」
ブルメ
「ほら、さっさと出撃しろ!」
ソルト・メンバー
「や、流石だな。戦い慣れてる人は違う」
ブルメ
「てめぇらも出撃しろってんだよ!」
「舐めんなよ!」
カタカム
「やったぁ!」
「コトセットさん、アイアン・ギアーを変形させましょう!」
コトセット
「な、何だって?」
カタカム
「出来るんでしょ?」
コトセット
「そ、そりゃ出来るが……」
「やっぱり駄目だ! 変形の間は、主砲が使えん!」
カタカム
「でも、それしか手はありません!」
コトセット
「絶対に駄目!」
カタカム
「艦長命令!」
コトセット
「りょ、了解!」
チル
「あぁ〜っ!」
ジロン
「今度は何だよ!」
ブルメ
「お、おい、変形かよ!」
ハイヤ
「たた、助けて……!」
カタカム
「わっ、変形やめ〜!」
ブルメ
「何やってんだ、コトセット! 早く変形しろよ!」
ジロン
「コトセット! ハッチを早く開けろ!」
コトセット
「ほら見ろ! ……あ〜、みんなして俺を〜!」
ソルト・メンバー
「うわっ!」
 〃
「うわぁぁっ!」
ブレーカー
「ヒャーッ!」
 〃
「ん、何だ? すげぇのが出て来たな!」
ジロン
「ん? あっさり逃げるんだな」
「あっ……?」
「ソルトは全滅かよ。道理でさっさと……」
チル
「偉そうな事言っちゃって、何だわさ」
カタカム
「ソ、ソルトのメンバーが……」
ラモン
「カ、カタカム……」
カタカム
「ん? ラモン、ラモンか……!」
ラモン
「すまない、不意を突かれた」
カタカム
「ラモン、気にしないでいい」
ジロン
「逃げたウォーカー・マシンの先には、ティンプが居るに決まっている」
「今度は、こっちから攻撃を掛けてやる」
カタカム
「敵の位置も分からんのにか?」
ジロン
「探すさ」
カタカム
「補給が失敗したのに、どうやって行こうというんだ」
ジロン
「俺が指揮を執る。そうすりゃ上手く行くさ」
カタカム
「君が指揮をしたって、みんなの腹が膨れるか?」
「ガソリンが出てくるか?」
「どうだ、ん?」
ジロン
「ベェッ、だ!」
ダイク
「どうした、チル?」
チル
「ダイク……」
ダイク
「ジロンは?」
チル
「カタカムと大喧嘩してるよ。どうしても攻撃するって……」
ダイク
「あいつは言い出したら聞かんさ。カタカムにだって止められまい」
チル
「ねえ、その荷物、何すんの?」
ダイク
「ん? ああ、お前には黙ってるつもりだったが、俺ここ出ようと思ってるんだ」
チル
「ダイク、え〜?」
ブルメ
「俺達と一緒に来るか、チル?」
チル
「嘘〜っ!」
ジロン
「嫌なら、お前が出て行け!」
カタカム
「君にそんな権利があるのか? まるで独裁者だな!」
ジロン
「俺達はエルチから、この船を預かってるんだ! お前みたいな居候とは違う!」
カタカム
「居候でも、判断は君より確かだ!」
ジロン
「あ〜あ、立派な指揮振りだったな!」
ラグ
「やめなよ、二人共! 怪我人が居るんだよ?」
「ジロン! カタカム!」
「ストップ! ……どうしたの、チル?」
チル
「ブルメとダイクが、出て行っちゃったよ〜!」
ラグ
「出てったって……?」
チル
「ハイヤとマーレも一緒に、もうこれっきりだって……!」
ラグ
「え?」
ラグ
「ジロン、何ボケッとしてるの! 追い掛けないの?」
ジロン
「戻ってくるよ、すぐに」
ラグ
「本気なんだよ。少なくともブルメは……!」
ジロン
「あんな奴、勝手にさせとけばいいさ」
ラグ
「そう! じゃあ、私一人で行くよ!」
チル
「あたいも!」
カタカム
「……これで分かったかね? みんなウンザリしているのさ、君の独裁者振りにね」
ジロン
「煩い!」
「コトセット、後は頼んだぞ!」
コトセット
「え? おい、どこ行くんだよ?」
ジロン
「奴らを連れ戻してくる。帰ったらすぐ作戦開始だ」
「その前にカタカム、お前と決着を付けてやるからな」
カタカム
「ふん、出来るかな?」
ダイク
「ブルメ」
ブルメ
「ん?」
ダイク
「取り敢えず、どこへ行くんだ?」
ブルメ
「聖域から出来るだけ離れるんだ。危険のない所までな」
ダイク
