願い

 先日、鬼との戦いが終わり、京に平和が戻った。
 永泉の愛した彼女は、永泉の思いを受け入れ、今、この京にいる。
 今まで色を持たなかったこの世界が、彼女がいることで、こんなにも鮮やかなものだったのだ
と、永泉は感じていた。
 春の鮮やかな花々、夏の新緑。彼女がいなくても、それらは変わらずここにあっただろう。
 しかし、永泉にこれほどまでの感動は与えなかっただろう・・・。
 そんな思いを抱きながら彼は傍らに座るあかねを見つめていた。
「・・・? どうしたんですか、永泉さん?」
 永泉の吸い込まれそうな瞳にあまりにもじっと見つめられ、あかねが恥ずかしそうに尋ねる。
「いえ・・・。今まで、私は世界がこんなに明るいものだとは知らなかったので、それを教えてくれ
た神子に感謝してるんです・・・」
 そう言って、永泉は微笑む。
「そうですか・・・。何だか恥ずかしいですね」
 あかねは照れくさそうに微笑む。
「どうしてですか?」
「私、特別何もしてないですから・・・」
 あかねのその言葉に永泉は優しく微笑む。
「神子がいなかったら、私はきっと、これほどまでに日々に感謝していなかったと思います」
「私も、永泉さんに会わなかったら、今も平凡に学校に通ったりしていたと思いますよ」
 あかねはそう言って微笑んだ。
「そうですね・・・。本来なら、あなたはあなたの世界で学生というものをしていたはずなんですよ
ね・・・? 後悔・・・していませんか?」
 永泉は、心配そうな顔で尋ねる。
「後悔・・・してると思います?」
 あかねのその言葉に、永泉は何と答えたものか思案する。
「後悔なんて、するわけないじゃないですか」
 あかねは、心配そうに自分を見つめる永泉に微笑みかける。
「本当ですか?」
「本当に・・・。永泉さん、結構私のこと信用してないんですね・・・」
 そう言って、あかねが悲しそうな顔をする。
 神子を傷つけてしまった・・・。永泉は、そう思い、慌てて言った。
「すみません。信用してないわけじゃないんです。ただ、私は神子に頂いてばかりで、神子はも
うあちらの世界のご家族には会えませんし・・・。私は、神子から奪うばかりで、何も与えること
が出来ないから・・・」
「冗談です」
 あかねは、パッと表情を明るくする。
「永泉さんは、私にいろんなものを与えてくれましたよ。誰かを思って、こんな風に胸が痛くなっ
たり、ドキドキしたり、熱くなったり・・・。永泉さんに出逢わなかったら、手に入れることが出来な
かった感情だもの・・・」
 そう言って、あかねは笑う。
「でも、欲を言えばもっと欲しいものがあるんですけど・・・」
 あかねはそういって、頬を赤く染める。
 あかねの初めてのおねだりに、永泉は嬉しそうにあかねを見る。
「何ですか?」
 あかねは、永泉の耳に唇を寄せると小さな声で願いごとを言った。
 その願い事に、永泉は一瞬ポッと頬を染める。
「はい。喜んで・・・」
 永泉はそう言うと、あかねにそっと口付ける。


「永泉さんと新しい家族を作りたい・・・」
 あかねの初めての願いは、永泉の願いでもあった。

                       終わり


えーと、久しぶりの永泉祭短編です。何だか不発に終わったって感じ・・・。本当は、色々やりたいコトあるんですが、
文章力が付いていかない・・・(泣)。誰か、私に文才を下さい。書いた後で、結構恥ずかしいです。