第47話 エルチ目覚めよ

前回のあらすじ
ジビリアンの片隅からイノセントに対抗しようとする力が生まれ、
アイアン・ギアーのクルー達も、自分達の考えとは別に、その渦の中に巻き込まれていった……。
せっかくエルチを連れ戻したものの、どうしていいのか分からない。
愛さえあれば万事解決……と行かない所が、シリアス・ドラマの辛さです。
挙句の果てに、アーサー・ランクが頑張って、カシム退治に張り切れば、
ジロン、ペースを崩されて、命からがら逃げ出します。
ポイント攻めはやめたい所。本当にシリアス・ドラマになるのかな?
ゲラバ
「何? カシム・キングがVポイントを脱出した?」
「どうして? 決戦場所じゃなかったのか?」
「Vポイントにはティンプのギブロスが居るんだろ、ティンプの」
ホーラ
「そうだ。任せときゃいいんだよ、任せときゃ」
「えへへっ……」
ラグ
「こいつ、一体幾つ機銃があるんだよ」
ビリン
「何やってんの。突っ込みが足らないよ」
ラグ
「なら、あんたがやってみな」
ラグ、ビリン
「あぁっ!」
ゲラバ
「おっ、やってるやってる」
「ギブロスが砲撃を始めてるようだ」
ホーラ
「カシムの行方を追え」
ゲラバ
「は、遣らないの?」
ホーラ
「ティンプとは遣り合いたくないな」
ティンプ
「見ちゃいられねぇな」
「Vポイントも押し込まれたのか。カシムたって、当てにならねんじゃねぇの?」
ブルメ
「ドラン掻払ったってこうすぐやられちゃ、仕方ないじゃないの」
ラグ
「ミサイルが無くなったんだよ」
ビリン
「だから逃げてきたの」
ブルメ
「へぇ、ラグとビリンらしくないじゃない」
ラグ
「ほら、早くアイアン・ギアーに戻して」
ブルメ
「了解」
ジロン
「マリア、マリア。アーサーさんだ。引き取ってくれ」
マリア
「アーサー様? ご無事なのですか?」
アーサー
「何とか」
「ジ、ジロン君のお陰で、あっ……」
マリア
「アーサー様、あっ……!」
ジロン
「大丈夫か?」
マリア
「大丈夫よ」
「ジロン、早く戦いに行って」
ジロン
「そ、そうか」
ラグ
「コトセット、Uターン!」
ビリン
「ブルメ、私は下へ行くわ」
ブルメ
「えぇ、ここで降りてよ」
コトセット
「カシムを追い掛けんじゃないの?」
ラグ
「聞こえてんだろ?」
コトセット
「ウッ、効くッ――!」
ラグ
「聞こえただろ? ホーラやティンプの追撃が掛かってるんだよ」
「後ろからやられちゃ面白くないでしょ?」
仲間の男
「あら、急にUターン?」
エルチ
「エイッ!」
仲間の男
「アッ!」
カルダス
「何としてもVポイントの機銃を黙らせろ。援護艦隊が来るぞ」
ギロ
「奴ら、動けないみたいですぜ」
ティンプ
「そらVポイントは覚悟してたろうからな」
「気を緩めるなよ、ギロ」
ギロ
「へぇ」
ティンプ
「ホーラが手出さねぇのなら、ここで手柄立てとくか」
ギロ
「へぇ」
「で、戦闘隊形は?」
ティンプ
「戦闘隊形? そりゃおめぇ、勝利のサインVの字!」
エルチ
「ギャリア!」
「ジロンめ、今度こそは生かしておかない!」
「わっ、くっ……!」
「ジロン、ジロン……ジロンめぇ!」
ジロン
「カルダス、ポイントはいい。右翼から援護だ」
「ティンプのウォーカー・マシン隊が出てくるぞ」
「はっ、エルチ……!」
エルチ
「ジロン・アモス!」
ジロン
「わっとと!」
「やめろ、俺は敵じゃないんだぞ!」
「エルチ!」
エルチ
「うぅっ」
「あっ……?」
ジロン
「エルチ……!」
「エルチ、思い出すんだ。お前の恋しいジロンだよ」
エルチ
「うっ、くっ……!」
兵士
「閣下、エンペラーがこちらへ」
カシム
「ホーラが?」
ホーラ
「ご無事で何よりでした」
カシム
「どの口でそんな言葉が出てくるのだ」
