第44話 アーサー様・お大事に

前回のあらすじ
ジビリアンの片隅からイノセントに対抗しようとする力が生まれ、
アイアン・ギアーのクルー達も、自分達の考えとは別にその渦の中に巻き込まれていった。
補給と援軍手に入れながら、ヨップに進むアイアン・ギアーとその一行。
その先々に、性懲りもなく襲い掛かるは、エルチ配下のグレタ・カラスで御座います。
後家の一念恐ろしや、挙句の果てにギア・ギアは、アイアン・ギアーと正面衝突。
エルチ善戦空しく後退し、グレタ・カラスも姿消しますか。
ブルメ
「今更変形が上手く行くの行かないのって、全く呆れるぜ」
ラグ
「コトセット、いい加減にしてくれない？　何で今更……」
コトセット
「ギア・ギアとガッチャンコやったでしょ。ガタが来てんですよ、ガタが」
「だからこそこうしてテストをしてるんだ」
「んん、何で動かん……！」
ジロン
「岩が引っ掛かってるだけだ、岩が。ホバー掛けて」
「ホバー掛けりゃいいんだよ」
コトセット
「ははっ！　どうだ。俺さえ居れば、アイアン・ギアーはどうにでも変形出来る」
ラグ
「馬鹿。水平翼が下がってるよ」
コトセット
「え？」
ラグ
「わっ……！」
「よし、戻してみな」
ソルト・メンバー
「ジロン・アモスはあんたかい？」
ジロン
「そうだ、ご苦労さん。それで全員か？」
ソルト・メンバー
「ああそうだ。遅れてすまなかったな……わっ！」
ラグ
「コトセット〜！」
チル
「何してんの！」
コトセット
「ごめんなさ〜い！」
ラグ
「コトセットったら……！」
チル
「こんな事でヨップに行けんの？」
エルチ
「武器弾薬が在庫不足だなんて嘘じゃない。この量は普通じゃないわ」
エミカ
「連合艦隊の編成の方に力を入れてるんです」
エルチ
「連合艦隊？」
エミカ
「はい」
エルチ
「よし、ビラムに談じ込んで、ランド・シップを手に入れてやる」
ラグ
「ヨップへは、山脈越えが一番近いんでしょ？」
ジロン
「ソルトのランド・シップを連れては無理だな」
ビリン
「遠回りの楽なコースだと、Ｙポイントを掠める事になるわ」
「そこは補給部隊が集結して、かなりの戦力があるらしいわ」
ジロン
「やれやれ、せっかくマツミからヨップの地図を貰ったって……」
「何だ？」
ラグ
「敵か？」
ファットマン
「ソルト！」
ブルメ
「ソルトにあんな大型のランド・シップを手に入れた奴が居るのかい」
ダイク
「へぇ」
ラグ
「誰だい？」
ビリン
「誰でしょ。あれは誰？」
カルダス
「カルダスだよ。カルダス・ブルーン。ははっ！」
ラグ
「ダイク、そっちはどう？」
ダイク
「ああ、何とか使えそうだ」
コトセット
「中古だけどエンジン馬力は立派な物さ」
カルダス
「そりゃそうさ。ドッグ・シップを売っ払って手に入れたんだ」
ラグ
「へん！　元はと言えば、カタカムがアイアン・ギアーから持ち出したブルー・ストーンの力じゃないの！」
カルダス
「ははっ！　怒鳴り合うのはやめて、ここへ集まらんか？」
一同
「了解！」
カルダス
「わっ、脅かすな」
ブルメ
「情報、情報」
カルダス
「うむ。Ｙポイントとヨップの間には、ギブロスとガバリエの連合艦隊が居座っている」
ジロン
「ああ、それはティンプとホーラだろう。あいつらが今度は手を組んでやってくるとなると、こっちも数を揃えなくっちゃ」
ブルメ
「大丈夫かよ？」
ジロン
「言う通りにやれば上手く行くさ」
ガルロ
「こんなもんで大丈夫なのかな？」
ブルメ
「時々、とんでもねぇ事を思い付くからな、ジロンは」
「ははっ……！」
チル
「ザブングル〜、ザブングル〜っと♪」
コトセット
