京ラブストーリー<第五話>

「おっ、お前、いつ来たんだよ!?」
「先刻だが、それが何か?」
 泰明は相変わらずの無表情で答えた。
「きっ、来たなら来たって言えよ。ビックリすんだろう!!」
「それはすまなかった」
「べっ、別に良いけどよぉ」
 天真はやけに素直な泰明の様子に驚いた。
「泰明さんも来たし、残るはイノリ君だけだね」
「あっ、あかねちゃん。イノリ君なら来れないよ。今日は用事があるって言ってたから。ボッ、ボ
ク、朝会ったんだ」
 詩紋は思い出したように言った。
「ふぅん。そうなの? まあ、いいや。役者は揃ったし・・・」
 あかねは満足げに微笑む。
「お前・・・、やっぱり企んでたな・・・」
「企んでたなんて、人聞き悪い。だってぇ、この世界じゃテレビも無いし、暇なんだもーん」
「いいから、何企んでんのか言えよ」
「だから、天真君も知ってると思うんだけど、アタシって超テレビっ子じゃない?」
「あかね、その"超"ってのやめろよ。馬鹿っぽいぞ。お前、ただでさえ馬鹿なんだから」「天真
君、あと一回でもアタシの言葉かって言ったら、龍神の力で死んでもらうからね」 今のコイツな
ら、やりかねない・・・。天真は静かに息を呑む。
「だからー、アタシって超テレビっ子で超ドラマっ子じゃない? もう、ドラマが無いと生きていけな
いって言うか、禁断症状出てるの。だから、みんなにドラマ演じてもらおうと思って」
「ドラマってなー、お前」
 天真が呆れたように頭を掻く。
「アタシ・・・。八葉の皆さんのドラマが見れたら、これから先、どんな苦難に襲われようとも京を
救えそうな気がするの京日を救うための力が欲しいのー!!」
 あかねは寝っ転がり、手足をバタバタとさせる。
「みこどの・・・。あなたも京を救う力が欲しいと願っていたとは・・・。大変嬉しいですよ。私で出
来ることでしたら、何でも致しましょう」
 鷹通は感動したと言わんばかりに、ハラハラと涙を流した。
「神子の願いでしたら、私の力など物の数にも入らないものですが、精一杯頑張らせていただ
きます」
「ありがとう、永泉さん。やっぱり永泉さんは優しいね」
 あかねは、どさくさ紛れに(紛れてはいないが)永泉の手をギュッと握る。なぜか鷹通もそんな
あかねの手をギュッと握っていたが・・・。
「二人とも、ドラマが何だかわかっていないのに、そんなこと言って良いの?ドラマって言うのは、
別人になって話を演じないといけない難しいものなんだよ」
 詩紋は必死で鷹通と永泉を止める。
「そんなに難しいのかい? 私も興味が湧いてきたよ」
「神子殿の命令とあらば、この頼久、何でも致します」
「それが神子の望みなら・・・」
 友雅に続いて。頼久、泰明までもが演じることに同意を示し、五対二となり、天真も詩紋も堪
忍せざるを得なくなった。
「ったく、しかたねぇなー」
「天真君なら、そういってくれると思ってたんだー。天真君って、結構目立ちたがり屋だしー」
 あかねはそう言って笑ったが。天真は大きく溜息を吐いていた。
「詩紋君は、別いてもいなくても構わないから。やりたくなかったら良いよ」
「あっ、あかねちゃん、ボクもやるよっ!!」
 詩紋は仲間はずれになりたくなかったがために、慌ててそう言った。あかねは、詩紋のその
言葉に極上の笑みを見せたのだった。

                 

            < 第一章  完 >


えーっと、やっと第一章終了。これ、本当は、第八章ぐらいまで続く予定なんだけど、著作権の問題とかも絡んでくる
んでここでは、第二章までやります、多分。とりあえず第一章終了したけど、本当、八葉の扱い酷いな・・・。