ホーラ
「はっ……?」
カシム
「ここへ何しに来たと聞いているんだ!」
ホーラ
「勿論、イノセントの指揮を執られるカシム閣下を」
「ホーラ、命に替えても護衛する覚悟で」
カシム
「頼んだ覚えはない」
「貴様の役目は、ティンプ隊と連合して」
「共同戦線を張る事だろう」
ホーラ
「それは……」
「しかし、閣下の身辺が手薄では……」
カシム
「ん? いつから貴様は司令権を持った?」
「すぐ戻って、ティンプ隊と合流しろ」
ホーラ
「この蛸頭が……!」
ゲラバ
「あ、兄貴!」
「危ねぇでないすか、ちゃんと合図してくんなきゃ」
ホーラ
「煩い! 武器弾薬の残りは調べたのか?」
ゲラバ
「え、何かあったんすか?」
ホーラ
「カシムの奴、カプセルから一歩も出ずに文句を言いやがった」
「急げよ」
ゲラバ
「はい!」
ホーラ
「気取りやがって、虫が好かねぇ」
「あんな奴とは思ってはいたけど。あ〜やだやだ、蕁麻疹が出ら。あの蛸頭」
ダイク
「ん、このぉっ!」
ブルメ
「行くぜぇ!」
「舐めるな!」
エルチ
「ええい、放せ……!」
メディック
「お手上げだな……何をやっても効き目がない」
「エルチの部屋に連れてくれば、何とかなると思ったんだが」
マリア
「アーサー様が、何か手掛かりになる事を知らないのかしら?」
メディック
「あの重体じゃ聞き出せん。今下手に刺激したら、アーサーの方が危ない」
マリア
「はぁっ……」
「イノセントの医療班の誰か、捕えられないかしら?」
メディック
「この戦いの中でか?」
マリア
「洗脳に立ち会ってる筈でしょ。何か聞き出せるかも」
メディック
「まず無理な相談だろうよ」
エルチ
「おい、放せっ……!」
マリア
「危ない!」
エルチ
「寄るな!」
「うぅっ、くっ……!」
マリア
「では、先生」
メディック
「うむ、負傷者が出始めているようだ」
「んっ」
マリア
「アーサー様!」
「アーサー様……駄目ですよ、寝ていらっしゃらなければ」
アーサー
「エルチが外に出たんだって?」
「洗脳と言っても、人間の人格を変える事は出来ないから」
「別の人格を重ねていくという方法も使ったらしい」
「人類を存続させる為に研究を重ねた、その結果……」
メディック
「洗脳も、人間を強くしていく研究から生まれたんですか?」
アーサー
「ああ」
「だが、人は変わらんのだよ。結局は元へ戻る」
「その為には、優しく穏やかに昔に返していくしかない」
メディック
「成程ね、優しく……」
マリア
「そうだわ」
メディック
「ん?」
マリア
「そうよ」
「椅子に縛っているから、エルチ、怖いんじゃなくて?」
メディック
「ああ、そうか」
ソルト隊
「そらよっ」
敵ブレーカー
「わぁぁっ!」
エルチ
「何よ何よ、何よ!」
「遣るか!」
アーサー
「エルチ」
エルチ
「ビエル様!」
アーサー
「元気そうだね、エルチ・カーゴ」
「私はビエルではない。アーサー・ランクだ」
エルチ
「アーサー、アーサー様ね?」
「いいわ。いい男ならアーサー様でいい」
マリア
「エルチ……昔のエルチみたいな台詞」
アーサー
「どう、二人で話をしないかい?」
エルチ
「するする。アーサー・ビエル」
「アーサー様はお元気?」
アーサー
「君もイノセントの為に、よく戦ってくれた」
「今は囚われの身だが、私だって死ぬまでは戦って行きたい」
エルチ
「それはもう、私も」
アーサー
「それでだ」
「君は元々は、イノセントと戦ってきた少女だったという事は、覚えているかね?」
エルチ
「そりゃ人生には色々あります」
アーサー
「うむ。そして世の中も変わっていくんだ」
「今私は、カシムこそ真の敵ではないかと思っている」
「私は死ぬまでに、必ずカシムを倒してみたいと考えるようになった」
