足立尚彦さんの日記「南無茶亭日乗」より転載
2002年12月20日
神崎ハルミ歌集『観覧車日和』を読む。
著者は兵庫県在住、無所属の歌人。
不安感を惜し気もなく素直に吐き出している。
歌を詠むことのカッコ悪さを気にしていないのだろう。
短歌に関わることの特殊性をふりかざしていないところが清清しい。
テクニックを感じさせない技術が潜んでいるのだけれど。
以下、7首抄出。
「あっ、虹」とさけんで空をゆびさせばそれを合図に消えそうなひと
牧師さまのお鼻の汗が光っててきれいな日曜 あすから僕は・・・
店じまいセールの<赤井毛糸店>赤い毛糸ははじめからない
××(だめだめ)と神さま空に描けますか 飛行機雲は一直線に
モノクロの世界だここは、パンダさえ迷彩服を着た兵隊さ
「はよ、行くで」そういいながら待っていてくれたあなたのような夕陽が
くたくたに煮えた白菜、啄木は好きだったかな 俺は好きだよ
☆
2002年12月22日
一昨日、ここに書いた神崎ハルミ歌集『観覧車日和』は
私家版で、しかも手づくり、31冊の限定で発行されている。
結社に所属せず、ネットと総合誌への投稿などを拠り所としていた
神崎ハルミの作品には以前から注目していた。
歌集があふれている現在、
もし神崎が名のある歌集出版社から
『観覧車日和』を出版していたとしても
まったく見劣りしない歌集となっていただろうし、
むしろ目立つ存在となっていただろう。
でも、私はこれでよかったのだと思う。
私は神崎ハルミの純粋さに涙が出るほどエールを送りたい。
今後はネットの効用で私家版歌集だって認知されていくはずだ。
自信をもって突き進め!と言いたい。
「歌葉」からの出版、私家版、可能性は増大していく。
神崎はきっといい詩人(歌人)になっていくだろう。
これから新人賞にでもどんどん応募してほしいと思う。
そういえば私の第二歌集は私家版で、みじめな思いをした。
その頃と今では状況が違うのだ。