W 水の器        


ふくれつつ宇宙は冥(くら)し黒猫の隻眼としてうかぶ地球は


人知れず伸びゆく怒りの爪をもつ人間
(ひと)は大きなひとさし指か


一瞬でテロップ、テロップ、テロ、テロ、テロ、世界とつながり世界と離る


約束の地
(Promised Land)、ボブ・バックランド、ドナルドの揺れるお尻は疲れています


ベルリンの壁の欠片
(かけら)で僕たちのハートを埋めた日を忘れたの?


アルプスの水、六甲の水たちの柩
(ひつぎ)がならぶ朝のコンビニ


天空に浮く青林檎朽ちゆくか街にレノンの <イマジン> 流る


モノクロの世界だここは、パンダさえ迷彩服を着た兵隊さ


帰還兵のように静かに眼を閉じて店先に並ぶクラシック・カメラ   


ツインタワービルの間を吹き抜ける九月の風に行方は訊くな


カナカナを聞かずに夏は去り雲は大洪水の隠喩でもなく


人類に不敵な笑みでみのもんた似の神が問う「ファイナル・アンサー?」


あぽぉーあぽぉーあんぽんたんのあっぽぉぱあでんじゃあでりしゃすAPPLE-PIE 
                                              
*APPLE-PIE 《米口語》きわめてアメリカ的な。


尖端パッ恐怖症の <パッ> 神様へ <パッ> 向けてみんなで <パッ> さすアンブレラ <パッ>


ことばことばこだまことだま雨のなかおまえもいっしょにずぶ濡れになれ


フーコーの振子ゆれつつ孵卵器のなかで地球はあわれ常吠
(とこぼ)


吾眼餓闇真下
(アメガヤミマシタ) ビニール傘を棄つ。この手でなにを(あ、雪?)掴まん


ふるふゆうやけのふるふるあかとんぼ地上はこうも汚れちまった


神とともにありし言
(ことば)の末裔がひしめきならぶコンビニの内


公園の蛇口滴
(したた)る水のつぶ 滅びゆくとはそういうことだ


「あっ、虹」とさけんで空をゆびさせばそれを合図に消えそうな街


魂を太古の海に捨ててきた水の器
(うつわ)に空は遠くて


ふりむけば岬も海も空も陽もきみもすべてはトロンプ・ルイユ


花園に眼球ふたつ落としたり 背につもりゆく花の腐臭よ


弾倉に銀ヤンマ鬼ヤンマ込め、撃て回転式連発拳銃
(リヴォルヴァー)! 半島に向け