Y みんな消えるんだ


「あの観覧車、消してみせます」 マジシャンが静かに永久(とわ)にまぶたをとじる


いっせいに鳩飛びたてば日溜りは深き穴へと姿をかえる


狂いたる磁石が北を探るごと回りつづける大観覧車


永遠のねむりについたマジシャンの眼裏
(まなうら)の鳩 息を殺して


僕たちは消えていくんだゴンドラのひとつひとつのガラス越しにね


(誰もいない…)深き穴だと気付くときベンチの男「ぽっぽっぽ、はとぽっぽ…」 


ママン、ママン、まぼろしのママン、ママン、ピジョン・ブラッドがめじるしの手  


電柱に貼られたビラのたどたどしい手書きの文字の ぼくをさがして


海底に沈んで消えた岬の名、それがわたしの名前の由来


白百合よ、すまないきみを手折
(たお)らねば消えていたんだここから僕は


永遠に重なりはせぬ針たちが同じ時間を指す時計店


ソースせんべいソースたらりとこぼれ落ちどろんと暮れてあの日は消えた


ママの手をにぎって見てたはじめての映画のような暗闇でした


にかにかにちゅうちゅうたこのういんなあ祖母はどこにもいないんだもう


なぁーんにも見えない窓があることを知ってあなたは行ってしまった


「はよ、行くで」そういいながら待っていてくれたあなたのような夕陽が


もうぼくをさがさないでね風船をくれたピエロについていくから


テルミンを奏でるようにコスモスは揺れてみんなにさよならをいう


水性の君の言葉が消えぬよう雨の降る夜はパソコン閉じる


影踏まれ「痛い」と言いし少女棲む小説をまた手にとりており


ペロペロと子犬のぺぺに舐められて僕はじんわり消えるのですか


生と死のはざまに響く <Nowhere Man>  ひとりぼっちのあいつはだあれ?


弟よ卵
(らん)より孵(かえ)れフィゲラスの わが墓の名を削りて待たん


墓守りの最後のひとり姿消しゆっくり育つマリモの緑


包んでも包みきれないものがあり猫のまぶたは静かにひらく