「ん、あっ……!」
エルチ
「私を倒せるか! 倒せやしない!」
アーサー
「エルチ!」
マリア
「エルチ!」
エルチ
「お前のような坊ちゃんが居るから、イノセントは滅びるんだ!」
メディック
「マリア、引き離せ!」
エルチ
「放せ、放せ……!」
メディック
「アーサー様!」
アーサー
「大丈夫だ、メディック」
「エルチ・カーゴ、完全に洗脳されたのか……?」
ジロン
「怯むな!」
「お、やるなチル」
チル
「用意〜!」
「ジロン、弾薬節約、接近戦は任しといて!」
「あ、何すんだわさ」
ジロン
「ははっ!」
「気を付けてやれよ、チル」
「ん?」
「ほれ、ガソリンは大丈夫か?」
ソルト隊
「あっ、後ろ!」
ジロン
「わっ!」
「あの野郎!」
「へへっ、ざまぁねえな」
エルチ
「お前らが居なけりゃ、戦いはなかったんだよ!」
メディック
「気を静めて、エルチ」
エルチ
「ええい、このぉっ!」
マリア
「エルチ!」
エルチ
「ええい、ええいっ!」
「痛い、頭が……頭が痛い!」
メディック
「疲れたようだな」
「錯乱の後の放心状態だ」
マリア
「そうだわ」
「エルチさん、思い出してください。昔の事を……」
「貴方は優しく、文化に興味を持った方でしょ?」
「いいですか? 1・2・3……と言ったら、思い出しますよ?」
「さ、次の手の音で元に戻るのよ」
「1・2・3、はい」
メディック
「催眠術とかいうのか?」
マリア
「はい。先生の本の中に書いてあったんです」
「いいですかエルチさん、もう一度」
「1・2・3、はい」
ホーラ
「エンジン停止だ」
「各ウォーカー・マシンの出撃を用意させとけ」
ゲラバ
「了解」
ホーラ
「あのドサクサに紛れて、何とかエルチを盗み出すか」
「ティンプが居る限り、アイアン・ギアーも迂闊に動けまいからな」
「ゲラバ」
「偵察してくる。指令があるまで全員に待機させろ」
ゲラバ
「あれ兄貴、どうすんの?」
「どこへ行くんで? キャプテン」
ホーラ
「え? お、俺……へへっ」
ゲラバ
「分かった分かった。その照れた顔、エルチを掻払いに……」
ホーラ
「たっ!」
「行ってくる」
ゲラバ
「行ってらっしゃい」
「待ってるわん、貴方!」
ギロ
「バラバラになるな! 束になって掛かりゃいい!」
「向こうの数のが少ないんだ、いいな?」
ティンプ
「しかしな、色で塗り分けもしないウォーカー・マシン出したって」
「同士討ちになるだけじゃねえのか? ギロ」
ギロ
「しかし旦那、ここでいいとこ見せろって言ったの、旦那ですぜ?」
コトセット
「イタチごっこ続けてないで、全速力で奴らをぶっちぎるぞ!」
ジロン
「駄目だ! どの道、ティンプもホーラもケリを付けなくちゃいけないんだ!」
カルダス
「アース・サンダー隊、前だ前だ! 突破も糞もあるかよ!」
ホーラ
「わぁぁっ!」
ティンプ
「何だと、そりゃ確かか?」
ギロ
「はぁ、南の高台にホーラのエンペラーが待機して、ピクリとも動きません」
ティンプ
「何故突っ込まんのだ?」
ギロ
「分かりません」
ティンプ
「やっぱり奴はウスノロだよ」
「アイアン・ギアーを挟み撃ちに出来るチャンスじゃねぇか」
「ホーラ! 聞こえるか、ホーラ!」
「ええい、イノセントの力でもこいつばっかりは何とかならんのか、ったく」
「左舷でウォーカー・マシン戦をやってんだ。応援しろ!」
ホーラ
「うっ……!」
ローズ
「後ろの砲塔用の弾運びをしなくちゃいけないんだって」
ホーラ
「わ、あぁっ……!」
ローズ
「敵?」
ミミ・ルル・キキ
「きゃぁっ!」
ホーラ
「イタタッ……」
ローズ
「ホーラ!」
ホーラ
「エルチはどこだ!」
ローズ
「し、知らないよ」
ホーラ
「教えろ!」
ローズ
