雨の日の朝には



「明日は、私に付き合ってくれるんですよね?」
 その言葉に、友雅は楽しそうに頷く。
「姫君の行きたいところならば、どこでもお供するよ・・・」
「あのね、いつも牛車を使って出掛けてるじゃないですか。だから、たまには、昔みたいに二人
で歩いて京を散策したいんですけど・・・」
 ダメですか? と友雅の様子を伺うように首を傾げて自分を見るあかねを可愛らしいと思って
しまう。
「友雅さん?」
 なかなか答えを返して来ない友雅に、やっぱりダメだろうかと不安な顔で、あかねが尋ねる。
「いや・・・。君の意見に従うと約束したからね・・・。たまには昔に戻って、京を二人で歩いてみ
るのもいいかもしれない・・・」
 そう言うと、友雅は優しく微笑む。
「じゃあ、私、明日はお弁当作りますね」
 あかねは明日が待ち遠しくて仕方ないといった様子で言った。
「何にしようかなー?」
 心はすっかり明日の散策に囚われてしまっているあかねを友雅は愛しそうに目を細めて見
る。
 その視線に気付いたあかねが、不思議そうに友雅を見ると、友雅はにっこりと微笑んだ。
「いや、随分楽しそうだと思ってね・・・?」
「私、昔から遠足の前の日は、なかなか寝られなかったんです。楽しいことの前って、何か興奮
しちゃって・・・」
 そう言って、あかねが恥ずかしそうに笑う。
「そうだ、てるてる坊主も作ろう」
「てるてる坊主?」
「明日、晴れますようにって、願掛けするんです。私たちの世界では、子供の頃、てるてる坊主
を下げて、晴れるようにって神様にお願いしたの」
 そう言って、あかねは紙を取ると丸め、てるてる坊主を作って見せた。
「こうして、顔を描いて・・・。うんっ。コレで下げれば出来上がり」
 友雅は、あかねの後ろから、その様を見ていたが、あかねの手から、てるてる坊主を取る
と、そっと軒下に下げた。
「晴れると良いね・・・」
 友雅はそう言ってあかねに微笑みかける。
「うん」
 二人は、明日晴れますようにと、てるてる坊主に願いをかけた。

 翌朝、二人は大きな雨音で目を覚ました。
「うーん。雨か・・・」
 あかねはガッカリしたようにてるてる坊主を見る。
「残念だね・・・」
 友雅は、しょんぼりしているあかねの頭を撫でた。
「また、今度行こう・・・」
「う・・・ん」
 あかねは、友雅のその言葉に、ガッカリしたまま頷く。
「そう、残念がらずに・・・。楽しみが、また一つ増えたと思えば良いだろう? 今日は、二人でゆ
っくり雨音を聞きながらあの頃の思い出話にふけるのも良いかもしれない・・・。そう、たとえ
ば、いつからお互いを意識し始めたとか・・・。私は君から聞いたことがないからね・・・」
 友雅は、楽しそうに笑うとあかねの頬に口付けた。
 あかねは、これから聞かれるその話に思わず、顔を赤らめてしまうのだった・・・。



 黒雨彩様のリクエストで、友×あか京EDで、雨をテーマに甘々というものでした。私のほうの事情で、仕上がりが遅
くなってしまって申し訳ありませんでした。
 久しぶりの友×あかで、きちんと甘々加減を表現出来てるのか、不安・・・。というか、私ももっと精進しないとダメで
すねぇ。もうちょっと乙女なアイテムを出せなかったのかと、悔やまれてなりませぬ・・・。
 リクエスト、ありがとうございました。