「だから、アイアン・ギアーとカルダス、ソルトの本隊がＹポイントを掠めてみせて、その間に……」
カルダス
「ジロン達が青のコースでヨップへ侵入する訳だ」
チル
「何であたいがジロン達と行っちゃいけないんよ？」
ジロン
「コトセット、カルダス。とにかくヨップには連合艦隊を近付けさせるなよ」
ビラム
「……だから？」
エルチ
「だから、このドームの下にあるエンペラー・タイプ１隻くれればいい。それ以上の補給は要らない」
「ジロン達が別荘を襲ったというのは、間違いなくヨップのルートを知る為だったんだ」
「ボヤボヤしているとヨップを直撃されます」
ビラム
「よし。ただしウォーカー・マシンなどの補給は、ヨップで行え」
ドワス
「いいかエルチ、エンペラーを動かすにしても艤装が終わったばかりだ。多分時間が掛かるぞ」
エルチ
「どうせそんな所だろうさ」
エルチ
「ヨップに行く。あのエンペラー・タイプでだ」
エミカ
「ビラム執政官を捨てたんですね？」
エルチ
「何で……？」
エミカ
「艦長の事は何でも分かります。何といっても、カシム・キング様に直接取り入った方が早いというものです」
エルチ
「ふっ、思った以上に切れるのね。頼もしいわ」
エミカ
「御一緒致します」
ビラム
「洗脳したシビリアンか……」
「だが、あの意固地さ、あの独断……どうも問題だな」
ドワス
「ドクター・マネの洗脳プログラムは不味かったのでしょうか？」
ビラム
「いや、新しい地球に適応するようになった生体には、洗脳は効かんのだよ」
「カシム様が居なければ、エルチなど、とうに追放していたものをな」
カルダス
「さて、俺達はここらで陽動の第二弾と行くか」
コトセット
「連合艦隊とモロにぶつかる気か？」
カルダス
「まさか。牽制は厚い方がいい」
コトセット
「敵妨害のつもりが、こっちの妨害にならんでくれよな？」
カルダス
「損な勘定は嫌いでね」
コトセット、カルダス
「へへっ……イェ〜ッ！」
ラグ
「大分込み入ってるんだね。覚えられる？」
ジロン
「やってんじゃないか」
「覚えてやんなくちゃ、これをくれたイノセントのマツミって奴に悪いもんな」
ラグ
「そりゃそうだ」
ジロン
「お前、虫歯があるぞ？」
ラグ
「あっ……！」
ブルメ、ビリン
「わっ！」
ブルメ
「へ〜い、やったやった」
ダイク
「大丈夫か、ブルメ？」
ブルメ
「大丈夫、大丈夫」
ビリン
「何が大丈夫なの？」
ブルメ
「まあまあ、固い事言わず……」
ビリン
「私は固い女なんです！　ラグさんと違ってね！」
ラグ
「私が固くないっての？　このカマトト！　あんたは……」
「ん？」
ジロン
「お？」
マリア
「ブルメさん、もう少しちゃんと運転してくれない？」
ブルメ
「マリア……あんた、メディックさんと一緒に……」
「ん？　そ、そんな大きなのぶらさげちゃって」
ダイク
「マリア、いいのか？」
ジロン
「へへっ、いいんじゃないの？　マリアさんも遂に立派な女戦士だ」
マリア
「別に私、人の殺し合いの手伝いをしに来たんじゃなくてよ？」
ブルメ
「お〜お……」
マリア
「貴方達を見ていると、心配で任せていられないのよ」
ラグ
「どういう意味さ、あんた？」
マリア
「下手にドンパチやってご覧なさいよ。却ってアーサー・ランクが助け出せなくなるわ」
ラグ
「ふんっ、舐められたもんだ」
ジロン
「邪魔しないでね、マリア？」
マリア
「だから運転、宜しくね」
ブルメ
「高度が高いとね、エンジン扱うのが難しいのよね」
ジロン
「まあいいさ、戦力は多いほど心強いもんな」
ラグ
「ベェッ！」
ジロン
「これお世辞、お世辞……」
コトセット
「チル、周りに以上はないか？」
チル
「異常な〜し。何にもな〜し」
ラグ