「あっ!」
「何すんのよ、か弱い女に!」
ホーラ
「お前らがか弱い女かよ」
「教えろ!」
ローズ
「このっ!」
ホーラ
「うわっ!」
ローズ
「誰か、ホーラが!」
「あっ……!」
ホーラ
「退けぇっ!」
ミミ・ルル・キキ
「あっ!」
メディック
「侵入者か!」
「エルチ、何をする!」
エルチ
「私の力なら、この子を腕だけで絞め殺してみせる!」
「ドアを開けろ! お前が道案内をして、私を外に出せ!」
マリア
「今の貴方に私が殺せて?」
「あぁっ……!」
メディック
「待った、今開ける。言う通りにする」
ホーラ
「くっ……!」
「ん?」
エルチ
「さあ、道案内を……!」
ホーラ
「エルチ!」
エルチ
「ホーラ、助けに来てくれたの?」
ホーラ
「エルチ、無事で良かった」
「来い!」
マリア
「あっ!」
ホーラ
「こいつを殺されたくなかったら、手を引け!」
メディック
「ホーラの言う事を聞くんだ! マリアが人質に取られたんだ!」
仲間の男
「あっ、は、はい……!」
ホーラ
「心配したぞ、エルチ」
エルチ
「逃げ出すチャンスを狙ってたのよ」
ホーラ
「長居は無用だ」
エルチ
「一人で乗り込むなんて、流石ねホーラ」
「有難う」
ホーラ
「いやぁ……」
マリア
「エルチ、今戻ったらもう一生治らないわよ」
メディック
「そうだぞエルチ、マリアの言う通りだ」
「思い出さんのか、昔の懐かしい生活を」
エルチ
「私はイノセントの指揮官よ?」
ホーラ
「そして、俺の嫁さんになる女なんだよ」
エルチ
「そんな約束はしてない」
ホーラ
「帰ったら約束してもらうよ」
「おら、道を開けろ! 銃を捨てて!」
エルチ
「ハッチを開いて!」
ファットマン
「あぁ〜っ!」
ホーラ
「この野郎!」
エルチ
「ファットマン!」
ホーラ
「ふん、エルチの飾りめ。幾ら気合で頑張ったって駄目だよ」
「通しな、俺達を!」
ティンプ
「何だと? ホーラが一人でアイアン・ギアーに向かっただと?」
「この糞忙しい時に俺を援護せずにか? 何考えてんだ、あの垂れ目は?」
ゲラバ
「ティンプさん、そりゃ無理ってもんですよ」
「ホーラの兄貴はずーっとエルチ嬢さんに憧れてたんすからね」
「俺だってこのいい顔、殴られたくねぇもんな。艦長命令があるまではここは動けませんぜ」
ティンプ
「あのな、俺達は連合艦隊なんだぞ?」
「そっちがウォーカー・マシン出しゃ、アイアン・ギアーなんぞすぐに……」
ゲラバ
「駄目。艦長命令が出ない限り、何も出来ません」
ティンプ
「何が艦長だ。兄貴兄貴って気安く呼んでやがる癖に」
「ギロ」
ギロ
「へぇ」
ティンプ
「突撃だ」
ギロ
「エンペラーをやるんで?」
ティンプ
「アイアン・ギアーだ。エルチをホーラに取られてなるものかよ」
ギロ
「じゃ、砲撃は出来ませんな」
ティンプ
「当たり前だ。嫁さんの体を傷付ける訳には行かねぇ」
「アイアン・ギアーに体当たり攻撃を敢行する!」
ホーラ
「この野郎、来るな!」
ジロン
「やめろ、ファットマン!」
ホーラ
「ん、ギャリア!」
エルチ
「こ、こいつ……!」
ジロン
「卑怯だぞ垂れ目、マリアを放せ!」
マリア
「ジロン、私に構わないで」
「エルチを取り戻して!」
ホーラ
「何、あっ……!」
エルチ
「何だ?」
ジロン
「わっ! エルチ、正気になれ!」
ファットマン
「エルチ!」
ホーラ
「動くな、ファットマン!」
「この女の命が……」
「あれ、あっ……!」
エルチ
「放して、このぉっ!」
ホーラ
「とぉっ!」
「あっ……!」
ジロン
「よーし、ファットマン。そのまま押さえていろ!」
「わっ!」
マリア
「エルチ!」
ファットマン
「エルチ!」
ホーラ
「てぇっ!」
エルチ
