友雅、能登に行く

 
「神子殿に会えるのも、今日で最後かと思うと残念だね・・・」
 友雅は、そう言いながら、あかねの様子を伺う。
 しかし、あかねは別段驚いているわけでもなく、いつもとあまり変わりない。強いて言えば、こ
の人は急に何を言い出すんだ? という表情でも友雅を見ていた。
「そんなにじっと見ないでくれ・・・。神子殿にそんな風に見つめられると決心が鈍ってしまう
よ・・・」
 友雅の深刻な顔にあかねは困ったように首を傾げる。
「あの、まだ四神集め終わってないんですけど・・・、どこか行かれるんですか? 出来れば、鬼
との戦いが終わってからにして欲しいんですけど・・・」
「藤姫の占いで、能登に怨霊が出ているらしいんだ・・・。誰かが退治しに行かなくてはならない
だろう?」
 友雅は困ったように言葉を続ける。
「ですからね、まだ白虎を取ってないんですよ。鷹通さんと行きますけど、友雅さんがいたほう
が都合が良いんですよ。そんなに急ぎなんですか?」
「私との別れを悲しんでくれるのかい?」
 友雅はそう言うと、あかねの髪に触れる。
「あのですね、能登も大変かとは思うんですが、京の鬼が原因だから、京の鬼を退治すれば良
いんじゃないですか?」
 あかねは、自分の髪に触れてくる友雅を鬱陶しそうに見ながら言った。
「ダメだ・・・。私は、もう、君の傍はいられない。・・・情熱など、とうの昔に失くしてしまったと思っ
ていたのに、君のせいだよ? 自分の中の情熱に気がついてしまった。しかし、君は、私のこの
情熱には答えてくれないのだろう? 私は、君の傍にいるのが辛いのだよ・・・。それとも・・・、少
しでも私に可能性は残っているのかな? 姫君・・・」
 友雅のその言葉にあかねは大きく首を振る。
「無理ですっ!! 無理っ!! あり得ないから、本当!!」
 あかねのその言葉に友雅は悲しそうに微笑む。
「そうか・・・。それでは、神子殿。私は明日、旅立つよ・・・」
 友雅はそれだけ言うとその場を後にした。
「つうか、職場放棄だろ?」
 そんなあかねたちの会話を陰からこっそり見ていた天真が突然、繁みから飛び出してきた。
「あかねっ!! お前コレで本当に言いと思ってんのかよっ!! 友雅が可哀想だとは思わねぇのか
っ!!」
 そう言って、天真は、あかねの肩を揺さぶる。
「いや、あのね、そんな風に言われてもね、私が好きなのは、永泉さんだし、ね? 好きでもない
人に、期待を持たせるような行為はやっちゃいけないと思うのね?」
「酷いよ・・・。あかね・・・。お前がそんな奴だとは思わなかったよ・・・っ。友雅があの都市でや
っと情熱を見つけたって言うのに・・・っ」
 イノリが、涙を隠すように目をこすりながら呟く。
「いや、みんな優しさを勘違いしてるよ?」
「神子・・・。私は・・・」
 永泉は、気まずそうに目を逸らす。
「何? みんな、友雅さん追っかけろって思ってんの?」
 あかねはいらいらしたように呟く。
「お前一人が我慢すれば、丸く収まる。耐えろ・・・。お前には、忍耐力が欠けている」
「いや、忍耐力が欠けてるとかそういう問題じゃないと思うんだけど・・・」
 あかねは、一体どうすればいいのかわからず、ただ混乱するばかりだった。


                                終

 実際に見た夢・・・。友雅さんファンの方、ごめんなさい。でも、私も大好きな永泉に冷たくされたんで帳消しでお願
いします。夢の中の私は、もっと悪態ついてましたが・・・。