君ゆえに


「あっ。友雅さん、また女の人に囲まれてる・・・」
友雅を驚かせようと、こっそり友雅を迎えに来たあかねだったが、次から次へとどこから湧いて
くるのかわからない女達に、思わず嫌な気分になる。
「でも、しょうがないんだよね、友雅さんは素敵だから・・・」
 あかねは、友雅に群がる女たちを見ながら、ため息をつく。
 ついこの間も、友雅がどこかの姫からもらった文を見てしまったばかりだった。
「どうして、こんな人好きになっちゃったかなー?」
 あかねは、未だ女たちから解放されない友雅を見ていたが、諦めたように呟くと、一人トボト
ボと家に帰っていった。

「あかね、どうしたんだい? 今日は、やけに静かだね・・・」
 いつもなら、一日の出来事を友雅に話してくれるあかねが、黙ってじっとしているのを不思議
に思って友雅は尋ねる。
「ん・・・。何でもないです」
 あかねは、そう答えるが、その顔は何でも無いと言ったものではなかった。
「本当は、何か隠しているんだろう?」
 友雅は、そう言うとあかねを引き寄せ、膝の上に載せた。
「とっ、友雅さんっ」
 あかねはビックリして友雅の膝の上から逃げようとするが、友雅の強い力にはかなわない。
「ダメだよ、あかね。本当のことを言うまでは、放してあげないよ・・・。私としては、ずっとこのま
までもいいのだが・・・」
 そう言って、友雅は微笑んだ。
 あかねは困ったように俯く。
「ねぇ、本当のことを言っても、私のこと嫌いにならない?」
 あかねは、小さな声で尋ねる。
「私が君の事を嫌いになる日なんて来ないよ・・・」
 友雅はそっとあかの髪に触れる。
「あのね・・・、今日、友雅さんのこと、迎えに行ったの。驚かせようと思って・・・」「それで?}
「そうしたら、友雅さんが、たくさんの女の人に囲まれてて・・・。すごく嫌になって、帰ってきた
の」
「それは、嫉妬したってことかい?」
 友雅はあかねの顔を覗き込む。
「嫉妬・・・したんだけど、それよりも、嫉妬した自分が嫌だったの」
「どうして?」
「何だか、すごく醜い気がして・・・。初めてだから、こんな気持ちになるの・・・」
 あかねのその言葉に友雅は嬉しそうに微笑む。その微笑みに気付いたあかねが、ムッとし
て、友雅を睨む。
「今、子供だな・・・って思ったでしょ?」
「いや・・・」
「じゃあ、どうして笑ったんですかっ?」
 あかねは、まだ馬鹿にされたと思って怒っている。
「嬉しかったんだよ」
 友雅は照れくさそうに答える。
「嬉しかった?」
 あかねは、不思議そうに首を傾げる。
「ああ・・・。君が嫉妬してくれたことがね。君は嫉妬してしまうほど、私が好きだってことだろう?」
 友雅のその言葉に、あかねが頬を染める。
「それに、子供相手にこんなことしないだろう?」
 そう言って、友雅は、あかねに口付けた。
 今までは、女の嫉妬ほど醜いものは無いと思っていたが、愛しい姫がする嫉妬は何とも心地
いいものだと、友雅はしみじみ思ったのだった。


                   終


いつき様のキリリク「友×あか甘々(京バージョン)です。きちんと甘くなっているのか、ちょっと不安ですが・・・。タイト
ルの「君ゆえに」は、一応、「あなた相手だから嫉妬してしまう」と言うのと、「君だから嫉妬されるのも嬉しい」という意
味をかけてみました。タイトル付けるのって、難しい・・・。