「さて、上手く潜り込めるのかい？」
ジロン
「マツミの地図が嘘だとは思えないな」
ブルメ
「空気が薄いせいかな？　エンジンのパワーも落ちてるみたいだ」
ブレーカー
「怪しい奴、動くな！」
ジロン
「来た！　前進するぞ！」
「少し上に洞窟がある筈だ！」
ラグ
「探してる！　左上だ、左！」
ダイク
「ブルメ、前へ出ろ！　前だ！」
ブルメ
「了解！　マリア、落っこちるなよ！」
ブレーカー
「爆破用意！　爆破！」
ラグ
「うわっ、山崩れ！」
ジロン、ラグ
「わわっ……！」
ダイク
「わぁぁっ！」
カシム
「ウォーカー・マシンが？　ううむ、恐らくシビリアンの先走り者だろう」
アリバ
「はっ！　今、雪崩の後を調べさせております」
カシム
「たかがウォーカー・マシン如き……」
アリバ
「念には念……このアリバが、万が一にもヨップ内には侵入させません」
ブレーカー
「居ないぞ」
　〃
「だから、もっとよく探せ」
　〃
「どこかに埋まっている筈だ。徹底的に掘り返せ。居ない筈はない」
　〃
「お〜い、こっちだぁ。変な穴がある」
　〃
「洞窟か。こんな所にあったかな」
ブルメ
「ははっ、土竜作戦になるとはな」
ジロン
「雪崩のお陰で、レーダーからも逃げられたって訳さ」
ラグ
「この地図だと、後１０メートル程で上へ通じるよ」
ジロン
「この辺りかな？」
ラグ
「あ〜っ、素敵素敵！　マツミの地図って本物よ！」
ダイク
「お〜」
アリバ
「パトロール隊からの報告は？」
イノセント
「まだ、何も見付からんそうです」
アリバ
「ふむ、妙だな」
「ガードマン達のプログラミングは……」
イノセント
「Ｅ洞窟内に侵入者発見！」
アリバ
「何だ？」
イノセント
「わ、分かりません」
アリバ
「第一隊は中央ブロック出口を固めろ！　第二隊はＥ洞窟へ！」
ジロン
「その辺にスイッチがある筈だ。早く探せ！」
ラグ
「何やってんの！」
ブルメ
「あ、あぁ……」
「わっ、怪光線……！」
ダイク
「おっ、岩が動いた……？」
アリバ
「敵は第３ハッチから出てくる筈である」
「ヒューマノイドのガードマンのプログラミングが変更されてない現在」
「アーサー様を脅かす勢力に対して、我々が防ぐしかない」
「恐怖を払って戦う事を望む」
ジロン
「いよいよヨップの中核だぞ。いいか？」
ラグ
「赤いコードを切る」
ジロン
「了解」
ジロン、ラグ
「わっ……！」
マリア
「やられるか！」
ブルメ
「スゲェ〜ッ」
ビリン
「私だって！」
ジロン
「ド、ドアを閉めなくちゃ。こんにゃろ、こんにゃろ！」
アリバ
「狙い撃ちをするより、洞窟の入り口を潰せ！」
ジロン
「よーし、突っ込むぞ！」
「いいな？　ダイク、ブルメ！」
ブルメ
「おう！　二、三台やっつけたから出るか！」
ダイク
「行くぞ！」
ジロン
「右上のドームに弾薬庫がある筈だ。一気に駆け抜けるぞ」
ブルメ
「こんにゃろ！」
アリバ
「うおっ……！」
ジロン
「飛ぶぞ！」
ダイク
「やぁぁっ！」
マリア
「きゃっ、あっ……！」
「ダイク、有難う！」
ダイク
「おう！」
ジロン
「ここへ向かって撃ってくるなんて、新造な人達ね」
アリバ
「攻撃やめ！　武器庫が爆発したら、連鎖反応を起こすぞ！」
「Ｂドームへ先回りする！　攻撃命令が出るまで迂闊に手を出すな！」
ジロン
「あの吊り橋の向こうにアーサーが居る筈だ。この荷物用のエレベーターで上へあがる」
アリバ
「敵はＢドームの下へ到着した」
「おっ！　奴ら、ドームのドアを操作している。エレベーターに入れるな！」
ダイク
「くっ、入れない……！」
ラグ
「翼を後ろに畳むの！」
ダイク
「そっか」
ラグ、ダイク
「あいてっ！」
アリバ