「来るならいらっしゃい! その代わり容赦はしないから!」
ジロン
「あっ! ギブロスだ、ギブロスだ!」
ティンプ
「よーし、このままアイアン・ギアーにぶつけろ!」
ギロ
「全員、何かに掴まれ!」
ジロン
「コトセット、ラグ、避けろ!」
チル
「何? 後ろでカルダス達が苦戦なんよ〜!」
ジロン
「左、左だ!」
チル
「わっ!」
ティンプ
「よーし、よくやった! もっと寄せろ、もっと!」
ラグ
「あぁっ、くっ……!」
「ハイヤ、ガルロ、どうして砲撃しなかったのよ?」
ハイヤ
「いきなり突っ込んで来やがったんだもん」
ガルロ
「こんな近くで爆破したら、こっちだって吹っ飛んじまうぜ」
ラグ
「お、理屈〜!」
コトセット
「おい、見ろ!」
ラグ
「ティンプ!」
チル
「カックイ〜!」
ティンプ
「たっ!」
ラグ
「ジロン、ファットマン! ティンプが行くよ!」
仲間の男
「これ以上、侵入者を入れるな!」
ティンプ
「わっとと、そう簡単にやられるか!」
ジロン
「こんな近くで撃ったら相打ちだぞ?」
ティンプ
「それでいい! ギャリアの動きを封じろ!」
「あっ、わっ……!」
エルチ
「ティンプ!」
マリア
「エルチ、駄目よ行っては!」
ティンプ
「体にしっかり掴まれ、エルチ」
エルチ
「頼むわ」
ティンプ
「悪かねぇな」
エルチ
「急いで! 馬鹿共が来る!」
ティンプ
「よーし、上げろ!」
ホーラ
「ティンプ、貴様……!」
「待て!」
「お前らだけで逃げようってのか!」
ティンプ
「自分で上がって来いよ」
ホーラ
「何だと?」
ティンプ
「エルチを助けるのが先だ。お前は俺と共同戦線を張るのを嫌がった」
ホーラ
「エルチを見付けたのは、俺だぞ!」
ティンプ
「俺は、指揮者としてのエルチを助ける指令を受けたんだ。ビラムの意向だぞ」
ホーラ
「くそっ……!」
ブルメ
「どこよ」
ダイク
「ギブロスのブリッジだ」
ブルメ
「ホーラか?」
ジロン
「撃つな、エルチも居るんだぞ!」
ブルメ
「上の方か?」
ダイク
「ティンプとエルチ」
ホーラ
「くそ、ティンプの奴め。何で俺が、あっ……!」
ティンプ
「いっ……!」
ホーラ
「あぁっ……!」
エルチ、ティンプ
「わぁぁっ!」
ギロ
「旦那、大丈夫ですか?」
ティンプ
「野郎、たたっ殺してエルチを連れ戻せ!」
ファットマン
「エルチ、エルチ……」
エルチ
「あっ、うっ……!」
ファットマン
「エルチ」
「エルチ……?」
エルチ
「私は、あんたになんか抱かれる理由はないんだよ!」
「は、放せ、男! な、何をする、放せ!」
「この、この、何だってんだよ!」
ファットマン
「うぅ、エルチ……!」
コトセット
「ええい、全速で離れてギブロスを砲撃する!」
ラグ
「ファットマン達はどうするの?」
コトセット
「奴なら大丈夫だ! よじ登ってくれるさ!」
「全速後退!」
ジロン
「わっ!」
ブルメ
「何だよ、いきなり!」
ジロン
「援護だ、援護だ!」
ダイク
「あちゃ、もう弾がないのぉ!」
ブルメ
「残りの弾のチェックはダイクの仕事だろ!」
ダイク
「運転してんのはブルメだろ!」
ギロ
「反撃します、旦那!」
ティンプ
「言ったろ、後退するチャンスを見極めるのもキャプテンの才能だ」
「一先ず後退だ!」
「ホーラの馬鹿めが、あっ……!」
ジロン
「ラグ、ソルト隊もカルダス隊も後退させるんだ」
「これ以上戦うと消耗するだけだ」
ラグ
「了解!」
ジロン
「ファットマンは?」
ブルメ
「引き上げた。エルチも救出した」
エルチ
「うぅっ、痛い、頭が……!」
ファットマン
「1・2・3、はい」
「1・2・3、はい」
「エルチ」
「1・2・3、はい」
「1・2・3、はい」
エルチ
「うぅ、痛い……」
「私は頭が痛いのよ!」