「また、一から出直しか……」
ブルメ
「嫌なら戻れよ。もう誰も命令はしないぜ」
ダイク
「誰も戻るなんて言ってないよ!」
マーレ
「大丈夫かな、人手不足のアイアン・ギアーでさ」
ハイヤ
「しょうがねえだろ、一人だけ戻ってもいいんだぜ」
ティンプ
「何だと? アイアン・ギアーの小僧達がこっちに向かってるだと?」
「変だな……Yポイントと方向が逆だぜ」
ギロ
「どうします?」
ティンプ
「よし、俺が行くまで尾行を続けろ」
ラグ
「ジロン、もっと急いでよ!」
ジロン
「急いでるよ!」
ソルト・メンバー
「撃つな、敵じゃない!」
「君達は、アイアン・ギアーの仲間じゃないのか?」
ダイク
「そうだが、お前達は……?」
ソルト・メンバー
「僕らはソルトのメンバーだ」
ブルメ
「ソルトの?」
ティンプ
「ふふっ、行くぜ!」
ソルト・メンバー
「アイアン・ギアーに合流したいんだ」
ブルメ
「折角だけど、俺達、アイアン・ギアーをおさらばして来たんだ」
「先も急いでるし……」
一同
「あっ!」
ダイク
「ティンプだ!」
ブルメ
「くそっ!」
ソルト・メンバー
「こっちだ!」
ティンプ
「ツァッ!」
「年か、はぁっ……!」
ソルト・メンバー
「あそこへ……!」
一同
「あっ!」
ラグ
「ブルメ達かな? 急いで、ジロン!」
ブルメ
「俺が奴らの気を引くから、その隙に逃げろ!」
ダイク
「待て、お前はどうなるんだ?」
ブルメ
「どうにかなるよ」
ダイク
「おい、お前だけいい格好するな!」
ブルメ
「へ〜い、イヤッホー! こっちこっちぃ!」
「早くいらして、なんちゃって!」
ティンプ
「あの小僧をやれ!」
ギロ
「へい!」
ブルメ
「わわっ……!」
ギロ
「チョロチョロ動くな!」
「わっ!」
ブルメ
「ジロン!」
ジロン
「面倒を掛けるんだよな、ブルメらしくないぜ!」
ブルメ
「た、助けてくれなんて、頼みやしねぇ!」
ラグ
「ブルメ、怪我はないかい?」
ブルメ
「平気だよ」
「それより、ジロンを援護しろよ。ティンプが居るんだ」
ラグ
「ブルメ……」
ジロン
「ブルメもダイクもハイヤもマーレも、お前らにはやらせないんだよ!」
ギロ
「ボス!」
ティンプ
「ん?」
「ギャリアか!」
ジロン
「ティンプか!」
「どけぇーっ!」
「わぁぁっ!」
ティンプ
「ツァッ!」
ジロン
「わぁぁーっ!」
ティンプ
「ドラン、掛かれ!」
ジロン
「あっ……!」
「ガルロ!」
「速い!」
「吹っ飛ばされたくなかったら、言う通りに飛ぶんだ! 上昇!」
ブレーカー
「うっ、わっ……!」
ジロン
「もっと速くだ!」
「あぁ〜っ……!」
ティンプ
「ケッ、ウォーカー・マシンが不慣れな連中に使わせると、ぶっ壊すだけだぜ」
「寄せ集めのブレーカーじゃ、こうなるって事かよ」
ジロン
「勝手な事をしてくれたな、全く……」
「さあ、すぐに作戦開始だ。持ち場に戻ってくれ」
ブルメ
「戻らないぜ、俺達は」
ジロン
「何?」
カタカム
「まあまあ……そう喧嘩腰じゃ、戻るものも戻れないだろ?」
「ねぇ君達、私からも頼むよ」
「あの独裁者に意見を言えるのも、君達しか居ないじゃないか」
「ね、コトセットさん。貴方も同じ意見でしょ?」
コトセット
「あ、あぁ……」
カタカム
「さぁ……」
ダイク
「分かった、俺は戻るよ」
ハイヤ
「俺も戻る」
マーレ
「私も……」
カタカム
「ん、それでこそ組織の一員だ」
ダイク
「そんなもんの為じゃないよ!」
ジロン
「ブルメは?」
カタカム
「さ、ブルメ君も……」
ブルメ
「御免だね。俺は『君』なんて呼ばれる人間じゃないんでね」
ラグ
「ブルメ……!」
ジロン
「ブルメ……」
ラグ
「待って、ブルメ!」
「ね、もう少し様子を見ないかい? ジロンだって、エルチを救い出せば気も変わるさ」
ブルメ
「そうなれば、ジロンもお前に目が向くだろうな」
ラグ
「えっ……?」
ブルメ
「ラグ、お前だけは俺と一緒に来てくれると思ったけどな……」
ラグ
「ブルメ……」
ブルメ
「あばよ!」
ラグ
「あっ、ブルメ!」
チル
「ブルメ〜!」