「敵はドーム内に侵入した！　森林地帯で食い止めろ！」
ジロン
「ここまで来ればこっちに有利だ。イノセントは自分達のドームを破壊するような事は出来ない筈だ」
「森の中を一気に駆け抜けるぞぉ！」
アリバ
「戦い方から見ると、侵入者はヨップの全てを知り尽くしているようです」
カシム
「ううむ、お前より遥かに知っているようだな」
アリバ
「は、はっ……」
カシム
「狼狽える事もあるまい。ヨップに乗り込んでくるからには、恐らく、アーサーを狙うだろう」
アリバ
「アーサー様を……」
カシム
「イノセントを倒そうという奴らだ。ここまで乗り込んでくるからには、大将を狙うに決まっている」
「耳を貸せ」
「……分かったな？」
アリバ
「奴らにアーサー閣下の命を……！」
ダイク
「ちょっと抵抗が弱いと思わないか？　ジロン」
ジロン
「そうか？」
ジロン、ラグ
「わっ！」
アーサー
「ん？　何か、外が騒がしいようだが……」
「誰か？」
カシム
「カシムで御座います」
アーサー
「何事か起きたのか？　外で」
カシム
「シビリアンが恐れる事なく侵入して……礼儀知らずな奴らで……」
アーサー
「ほう……すると、強い若者達とかいう、アイアン・ギアーのクルーも来ているのか」
カシム
「そういう事態ではありません。ここは危険です。地下へ避難を」
アーサー
「いや、会ってみたい。話せば通じるかもしれん」
カシム
「相手はシビリアンですぞ。貴方はイノセントの象徴です。奴らと会って危険な目に遭われては……」
アーサー
「しかし……」
ダイク
「ジロン、アーサーの所へはいつ着くんだ？　もう弾も無駄に出来んし……」
ジロン
「これだけ走り回っちゃ、どこがどこやらさっぱりだ」
カシム
「いいな？　閣下を間違いなく御案内しろ」
「……ふふっ、地下へ入る前にシビリアンの奴らと出会う筈だ」
「行け」
ブルメ
「撃ってる割には当たんないのよねぇ、下手糞〜！」
「わぁぁっ！」
「このっ！」
イノセント
「わぁぁっ！」
ジロン、ラグ
「あぁっ……！」
ラグ
「何よ？」
ブルメ
「あ、イノセント……」
マリア
「イノセント？」
ビリン
「イノセント？」
ダイク
「野郎！」
ジロン
「待って、ダイク」
「この人が……間違いない、この人……！」
アーサー
「待て君達、話がしたい」
ラグ
「タンマタンマ、握り潰しちゃいけないよ」
ジロン
「当たり前だ。何でそんな事を言うんだ？」
ラグ
「あれがアーサー・ランクだろ？」
ジロン
「そうだ」
ラグ
「だからさ、助けなきゃ」
ジロン
「美形キャラを見るとすぐこれだ」
ラグ
「上げて上げて、ゆっくり上げて」
ビリン
「アーサー・ランク、イメージと全然違う」
マリア
「あれがアーサー様……お美しい」
ダイク
「ジロン、本当にこいつがイノセントのリーダーか？」
ジロン
「ああ、一度会っているって言ったろ？」
ラグ
「アーサー様……素敵なお名前で御座いますわねぇ」
アーサー
「有難うお嬢さん。世襲の名前だが私もそう思っている」
ラグ
「キャ〜ッ！」
マリア
「あぁっ……！」
ビリン
「よく見える〜、かわゆ〜い」
ラグ
「何よあんた達、持ち場を離れるんじゃないよ」
ビリン、マリア
「アーサー様ぁ！」
ラグ
「ふんっ」
アーサー
「どうも、シビリアンのお嬢さん方は率直で……」
ビリン、マリア
「キャッ、キャッ……！」
ラグ
「煩い！」
カシム
「おお、アーサーを知っているのか」
アリバ
「アーサーを助け出すつもりです」
カシム
「何故だ？」
ジロン
「アーサーさん、あんたが知らないだけなんだ」
「今のイノセントは、カシムって奴がシビリアンを支配しようとしているんだ」
アーサー
