京ラブストーリー第二章<一>


「で、お前は結局、何のドラマがやりたいんだよ?」
 天真が面倒臭そうに尋ねる。
「えっ? 天真君、もしかして何気にやる気だったりするの? 天真君に主役はあげられないよ?」
 あかねは少し困った顔をする。
「べっ、別にそんなんじゃねぇよ!!」
 天真は顔を真っ赤にして否定する。
「ふぅん。そう? なら良いんだけど」
 あかねは、本当は納得していないのだが、納得したような素振りを見せた。
「ねぇ、あかねちゃん。一体どんなドラマをやるつもりなの? 僕、すごく気になるんだけど・・・」
 詩紋は、あかねの袖を甘えん坊振り全開で引っ張った。
「詩紋君、引っ張るのやめてくれない? そういう甘えた素振りって、他の女はどうかわかんない
けど、アタシにとっては、怒りの対象でしかないから」
 かなり冷酷な目で詩紋を見ると、詩紋はビクッとして袖から手を離す。
 その光景をうっとりとした顔で見つめる頼久。自分には、ああいう風に冷たくあしらわれた経
験はほとんど無かった。
 しかし、こうして見ていると、何とも羨ましい光景である。自分にもう少し、あとほんの少しの勇
気があったなら・・・。頼久の心にそんな思いが過る。
「オイ、頼久。どうしたんだよ」
 天真は、先ほどから自分の隣でうっとりしたり、思い悩んだりしている頼久をひじで突いた。
「頼久っ!! 今、考え事してたわね。このあたしが話をしている時は、他の誰が話を聞いていなく
ても、あなただけは聞いていなさいとあれほど言ったでしょう!! あなたは、アタシの家来だって
自分から言ったんだから、アタシの一言一句、一挙手一投足に集中してなきゃダメだって、こ
の前も言ったでしょ!! このアタシに無断で考え事なんてして!! して良いってアタシは言ったの
かしら?」
「はい、申し訳ありません、神子殿」
 頼久は畏まってあかねに頭を下げる。
「わかったなら、今回だけは許してあげる。以後、気をつけるように」
 あかねはにっこりと微笑む。頼久はあかねが自分に微笑んでくれたことに、また喜びでボー
っとなってしまいそうになる己を制すべく、壁に何度も頭を打ち付ける。
「立派になったな、神子。頼久の扱いも随分心得たようだな」
 泰明は優しく微笑む。
「まぁね。これぐらいは龍神の神子ちゃんとして当然でしょ」
「あっ、あの、神子・・・。神子は、一体どのような話をやりたいと思っていらっしゃるのですか?」
 永泉が小さな声で遠慮がちに尋ねる。
続く