巡り逢えたら <第三部 君をさがしてた(四)>

「心のかけらって、どうしたら見つけられるのかな? 早く見つけないと、何だか不安ですよね?」
 夕べは、自分が突然置かれた境遇に、どうしていいのかわからないといった感じだったの
に、今は自分たちのために悩んでいるあかねを、永泉は不思議な気持ちで見ていた。
 人に道を譲りながら、その実、自分のことだけで精一杯の永泉にとっては、こんな境遇に置
かれながら自分たちのことを心配してくれるあかねが不思議だった。
 龍神の神子であるあかねは、永泉が最初に彼女に抱いていた印象と違った。
 もっと、かよわく守ってやらなくてはならない存在だと思っていた。
 しかし、実際の彼女は、こちらが守ってやらなくてはならないどころか、しっかりと地に足をつ
け歩いている、永泉がこうありたいと願っていた人間だった。
「大丈夫です、神子。先日も申し上げましたように、別段、生活する上では困りませんから・・・。
ただ、少し空疎な感じがするだけですから・・・」
「でも、みんなにとって大切なものには変わりないでしょう? 生活に困らないからって、必要ない
分けないよ・・・」
 あかねは、そう言って心配そうに永泉を見る。
「気になさらないで下さい、神子。異世界から突然召喚されてしまった神子のほうこそ、色々と
大変でしょう・・・」
 永泉はそう言って微笑むと、あかねもそれにつられたように微笑む。
「昨日は、突然あんなことになって、凄く怖かったし、どうしていいのかわからなかったけど、私
がみんなのために何か出来るなら、一生懸命頑張ろうと思うんです・・・。元の世界にいたら、こ
んな経験出来なかったし。私でも、誰かの役に立てるんだって、今は、そう思ってるんです」
「神子・・・」
「そのためにも、一生懸命土地を浄化しないといけないんですよね?」
「そうですね・・・。土地によっては鬼に穢されてしまったところもありますから・・・」
 永泉は、そう言うと表情を曇らせる。
「早く、こんな争いか終わるといいですね・・・」
 あかねはそう言って微笑んだ。
「そうですね・・・」
 あかねのその言葉に、永泉も微笑む。
「神子、本日はどこに行かれますか?」
「そうですね・・・。神泉苑・・・に行ってもいいですか?」
「ええ」
 永泉は頷くとあかねとともに神泉苑へと向かった。

「ここが、全ての始まりなんですよね」
 そう言ってあかねが遠い異世界を思い出すかのように呟いた。
「そうですね・・・」
「すみません、何だか暗くなってしまって・・・。もう一度見てみたかったんです。私が初めて訪れ
た場所を・・・。そして、私の世界へと通じる場所を・・・」
「神子・・・」
「あっ、あの人。もしかしたら青龍の札について何か知っているかもしれませんよね? 聞いてみ
ましょう」
 あかねは、そう明るく言うと駆け出した。
 永泉は、彼女の中の不安な気持ちを感じずにはいられなかった。

  続く