「本当なのか？」
ジロン
「そうでなけりゃ、ソルトなんて組織は出来やしないよ」
アーサー
「成程、カシムが軍隊を作り出したのも、その為なのか」
ジロン
「そう。あんたは利用されているんだ」
アーサー
「思い当たる事はある」
ジロン
「だからあんたを助け出しに来た。これ以上は……」
カシム
「ううむ……」
「侵入者諸共、アーサーを処刑しろ！」
アーサー
「しかし、私は外に世界に出られるだけの体力はない」
ジロン
「何とかしますよ、何とか。だから……わっ！」
アーサー
「攻撃をやめろ！　私が居るのだぞ！　攻撃をやめないか！」
ダイク
「開いたぞ、ジロン。何か倉庫らしい」
アリバ
「敵の飛び込んだ倉庫にも火薬がある。迂闊に手を出すな！」
ジロン
「分かった、アーサーさん？　カシムの考えている事」
ブルメ
「どうなのさ？」
アーサー
「疲れた……」
マリア
「駄目よ。アーサー様は私達と体が違うのよ？」
ビリン
「ドームに代わる物が居るって訳ね」
ラグ
「ん、カプセルか……」
マリア
「アーサー様……」
ラグ
「気安いんだよ、マリア！」
アーサー
「あっ、ラグさん……大きい声は控えてくれませんか？」
ラグ
「あ、あら、ごめんあさせ……」
ビリン
「ヒヒッ……」
ラグ
「ギギッ……」
ジロン
「これ使えよ」
アーサー
「これをカプセル代わりにするのか？」
ラグ
「そりゃ無理よ」
ジロン
「何とかしてやれよ。出来るだろ？」
マリア
「そうね。空気清浄機さえあれば、カプセルは作れるわ」
ダイク
「数を集めてるみたいだ。急げよ」
マリア
「あったあった」
「ジロン、この箱もお願いね」
ビリン
「クッション、あった方がいいでしょう？」
「ちょっとどいて」
マリア
「酸素ボンベは？」
ラグ
「あぁ、入れたよ」
ジロン
「早く。アーサーさんをドラム缶に入れて」
ダイク
「そろそろ来るぞ」
ブルメ
「来させるかよ！」
「ジロン、ラグ、急げ！」
ラグ
「急いでるよ！」
アーサー
「あの、何かお手伝いしましょうか？」
マリア
「邪魔しなけりゃいいのよ、アーサー様」
アーサー
「は、はい」
ビリン
「はい、水筒とトランシーバー」
アーサー
「あぁ、どうも」
ラグ
「さぁ、閉めますよ。アーサー様」
ビリン
「食料と懐中電灯」
アリバ
「第一、第二隊、準備いいか？　敵を炙り出しに掛けるぞ」
マリア
「ジロン、ドラム缶をコンテナに入れて頂戴」
「しっかり止めてね」
ラグ
「やってるでしょ？」
ビリン
「コンテナのポンプもＯＫよ。急いで」
ラグ
「アーサー様、お苦しく御座いませんでしょうか？」
アーサー
「我慢出来ます」
ジロン
「こんなひ弱なアーサーが、よくイノセントの頭領になれたもんだ」
ブルメ
「おい、ジロン！　こっちにいいもんがあるぜ。脱出出来そうだ」
ダイク
「来たぞ、ジロン！」
ジロン
「ダイク、脱出だ！」
ダイク
「おう！」
アリバ
「ようし、突っ込め！　叩き潰せ！」
ジロン
「ホバー・エンジンか？」
ブルメ
「ちょっと違うみたいだけど……点火装置は取り付けた。後３０秒だ」
アリバ
「出て来い！　弾はないのは分かっている。後１０秒だけ待ってやる」
「１０・９・８・７・６・５・４・３・２・１……」
「うぉっ！」
「うわっ！」
「カシム様、逃げられました！」
カシム
「何？」
ダイク、マリア
「くっ……！」
ジロン、ラグ
「わぁぁっ、くっ……！」
カシム
「アリバめ、むざむざアーサーを逃がしたというのか！」
アーサー
「何か、私には酷くショックな事があったようだ」
ダイク
「おいジロン、一体いつになったら止まるんだろうな、これは？」
ジロン
「燃料が終われば止まるだろ？」