京ラブストーリー<第三話>

「あー、天真君」
「あー、天真キュン、じゃねぇだろ!! お前、俺のことシスコンって言ったの取り消せ」
「つうか、天真キュンなんて言ってないし。それに天真君、いっつもランの話ばっかりしてんじゃ
ん。シスコンでしょ? 学術的にも証明済みだから。君はシスコンだ。シスコン以外の言葉が思
いつかないぐらいシスコンだ。まあ、仕方ないよ、アレだけ妹が可愛かったらシスコンにもなる
よ。気にすること無いってば、ねっ」
 あかねは、笑いながら天真の肩をポンポンッと叩く。
「あのー、シスコンって言うのは、どういう意味ですの?」
 藤姫は、先ほどからの疑問を投げかける。
「そっか。藤姫は知らないんだよね。天真センパイみたいに、妹が大好きで仕方ない人のこと
をシスコンって言うんだよ」
「まぁっ。天真殿は、妹殿のことがお好きなんですか?」
「そういうこと。だから天真君とはいくら頑張っても恋愛す るのは無理なの」
「そうなんですの・・・」
 そう言って藤姫は気の毒そうに天真を見る。
「だから違うっつってんだろっ!!」
 天真の大きな声に藤姫がビクッとする。
「ほらー、天真君が大きな声出すから、藤姫が怯えてるでしょー」
「そうだよ、天真センパイ。いくら図星だったからってさー。藤姫に謝りなよ」
「あ・・・、ゴメンな、藤姫。でもな、オレはシスコンじゃねぇからな!! 俺だって好きなヤツの一人く
らい・・・」 
「やれやれ、やっと落ち着いたようだね。せっかくの物忌み、神子殿と二人きりと楽しみにして
いたのに・・・。美しい花が増えるのは構わないが、天真に詩紋。君達はどうしてここにいるんだ
い?」
 友雅はうっとうしそうに天真と詩紋を見る。
「そうだよ!! なんでこいつらがいるんだよ? 説明しろよ!!」
「今日はね、八葉の皆さんに文を出したの。たまにはみんなでゆっくりお茶しながら話すのもい
いかなーって思ってぇー」
 あかねはそう言って二人に極上の笑みを見せた。
「お前がそういう顔した時って、絶対、何か企んでるよな」
 天真は訝しげな表情であかねを見る。
「天真。女性のこれほど美しい笑顔を疑うとは、お前も不粋な男だな。神子殿がこれだけ美し
い笑顔を見せているんだ。たとえ騙されているとしても、知らない振りをしてやるのが、真の良
い男というものではないのか? なあ、詩紋、お前もそう思うだろう?」
 友雅は相変わらず落ち込んでいる詩紋に同意を求める。
「でも・・・。あかねちゃんがそういう笑顔した時は、本当にろくでもない事考えているんです・・・
「おや、そうだったか・・・。では、みんなでその企みに乗ってみればいいじゃないか」 友雅は、
美しく微笑むとあかねの隣に座った。
「それで、神子殿。一体何を企んでいるんだい?」
「別に何も企んでいないですよ?」
 あかねはにっこりと微笑み断言した。
「そうか・・・。女性の秘め事とは、それだけでも魅力的だし、それを暴こうという行為は不粋だ
が、今回ばかりは私も騙されるわけにはいかないようだ。さあ。神子殿。何を企んでいるんだ
い? 言わないと、君のその可愛い唇を奪ってしまうよ? いいのかな、神子殿」
 友雅はあかねの顎にそっと手を添え、くっと上を向かせる。そして、かなりの至近距離で微笑
んだ。普通の婦女子ならこれであっさり口を割るか、喜んで唇どころか全てを奪われるかのど
ちらかなのだろうが、あかねは龍神の神子に選ばれるだけあってその辺の婦女子とは違っ
た。


                                                 続く