巡り逢えたら <第三部 君をさがしてた(六)>

そして、あかねの思っていた通り、八葉の心のかけらはそれぞれの好きな場所に隠されていた
ようだった。
 あかねは、彼らの心のかけらを一つずつ見つけ出してやり、それとともにあかねと彼らの信
頼関係は高まっていった。
 しかし、永泉の心は複雑だった。みんながあかねと親しくなればなるほど、彼の心は不安に
襲われた。
 この不安な気持ちは一体なんなのだろう・・・。あかねを見つめていると、永泉は、どこか懐か
しい気持ちになる。何かを思い出しそうになる。しかし、失ってしまった心のかけらの中にそれ
があるのか、彼は思い出すことは出来なかった。
 そして、あかねを見ていると同時に何か不安な気持ちにもなるのだった。その気持ちは一体
どこから来ているのか、永泉にはわからなかった。
 ただ、あかねが誰かと親しげに話していると、心の中に自分の知らない感情が波のように押
し寄せて、本人さえ知らない自分の真実の姿を垣間見させようとするのだった。
 そんな自分が何だか醜く思えて、永泉は潔斎に入ることが増え、自然とあかねを避けるよう
な形になってしまった。

「永泉さんと、こうして歩くのって久しぶりですね」
「そうですね」
「今日は、野々宮に行きませんか? 野宮も、永泉さんの好きな場所ですよね?」
「ええ」
「心のかけら、あるかもしれないですし・・・」
 そう言って、あかねは永泉とともに野宮に向かった。

「どうですか?」
 あかねは、期待に満ちた目で永泉を見つめる。
「残念ながら、何も・・・」
「そうですか・・・」
 あかねは、ガッカリしたように肩を落とす。
「ここにあるかと思ったんだけど・・・」
「いいんです、神子。気になさらないで下さい。今は、四神を解放することだけを考えましょ
う・・・」
 永泉は、そう言って微笑んだ。
「ごめんなさい。私より、永泉さんのほうが不安ですよね。永泉さんの心のかけら、まだ一つし
か見つかっていなかったから、見つけたかったんです」
 一番初めに解放しなければならない四神・・・。それは、永泉と泰明の属する玄武だった。
「玄武を解放するため、頑張りましょう」
「そうですね」
 永泉の言葉にあかねも頷く。
 しかし、永泉は思っていた。心のかけらが見つからないのは、自分のせいなのではないか
と・・・。
 あかねに、自分でも説明できない感情を抱いている罪深い自分だから、心のかけらも見つか
らないのではないかと・・・。
「それでは、力の具現化をしましょうか?」
 そんな自分の感情を気付かれないように、永泉は努めて明るい声で言った。

           
                          続く