繋いだ手

「イノリ君のバカッ!! もう知らないんだからっ」
「お前がこんなわかんない奴だとは思わなかったよっ!! もう、いいよっ!」
 あの不思議な体験から二ヶ月。あかねは、無事、京を救ってこの世界に戻ってきた。あかね
がこの世界に戻ってくる時、イノリもあかねと一緒にこの世界に来ることを決断してくれて、あか
ね達はこの世界で楽しくやっていた・・・はずだった。
 でも、あの日、あかねとイノリは初めて喧嘩をした。あっちの世界にいるときも、それは喧嘩
はしたけど、次の日にはすぐ仲直りしていた。
 でも、今回は違った。喧嘩の原因なんて、思い出せないぐらい些細なことだが、あかねとイノ
リが会わなくなって、もう一ヶ月が過ぎようとしていた。

「あかね、お前、まだイノリと喧嘩してんのか?」
 聞きにくそうに天真があかねに尋ねてくる。
「・・・・・・」
「何だか、イノリ、機嫌悪いっつうか、あんまり元気ないんだよな・・・。こっち来てから、まだそん
なに経ってねぇし、ホームシックになってるのもあると思うんだけどよ。そのうえ、お前と喧嘩だ
ろ? アイツ、相当参ってると思うぜ」
 天真のその言葉にあかねも複雑な顔をする。
「イノリはさぁ、お前のためにこっちの世界に来てくれたんだから、たまにはお前が折れてやれ
ば?」
 天真はいたって簡単なことのように言った。しかし、よくよく考えてみなくても、イノリがあかね
のためにこの世界にやって来ることを決断したのに比べれば、イノリに謝る事などとても容易
いことだった。
「でも、いまさらどんな顔して会えば良いのかわかんないよ・・・」
「どんな顔も何も、いつものお前で良いんだよ」
 天真はそう言って笑った。
「そっか・・・。うん。わかった。謝ってくる」
 そう言うや否や、あかねは教室を飛び出していってしまった。
「全く、相変わらずだよな、アイツも・・・」
 天真はそう言って笑った。

「あのね、イノリ君、私・・・」
「ごめんっ、あかね、オレが悪かった!」
  同時に頭を下げた二人は、ゴツンと互いに額をぶつけた。
「あっ・・・」
 二人は額を摩りながらお互いを見る。
「なんか、おかしいね・・・」
「そうだな」
 そう言って、二人は笑う。やっぱり、こうして笑っているほうが、自分達らしいとあかねは思っ
た。
「そういえば、これ・・・」
 イノリはそう言うと、手に提げていた袋をあかねに渡す。
「・・・? これ、何?」
 あかねは、袋の中身を見ながら不思議そうに尋ねた。
「ヤーコンだよ。お前が気なるって言ってたから偶然見つけて買っといたんだ。でも俺、お前と
喧嘩しちまったから渡す時がなくて・・・。でも、渡したいと思ってさ・・・。渡すには仲直りするし
かないじゃん。」
 そう言ってイノリは照れくさそうに笑った。
「イノリ君・・・。ありがとう」
 あかねはイノリに抱きついた。ヤーコンをイノリが買ってきてくれた事より、何より、あかねの
何気ない言葉をイノリが覚えていてくれたこと、イノリが仲直りしようとしていてくれたことか嬉し
かった。
「今度また喧嘩したら、ヤーコン食べようって言うのを仲直りの合図にしようか?」
 あかねのその言葉にイノリは笑いながら頷く。
「そうだな。お前、意地っ張りだからな」
「イノリ君だって!!」
「まぁ、オレは大人だからな。あかね、ヤーコンでも食うか?」
「うん」
 二人は手を繋ぎ帰っていく。左手にヤーコンの入った袋を持って・・・。

                          終わり




訳わかんない話になっちゃったよ、おい・・・。イノリ×あかねに、ヤーコン絡めてって言うリクだったんですが、私は、
話を作るのが下手だなー。強引に絡めちゃったよ・・・。皆さん、今日から仲直りにはヤーコンを合言葉で・・・。ヤーコ
ンっていろんな効能あるらしいよ。