京ラブストーリー第二章<ニ>

「永泉さんに聞かれたら、言わないわけにはいかないよね☆」
 あかねはにっこりと永泉に微笑みかける。
 永泉は、あかねのその笑顔にポッと頬を赤らめた。
「それでは、発表いたします。。本日、皆さんに演じていただくドラマは・・・コレです!!」
 そう言うと、あかねは今日まで日の目を見ることのなかった蒸栗色の紙を取り出し、バッと広
げた。そこには、ある名ドラマのタイトルが書かれていた。
「東京・・・」
「・・・ラブストーリー!?」
 天真と詩紋が声を揃えて叫ぶ。
「So!! 東京ラブストーリー以上の恋物語に、アタシは未だかつて出逢ったことはないね!!」
「おい・・・。お前、東京ラブストーリーって、一体いくつだよ? オレは今、お前に年齢詐称疑惑を
抱いたぞ」
「何言ってんの、天真君。女という生き物は、恋に生きて恋に死ぬ・・・。コレは遠い古からの決
まり事なのよ☆」
「そうじゃなくて、ほら、藤姫はまだ子供なんだから、フランダースの犬とかよぉ」
「は? 脳みそ、虫湧いてんじゃないの? 君は、日本語を理解できなくなったのか? アタシは、ド
ラマがやりたいって言ってるんだよ」
 あかねはイライラしながら言った。だから、フランダースの犬のほうがいいだろ? 藤姫は子供
なんだから。情操教育ってやつだよ」
「バッカじゃないの、天真君。だから、留年するんだよ。フランダースの犬はダメ。だってあれっ
て少年が放火して、逃亡の果てに犬と無理心中って話でしょう?」
「違うだろ? それは、明らかに話を勘違いしてるだろ? どこをどうやったらあの感動ストーリー
がそんなになるんだよ」
「とにかく!! アレは、女心とか男の本音を学習し、そして吸収することが出来ないから、ダメ!! 
却下だね!!」
 あかねは聞く耳を全く持たないといった感じで、天真を見る。
「あー、もうー!! 決定なんだな、東京ラブストーリーってのは!!」
「イエス!! 物分りの良い子は大好きよ☆」
「じゃあ聞くが、お前はラブストーリーのことをどこまで愛してるんだ? 話の内容、全部覚えてん
のか?」
「モチロンだ!! 天真君、その言葉、このあかね様の恐るべき記憶力を知っても、今と同じ気持
ちで言えるかな?」
「何だよ、それ・・・」
「東京ラブストーリー。柴門ふみ先生原作の同名漫画、東京ラブストーリーをドラマ化したもの。
主役の赤名リカに鈴木保奈美、永尾完治に織田裕二を起用。当時の十代から二十代の男
女・・・、いいえ、全国の人々の心を捉えてちょっとした東京ラブストーリーブーム到来。赤名リカ
のキャラクターは、全国の皆さんから愛され、原作では不倫相手の子供を妊娠してしまうけど、
ファンの皆様の投書によりか、ドラマではリカは妊娠しなかった。最後まで完治を思ってロスに
旅立ったの。アタシはー、藤姫にそんな女になって欲しいの!! 最後まで、一人の男を愛し続け
るような、相手のことを思って行動する、そんな女性になって欲しいの!!」
「神子様・・・」
 
 あかねが自分のことをそこまで考えていてくれたことに、藤姫は感動していた。


  続く